「あっつー。」
長々と続く高野連のお偉いさん方の有り難ーいお話を聞きながら、俺はひっそりとアンダーシャツをパタパタとさせて暑さを軽減しようとした。
もちろんこんな炎天下の中では、意味がないのに等しいが。
全国高等学校野球選手権西東京大会。
所謂、夏の本戦が開幕した。
その狼煙として開催される、開会式。
この神宮球場に東西東京の全校が揃っているのだ。
そりゃあもう、人口密度で体感温度も上がっている。
「よくみんなぶっ倒れねえよな。んな暑いところじゃ、気分悪くなるやつだっているだろうに。」
俺は元々全国大会とかで慣れているから大丈夫だけど、こんな炎天下の中で長時間立たされているのだ。
倒れるやつがいても、仕方ない。
「まあ、ぶっ倒れそうなやつはいるけどな。」
そう言って、一也が小さく後ろを指差す。
先には、フラフラと揺れる頭が見えた。
ひょこりと出ている頭は、高い身長の証。
サラサラの髪が、ゆらゆらと揺れている。
「ああ、降谷ね。あいつ北海道出身だし、こういう暑いところには慣れてないのかも。中々こんなに人が集まるところもないだろうし。」
「確かにな。でかい大会だって出た経験ないし、こういう場所は初めてか。」
沢村に寄りかかるようにして態勢を崩す降谷。
ナイス、沢村少年。
「あっつー、まだ終わんないの?てか話長すぎでしょ。」
「ちょっと黙れ、鳴」
聞き覚えのある、エースとその女房役の声。
向こうも向こうで大変だなあとか思いながら、俺は当たりに目を向ける。
市大三校の真中さんに、仙泉の真木。
今後当たるであろう敵たちをこの目で確かめる。
まあ、いい暇つぶしになる。
そんなことをしていると、気づけば開会式が終わっていた。
さあ、開幕…と言いたいところだが、俺たちはシードだから来週まで試合がない。
帰って練習だな。
練習自体は、仕上げの段階に入っているため強度自体はそんなに高くない。
まあ、最後の確認や対策練習が中心になる。
意外とやることは多い。
が、今更焦ってやることはない。
気づけば、俺たちの初戦も眼前に迫っていた。
対戦相手は、米門東高校。
ごく普通の都立高校だ。
どこか優れたところがあるわけではない。
しかし、勢いがある。
最後の夏にかける思い、そして一つでも多く試合を戦うために。
エースは、最速132キロの直球とそこそこ曲がるカーブで打者を翻弄する右腕。
正直言って、攻略できない相手ではない。
コントロールも特段いいわけでもない。
よくも悪くも、普通である。
打線もまあ、悪くはない。
クリーンナップはパンチ力があり、勢いもある分一発怖い。
そして、意外と試合運びが上手い。
監督の采配なのかもしれないが、ランナーを動かしたりバスターエンドランなど積極的に仕掛けてくる。
初戦もその策略がドンピシャにハマり、接戦をモノにしてみせた。
「こちらとの試合でも、何か仕掛けてくるでしょうし油断はできません。」
「ご苦労だ、渡辺。」
そうして、ノートを閉じる俺たちと同い年の渡辺。
クリス先輩から直接推薦された、俺たち青道高校の偵察班だ。
「相手の強さは、もはやこれまでの成績は関係ないと言える。それだけ、勢い付いているということだ。」
やはり監督はわかっている。
最後の夏にかける3年生の強さを、そして先に勝ち星を上げていることによる勢いの怖さを。
「しかし、だからと言って俺たちがやることは何ら変わりはない。目の前のプレーに全力で向かっていく。それこそが、相手にとって最もプレッシャーになるはずだ。」
地力で言えば、間違いなく俺たちの方が上。
しかし、奇策や攻めの姿勢、何より接戦をものにしたことによるチーム全体の勢いが凄まじい。
先に一勝を挙げている反面、こちらは初陣。
相手も確実に先手を打って流れを掴もうとするはずだ。
まずは、その勢いを真正面から捻じ伏せる。
そしてそのまま、相手が初戦で掴んできた勢いをそのまま根こそぎ奪い取る。
先に勝っているからこそ、その分勝った時にもらえるものも大きい。
だからこそ、それを真っ向から捻じ伏せることに意味があるのだ。
「初戦から、全力でいくぞ。いけるな、大野。」
「勿論。」
エースだから。
チームを代表する投手だから。
この大事な初戦。
エースとして、必ずチームに勝利を呼び込んでみせる。
おまけ 青道高校投手マニュアル(夏大開始直前)
背番号1 大野夏輝 右投左打
ストレート 132km/h 球威B
ツーシーム 130km/h 球威A
スライダー 変化量2 球威E
Dカーブ 変化量4 球威C
SFF 変化量2 球威D
コントロール A82
スタミナ B76
特殊能力
対ピンチA /ノビA /クイックF
奪三振 /低め○ /球持ち○ /闘志 /アウトロー球威 /軽い球 /負け運
背番号10 丹波光一郎 右投右打
ストレート 140km /h 球威D
Dカーブ 変化量5 球威B
フォーク 変化量4 球威D
コントロール C65
スタミナ D55
特殊能力
キレ○ /一発 /乱調
背番号11 川上憲史 右投右打
ストレート 132km /h 球威E
スライダー 変化量4 球威C
コントロール B71
スタミナ D53
特殊能力
対ピンチE /打たれ強さF
リリース○ /低め /緊急登板 /シュート回転 /寸前
背番号18 降谷暁 右投右打
ストレート 151km /h 球威A
フォーク 変化量3 球威C
コントロール E41
スタミナ D53
特殊能力
対ピンチC /怪童
怪物球威 /荒れ球 /奪三振 /ポーカーフェイス /四球 /スロースターター /乱調
背番号20 沢村栄純 左投左打
ストレート 134km /h 球威C
ムービングファストボール 130km /h 球威C
コントロール D58
スタミナ C68
特殊能力
対ピンチB /ケガしにくさA /ノビB
リリース○ /勝ち運 /闘志 /球持ち /内角攻め /調子安定
原作ともちょくちょく能力も変えてます(球速うpなど)
そして何より、沢村が強い。
あくまで高校野球内での査定ですので、悪しからず。