燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード247

 

 

 

兵庫県西宮市。

駅前に聳え立つ巨大な桶の中には、響き渡る大歓声。

 

今年最も暑い日が、やってきた。

 

 

 

全国高校野球選手権大会。

 

多くの観客が入ったこの阪神甲子園球場。

 

 

今年も多くの熱戦とドラマが生まれたこの大会は、既に7日目に達していた。

 

 

各地域を代表して出場した高校の半分がその夏を終え、大会も折り返し地点までやってきた。

 

 

 

 

『全国高校野球選手権大会2回戦目、3試合目も終盤戦に入りました。試合は7回の表。先程の回は四番の御幸の2ランホームランで点差を8まで広げたのは、春の覇者青道高校。』

 

 

 

試合は終盤に入る7回表。

 

初戦を2-3のサヨナラで勝ちきった花咲東に対して、序盤から圧倒をしたのは、青道高校。

 

 

初回から小湊のタイムリーヒットで先制すると、白州が加えてツーベースヒットを放っていきなり3点を先制する。

 

さらに4回にも前園の犠牲フライ。

5回には金丸のタイムリーツーベースと降谷のホームランでさらに3点を追加。

 

そして6回、四番の御幸のダメ押しとなる2ランホームランでその得点を9まで伸ばす。

 

 

 

投げては、今日先発の沢村が花咲打線を掌握。

 

高い制球力を生かした両サイドを広く使ったピッチングに、キレのあるストレートと鋭い変化球でテンポよく抑えていく。

 

4回に4番の大宮にソロホームランを浴びてしまうも、その後も決して気持ちを切らすことなく投げ続けた。

 

 

6回を終えた時点で、被安打4の1失点で奪った三振の数は8。

 

 

 

初戦では降谷が大事な試合で5回を無失点。

その後を東条が2回を1失点、川上が残りを無失点に抑えて7-1で完勝をしている。

 

 

「春もとんでもない強さだったけど、一回りデカくなって帰ってきたな!」

 

「やっぱり稲実との地区決勝やばかったもん。あれだけの接戦を制してんだから、そりゃあ強くなってて当然さ!」

 

「それにしても、エースなしでこれだもんな。打線もそうだけど、投手の層厚すぎだろ!」

 

 

 

観客が盛り上がる中、7回表の青道高校の守り。

 

場内で告げられたウグイス嬢の声。

それを皮切りに、多くの歓声が一際大きくなる。

 

 

 

青い帽子からはみ出た白銀の煌髪。

 

真夏の炎天下だが抜け目なく着込まれたアンダーシャツの色は、チームを象徴するブルー。

その背に背負われたのは、チームの代表投手を任された1の数字が刻まれていた。

 

 

輝く瞳の色は、チームカラーの青。

決して大きくないその体躯を跳ねさせ、「エース」はゆっくりと自身の玉座へと向かって歩き始めた。

 

 

 

『ここで青道高校、遂にエースを投入です。マウンドまでゆっくり歩く様は最早彼の代名詞となりました。西東京大会では決勝まで許した失点は0。さらにその決勝戦では2日に及ぶ死闘を一人で投げきり、チームを勝利に導いた炎のエース。』

 

 

拍手と歓声。

それを全て一身に受けようとゆっくりとマウンドへと向かう。

 

内野手集まるそこへたどり着いた彼は、朱色のグローブで沢村から白球を受け取った。

 

 

 

『高校生離れしたキレのあるストレートに、同速で変化する2つの代名詞的変化球。それを寸分違わぬコースに決めて打者を捩じ伏せる様は、正に歴戦の狩人。』

 

『青道高校の背番号1、エースの大野夏輝が遂にそのベールを脱ぎます!』

 

 

 

 

「点差が付いてもよく気持ちを切らさなかったな。いいピッチングだったぞ。」

 

「あざス、夏輝さん。あとはお願いします。」

 

 

ベンチへ引き上げていく沢村を労いながら、大野が白球を右手で転がす。

 

 

花咲東は6番から。

上位打線を沢村が抑えた形で迎えた7回の表。

 

 

 

マウンド上で、大野は目を瞑って深呼吸をいくつか。

 

自身の感覚と試合に没頭する為に。

深く深くまで集中状態まで潜り込む為の、彼のルーティン的なもの。

 

 

ゆっくりと目を開いた時。

彼の碧い瞳は、水晶のように煌めく。

 

その合図を見て、御幸も大野へ声をかけた。

 

 

「甲子園まで来た相手にゃ悪いが、調整でいいからな。7回は7.8割で、残りはちょっと力入れて感覚の確認していくぞ。」

 

 

ミットで口元を覆いながら出た御幸の言葉に、大野もグローブを口元に置いて頷いた。

 

 

 

ガサッ、ガサッとスパイクが土を削る音と共に、大歓声と拍手が僅かに耳元を劈く。

 

辺りを見回せば、春に見た甲子園という特別な球場の景色。

熱量も音圧も、やはりここだけのものだ。

 

 

 

空を見上げた大野。

その表情を見て、御幸は小さく笑って自身のミットを彼に向けて差し出した。

 

 

「泣いても笑っても最後の夏だ。一番長くて、一番濃くて、一番アツい夏にしようぜ。」

 

「あぁ。行こう、相棒。」

 

 

差し出された左手に、大野も応えるようにグローブを前に出してポンと当てる。

 

 

自身の定位置へと引き下がる御幸を見送りつつ、大野は再び空を見上げる。

 

空は晴天。

夏特有の入道雲が空を走り、真夏の風が吹き抜ける。

 

 

 

この声が、熱が、空気が。

全てが、ここでしか味わえない財産となるのだ。

 

 

 

(暑い…が、それが心地良い。やっぱり俺の居場所は、ここしかないんだな。)

 

 

 

見上げた青い空。

自然と笑みが、零れる。

 

 

ゆっくりと、打者へと視線を向ける。

 

その表情から笑みは消え、射抜くような鋭い眼光が碧く灯った。

 

 

 

(良いか。入れすぎんなよ。)

 

(分かっている。まずは、探る。)

 

 

相手の力量。

そして、自身の現在地を。

 

 

御幸が構えたコースは、外角の低め。

 

幾度となく要求され、幾度となく投げてきた大野の原点。

 

 

 

声を張り上げ、バットを掲げる打者。

それを見てか、御幸のサインを見てか、大野が頷いてから自身の両手を胸元の前で構えた。

 

 

 

左脚をスっと引き、身体を半回転。

 

足を上げつつ三塁方向に向いた全身をさらに引いていき、打者に背中が見えるほどのところでピタッと静止する。

 

並外れた下半身とバランス感覚。

その全ての力を、着々と集約させて行く。

 

 

左手で壁を作るように身体の開きを抑え、集約した力を逃がすことなくその捻転を解放していく。

 

 

縦回転。

自身の中にある全ての力と、大地からくる重力という大きな力を全て活かしながら、左脚を踏み出し。

 

捻転を解放したその腕を、存分に振るった。

 

 

豪快。

そして、彼の極限の集中状態から来る精密機械のような緻密な感覚が、その快速球を完璧なコースへと誘った。

 

 

 

パァンという、子気味良い御幸のミットの捕球音。

その音のすぐ後、主審の手は上がった。

 

 

「ストォォライィク!」

 

 

バックスクリーンに記された球速表示は、134km/h。

 

 

決して速いとは言えない。

近年の球速の向上から、世代を代表する投手は決まって140km/hオーバー、さらには150km/hの球速を超える投手もざらに出てきた。

 

そんな中でも、高校生として平均的な球速。

 

だがその常人離れしたキレとコントロールが、彼を日本一の投手と呼称させたのだ。

 

 

2球目。

続けて投げ込まれたのは、インコース高め。

 

先のボールとは対局に、打者から最も近いコースとなるこのストレートを、打者は空振る。

 

 

3球目。

最後となったの、136km/hのストレート。

 

再びとなる外角低めの快速球で、まずは一人目の打者を空振り三振でアウト1つをいとも簡単に奪って見せた。

 

 

 

(ストレートは、まあ大丈夫だな。)

 

(良いぜ、かなりキレてる。これなら全力出さなくてもそうそう当てらんねえよ。)

 

 

 

続けざま、7番に対してもストレート勝負。

 

1球ボール球を挟んだものの、4球全てストレートでピッチャーフライ。

 

 

さらに8番。

インコースのストレート2球で追い込むと、最後は外角低めに完璧に決まったチェンジアップ。

 

彼のキレある直球に目が慣れた打者は完全にタイミングを外され、見事にスイングを崩して空振りの三振。

 

 

世代最強投手、大野夏輝の甲子園開幕は、2つの三振を含む三者凡退で7回の表を終えた。

 

 

 

喜ぶでもなく、声を上げるでもなく。

ただ淡々と、それが仕事だと言わんばかりに、大野はマウンドを軽く足で整えてそこを後にする。

 

 

「ヒャッハー!完璧すぎてこっち仕事が来ねえじゃねえかコノヤロー!」

 

「ナイスピッチっす大野先輩!」

 

 

後ろを守っていた内野から声を掛けられ、大野は笑顔で答えて拳を握り締めた。

 

 

「良い感じだ。感覚も悪くねぇな?」

 

 

ベンチで待ち構えていたのは、共に歩んできたコーチである落合。

 

彼が怪我をし、全てを作り直したときに共に歩み闘ってきた男だ。

 

 

「えぇ。試合で投げたくてうずうずしてましたから。寧ろ抑えるのが辛いくらいです。」

 

「ま、よく我慢した。残り2回は全力出していいからな。その感覚も、このあとは確実に必要になるから確認がてらやっとけよ。」

 

 

なぁ、御幸といういきなりのパスに、彼も戸惑いながら頷く。

 

 

稲城実業との西東京大会決勝。

炎天下のなか投げ続けるには些か多すぎた球数の上、出力も上げすぎていた。

 

その後は大事をとり、調整以外ではできるだけ多くの休養を取ってきた。

 

 

高まる期待感と高揚を、押さえつけながら。

 

 

 

 

この大野の完璧なピッチングに味方打線もさらにヒートアップ。

連打で追加点を取り、その点差を10まで広げる。

 

 

8回の表。

予告通り出力を引き上げた大野のピッチングは、圧巻であった。

 

 

 

9番をストレートで3球勝負で空振り三振。

アウトロー3つ続けて、最後は139km/h。

 

 

1番に対しては、真っ直ぐに加えてツーシームを解放。

外に逃げるこのボールを振らせて、またも3球勝負。

 

 

2アウトから、バッターは2番。

このチームの中でもバットコントロールが良い器用な打者。

 

カット打ちから選球眼など、優れた出塁能力も持ち合わせている。

 

 

 

しかし。

 

 

(今のお前にゃあ、関係ねーだろ?)

 

 

 

御幸の言う通り、2人には関係の無いことだった。

 

 

初球、インハイのストレート。

ストライクゾーンからボール一個分だけ外したボール。

 

如何に選球眼がいいとは言え、高めで吹き上がる大野の特有のストレート。

 

風を切り、伸び上がるような軌道をするこのボールを、振った。

 

 

 

(速い。それに、なんつー軌道してんだ。)

 

 

打者である椋木も自身の想定と異なる異質な軌道に思わず困惑するも、それを表情に出さずに再び構え直す。

 

 

2球目は、外角の高め

一般的に言えば甘めのコースだが、これも前に飛ばずにファールとなる。

 

キレのある直球は、高めに投げれば吹き上がるように伸び上がり、低めに投げれば垂れずに決まる。

 

その前者の長所を活かし、どんどんと攻める。

 

 

(しかし、よく当てる。初球の空振りから認識を微調整したか。)

 

(相手も甲子園に出るだけはあるということだ。だが…)

 

(だからこそ、試し甲斐が有るというものだ。)

 

 

御幸が大野に対して、サインを出す。

 

今日初めて。

しかし、幾度となく要求してきた彼のウイニングボールの一つ。

 

 

(反応を見るわけじゃねえ。決めるボールで来い。)

 

 

それを見て頷いた大野が、再びトルネードのモーションに入った。

 

 

全身を捻転。

その勢いを存分に活かして、縦に振るう。

 

 

リリースされたボールは、快速。

 

先程までのストレートと、スピードは同等。

そしてコースは、高い。

 

 

2球目と同様のコース。

 

それを見て打者の椋木も仕留めに行く。

 

 

(エースらしく捩じ伏せに来たんだろ。そう簡単に力押しには負けね…)

 

 

タイミングは、僅かに振り遅れ。

 

レベルスイングでコンタクト力の優れた椋木であれは、当たる。

 

 

 

 

 

それが、先程と同じストレートだったらの、話だ。

 

 

 

『最後はカットボールで空振りの三振!巧打者の椋木に対しても3球勝負!恐るべき、大野夏輝!更にギアを入れた青道高校のエースが、今度は三者連続三振で8回の表を完璧に押さえつけました!』

 

 

ジャイロ回転から伸び上がるように真横に変化する、高速のカットボール。

 

本来であれば縦に落ちるはずの回転軸を僅かにフォーシーム側に敢えて軸をずらしつつ、彼の莫大な出力から放たれる固有の変化球の一つだ。

 

その軌道はストレートと同じ。

しかし打者に限りなく近いところで変化しながら、手元で伸びつつ真横に大きく変化する。

 

 

その証拠に、振ったはずの椋木も何を投げられたのか分からないと言った表情で、打席で困惑の表情を浮かべていた。

 

 

「嬉しそうだな。」

 

 

マウンドから降りてほくそ笑む大野に対して、御幸が駆け足で追いつき彼の背中を小突く。

 

 

本当に、いい表情をしてくれる。

 

内心でそう思っていたのは事実であり、御幸もまたそれを咎めるつもりはない。

 

 

何故なら、彼が圧倒的だから。

そしてそれだけ、彼が自分の投球に自信があったから。

 

 

昨年までは何処か自分を卑下していた大野が、こうして自信を持ってその力を存分に誇示している。

 

寧ろ御幸は、それが嬉しくて堪らなかった。

 

 

 

8回の裏は、再びエースがマウンドへ。

どれだけ点差が着いても諦めないそのチームの姿勢を見せるために、反撃の狼煙を上げるために。

 

その甲斐あってか、花咲東はこの試合初めて三者凡退で青道の攻撃を切り抜ける。

 

 

 

9回の表。

 

3番バッターに対しても、ストレートを軸にしながら変化球を交えていく。

 

今度はカーブとチェンジアップ。

速い真っ直ぐと目線をズラす縦のカーブ、更に時間差を生むチェンジアップで打者のスイングを崩していく。

 

 

先程のカットボールとツーシームが打者を気持ちよくスイングさせながらもその認識を欺くボールだとすれば、カーブとチェンジアップは打者がやりたいスイングをさせずに身体を欺くボール。

 

どちらも大野の卓越した制球力と常人離れしたキレのストレートがあるからこそ。

 

そしてその全てが、バッテリー主導で打線を掌握する、攻めの姿勢。

 

 

チェンジアップのファールでカウント2-2。

最後は真ん中高めのストレートで141km/h空振り三振で、連続三振を5まで伸ばす。

 

 

(さーて、ここだぞ。)

 

 

打席には、8回裏にマウンドへと戻ってきた四番ピッチャーの大宮。

 

投げては4回までを投げるも4失点。

しかし、打っては沢村からソロホームランを放つなど、このチームで唯一当たっている。

 

 

2年生ながら間違いなくチームの柱であり、最も優れたバッターでもある。

 

大きな身体に、しなやかな柔らかいバッティング。

それでも力強く、スタンドまで運ぶパワーは勿論持ち合わせている。

 

 

(こいつを捩じ伏せられなきゃ、日本一の投手とは言えんな。)

 

(分かってるなら良い。慎重に行くことはねえ、真正面から叩き潰すぞ。)

 

 

 

声を張上げる大宮。

 

それを見て、大野の表情に変化が生まれる。

 

 

深く被られた帽子の鍔から僅かに見え隠れする碧い瞳。

水晶のような透き通る煌めきから、光を反射した海のように輝き、吸い込まれるような奥深さを帯びてくる。

 

瞳孔は集中力と高揚から開き。

そしてその口角が、僅かに上がった。

 

 

大宮の背中に、熱が走る。

確実に、ヤバい。

 

その感覚は、投手としての本能か、打者としての危機察知か。

 

 

そしてそれは、確かな感覚であった。

 

 

 

「っん…!」

 

 

外角低め。

初球のストレートは、唸りを上げてストライクゾーンギリギリ一杯に決まる。

 

 

精密機械なんてとんでもない。

余りに化け物じみたストレートを、意図して完璧なコースに決めてくるのだ。

 

狩人という異名が、ここまで性に合っているとは思っていなかった。

 

 

球速表示は、139km/h。

しかし、自分が投げている150km/h近くのボールよりも明らかに速く感じる。

 

 

テンポよく頷く、大野。

それを見て、大宮もまた再び身構える。

 

 

次は、インコース高めのストレート。

 

今度は更にスピードが上がり、141km/h。

僅か2km/hの差しかないが、その分力も増している為に中々手が出ない。

 

 

 

2球で、追い込んだ。

 

ここはバッテリーも捩じ伏せに行くために、3球目で勝負。

 

 

外角のコースから外に逃げるツーシーム。

ストレートと同速で、こちらは伸びずに大きく沈む高速変化球。

 

しかしこれを、大宮は見送った。

 

 

 

(見送ったか。さすが、沢村からホームランを打っただけはある。)

 

 

 

沢村から打ったのは、外の甘めに入ったスプリーム。

 

やはり落ちるボールには、そこそこ強いのかもしれない。

 

 

センター方向に打っていたのを見るに、外をあまり苦にしないタイプだろう。

 

 

初戦でも、相手エースからホームランを放っている。

それは、アウトコースのストレートを逆方向に持って行ったスケールの大きな当たりだった。

 

 

速いボールにも強く、変化球への対応力も悪くない。

 

迂闊に攻めれば、却ってやられかねない。

 

 

例え一発喰らったとて、点差はある。

だからと言って、それを許すような生ぬるい感覚でマウンドには上がっていない。

 

だからこそバッテリーは。

 

 

(上回るさ。そうでなきゃ、あいつに笑われちまうからな。)

 

(それでこそだぜ、夏輝。)

 

 

何が日本一の投手だってな。

 

口角が上がり、開いた瞳孔。

そしてその碧い瞳が、さらに光を帯びる。

 

 

カウント1-2。

 

バッテリーが最後に選択したのは。

 

 

やはり彼らにとっての、原点投球であった。

 

 

 

 

 

「アウトロー一杯144km/h!大宮、全く手が出ません!これが世代ナンバー1ピッチャーだと、そう言わんばかりの圧巻の投球で2アウト!」

 

 

ぽとりと落ちる青い帽子。

そこからふわりと顔を出す、白銀の綺麗な髪。

 

悔しそうに天を仰いだ大宮に対して、大野はただ淡々と帽子を拾い上げた。

 

 

(まだ止まる訳にはいかんのでな。希望すら見せる訳にはいかんのだよ。)

 

 

 

最後のバッターとなったのは、三年生。

声を張上げ、何とか食らいつこうとするそのバッターすらも、大野は捩じ伏せてみせた。

 

 

2つ、ストレート。

インサイドを厳しく攻めるこのボールを空振りして、早くも追い込む。

 

 

最後は138km/hのカットボール。

 

外に逃げるこのボールを振らせ、まるで食らいつく隙すらも見せずに、この夏最初の試合を終わらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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