燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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メリークリスマス…




エピソード248

 

 

 

 

「ストラックアウト!ゲームセット!」

 

 

 

最後に空振り三振を奪い、ふうっと息を吐く。

 

まずは、1つ目。

チームとしては、2つ目の勝利。

 

 

試合としては正直、沢村が試合を作ってくれたからかなり楽に運ぶことも出来たからこそ俺はこうしていい環境で投げることが出来た。

 

勿論、彼を援護した味方打線もだが。

 

 

だが、まずはこの場所に戻ってこれた事が、何よりも嬉しい。

 

 

マウンド上。

大きな拍手と歓声が耳に入ると共に、俺は小さく右手を握り締めた。

 

 

 

「ったく、またそんな小さなガッツポーズして。」

 

 

微笑みながら近づいてきた御幸。

それを見て俺も小さく笑い、マウンド上でハイタッチを交わす。

 

 

「まだ、通過点だからな。」

 

「…だな。」

 

 

しかしまあ、ここは良い。

 

この暑さはここでしか味わえないし、空気もまた違う。

 

歓声も、拍手も。

日本中の野球好きたちが、こうして見てくれている。

 

 

 

チラリと、相手のベンチサイドへと目を向ける。

 

大きな声で涙を流し、膝を着いているのは2年生の大宮。

彼もまた、この敗戦がまた大きく成長させることになるだろう。

 

 

勝って、勝って。

多くの戦友がいる中で、俺は立っている。

 

だからこそ、負かしてきた彼らにも恥ずかしい姿は見せられない。

 

 

そして今日もまた、一つのチームの夏が終わったのだ。

 

彼らの分もまた、持っていかねばなるまい。

 

 

 

「止まれないからな、俺たちは。」

 

「あぁ、そうだな。」

 

 

 

きっとあいつも、見ているだろう。

だからこそ、それもまた負けられない理由の一つにもなっている。

 

勝ったチームは、勝ち続けるしかない。

 

そしてその先に。

俺もまた、日本一になる必要があるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて。

日を改めて、次の日。

 

昨日の試合は3回しか投げていないし、これまでかなりの休養を貰っていたからこそ殆ど疲れはない。

 

念の為肘のケアは行い、サポーターだけは付けているが。

 

 

 

次の試合は、3日後。

 

そこでの先発も、俺が行く予定だ。

 

 

対戦相手は、俺たちの試合後に決まっている。

 

その対戦相手こそ、選抜の時に相対した白龍高校である。

 

 

みんなも知っているように、白龍といえば機動力野球。

データに基づいた緻密な走塁意識と、高い守備力を誇る全国上位の常連校だ。

 

選抜の時には降谷が先発したが、その時は彼なりに苦い思い出もあるだろう。

 

 

もちろん足のイメージが先行するが、打撃もまた良い。

 

特に3番の美馬と4番の北大路は要注意だな。

 

 

 

攻撃面でもしぶとい打者が多く、美馬以外もフォアボールで出塁してからチャンスを広げてから本塁まで確実に帰るという得点パターンが特に多い。

 

1イニングでビッグイニングというよりかは、コンスタントに点を取って点差を広げていく。

 

 

 

まあ、俺は正直相性が悪い。

俺のトルネードは、クイックだとしてもかなり遅い。

 

牽制に関しては相当やらされたこともあり悪くは無いのだが、それでも結構走られる。

 

 

 

しかし、どれだけ走られようがホームさえ踏ませなければ良い。

 

変な話、満塁になろうがどれだけヒットを打たれようが、最終的に失点が0なら負けることはないのだ。

 

 

そもそもウチのチームが、1点で終わるはずがない。

 

 

この試合は俺が6-7回、残りをノリと東条。

次の準々決勝で降谷と沢村、状況によってノリ。

 

そして準決勝は俺たち3人で回す予定。

 

 

一番の難敵になるであろう本郷がエースとして君臨する巨摩大藤巻と当たるのは、決勝。

 

そこは俺が完投する予定だ。

 

 

 

 

ちなみにベンチメンバーだが、奥村と瀬戸の2人が外れた形だ。

 

ウチのチームは元々スタメンがほぼ固定されている上、キャッチャーはほとんど出る機会がない。

 

控え捕手としては小野もいるし、そもそも御幸が代わることが、ほぼない。

 

 

由井は代打の切り札として残したものの、出場機会や起用機会の少ない代走の瀬戸もここはベンチメンバーから外れる形となった。

 

 

 

にしても。

 

 

「新聞、結構取り上げてくれているもんだな。」

 

 

マネージャーが用意してくれていた新聞を開き、デカデカと載せられた写真に視線を落とす。

 

 

『青道エースの大野、圧巻の投球!』

 

 

そこには大きな見出しと共に、俺が大宮から三振を奪っていたところだろうか。

 

こうして見出しにされると、何処か恥ずかしい気分にもなってくる。

 

 

他の新聞は俺のものもあれば、御幸のフォロースルーの写真。

まあ一也のホームランというのもまた、絵にはなるからな。

 

イケメンキャッチャーで四番。

これほど記事にしやすいものはないだろう。

 

 

「全く、羨ましい限りだ。お前ほど男前だと、新聞でもかなり映えるだろう。」

 

 

同じ丸卓を囲んでいた一也に、そう言う。

 

すると今度はノリが新聞を開いて返してきた。

 

 

「よく言うよ。自分だってイケメンなくせに。」

 

「そんなことはない。」

 

「あるって。綺麗な銀髪に水晶みたいな瞳で、お人形さんみたいでカッコイイって学校でもよく言われてたよ。」

 

 

うーん。

 

俺としては、何だかなぁという感じ。

 

 

というのも、俺のエースの理想像と俺の容姿と言うのはかけ離れている。

 

 

やはりエースはデカくて、男前。

 

綺麗な顔よりも、厳つくて近づき難いくらいの方が、個人的にはカッコイイと思う。

 

対して俺は、野球選手としてはあまり大きい方ではない。

下半身はピッチャーだから細くは無いが、上半身は極端に大きくない為やはり威圧感というところではあまり。

 

 

「7回から結構女子の歓声も多かったよな。」

 

「まあ、本人は気づいてないみたいだけど。」

 

 

そんなものか。

 

俺としては、マウンドに上がったときは声色というよりかはその量と音圧で背中を押される。

 

 

極論、盛り上がってさえくれればそれだけでエンジンの回転数が上がるようなもの。

だからその声が男だろうが女だろうが、気にはしていなかった。

 

 

しかしなぁ…

 

 

「俺よりも沢村だろう。試合を作ったのはあいつだし。」

 

 

沢村の戦績は、6回を投げて1失点。

甲子園のマウンドで、それも初回から完璧な投球で組み立て。

 

沢村らしい投球で試合を作り、俺はかなり楽な場面で、それも殆ど調整のような形でやらせてもらったのだ。

 

 

俺がそう言うと、遠くの卓で沢村が嘆いていた。

 

 

「何言ってんすか!夏輝さん、完全に俺の事食いにきてましたよね!?」

 

「行ってない。猫目になってんぞ。」

 

「なってねえっす!」

 

「なってるって。」

 

 

 

ちなみに俺の戦績は、3回を投げて被安打は0。

もちろん四死球は0で、奪った三振は打者9人に対して8つ。

 

7回の調整段階で打たれたピッチャーフライ以外は、全て三振である。

 

 

流石に三年生だしね。

少なくとも俺が去年甲子園に出ていたとして、あいつほどの投球が出来ていたとは思えない。

 

 

降谷もそうだ。

 

5回を投げて、課題だったフォアボールはたったの一つ。

ボールは若干荒れていたとしても、ストライクゾーンにかなり集まっていた。

 

被安打は3つで、奪三振は10。

 

特に初戦では、抜け球であるカーブとフォークが低めにしっかりと決まり、高めのストレートでしっかりと空振りがとれていた。

 

 

2人とも、入った時にはただの原石。

 

共に実戦経験が少なく、ピッチングはまだしも、野球という競技そのもののいろはが分かっていなかった。

 

降谷は完全にノーコン。

沢村はそもそもの、癖球。

 

 

降谷はコントロールと、元々持ち合わせていた怪物級のストレートを活かす変化球を習得。

 

沢村は意図してボールを操る技術と抜群のコントロール、そしてここぞの場面での極大な集中力。

 

 

お互いに元々あった長所を更に伸ばし、それを活かすために大きな成長を遂げた。

 

彼らもまた去年の俺とは違い、彼らだけのらしいピッチングスタイルを既に確立させているのだ。

 

 

今は、もう信用して任せられる2人だ。

 

 

ノリと東条ももちろん、後ろを任せるには十分。

 

流石に2人には及ばないかもしれないが、それでも甲子園でも通用する。

 

 

 

 

打線は好調。

 

上位打線は毎試合ヒットを放っており、特に御幸と白州が大暴れ。

 

 

1試合目は白州が1本、御幸が2本のホームラン。

2試合目でも御幸と降谷がホームランを放っている。

 

加えて白州は共にマルチ安打。

特に2試合目では猛打賞に加え、その内2本がツーベースヒットと長打率の高さも伺える。

 

 

更に倉持が合わせて3個の盗塁。

また小湊も2試合ともにマルチ安打を放っている。

 

金丸とゾノはそこまでヒット数は多くないものの、打点をしっかり取りきっている。

 

 

ちなみに俺は1試合目では猛打賞である。

 

んーまあ、全部単打なんだけど。

 

 

 

打順としては、西東京大会時同様ほぼ固定。

 

俺が試合に出ている時は俺が2番に入り、白州が5番。

もう一つのパターンは、白州が2番に入って全体を繰り上げる、稲実戦の時と近い打順構成となっている。

 

 

どちらが良いというのはない。

 

連打が見込めない時は、後者。

白州と小湊が何とか出塁して御幸を歩かせない手法。

 

乱打戦を想定、あとは単純に俺が出ている時は基本的に前者になることが多い。

 

 

恐らく白龍との試合では、俺が2番に入ることになるだろう。

 

 

 

「白龍か。俺は実際投げてはいないんだが、どうなんだ。」

 

 

春の準決勝で対戦した相手だが、その時は俺も本郷と投げ合った後だった上に決勝が控えていたから投げなかったのだ。

 

あの試合では奇襲の意味も込めてだろうが、美馬は1番に入っていた。

 

 

「走られて嫌でした。」

 

 

ツーンとしている降谷を見て、俺は彼らしいなと苦笑いする。

 

まあ、そうだわな。

降谷もクイックは遅くはないし、牽制はあまり上手くないがそこまで走られまくった経験は無かった。

 

 

取られたくなかった先制点を2点も取られたのだ。

その後はしっかり抑えていたが、彼としてはその先制点がよっぽど印象に残っているんだろうな。

 

 

 

特に美馬。

春の時も凄かったのだが、夏は更に凄みを増していた。

 

出塁率が上がっている上に、走塁の技術もそう。

 

何より、長打による得点力がかなり上がっている。

 

 

ホームランは、まだ出ていない。

しかしそれも、敢えてチャンスを拡大する為に打ってないように見える。

 

守備も2試合共に素晴らしいファインプレーを見せている。

 

 

やはり、攻守に於いてこの男が柱。

春の対戦時とは、一回り大きくなっていると見て間違いないだろう。

 

 

まず俺は、この美馬を抑えること。

 

そして他の選手もできるだけ抑える。

塁に出したとしても撹乱されず、打者と向き合って投げる必要がある。

 

 

ランナーを出しても、ホームさえ踏ませなければ良い。

 

それくらい割り切ってこそ、流れに乗っていけるというものだ。

 

 

 

 

 

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