燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード27

 

 

 

初回以降、全く得点が動かない両チーム。

 

試合は、2−0のまま早くも後半戦へともつれ込んでいた。

 

 

持ち前の制球と投球術で打者を手球にとり、ここまで無失点の楊。

対する丹波さんも初回の失点以降、追加点を許さないピッチングを見せている。

 

「丹波さん、立て直したな。」

 

打席を終えてベンチに戻る一也に、声をかける。

 

打撃の結果は、言うまでもない。

一つヒントを与えるのであれば、彼の打席時にランナーはいなかった。

 

「元々簡単に打たれるような人じゃないからな。初回は楊にやられたけど、普通に投げてりゃまず点は取られないよ。」

 

「だな。」

 

そんなことは、わかっている。

後は、打線が点を取るしかない。

もちろん、俺も含めてね。

 

「7番、レフト、大野くん。」

 

ウグイス嬢のコールと共に、打席に入る。

ツーアウトだけど、何とかつないでチャンスを広げたい。

 

マウンドには、変わらず楊。

スタミナ切れも見込めないし、打ち崩さない限り俺たちに勝機はない。

 

何とかして、点を取りたい。

そのためには、まず俺から。

 

下位打線だけど、何とかチャンスを作っていきたい。

 

「打てよ大野!」

 

「まずは出塁してけよー!」

 

スタンドからの声援。

まあ、なんとかしてみよう。

 

ここまでの成績は、2-1。

ショートゴロと、レフト前ヒットだ。

 

コントロールがいいピッチャーは、割と嫌いじゃない。

寧ろミートポイントが広い金属バットなら、多少芯を外しても飛ぶからボール球でも振っていける。

 

 

初球、インコース高め。

まずはこのボールを見逃し、1ストライク。

 

(これもビタビタ。)

 

2球目、アウトロー一杯のストレート。

これも見送り、2ストライクとなる。

 

インハイと、アウトロー。

対極のコースに、的確に投げ分けてきている。

 

 

(わかってても、目が慣れない。)

 

一息つき、再びバットを構え直す。

あとは、よっぽどのボール球以外は振りに行かなきゃ。

 

 

3球目、ここでタイミングを外すカーブ。

外のボールゾーンから外角のストライクゾーンに入ってくる、所謂バックドアと呼ばれるコース。

 

これに食らいつき、ファール。

 

(っぶな。)

 

0ボール、2ストライク。

依然、ピッチングカウントには変わりない。

 

4球目、外角のストレート。

低め、少し外れているボール。

 

1ボール、2ストライクから投じられた5球目。

また、フワりと浮かぶ軌道。

 

カーブ、またも外角に投げ込まれる。

 

我慢。

ここで…振る!

 

ジャストミート。

しかしその打球が内野の間を抜けることは、無かった。

 

 

『パァン!』

 

破裂音にも似た、革から鳴り響く快音。

楊の左手から、そんな音が鳴り響いた。

 

 

「チッ。」

 

ピッチャーライナーか。

引きつけていたつもりが、少しタイミングがずれちまってたか。

 

頭ではわかっていても、やはり身体が反応してしまう。

これが、緩急の嫌なところだ。

 

マウンド上の楊と、目が合う。

こいつ…。

 

 

また、同じパターンだ。

俺も、俺以外の打者も。

 

楊の投球に、完璧に抑え込まれている。

 

悔しさで歯を食いしばりながら、ベンチに戻る。

流石にそろそろ流れを変えないと、まずい

 

 

(丹波さんも、そろそろキツそうだしな。)

 

まだ5回。

普段ならまだ体力にも余裕があるはずのイニングだが、今日は少し様子が違う。

 

初回から三振こそ多く奪っているものの、その分球数を投げさせられている。

追い込まれるまで手を出さないから、実質的に粘られているような状態になるのだ。

 

それに、この気温。

今日は例年よりも気温が高く、30℃を悠に越していた。

 

何より、この球場。

人口密度が高く熱の逃げ場もないから、マウンド上は特に暑い。

 

 

5回の裏。

マウンド上には、変わらず丹波さん。

 

しかし疲れが出てきたからか、この回は抜け球がかなり多くなっていた。

 

先頭打者の7番こそ三振に打ち取ったものの、続く8番にフォアボールを与えてしまう。

 

1アウトランナー一塁。

ここで明川最後のバッターは手堅くバントを決める。

 

そして、2アウトランナー二塁の場面。

打席に立つのは、明川のリードオフマン。

 

このチームの中でもバッティングセンスがある好打者だ。

 

初球、カーブ。

これが低め一杯に決まって1ストライク。

 

2球目、同じボールを投げ込むも、これが低めに外れて1−1

 

やはり、カーブは見極められている

特に低めのボール球に関しては、全くと言っていいほど手を出してこない。

 

3球目、ストレート。

このボールが低めいっぱいに決まって1−2。

バッテリーが追い込む形となる。

 

(押せば行けるぞ。)

 

一也もわかっているだろう。

相手はカーブを捨てて、ストレートを狙っている。

 

普段ならカーブをゾーンに集めて終わりなのだが、今日はそのカーブがことごとくゾーンに入らない。

 

ならば、開き直って勝負するしかない。

それこそ、カーブで三振を取れないのなら、ストレートで勝負をしていくべきだ。

 

 

きっと、一也としてもそうしたいのだろう。

元々強気で攻めていくリードが得意なだけに、彼としてもガンガン攻めていきたいと思っているはずだ。

 

 

 

バッテリーのサイン交換。

クイックモーションから投じられた一投。

 

投げられたボールは、ストレート。

しかし。

 

(高い…!)

 

快音と共に弾き返されるストレート。

打球は、センター後方に飛んでいく。

 

 

後方に向けて走る純さん。

そのカバーに、俺も急いで走る。

 

間に合うか?

 

「純さん、カバーは入ります!」

 

「おう、後ろは頼んだぜえ!」

 

叫びながら、飛び込む。

際どいが…どうだ。

 

 

ダイビングキャッチの末、結果は。

 

「アウト!」

 

ガッチリと掴み取られた打球。

何とか、ピンチを脱したか。

 

「ナイスです純さん!」

 

倒れ込んだ純さんに、1番近くにいた俺が右手を差し出す。

本当に、窮地を救うワンプレーだな。

 

 

しかし、さっきのボールも完全に浮いていた。

ボール球も増えてきてるし、流石に疲れてきているな。

 

純さんのファインプレーで何とか無失点に抑えたものの、失点してもおかしくない場面だった。

替えるには、いいタイミングかもしれない。

 

 

汗を拭いながらベンチに戻る丹波さん。

やはり、疲れが目に見えている。

 

すると、監督が丹波さんに声をかけた。

 

「ここまで粘り強く、良く投げてくれた。ここからは後ろの投手に任せてくれ。」

 

やはり交代か。

正直、次の回も投げるのは厳しいだろう。

彼から流れ出る汗の量で、簡単に理解することができた。

 

丹波さんも自分自身でわかっていたのだろう。

これ以上は、体力的に厳しいと言うことを。

 

彼は悔しそうに目を瞑りながらも、ゆっくりと頷いた。

 

「わか、りました。」

 

 

回にして、5回2失点。

決して悪くない成績だけに、不完全燃焼を否めない。

 

しかし、問題は後ろを投げる投手だ。

 

ノリのロングリリーフでもいいと思うがな。

沢村が抑えだけに、残りの3回を彼1人で投げ切ると言うのも酷な話だ。

 

 

となると。

 

「大野、次の回から行けるな?」

 

「行けと言われていくのがエースです。」

 

求められるのは、いい投球じゃない。

全てを捻じ伏せる、圧倒的な投球と。

 

「少し投げたい。いいか、一也?」

 

「おう、ブルペン行くぞ。」

 

 

勝利を呼び込む、エースとしての投球だけだ。

 

 

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