燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード35

やあ、大野だよ。

 

薬師高校との試合を5-0で勝利した俺たち青道ナイン。

次の試合は、明日に迫った準決勝に向けて調整をしている。

 

それにしても、序盤に先制してくれて本当によかった。

アレのおかげでだいぶリラックスして投げられた。

 

 

俺だけじゃなく、リリーフ2人は特にそう思っただろうな。

だからこそ、俺の後を継いでもパーフェクトピッチを継続できたのだろう。

 

 

 

にしても…

 

「よく走るね、君。」

 

「これが取り柄ですから。」

 

俺の横をなぜかずっと走り続ける、沢村。

結構な時間走ってると思うんだけど、しかもこいつタイヤ引いてるし。

 

 

「今日はブルペン入るんだろ?」

 

「ええ。明日も投げるつもりですから!」

 

うん、一也もそう言ってた。

球数自体も少なかったし、何より丹波さんの時は継投が前提になるからな。

 

 

丹波さんは大体6回までが目処、それ以降になると極端に制球が落ちる。

 

スタミナが無いわけじゃないのだが、7回になるといつも乱れ始める。

フォークを決め球にしてるから、肘にも疲労が溜まるからなのだろうか。

 

とにかく、安心して見ていられるのは基本6回まで。

それ以降は、継投できれば一番安心出来る。

 

 

特に、今のリリーフ陣を見ればわかるだろう。

 

先発もした降谷を含めて、ここまで防御率0.00の鉄壁のリリーフ陣。

6回まで丹波さんが投げて、以降は3人のリリーフで1回ずつ抑えていくというのが、理想。

 

というか、こいつらなら多分できる。

 

 

 

明日の試合、つまり準決勝の対戦相手は、仙泉高校。

 

長身の2年生エース、真木洋介を擁する強豪校だ。

固い守備力と堅実な攻めで、少ない点差を守り勝つ野球を得意とするベスト8の強豪校でもある。

 

エースである真木は、最速145km/hの本格派右腕。

195cmにも登る高い上背を生かした角度のある真っ直ぐと、高いリリースポイントから放るカーブが決め球。

 

特にそのカーブは、「日本一高いカーブ」と言われており、空振りを奪うにはもってこいのボールである。

 

 

コントロールは、まずまず。

悪くもないが、特段良くもない。

 

少なくとも、降谷と丹波さんよりはいい。

けど、俺やノリほどじゃない。

 

ピンポイントを攻める能力はないが、大崩れしない。

 

 

スタミナも、ちゃんと9回を投げきるだけはある。

恐らく俺たちとの試合でも完投するだろう。

 

 

気をつけなければいけないのは、高い打点から放られるということ。

つまりはどの球種(といってもストレートとカーブだけだが)も角度の着いたボールになる。

 

カーブはリリースから着地地点までの落差が大きくなり、ストレートは角度がつく分軌道が読みにくい。

 

見慣れない分、やはり苦労するだろうな。

 

 

 

と、いうことで。

そんな俺たちの気持ちを汲み取ってか、3年生の先輩方が対真木用にマウンドを調整してくれた。

 

と言っても、マウンドの土を増やして盛り上げただけだけど。

それでも、何もしないよりは数段マシ…というか、目が慣れる分だいぶ効果的だろう。

 

 

が、しかし問題がある。

 

「で、誰が投げるんでしょう。」

 

「さあな。」

 

少し盛り上がったマウンドを見つめながら、そう言う。

 

一番近いのは、丹波さん。

だけど明日登板だし、疲れを残すのも嫌だから投げないだろう。

 

あとは、降谷か。

ただカーブ投げれないし、投手としてのタイプもまた違う。

 

 

沢村とノリは論外。

そもそもの軌道が全く違うし。

 

となると…

 

「俺か。」

 

「ねえな。」

 

一也から、間髪入れずに鋭いツッコミ。

あ、さいですか。

 

 

まあそもそも身長が違うし、球速も遅いし。

 

「お前が投げちゃ、練習にならない。」

 

一也にそう言われ、俺は小さくなる。

まあ確かに、軌道をイメージする練習だもんな。

 

 

んじゃ、俺も今日はバッティングだな。

昨日投げたから今日はノースローだし。

 

折角野手として出るのだから、やはり出来ることはしなくては。

 

 

「やっぱ、丹波さんが投げんのかな。」

 

「一番タイプは近いよな。」

 

そんなことを話しながら、マウンドへ上がる1人の男に目を向ける。

 

褐色肌に、煌めくサングラス。

そして、屈強な身体付きと大きな上背。

 

えーっと…

 

「どうした。早く打席に立て。」

 

何故か、監督がマウンドに上がっている。

おいおいもしかしてだけど、監督が投げるのか?

 

 

確かに監督は甲子園準優勝投手だし、持ち球はカーブとスライダー。

高い打点から放る本格派投手という、まあ真木に近い投球スタイルではある。

 

こんなにいい練習相手はいない。

 

 

「本気で打ちにいっていいんですね?」

 

そう言って、哲さんが打席に向かう。

バッチバチじゃねえか。

 

「打てるもんならな。」

 

監督もやる気満々だ。

 

こうなったら、全力で練習させてもらおう。

折角監督が、甲子園準優勝投手の片岡鉄心が投げてくれるのだから、この上ない経験にもなる。

 

 

そう思い、俺もバットを掲げて素振りを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 


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