燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード36

 

 

 

7月29日

全国高等学校野球選手権大会、西東京地区予選。

 

甲子園の切符をかけて始まったこの大会もいよいよ大詰めとなり、残る試合もあと2試合となった。

 

 

準決勝。

俺たちの対戦相手は、仙泉高校。

 

毎年ベスト8に入ってくる、所謂強豪校である。

 

 

少ないチャンスを活かして得点を重ねていく、すごく堅実な攻めをするチームだ。

 

 

得点力自体は、はっきり言って俺たちの方が高い。

だけど少ないチャンスを活かせると言うことは、その分安定感があることに直結する。

 

 

何より、守りが堅い。

エースである真木の能力もそうだが、とにかく内野の守備範囲が広い。

 

 

その為、とにかく強い打球を放っていく。

内野の頭を越えるか、抜けていく打球を。

 

 

 

こちらの先発は、予定通り丹波さん。

理想は、6回まで完璧なピッチングをすること。

それ以降は、正直リリーフが安定してる分心配はいらない。

 

と言うことで、俺は7番レフトでの出場。

なんだかんだで打率.411と打率もキープしているため、そこを買われてスタメン起用となった。

 

 

先攻は、俺たち青道高校。

と言うことで、我らがリードオフマン、倉持が打席に。

 

 

 

内野の能力的に、セーフティはなし。

ヒッティングか、もしくは立ち上がりのフォアボールか。

 

そんなことを考えながらベンチで見ていると。

 

「ストライク!バッターアウト!」

 

いきなり三振である。

 

 

いつもより、ストレートの威力が高い。

球速表示で言えばいつもと変わりないが、力がある。

 

そして直球が強いから、対を成すカーブに手が出てしまう。

 

 

そんなこともあってか、うちの打線が珍しく三者凡退と抑えられてしまう。

 

 

 

(パワプロでいう絶好調だな、こりゃ。)

 

一筋縄ではいかないだろうな。

んでもって、丹波さんの状態で試合の流れは一気に変わるというのもわかった。

 

 

 

しかし、対する丹波さんも初回から好投を披露。

先頭打者に対してカーブで三振を奪うと、続く2番にはストレートでレフトフライ。

 

3番打者にヒットを許したものの、4番の真木をセカンドゴロに抑えて初回を無失点で切り抜けた。

 

 

(こりゃ、当分得点は動かないな。)

 

丹波さんもそうだが、何より真木の状態がいい。

ストレートも走っているし、カーブも絶妙だ。

 

流石のうちの打線も、苦労するだろうな。

 

 

 

俺の予想は見事に的中し、序盤は両チームなかなかヒットが出ない膠着状態が続く。

 

4回までで出塁できたのは、哲さんの単打、あとは増子さんと亮さんのフォアボールだけ。

他のバッターは、完全に抑え込まれている。

 

対する丹波さんも、ランナーを出しながらも無失点のピッチングを継続。

ストレートとカーブでカウントを取りつつ、フォークで三振を少しずつ奪って調子も上向いてきた。

 

 

さて、と。

 

(丹波さんも、そろそろ欲しいよなあ。)

 

先制点、あればどれだけ楽に投げられるか。

普段接戦でよく投げてるから、わかる。

 

 

5回の表、青道高校の攻撃。

まずは、先頭打者の俺が打席へ向かう。

 

改めて見るとわかる。

 

とにかく、でかい。

圧力とか云々以前に、単純にデカい。

 

マウンドに上がると、際立つ。

だけど、そんなこと言ってられないよね。

 

まずは、とにかく出塁。

んでもって、チャンスを広げていきたい。

 

 

(大体の軌道はわかった。ストレートに狙いを絞って。カーブは無視。)

 

軽くバットを揺すりながら、タイミングをとる。

 

初球、まずは真っ直ぐを見逃す。

136km/hのボールが、アウトコースに決まった。

 

 

確かに威力もあるし、速い。

だけど、やっぱりコントロールは微妙だな。

 

次、甘く入ったら狙う。

 

 

2球目、低めに落ちるカーブ。

降りに行くものの、なんとか堪えて見逃す。

 

やっぱり、カーブはうまく弾き返すビジョンが見えない。

 

 

3球目、まっていた甘いストレート。

これを思い切り引っ張ってライトの前に落とす。

 

 

 

なんとか、ヒットで出塁。

ノーアウトのランナーとして、まずは出塁した。

 

続く白洲もフォアボールで出塁し、ノーアウトランナー一、二塁とようやく得点のチャンスが生まれる。

 

 

ここでラストバッターの丹波さんもバントをきちんと決め、1アウトランナー二、三塁と得点圏にランナーを置いた。

 

なんとか、このチャンスに得点しておきたい。

しかし、ここは真木も勝負所と判断。

 

倉持に対してギアを上げて、ストレートをガンガン放っていく。

そして、最後は今日最速である142km/hのストレートでファーストゴロに討ち取った。

 

 

しかしながら、その間に俺はホームに生還。

貴重な先制点を取ることに成功した。

 

 

このあと、亮さんもいい当たりを放ったものの、ショートのファインプレーに阻まれてこの回は1点止まりとなってしまう。

 

 

 

うーん、厳しい。

なんとなく丹波さんもそろそろ失点してもおかしくないし、もう少し点とっておきたかったな。

 

相手は上位打線から。

丹波さんも疲労が出始め、球も浮き始めてくる。

 

 

さて、お察しの方もいるだろう。

そう、得点をとった回の裏というのは点が取られやすいというのは、よく聞く話だ。

 

 

先頭の1番バッターが出塁すると、2番がバントでチャンスを広げる。

3番が繋ぎのバッティングでさらにチャンスを広げ、4番の真木に打席を回す。

 

 

1アウト、ランナー一、三塁。

打席には、4番。

 

こういう時の投手って、よく打つんだよな。

特に、失点したあとは。

 

 

高めに構えられたバット。

やはり、威圧感がすごい。

 

打ちそうな雰囲気が、正直ある。

 

 

初球、ストレート。

少し甘かったものの、勢いで押し切り空振り。

 

2球目、カーブが低めに外れて1−1。

 

 

3球目。

ストレートが高めに抜け、所謂絶好球となってしまう。

 

それを真木が見逃すはずもなく、思い切り叩かれた。

 

 

 

「あ。」

 

思わず漏れてしまう。

鋭い当たりは右中間を抜けて長打コース。

 

一塁ランナーもホームへと生還。

2人のランナーが一気のホームベースを踏みしめた。

 

 

 

「うっせやろ。」

 

ここまでの膠着はなんだったんだと、言いたくなるような鮮やかな得点劇。

ということで、まさかの一瞬で逆転を許されるという、まさに青道らしい一面を久しぶりに見た気がした。

 

 

まだ試合は中盤。

まだ、試合は続く。

 

 




見どころさんないです、サクサクいきます。

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