燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

39 / 283
エピソード38

試合は、終盤。

俺たち青道高校は、6回の猛攻でついに逆転に成功。

 

亮さんの逆転タイムリーに、増子さんのダメ押しホームランと、打者一巡の連続ヒットで8−2と一気に突き放してみせた。

 

 

ということで、投手陣はリリーフへシフトチェンジ。

勝利の方程式に繋ぐ。

 

 

「いくぞ、ノリ。」

 

「ああ。」

 

一也が、次に投げる投手に声をかける。

少し、表情が硬い。

 

そんな姿を少し気にしていると、横から…というか、遠いブルペンから声が届いた。

 

「ノリセンパーイ!後ろには俺たちもいますから、遠慮せずやらかしてくださいねー!」

 

沢村少年である。

否、馬鹿である。

 

「あいつ、心配してんのかそうじゃないのやら。」

 

確かに。

でも、彼なりに緊張をほぐしてくれているんだろうな。

 

「俺も後ろにいるからな。安心してやらかしていいぞ。」

 

「いらないから!」

 

俺と沢村の激励(?)を受け、ノリも元気にマウンドへ。

気負いも、緊張もない。

 

ただ任されたマウンドを、守るために。

 

 

 

 

 

まずは1人目。

ストレート2球、低めでカウントを稼ぐと、最後はボールゾーンに逃げるスライダー。

 

サイドスロー特有の、真横に滑るように曲がる変化球で三球三振に斬って取った。

 

(おわ、絶好調。)

 

思わず、心の中で呟く。

 

なにせ、角度、コントロール共に完璧と言わざるを得ないボールを3球続けて見せたのだ。

きっと一也も、マスクの奥で笑っている。

 

 

続く2人目。

初球のストレートがインコースいっぱいに決まり、1ストライク。

 

2球目も同じコース。

鋭く切れ込んでくる、所謂クロスファイアと呼ばれる投球で詰まらせる。

 

この打者も2球目で手を出し、セカンドゴロ。

たった5球で、2アウトまで漕ぎ着けた。

 

流石に、テンポがいい。

俺とはまた違う、ノリとしての良さ。

 

サイドスロー独特の角度とキレのあるスライダーで打者に打たせてとる、テンポのいい投球。

リズムがいいし、守備も連携するから、チーム全体で守っているから流れに乗りやすい。

 

 

なお、調子がいい時に限る。

 

 

 

 

最後のバッターである9番をライトフライに抑え、7回の攻撃を終える。

まずはバトンを一つつなげる。

 

続くノリから、降谷へ。

変則サイドスローから、本格派剛腕右腕へ。

 

ここまでは先発が中心だったが、やはり起用法はワンポイントで力を出し切るというのが理想的。

スタミナを気にせずガンガン球威で押していくのが、良い。

 

 

打者は、1番から始まる高打順。

しかし、そんなことお構いなしと言わんばかりに、降谷は表情を全く変えない。

 

誰が相手だろうと、自分は自分が思う最高のボールを、投げるだけだと。

 

 

ワインドアップから、全身を縦回転。

純粋なオーバースローから放たれるのは、唸る豪速球。

 

まるで生命を宿しているのではないかと思えるほど勢いのある真っ直ぐが、一也のミットに叩きつけられた。

 

「ストライク!」

 

まずは、真ん中低めにストライク。

珍しく、力が入っていない。

 

点差がついているから、リラックスできているのか?

うまく力が抜けていて、いい意味で力感がない。

本当に、今の降谷の中では最高クラスにいい投球である。

 

続く真っ直ぐ。

これも真ん中低めに決まり、2ストライクと追い込む。

 

 

決め球はどうする。

おそらく今の降谷なら、遊び玉はいらない。

 

そのまま球威で。

 

(押していけ。)

 

 

最後は高めのストレート。

威力のあるストレートに打者も思わず反応してしまい、手を出してしまう。

 

「空振り三振!最後は高めの釣り球でした!」

 

あんな力強いボールなら、仕方ないだろう。

敵ながら、同情する。

 

 

続く2番に対しては、高めの直球3球勝負。

しかしながら、今までのようなボール球ではない。

 

高めながらも、打者がギリギリ手を出してしまうような際どいコース。

前のような、クソボールではない。

 

だからこそ、打者も手を出してしまうのだ。

 

 

 

最後は、クリーンナップの一角である3番。

 

まずは、ストレート。

この直球でガンガン押していくスタイルは、変わらない。

 

低めのこのボールをバットに当て、ファール。

 

 

初球から当ててくるか。

流石のバットコントロールだな。

 

だがストレートにタイミングがあっているなら、『あのボール』は打てまい。

 

2球目、同じくストレート。

これをわかりやすく外に外し、ボール。

 

1ボール1ストライク。

今度はインコース高めに投げ込む。

 

対角線の投球に、打者も思わずバットが出るも、少し降り遅れてファール。

 

 

今打者の目に焼き付いているのは、インコース。

目の前を通過した豪速球である。

そしてその前も、真ん中低めと外角のボール球である。

 

いわば、厳しいコースである。

そんな時にいきなり甘いコースが来たら、どうなるか。

 

 

答えは簡単。

それを狙うほかない。

 

ということで、降谷から放たれるボール。

真ん中に投げ込まれたそれは、誰が見ても甘すぎる、命取りのコースであった。

 

しかし、一也はそこに構えた。

そして。

 

 

投げ込まれた。

ストレートとほぼ同じ角度で投げ込まれる、ボール。

 

打者も念願の甘いボール。

先ほどまで魔に焼き付けた軌道と角度を計算し、バットを降り始める。

 

ドンピシャ。

だが、それは。

 

直球だったらの話だ。

 

 

 

 

「フォークボール、空振り三振!最後は変化球でした、マウンドの降谷!」

 

三者連続三振。

ストレート中心のリードで、それも一年生がやっているのだから驚きである。

 

やはり早い球を投げるポテンシャルで言えば、ダントツだな。

地区にも、ましてや全国を探してみてもなかなかいないのではないだろうか。

 

「ナイスピッチ、降谷。」

 

「まだ投げたかった。」

 

「文句言わないの。」

 

不機嫌そうにそっぽを向く降谷。

ここまで先発として長いイニングを投げる機会が多かっただけに、不完全燃焼感が否めないのだろう。

 

わかんなくは、ない。

俺も長いイニングを投げる機会が多いから、短いイニングだと少しばかり物足りないと感じることもあるにはある。

 

 

理想はその1イニングで全力を尽くすこと。

意外と、これが難しい。

 

「甲子園まで辛抱だ。多分甲子園は出番増えるぞ。」

 

今より気温の高い8月ならば、先発の投球回も制限される。

そうなれば、リリーフの投球回も自然と増えてくるから。

 

 

 

さて、だからこそ今大切なのは「繋ぐ」こと。

丹波さんはリリーフに繋ぎ、ノリはセットアッパーの降谷に繋いだ。

 

そして、降谷は。

試合を締める、青道の守護神に繋ぐ。

 

 

「ガンガン打たせていくんで、バックの皆さん、よろしくお願いします!」

 

マウンド上から、コート全体へ。

沢村の、むしろお家芸である。

 

「打たせてこいよ沢村!」

 

「バッター集中な、沢村ちゃん。」

 

それに応えるように、チームが後ろから声をかける。

他の投手にはない、チーム全体を鼓舞する力がある。

 

丹波さんのようなキレのある変化球はない。

降谷のような唸る豪速球もない。

ノリのような低めへの繊細なコントロールもない。

 

 

しかし。

それでも抑えを任されるのは、その強心臓。

 

どんな場面でも物怖じしないハートと、強い心の持ち主。

だからピンチでも大崩れしないし、抑えにはもってこいなのだ。

 

 

 

 

 

まずは先頭。

いきなり4番の真木を打席に迎える。

 

一発こそ怖いものの、特段技術がある訳でもない。

だが、やはり身体能力が高い分、当たるとよく飛ぶ。

 

 

まずは、4シーム。

純粋な縦回転をかけ、打者の手元で加速するようなストレート。

 

それが、外角低めいっぱいに決まる。

 

 

そして、2球目。

今度は、手元で失速し沈むボール。

 

ノビ上がり加速するストレートとは違い、伸びずに沈む。

この球速差というか、体感速度の差で打者のスイングを狂わせる。

 

インコースの甘いコースに入ったそのボールに真木も手を出してしまう。

 

「お兄さん!」

 

「わかってるよ。」

 

鈍い当たりはセカンド正面へ。

ここは名手の亮さんが軽快に捌いて1アウトを奪う。

 

「おーっしおしおし!」

 

やかましい。

だけど、その元気の良さがチームをまた勢いづける。

 

続く打者は、5番。

強いバッティングも、そして小技もできる器用な打者。

 

この打者に対しては、インコース攻め。

キレのある4シームをインコースの低めに続けて攻めていく。

 

初球は128km/h。

2球目は130km/h

 

早い段階で追い込むと、最後も同じようなボールでレフトフライに抑え込んでみせた。

 

ボールのキレもそうだが、ボールの出どころが見え難い変則フォームだからこそ打者目線から見ると球速以上に速く見える。

だからこそ、130キロのボールでも打者が詰まるのだ。

 

 

 

最後のバッターは、6番。

この打者に対しても、沢村はテンポ良くストライクを投げ込んでいく。

 

初球は高速チェンジアップ。

鷲掴みから手元で失速する高速変化球。

 

これをバットに当て、三塁線切れてファール。

 

続いて、4シーム。

この体感速度差に今度は振り遅れて空振り。

 

3球目は外角低めに少し外れてボール。

 

 

 

そして、勝負球。

最後はアウトコースのストライクゾーンからボールゾーンに逃げる高速チェンジアップを引っ掛けさせてサードゴロ。

 

「おーーっしおしおしおし!おしおしおーし!」

 

先発が試合を作り、打線が爆発して逆転。

最後は鉄壁のリリーフ陣がノーヒットに抑え、勝利。

 

理想的な、そして安定的な勝ち方で決勝戦へと駒を進めた。

 

 

甲子園まで、あと一つ。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。