燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード43

 

 

 

 

 

朝が、きた。

今日がまた、始まる。

 

既に日は登り始めており、空は青く染まっている。

 

(もう、7月だからな。)

 

果てしなく広がる青空を見上げながら、大野は一つ息を吐いた。

 

 

いつもと同じように、走る。

今日は少し、暑い気がする。

 

もしかしたら、今日が最後になるかもしれない。

だが、それでもやることはいつもと変わらない。

 

 

全国高校野球選手権西東京大会、決勝。

夏の甲子園、地区予選である。

 

夢の舞台、甲子園をかけた最後の戦い。

その朝が、やってきた。

 

 

 

軽くストレッチを行い、ゆっくりと走り始める。

今日はいつもより、少し暑い。

 

早朝だからまだ心地よい気温なのだが。

 

(昼間は地獄だろうな、こりゃ。)

 

これから始まるであろう決戦のことを考えると、溜め息をつきたくなる。

 

 

昨日の予報では、試合中の気温は30度を超える可能性が高い。

そんな中で、数時間投げなければいけないのだ。

 

溜め息もつきたくなる。

 

 

少し、ペースを上げる。

徐々に、試合の身体に持っていく為に。

 

そんな時、彼の後ろからテンポの良い足音が。

というか、何かを引き摺るような音が聞こえてきた。

 

「おはようございます、なっさん!」

 

大野の後輩であり、今大会は不動のクローザーとして活躍している沢村栄純。

大野を慕っている彼は、毎日のようにランニングを共にしていた。

 

「お前さ、流石に試合前にタイヤは怒られんぞ。」

 

そう、トレーニング用のタイヤを引き摺って。

 

「俺の相棒ですよ!?」

 

「だからって体力削ってどうすんだ。」

 

また、溜め息をつく。

試合当日の朝にタイヤを引いて走る馬鹿が、どこにいるのか。

 

(目の前にいるんだけど。)

 

いつも通りと言えば、そうか。

変に気負ってガチガチになるよりは、マシだ。

 

そんなことを思いながら、大野は再び走り始めた。

 

「今日の先発はなっさんっすね。」

 

「エースだからな。今日投げなくて、いつ投げる。」

 

「くーっ!次こそはこの沢村がエースに!」

 

唐突な沢村の宣言に、大野が笑う。

彼としても、競う相手がいるというのは刺激になる。

 

 

少し走り、また止まる。

そして、大野は沢村の方を横目で見た。

 

「沢村。」

 

「なんでしょう?」

 

その表情は影になっていて見えない。

が、先程までのような朗らかな表情ではないことは、声色から分かった。

 

「今日、準備しておけよ。」

 

大野の言葉に、沢村が目を見開く。

普段はそんな事言わないし、なんと言ってもこの人はできるだけ完投したいというタイプの人間だからだ。

 

そんな彼が、リリーフである自分に。

それもこんなにも大事な試合に準備を促すとは、正直想定していなかった。

 

 

無論、準備はしている。

毎試合、そしていつでも登板できるように。

 

「勿論ですとも!9回は任せてください!なんならもっと長いイニングでも…」

 

「いや、9回までは投げきる。」

 

 

去年は、延長12回。

リリーフ登板ながら、延長戦までもつれ込む長期戦となった。

 

想定しておいても、損はない。

あくまで、可能性の話だ。

 

「まあ任せてくださいよ!俺はいつでも準備してますから!」

 

「心強いな。」

 

そして、大野はいつもの朗らかな表情へと戻っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻。

 

 

 

艶やかな金色の髪を靡かせ、己の調子を確かめるように。

稲実のエースも、走り始めた。

 

甲子園をかけた、最後の戦い。

決勝の舞台に向かうべく、彼もまた動き出していた。

 

 

対戦相手は、奇しくも昨年と同じ。

マウンドで投げ合う相手も、同じ。

 

去年は入学したての1年生の好投で、拮抗した。

今年もマウンドに上がる2人は同じだが、2人の立ち位置は大きく変わった。

 

 

共に、チームを象徴するエース。

チームに勝ちを運ぶ、エースとなっていた。

 

(わかってたよ、絶対ここでまた闘うことになるって。)

 

彼…稲実のエースである成宮は、ここまで投げてきた試合での失点はない。

 

打線が繋がりコールドゲームになったケースが多かったというのもあるが、何より彼の圧倒的な投球にここまで対戦してきた打者たちが着いて行けなかったというのが現状である。

 

 

故に、彼は物足りなかった。

ここまでの試合は圧倒していた分、緊張感やら何やらが少なかったのだ。

 

 

 

だからこそ、1点の取り合いにもなろうこの試合を、彼は待ち望んでいた。

大野夏輝という好投手と、投げ合うことを。

 

(先に点はやらねえ。というか、点はやらねえ。)

 

女房役である原田は、失点を覚悟していると言っていた。

具体的に言うと、2、3点ほど。

 

しかし、成宮は確信していた。

大野の調子次第では、その1点すらも命取りになるのだと。

 

 

その最たる例が、去年の夏。

共に、6回を投げて、失点は成宮のサヨナラ打のみ。

 

同じ展開になるのであれば、投手戦になることは必至だった。

 

 

「負けねえよ、今回だって。」

 

そう呟き、成宮は空を見上げた。

 








リアルの方が割とバタバタしてますので、最低でも6月までは投稿が滞ると思います。
また、稲実戦は纏めて書き上げたいので、恐らく期間空きます。

度々お待たせして申し訳ございませんが、気長にお待ち頂けると幸いです。
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