燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード46

 

 

 

試合は両投手の好投。

互いのエースが完璧な投球を見せ、0−0のまま折り返し地点に入ってきた。

 

 

 

成宮は、ここまで被安打1四球1の8奪三振。

ヒットは伊佐敷のポテンヒットのみ。

 

ここまで毎回の奪三振を奪う完璧な投球を見せてきた。

 

 

大野は、被安打2の無四球、6奪三振。

かなりいい投球だが、もう片方のエースのピッチングが圧倒的すぎるため、やはり少し見劣りする。

 

 

 

スコアボードに並んだ0の数は、9つ。

もう一つの0を増やそうと、エースはベンチからゆっくりと出た。

 

「疲れは?」

 

「態々聞くな。そんなヤワでもない。」

 

「ならいい。気温も上がってきたし、もう一回気合い入れ直せよ。」

 

「応。」

 

打順は5番から。

 

最初に回る山岡は一発があるため慎重にならなくてはならない。

が、どちらかと言うとブンブン丸の一発屋。

 

大野の得意とするタイプである。

 

 

ここまで大野はある程度抑えながらも順調に相手打線を抑え込んでいる。

しかし反面、何も仕掛けてこない稲実ベンチに御幸は若干思うところがあった。

 

 

(不気味だな、正直。)

 

各々が自分達のバッティングを貫いている。

と言うよりは、どちらかと言うと好き勝手やっているように見えた。

 

 

元々繋いで点を取ると言うよりは、それぞれの個性を尊重してそれが繋がって打線となる。

 

まあ、結果的に打線となっている感じだ。

 

 

 

だが、あまりに淡白。

 

(あくまで後半勝負なのか?)

 

だとしたら、抑えられる。

ここまでスタミナにもまだ余裕があるし、9回までなら問題ない。

 

だが、心配はある。

 

 

考えているうちに、御幸は大野に目を向けた。

 

(まずは目の前の打者だ。)

 

 

そう目で訴えてくる大野に、御幸は心の中でため息をつきながら頷いた。

 

(キャッチャーはそう行かんのよ。)

 

敢えて言わないが。

そしてすぐ、サインを出した。

 

 

まずは、外角低め。

大野の生命線であり、最も得意とするコースである。

 

 

 

2球目は外のボールゾーンからストライクゾーンに入るツーシーム。

これで早くも2ストライクとなった。

 

(決めるぞ。)

 

(ああ。)

 

最後も、同じように変化するツーシームで空振り三振に切ってとった。

 

その後も2人続けて三振に切ってとると、大野は声を上げた。

 

 

 

 

 

 

回は6回。

成宮は、状態を上げる一方。

 

初回から飛ばしているものの、要所要所で押さえているからスタミナにも余力がある。

 

殆どの打者にはストレート主体にしながら、決め球としてスライダーとフォーク。

また結城と小湊に対してはチェンジアップと、緩急で抑え込んでいた。

 

 

ここまで青道はまるで対応しきれていない。

しかし、青道ベンチとしては想定内。

 

「どうだ、タイミングは掴めてきたか。」

 

 

あくまで、後半戦勝負。

前半はタイミングをとりつつ球筋を見ていき、後半の少ないチャンスをものにして勝つ。

 

弱気に見えるかもしれないが、今日の成宮は状態が良かった。

 

 

「この回から三巡目にも回る。」

 

ここまでは、追い込まれるまで投げさせた。

 

「捨てるぞ、チェンジアップ。」

 

ここからは、真っ直ぐと高めに浮いた変化球のみ狙う。

 

 

腹を、括った。

 

 

左手に填めているグローブをベンチに置き、バッティンググローブに付け替える。

バットを握ってベンチを出た時、大野は監督に呼び止められた。

 

「すまない、大野。お前には重圧をかけてしまっているな。」

 

「背負うのが、エースですから。監督だって、そうだったのでしょう。」

 

彼がそう言い返すと、片岡は笑い、9番ピッチャーを打席に送り出した。

 

 

 

ここまでは、2打数の2三振。

 

打撃ではあまり貢献できないが、せめて投球では。

チームが攻撃に集中できるように。

 

 

自分のせいで負けるとか、勝つとかじゃない。

チームが勝つために、投げるのだ。

 

 

(それが、背負うと言うことだろう。)

 

そう思いながら、大野は打席に向かった。

 

 

(一丁前に打とうっての?)

 

(んなわけあるか。俺が打たなくても先輩たちが打ってくれるからな。せめて、嫌がらせくらいはさせてもらうぞ。)

 

 

指先にロージンバックを当てる成宮を一直線に見つめながら、大野がバットを揺すった。

 

 

 

初球はいきなりスライダー。

これを簡単に見逃し、1ボール。

 

 

2球目、ストレート。

これに完全に振り遅れ、空振り。

 

 

3球目、またもストレート。

今度はタイミングがさっきよりも合うも、三塁線切れてファール。

 

 

(ここも真っ直ぐでいくぞ。)

 

(って魂胆でしょ?)

 

 

1ボール2ストライク。

いつもなら、ここで変化球で空振りを奪いにくる。

 

が、大野は変化球への対応力が高いため、ここまでストレートで勝負してきている。

 

 

4球目、決めにきたこの真っ直ぐをバットに当てカウント変わらず。

 

5球目のストレートもバットに当てる。

 

6球目、外角のスライダーを見逃し、並行カウント。

 

 

流石に決めたい成宮。

ここで、一気にギアを上げた。

 

「っらあ!」

 

7球目のストレートも高めに外れていたが、勢いのあるストレートに、最後は空振り三振に喫した。

 

計測された球速は、148km/h。

しかし数字以上に、力のあるボールだった。

 

 

「ヒャッハー、投手に投げる球じゃねえよありゃ。」

 

「よく投げさせたじゃん。悪くなかったよ。」

 

頼れる上位打線の言葉を背中に受け、ベンチへと下がった。

 

 

ヘルメットを外し、タオルを頭の上に乗せる。

そして、ゆっくりと息を吐いて打席に目を向けた。

 

打席には、左打席に入った倉持。

率自体は低くないが、その実は内野安打が多いため打撃自体はそこまで。

 

 

(投手にあんな打撃見せられて黙って見てられるかよ。)

 

(右に入らないんだ、ふーん。)

 

一般的に、左投手に対しては右打者の方が有利と言われている。

が、倉持は敢えて左の打席にはいった。

 

あくまで、チェンジアップ封じ。

右打者に対しては外に逃げるように変化するチェンジアップだが、左打者に対しては中に行ってくるように甘く入りやすい。

 

 

(チェンジアップ使うまでもねえんだよ!)

 

(こいよ、高めのストレート!)

 

一球目。

外角のスライダーに手が出て、空振り。

 

(ほら、見えてねえじゃん。)

 

二球目、同じようなボールで空振りを奪う。

 

 

2球、同じようなボールで空振り。

いずれも、低めから外に変化する完璧なボール。

 

しかし、倉持は息を吐いた。

 

 

三球目、同じコースのスライダー。

今度は、我慢した。

 

 

ここで成宮は勝負に出る。

外に変化球を見せ球に、最後はインサイドのストレート。

 

大野を空振り三振にとったのと同じようなボールを、インコース高めのストレート。

このボールを、倉持は狙っていた。

 

「っち!」

 

どん詰まり。

振り遅れたが、思い切り振り抜いた。

 

 

打球は弱々しくショートの頭上へ。

 

そして。

 

 

「落ちたー!1アウトからレフト前に落ちるテキサスヒットで出塁します、1番の倉持!」

 

塁上でガッツポーズを掲げる倉持に、成宮はふんと鼻を鳴らした。

 

(腹立てんなよ、鳴。)

 

(別に?まぐれヒットじゃん。)

 

言いながら、額に青筋を浮かべている成宮。

それを見て、原田はため息をついた。

 

投手として成長し、人間としても強くなった。

だからエースを任されていたし、チームの中軸を任されていた。

 

しかしまあ、短気なのは相変わらずであった。

 

 

「珍しくヒットで出たね。ポテンだけど」

 

バットを肩に乗せ、左の打席に入る小湊。

そして、ゆっくりとバットを揺らした。

 

1アウトランナー一塁。

ランナーは、倉持。

 

バッテリーは、やはり盗塁を警戒していた。

 

 

牽制、鋭いボールが一塁に向けて投げられ、一塁ベースの山岡のグラブを鳴らした。

 

塁審が、両手を左右に広げた。

 

 

やはり、かなり警戒している。

それもそうだろう。

 

 

(ってなると、やっぱり早いボールで来るよね。)

 

そう思い、小湊は身構えた。

初球、倉持が二塁に向けて走り出す。

 

普段なら、空振りでアシスト。

しかし、小湊は。

 

高めの直球を狙った。

 

 

「センター返し!弾き返した打球は中堅手のカルロスの前へ!」

 

スタートしていた倉持だが、二塁は回れずストップ。

 

1アウト一、二塁。

 

 

 

 

ここからクリーンナップ。

が、ここは伊佐敷送りバントの構え。

 

青道ベンチは、ワンチャンスに賭けた。

 

 

クリーンナップだが、丁寧にバントを決めた伊佐敷。

ランナー二、三塁のチャンスで、4番を迎えた。

 

 

 

 

流石の稲実も一度タイムをとった。

 

 

「外野は定位置。ピンチだけど、失点もあまり心配しなくて大丈夫。まだ中盤戦、気負わずいけとのことです。」

 

ベンチからの伝令。

それを聞いても、成宮は何も言わない。

 

「大丈夫だよ、鳴。ちゃんと点ならとってやっから。」

 

セカンドの平井が言うと、他の選手もまた同意するように頷いた。

 

 

が、成宮は何も言わない。

無言で帽子の鍔に手を当て。

 

やがて、息を吐きながら顔を上げた。

 

 

「あぁ、アツくなってきた。」

 

そして、へへっと乾いた笑みを浮かべた。

 

「あん時と一緒。」

 

成宮が、笑顔で全員を見回し。

そして成宮を中心として、全員が笑った。

 

「一点もやるつもりないよ。ね、雅さん?」

 

成宮は笑っていた。

しかしその様子は、いつものそれとはまた違うものだった。

 

 

いつものような少年の表情ではない。

というか、目の色が違う。

 

 

水晶のような青い瞳。

その瞳は輝きながらも、どこか吸い込まれるように深みがあった。

 

 

 

今まで見たことのないその表情に一瞬たじろいだが、原田も応えるように笑った。

 

「ああ。当たり前だ。」

 

そして、2人は拳を突き合わせた。

 

 

 

 

 

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