燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード63

 

 

 

 

 

8月も終わりに近づいてきた。

 

日中こそまだ夏日が続くものの、若干暑さは和らいできたように思える。

 

夏休みも終盤。

新チームになっての総括と決め込みたいところに、絶好の相手が今日やって来る。

 

 

 

「おぉーっ!でけえ!!」

 

 

試合の準備の為Bグラウンドでストレッチをしていると、そんな声が耳に突き刺さる。

 

来たか。

噂をすればなんとやら、だな。

 

 

 

薬師高校。

今夏に大ブレイクした高校であり、甲子園出場校の市大三高を破ったとして話題になったチームである。

 

4番の轟を中心にパワーヒッター揃いであり、超攻撃的なチームとして人気を博していた。

 

 

「いきなりでけえ声出すな、雷市」

 

「よう、久しぶり。」

 

 

右手を上げて挨拶をしてくる真田に、俺も頷いて答えた。

まあ、投げ合った仲だしな。

 

あまり会話はしていないが。

 

 

「今日は宜しくな。もう結構試合してんの?」

 

「まあな。今んとこ10連勝中だから、今日勝って11連勝に伸ばさせてもらうぜ。」

 

おお、流石。

元々薬師の中心選手は、轟を含めた1年生3人と、エース格の真田くらいだからな。

 

3年生たちも怖いバッターではあったが、彼らが残っている分チームとしてはすぐに再建できたのだろう。

 

 

 

「今日の先発は?」

 

「俺だよ。どこまで投げるかはわからないが。」

 

 

別に、隠す必要もない。

俺が先発して、途中から沢村か降谷、もしくはノリにシフトするとのことだ。

 

 

向こうの先発は三島。

夏の大会では投げていなかったと思うが、中学では元々ピッチャーをやっていたらしい。

 

恐らく、途中から真田も投げるだろう。

 

 

「前回はやられちまったけど、今日は勝つからな。雷市も状態あげてるし、今日こそ打ってやるよ。」

 

「望むところだ。宜しくな。」

 

 

そう言って、真田も自分たちのチームへ戻っていく。

流石、コミュ力高いなと感心しながら、俺も自分のアップを終えて野手に合流した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ始まります。

先攻は俺たち青道高校。

 

オーダーに関しては、以下の通りだ。

 

 

1番 遊 倉持

2番 投 大野

3番 二 小湊

4番 捕 御幸

5番 右 白洲

6番 一 前園

7番 三 金丸

8番 左 降谷

9番 中 麻生

 

先発は、真田に言った通り俺。

成績も踏まえ、今のところは暫定エースとして試合をしている。

 

 

サードは最近かなり当たっている金丸。

まだまだムラっ気はあるものの、当たる日はとにかく当たる。

 

 

これも自主練の際に指導してくれたクリス先輩のおかげだろう。

 

守備もかなり安定してきており、今の所のレギュラー筆頭になっている。

 

 

 

外野手は、安定感の麻生と打撃の降谷。

これが今は定着しつつある。

 

 

 

開脚しながら少し股関節を伸ばし、深呼吸。

やることを整理するために、頭の中で一つずつ確認していく。

 

 

先頭の秋葉は一発もあるし、何よりヒットメイカーである。

チームで1番出塁率が高く、こいつが出塁した際の得点率は本当に高い。

 

まあ十中八九、4番の轟に打席が回るからなのだが。

 

あとは、今名前の出た轟。

彼に打たれると、このチームは本当に強い。

 

細心の注意を払って投げる必要がある。

 

三島も危険だな、あとはチャンスに怖い真田。

何より全員が一発を狙ってくるもんだから、怖い。

 

 

まあその方が、こちらとしては抑えやすい。

それに真っ向勝負の方が、楽しい。

 

 

 

「今日の調子は?」

 

一也からの問いかけに、俺は若干首を傾げて答える。

 

 

「感覚自体は悪くないな。」

 

 

筋肉痛で体のキレはあまり良くないが。

そこまで言わなくても、彼は多分理解してくれている。

 

 

「あくまで練習試合だからな。打たれてもあんま凹むなよ。」

 

「わかってる。でも今の俺の最善は尽くす。」

 

 

俺がそう言って白球を手渡すと、一也も笑って定位置に戻った。

 

 

右の肩を2回3回と回し、首をぐるりと大きく回す。

そしてそのまま、右手で胸元を握りしめた。

 

目を瞑り、ゆっくり息を吐く。

練習試合とはいえ、集中しなきゃやられる。

 

 

1番いい状態でやらなきゃ、意味ないしな。

 

 

 

 

息を吸い直し、また吐き出す。

今の最大限をぶつけ、俺の現在地を、チームの現在地を確認する。

 

 

いつもよりもう一つ大きく深呼吸。

中途半端にやるくらいなら時間をかけて感覚を研ぎ澄ます。

 

 

 

「…っし。」

 

行ける。

俺はゆっくりと目を開けた。

 

 

 

 

視界が少しばかりぼやけ、打者の姿だけが鮮明に映る。

俺が視線を少しずらすと、今度は打者もぼやけて一也とそのミットが鮮明に映し出された。

 

 

狙うのは、その一点のみ。

そこに決める能力が、俺にはある。

 

 

他の3人にはなくて、俺にあるもの。

 

降谷のような豪速球はない。

沢村のような癖玉も柔軟な関節もない。

ノリのような角度のあるサイドスローでもない。

 

 

 

ただ、真っ直ぐに。

俺は、一也を信じて投げ込むだけだ。

 

 

息を吐き、腰を捻り始める。

ゆっくり力を溜め、溜め。

 

限界まで溜め込んだ力。

それを身体の捻転とともに。

 

 

 

解放。

収縮された力を全て指先へ。

 

最後に、押し込む。

 

 

(ここ。)

 

 

慣れ親しんだ感覚。

しかし、今日のそれは。

 

 

いつもの「それ」よりも、遥かに鋭い感覚で抜けていった。

 

 

 

 

 

いつもよりも、少し鈍い音が一也のミットから鳴った。

 

コースは、外角少し甘め。

しかし、秋葉はこのボールを見逃した。

 

 

 

この感覚は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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