燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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例の如く、ガバです。
というよりは、ご都合主義です。




エピソード67

 

 

 

 

 

 

「肘部管症候群だな。」

 

「え。」

 

「言ってしまえば、肘の神経が圧迫されて、痛みや痺れが来てるってことだ。」

 

 

 

 

 

いつも赴いている病院より、少し大きくて綺麗な病棟。

目の前に座っている初見の医師から告げられた言葉は、想像以上のものであった。

 

 

 

練習試合、肘の痛みで途中降板した俺は、とりあえず落合コーチと片岡監督の支持に従い、病院に向かった。

 

確かに肘が張っている…というより少し痛みがあった。

試合終盤になると張りを感じる、あとはそうだな、少しばかり指先の力が抜ける感覚もあったか。

 

 

 

青道高校通いつけの病院で診てもらっても回答が出なかった為、俺は近くの大型病院に向かってみた。

 

 

大したことないと思っていたんだが。

せめて疲労だろうと高を括っていただけに、そこまで重い症状だとは思わなかった。

 

 

 

 

 

 

こうなると、ブロック予選は難しいか。

まあ幸いなことに、俺たちのブロックにベスト8クラスなと、所謂強豪校がいないということくらいだな。

 

 

「全治はそうだな…最低でも3ヶ月はかかるだろう。」

 

「3ヶ月!?」

 

 

思わず、声が大きくなってしまう。

3ヶ月って、流石に長すぎでしょ。

 

 

「寧ろ短い方だよ。君の場合は早期発見が出来たから、3週間くらい経てば野手出場くらいならできる。」

 

「けど投げるのは無理ってことですかね。」

 

「…肘の怪我っていうのは、人によっては手術だって必要なケースもある。だからこそ、君の異常に気がついた捕手の子とコーチさんには感謝しなきゃいけないね。」

 

 

「それは…そうですよね。」

 

 

 

思わず、俯いてしまう。

 

夏の屈辱を晴らす為に、チームはここまで練習してきた。

それこそ、血も汗も流れるほどの練習を。

 

 

あの夏。

俺が打たれて負けたあの夏の悔しさを、噛み締めて。

 

なのにまた、俺はチームに迷惑をかけるのか。

 

 

 

「切り替えろというのは無理な話だろうが。それでもな、選手生命が絶たれたわけじゃない。寧ろ高校野球の舞台にまだ立てるのだから。」

 

 

医師からそう言われ、俺は眉間の辺りを親指と人差し指で抑えた。

 

それでも俺は、チームの為に投げたかった。

投げなければ、いけなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず、同行していた高島先生と太田部長と一緒に学校へ戻る。

その間も俺は、何も話すことが出来なかった。

 

 

 

悔しい。

負けることよりも、チームの為になれない事が、何より悔しい。

 

 

学校に戻った後、直ぐに監督室へ行き報告。

 

俺の怪我の状況と、全治。

そして、これからの起用法を話しに。

 

 

部屋に入り、状況報告。

中にいた落合コーチと片岡監督。

そして一緒に入った高島先生と太田部長と話をした。

 

 

「そうか。」

 

「戦列を離れてしまい、すいません。」

 

俺の頬に涙が通過し、落ちる。

 

悔しい。

何も出来ないことが、こんなにも悔しいとは。

 

 

俺が俯いていると、監督は再び口を開いた。

 

 

「大野。お前の異変に気がつけず、すまなかった。」

 

そうして、監督が深々と頭を下げる。

クリス先輩の時もそうだが、昨年に続いて出してしまった怪我人。

 

共に、疲労の蓄積によるものであり、未然に防ぐことももしかしたら出来たかもしれない。

 

 

しかしそんなのは、当の本人が言わないと気がつけないほど内面的なものが殆どなのだ。

 

 

 

それに、俺もクリス先輩も。

怪我をしたことが監督の責任だと思ってなどいない。

 

世間的に見たら監督不足というが、この部員数100人越えのチームだ。

 

 

些細な違いまで目を向けることは、はっきり言って難しい。

 

 

 

「監督。」

 

「なんだ。」

 

俺は1つ息を吐いて、言葉を絞り出した。

 

「俺は、2度チームを終わらせました。2個上の先輩の代も、1個上の代も。」

 

監督は、何も言わない。

 

俺のせいじゃないっていうのは、もう何度も聞いた。

それでも俺は、自分の責任だと言い切った。

 

 

チームを背負うというのは、そういう事だから。

監督も高校時代、同じようにこのチームでエースナンバーを背負ったのだから、わかっている。

 

 

「そんな俺をまだ、戦力として見てくれますか。」

 

「当たり前だ。お前がこのチームの、エースなんだからな。」

 

 

怪我を背負った以上、今は戦力にはなれない。

しかし、そんな俺でもまだ戦う場所をくれるのであれば。

 

「今はまだ力になれませんが、まだ必要としてくれるのであれば、骨を埋めるつもりで。」

 

 

高校野球が、ゴールではない。

そんなことは、俺だって分かりきっている。

 

だけど。

俺はこの青道高校(チーム)で。

 

片岡監督と、甲子園に行かなければいけないから。

 

 

 

 

少しの静寂。

その均衡を破ったのは、コーチであり俺の怪我にいち早く気がついてくれた落合コーチであった。

 

 

「確かに投手としてはチームに貢献できないかもしれない。だが、それがお前の全てではないと思うがね。」

 

 

そう言って俺に笑いかけた。

 

 

 

そう、か。

そうだよな、簡単な話じゃないか。

 

 

チームの為になれない事が、悔しい。

それならば、投げるところ以外でチームに貢献すればいい。

 

 

 

「考えようによっちゃ、この時期で良かったかもしれないな。」

 

 

まだ、再起不能な時期じゃない。

大会前とはいえ、夏までは1年近く時間はある。

 

 

今は、何もかも見直すべきか。

それよりも先に、目の前の大会でできることを探す。

 

 

 

打撃でも、投手へのアドバイスでも。

俺にできることは、きっとある。

 

 

 

とりあえず俺の療養は、2週間。

ここは完全安静になる為、野球は勿論極力利き腕を使うことはしない。

 

その後は、チームの為に精一杯動く。

 

 

部屋を退出する際、最後に一つだけ言った。

 

 

「エースナンバーは一度返却します。俺がまた投手としてエース争いに参加できるようになったら是非、検討して下さい。」

 

 

俺は、この大会は野手として戦う。

ならば、背番号1を背負うには無責任過ぎる。

 

背番号1は、エースの番号だ。

 

 

「検討しておこう。」

 

 

監督の返事を聞いて、俺は部屋から退室した。

 

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