燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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遅なりました。







エピソード68

 

 

 

 

 

「なっさんが怪我!?」

 

 

次の日。

肘のサポーターを付けながらブルペンへ向かった俺。

んで待っていたのは、案の定喧しい反応をする男であった。

 

 

「まーね。肘やられちゃってさ、全治は3ヶ月だと。」

 

「それじゃあ、秋大は…」

 

「すまないが、無理だな。お前らには迷惑かける。」

 

ここで濁しても、仕方がない。

なら割り切って、頼るしかない。

 

 

 

今戦力になる投手は、4人。

 

 

投手能力では最強、剛腕の降谷。

 

最速150km/h越えのストレートとキレ落差ともに十分なフォークボールを武器に三振を奪う。

 

コントロール、スタミナに課題あり。

所謂、ノーコン速球派。

 

また、ムラッ気がとにかくすごい。

6者連続三振する日もあれば、三者連続四死球やるときもある。

 

 

能力は最強。

しかしはっきり言って大一番を任せるのは、怖い。

 

 

 

もう1人は、降谷と同じ1年生の沢村。

 

このチーム唯一のサウスポーであり、変則フォームから手元で加速するフォーシームと、打者の手元で動くムービングファストを操る。

 

球速は130km/h前後だが、左右の制球力がまとまっている為大崩れしないのが最大の魅力。

その為夏の大会ではクローザーを任されていた。

 

現状最も信頼が置けると、俺は思う。

 

あとはもう1つ切り札があれば、かな。

 

 

 

 

俺と同じ2年生には、ノリ。

 

高い制球力でストレートとスライダーを低めに集める、右のサイドスロー。

 

ゆったりしたフォームからタメを作って投げ込む為、意外とタイミングの取りにくい変則フォームである。

 

沢村とは違い、高低のコントロールが非常に優れており、ゴロを打たせてとる安定感ある投球が持ち味。

夏の大会では、ロングリリーフを任されていた。

 

低めに集める安定感が持ち味なのだが、ガラスのハートという中々にアンバランス。

しかし、降谷よりは崩れにくい。

 

 

 

 

夏の大会で投げたこの3人は、確実に選考。

あとは、補強でもう1人欲しいところ。

 

 

そこで白羽の矢が立ったのは、1年の東条。

 

シニア仕込みの投球術に、多彩な変化球でゴロを奪う技巧派投手で、完成度で言えば沢村や降谷よりも高い。

 

120km/h代のストレートに、スライダーとカーブとカットボール。

あとは大野直伝のツーシームと、手札がかなり多い。

 

また、コントロールがいい為安定感がある。

メンタル面も沢村の次にブレにくい為、難しい場面やロングリリーフでも重宝されるだろう。

 

あとは、決め球がないのが課題だと本人も自覚している為、今後練習をしていくしかない。

 

 

 

 

この4人か。

東条はバッティングも上手く、どちらかと言うと俺と同じようなアベレージヒッターなので、まあ使い勝手もいいだろう。

 

 

運動神経もいいから、守備範囲も広いし、守備もある程度安定しているため俺のサブとしてもありだろうな。

 

 

 

 

 

俺が抜けたとはいえ、投手が充実していることには変わりない。

 

あとは俺がどれだけ回復が見込めるか、だな。

せめて準決勝とかまでに投げることができれば…

 

 

 

いや、無理だな。

そんな簡単に治る怪我なら、今もこうして休んでいない。

 

要らん希望を持つくらいなら。

今できることを、精一杯やろう。

 

 

 

 

まだ練習はできないから、とりあえず投手陣のお手伝い。

 

各選手のフォームを見たり球筋を見て、アドバイスできるところはする。

 

 

特に東条なんかは俺とタイプが似ている。

投球スタイルは違えど、球速や変化球の数なんかは、かなり近いものがある。

 

というか他の3人が癖がありすぎて、俺が1番近いというか。

まあ何にせよ、幾らか助言はできる。

 

 

 

「なっさん!俺の新球種カットボールはどうでしょうか!」

 

やたらデカい声が耳に刺さり、その方向に視線を向ける。

 

沢村か。

俺が落合コーチから受けた指導を軽く沢村にアドバイスしたら、彼も気づけば投げられるようになっていた。

 

 

足を高く上げ、体重移動しながら右手で壁を作る。

 

身体の開きを抑え、最後まで力を溜め込むために。

尚且つ、後ろを走る左腕が身体で隠れる為、打者から見てみても左腕が遅れて出てくるように見える。

 

そこから、右脚を踏み込む。

溜め込まれた力を、捻転で解放。

 

人差し指で弾くように、リリース。

放たれた白球は、捕手である狩場の手元で左打者から逃げるようにして変化した。

 

 

「おっ、今の良い曲がり。」

 

「ほんとですか!」

 

分かりやすく喜ぶ沢村。

投げ始めにしては、かなりよく曲がってるからな。

 

 

「コースは甘々だけどな。お前の場合できれば、右のインコースに投げるのが効果的だ。」

 

「右のインコース、ですか。」

 

「真田が攻めていたコースの一つだ。」

 

打者がインコースのゾーンだと思って振る。

そこから手元で小さく曲がるから、バットの根っこに当たって凡打に繋がる。

 

もし変化に対応出来たとしてもスピードが速いため、詰まりやすい。

 

 

「それを続けられるように、まずは投げる。それが出来るようになったら、今度はストレートと高速チェンジアップの間に混ぜながら慣らしていく。それで完璧に制球できるようになれば、初めて操れるはずだよ。」

 

俺がよく、新球種を練習するときに必ず行うもの。

 

実戦では、続けて同じ球種を投げ続けることは中々ない。

 

ストレート以外のボールと変化球では、指先の感覚や身体の動かし方も感覚的に変わる為、感覚がズレたり抜けやすくなったりする。

 

 

その為、練習の内から身体に染み込ませるまで投げる。

それができるようになれば、試合で必ず決めたい場面で、しっかりと投げきることが出来る。

 

 

 

 

 

色々な球種を折り曲げながら投げ込み始めた沢村。

問題なさそうだな。

 

そう思い、今度は横で投げ込んでいる東条。

彼も先日からブルペン入りしている為、少し様子を見てみる。

 

 

「ッシ!」

 

スリークォーター気味のフォームから繰り出されたのは、ストレート。

アウトコースの中段に決まる。

 

 

サイドのコントロールはまあ、OK。

高さは、悪くないくらいだな。

 

 

「ナイスコース。」

 

「あっ、大野さん。ありがとうございます。」

 

 

金丸と言い、やはり松方シニアの面々は礼儀正しい。

それに、感じがいいというか、人間性も。

 

普段はそれでいいんだけど。

 

 

捕手の要求に完璧に答えようとする余り、少し置きに行ってるように見えるな。

あれじゃ、打たれる。

 

二軍との壮行試合のときは、自分から攻めているように感じたんだけどなぁ。

やっぱり一軍だと、少し合わせちゃうか。

 

 

「コントロール重視でやってるでしょ。今のうちはもう少し思い切って投げきった方がいい。お前の実力なら、全力で投げてもそんなに乱れないからな。」

 

「そうですかね。自分の武器はコントロールなので、どうしてもそこに念頭が行っちゃいますね。」

 

「それは仕方がないことだ。でも練習のときくらいは多少意識を変えてやるのも手だと思うぞ。練習であれこれ試したり、失敗したりして、試合本番ではその時の全力を尽くせばいい。」

 

 

俺がそう言うと、東条は少しボールに視線を落としてから、また顔を上げた。

 

「分かりました。もう少し思い切ってみます。」

 

「投げてみれば、意外と制球できることがわかる。それに、ワンバウンドなら痛打されることはないからな。思い切って叩きつける気持ちでもいいかもしれないぞ。」

 

 

俺がそう言うと、東条は頷いて再び投げ始めた。

 

 

少しお節介だったかな。

でもまあ、実践するかどうかはこいつら次第だし、寧ろ思ったことをそのまま言わない方が気持ち悪い。

 

 

「やってるか。」

 

そんなこんなで数分後、落合コーチが入ってくる。

コーチはブルペン内を少し見回すと、俺の近くに置かれた椅子に座り込んだ。

 

「雰囲気がかわっているな。何か助言したか?」

 

「少し出しゃばりました。」

 

「構わない。寧ろドンドンお前の意見も出してやってくれ。」

 

 

落合コーチも、そう言って降谷の方へ向かう。

どうやら彼も、少し変化球を覚えようとしているらしい。

 

そんな様子を見ながら、今日の練習は続いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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