燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード69

 

 

 

 

 

 

夏休みも、終わった。

 

 

甲子園予選を戦い抜き、稲実と死闘の末に敗北。

先輩たちが高校野球生活を終え、俺たちの世代になり。

 

そして灼熱のグラウンドで厳しい練習を重ねる。

俺は夏休みに肘の怪我が見つかり、現状は野手登録。

 

 

物事は沢山あったものの、あっという間に過ぎ去ったこの1ヶ月半の長期休暇が終わりを告げた。

 

我々高校生、学生の本務である授業も再開し、またいつも通りの生活に戻る。

 

 

 

 

 

 

さて、時期は9月頭。

秋の大会のブロック予選の対戦相手も決まり、チームも仕上げの段階に。

 

レギュラーも決まってきており、打順なんかも大体決まった。

 

 

俺は現状、未だに安静の状態。

もう1週間は野球も出来ないため、今回のブロック予選に関しても出場は見合わせる予定だ。

 

 

回復自体はしてきているんだけどね。

もうバットも振れるし大丈夫なんだけど、やはり早く回復させるのがいいと思う。

 

だから今は、我慢だ。

 

 

 

 

俺たちが入ったブロック。

他チームは全て都立高校の、尚且つ夏の大会でも初戦敗退か2回戦敗退のチームのみ。

 

その為、一次予選に関しては問題なく勝ち進めるだろう。

 

 

 

「よし。」

 

靴紐を結び終え、軽く屈伸。

走る分には問題ないと先生からも言われているので、徐々に体力を戻していく。

 

とりあえずは、投手のランメニューから。

ノリと沢村、あとは降谷と東条と走り始める。

 

 

 

 

「そういえば、今日だったな。」

 

 

ランニングの間、ノリがそう話を切り出す。

今日?今日なんかあったっけ?

 

俺がそんな反応をすると、半ば呆れたようにノリは答えた。

 

 

「ベンチ入りメンバーと、あと背番号だよ。」

 

「あっ、そっか。」

 

 

今大会、秋の予選のベンチメンバーの発表。

それに伴って、選手たち1~18の背番号が割り振られる。

 

すっかり忘れていた。

いつもはエースナンバーが貰えるか否か気になっていたんだけど、今回はもう貰えないことは分かってるからな。

 

 

センターだから、背番号8とか?

投手控えの番号だったりして。

 

まあ貰えるのであれば、なんでも構わない。

 

 

 

「エースナンバーは誰だろうな。」

 

「大野じゃないの?」

 

「投げられない奴を、エースになんてしないだろ。」

 

 

俺がそう言うと、ノリは苦笑してまた走り始めた。

なんと言うか、気まずくしてすまない。

 

とは言え、これは本音だ。

 

 

「エースになるのは、この俺だあああああ!」

 

 

ポールの折り返し地点で現れるは、やかましい人。

基、沢村である。

 

その後ろから走ってくる降谷もまた、静かに闘志を燃やしていた。

 

 

エースになるために、か。

そうだな。

 

今はきっと、もらえない。

だからこそ、次の大会では。

 

 

必ず自分の手で、取り戻してみせる。

 

 

 

 

 

 

 

この後俺たちはみっちりと練習をして、その夜。

室内練習場に集められた俺たちは、監督を待った。

 

「エースナンバー、誰だろうな。」

 

俺が、隣にいる一也にそうやって聞く。

すると彼は、軽く首を傾げてから、少し笑った。

 

 

「さあ、な。」

 

「なんだそれ。」

 

 

年功でいけばノリだが、うちはそんなことないからな。

それこそ俺も一年時から背番号1はもらってたわけだし。

 

そう考えると降谷?

ムラっ気はあるけど、今1番いい投手ではあるからな。

 

 

沢村もなくはないしな。

安定感に関しては今チーム一だと思うし。

 

何より、チームを鼓舞すると言う点では、かなり適任だとは思う。

 

 

東条はまだ流石にないかな。

 

 

 

 

 

 

そんなことを考えていると、監督が練習場に入ってきた。

 

案外、俺の背番号も気になる。

まあ監督の発表を待とう。

 

 

「それでは、背番号を渡していく。」

 

引退後ながら屈強な身体をゆらりと揺すり、横にある段ボールへと手をかける。

そして真っ白な布切れ一枚を、拾い上げた。

 

 

 

ノリか、降谷か。

それとも、沢村か。

 

 

誰にせよ、今大会の主軸になる投手だ。

 

大事な試合を任せられる、チームの柱だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「まず初めに、背番号1番。」

 

監督から前に来るように促されたのは、俺が想像していなかった男であった。

 

 

 

「2年、大野夏輝。」

 

「…え。」

 

 

思わず、素っ頓狂な声が出てしまう。

今、なんと??

 

「どうした。早く取りに来ないか、大野夏輝。」

 

「え、あ、はい。」

 

 

なんで俺なんだ?

俺は投げるどころか、一次予選では出場すらできない。

 

こんな俺がエースナンバーを背負ってもいいのだろうか。

 

 

 

本心は、嬉しい。

だけど。

 

だけど、とてもじゃないがこんな俺が…今の俺が受け取っていいとは思えない。

 

 

「本当に俺が、この番号を受け取ってもいいんですか。」

 

「不服か?」

 

この番号の意味は、監督もよくわかっているでしょう。

そう目で訴えかけるように、言葉を続けた。

 

 

「俺は投げられません。」

 

「わかっている。」

 

「それでも、ですか。」

 

 

そうすると、監督は大きく頷いた。

 

 

「これは俺だけでなく、他の投手からの推薦でもある。」

 

他の投手?

なんであいつらが、わざわざエースを。

 

 

「俺たちはまだ、なっさんに勝った訳じゃないですから。な、降谷!」

 

 

沢村はそういうと、降谷の背中をドンと叩いた。

そう言うと降谷も、こくりと小さく頷いた。

 

ノリもまた、頷いて肯定する。

 

それを見て監督はまた、話を始めた。

 

 

「確かにお前は今大会投げられないだろう。しかしそれでも、俺はお前はエースであってほしいと思う。」

 

 

そう言われ、俺は思わず泣きそうになってしまう

なんだろう、すごく嬉しい。

 

 

「日々の生活から、練習への態度。もちろん実力もそうだが、前の二つが1番、メンバーを決める上で大切だと思っている。それは、お前たちもわかっているはずだ。」

 

 

もちろん、頷く。

それは常々言われていることだし、少なからずみんなそれを意識している。

 

 

「常に自分ができる最善を尽くしてチームに勝利をもたらす。チームのためにそれができることこそがエースだと俺は思っている。違うか?」

 

「いえ。」

 

「ならお前は、このチームのためにいつも最善を尽くしてきたじゃないか。投げられないながらも、それでもチームが勝てるように行動していた。だからこそ、他のチームメイトもお前をエースに推薦したんだと思うぞ。」

 

 

チームのために、自分ができることをする。

勝つために、己の最善を尽くす。

 

 

「もう一度言う。背番号1番、大野夏輝。」

 

 

俺は、投げられない。

今の段階では、試合で、プレーでチームに貢献することはできない。

 

それでも。

俺ができることだけ、精一杯やろう。

 

 

その誓いを胸に、俺は大きな声で返事をした。

 

 

 

監督から手渡される背番号。

俺はそれを、両手でしっかりと握り締めた。

 

 

 

 

「受け取れるな?」

 

「謹んで、受け取らせていただきます。」

 

 

そうして俺は、監督の手から離れた背番号を受け取った。

 

ただの布切れ一枚に過ぎない。

しかし、重い。

 

 

俺はその番号を、大切に抱えた。

 

 

 

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