燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード73

 

 

 

 

 

6回の裏、青道高校の攻撃。

先頭打者の東条が低めのスライダーをしぶとく拾って、センター前ヒットを放ちチャンスメイクをする所から始まる。

 

0アウト、ランナー一塁。

ここで遂に、俺大野夏輝の出番が回ってくる。

 

 

「9番、麻生くんに変わりまして、代打大野くん。」

 

 

投手で貢献できない分、打撃で。

試合前から予告されていたように、後半戦で代打として起用された。

 

 

「あまり深く考えすぎるな。自分の反射神経を信じて、とにかく来た球を弾き返していけ。」

 

 

監督から一言、励まされる。

肯定するように首を縦に振り、息を吐いた。

 

 

ベンチ前でバットを2閃。

調子は悪くない、集中力も高まってる。

 

いける。

 

 

 

相手投手は、右の本格派。

スライダーと、チェンジアップが決め球か。

 

ベンチから見た軌道的には恐らく、スライダーは斜め横で変化量は大きい。

チェンジアップは沈むというよりは、止まるチェンジアップだな。

 

 

「かなり状態良いからな。コントロールいい投手って仮定してもいいくらい。」

 

「わかった。」

 

 

ここまで無安打の4番に耳打ちされ、頷く。

確かに、今日は荒れているようには見えない。

 

どちらかというとノーコンなタイプなはずなんだけど。

 

 

まあ、いいか。

寧ろ狙いやすくて、やりやすい。

 

 

 

ふぅっと息を吐き、打席に入る。

 

なんか、変な感じだな。

いつもは投手として結果を求められ、打撃がそこそこ率を残せるから上位でも使われていた。

 

でも、今日は違う。

完全に打撃だけで、評価される。

 

 

 

集中しろ。

この1打席に、入り込め。

 

 

 

狙い球は、真っ直ぐ。

というより、ストレートにタイミングを合わせる。

 

動いたら、対応しろ。

きっと、できる。

 

 

 

 

マウンドには、1年生エース。

投手としては未熟だが、未来のあるいい選手だ。

 

昨日と今日と、連投。

しかしボールには、まだ力がある。

 

 

 

初球は、恐らくストレートだろうな。

きっと投手の俺に対しては、インコースをドンドン攻めてくるだろう。

 

普段なら無視するのだが、今日の俺は打者だ。

 

踏み込んででも、ヒットを打つ。

どうにかしてでも、塁に出る。

 

今日の俺に求められているのは、打者大野夏輝の結果なのだから。

 

 

 

 

初球、案の定真っ直ぐ。

これを振りに行くも、空振り。

 

やはり、速い。

というか、ギア入れてきてる?

 

 

 

2球目、同じようなボールに空振り。

 

またも深呼吸して、俺はバットを掲げた。

 

 

 

同じ投手としての、意地か。

俺にだけは打たれないって言う気概を感じる。

 

 

 

(気持ちはわからんでもないけど。)

 

 

俺も、同じような感覚になることはよくある。

特に打撃成績の良い投手なんかだと、ね。

 

所謂、数少ない直接対決だから。

代打で出てきたエースを抑えれば、チームには少なからず焦りが生まれる。

 

だからこそ、あの投手はここでギアを入れてきてる。

 

 

 

が、逆にここで打てれば。

流れはこちらに持ってこれるし、上位打線に繋がる。

 

上まで持っていけば、あとは何とかしてくれる。

だから俺は、とにかく塁に出る事だけを考えればいい。

 

 

 

3球目、今度は少し中に入ったボール

これをバットに当てたものの、流石に力を入れているだっけある。

球威に押されて前に飛ばずファール。

 

 

 

完全に押されている。

あの投手の勢いに押されている。

 

しかし、やることはさほど多くない。

というより、俺ができることなんて限られている。

 

 

一発は、俺にはない。

俺にできるのは、繋ぐこと。

 

そしてこの状況を打破すること。

 

 

 

 

 

 

もう一度、整理する。

 

最速135キロのストレートと、大きく変化するスライダー。

あとは、この試合ではあまり投げていないが、チェンジアップ。

 

コントロールはあまり良くないと聞いていたが、今日は絶好調。

ボールもあまり荒れていない。

 

そして、俺に対してかなり力を入れて投げ込んできていること。

 

 

 

これが、相手投手のこと。

あとは、そうだな。

 

 

 

自分の能力を信じて、バットを振れ。

 

 

 

 

 

4球目。

真ん中高めのボール。

 

早いボールか。

角度的には、ゾーン内にきているボール。

 

これは確実に仕留める。

 

 

ストレート軌道。

ある地点で、ボールは徐々に変化を始める。

 

 

曲がり始めた。

こちらに近づいてくるように、曲がってきた。

 

 

 

反応しろ。

最短を走れ。

 

無理に引っ張ろうとせず、確実にコンタクトする。

あとは思い切り振り抜けばいい。

 

 

狙いは、外野の上ではない。

内野の頭さえこえてくれれば、それで。

 

 

 

 

 

金属の快音。

少し鈍いが、これはこれでいい。

 

 

少し詰まり気味の打球がレフト前に。

内野の頭をこえて外野の前に落ちるヒットで、上位打線に繋いだ。

 

 

 

一塁ベース上、レガースと肘当てを一塁ランナーコーチの木島に渡す。

 

「ナイスヒット。」

 

「サンキュ。あんま綺麗なヒットじゃねーけどな。」

 

「関係ないさ。」

 

そう言って、木島が笑う。

いやまあ、そうだね。

 

 

本当に打てて良かった。

ここで打てるかどうかで試合の流れもだいぶ変わっていたから。

 

 

 

3点差を追いかける俺たち青道高校。

この回遂に、0アウトランナー一二塁と大きなチャンスを作る。

 

 

明らかにこちらに視線を向ける投手。

やっぱり、俺に打たれるのは癪だったか。

 

ムキになるのもわからなくはないけどさ。

しかし、いつまでも引きずって打たれてちゃ本末転倒だぞ。

 

 

 

 

打順は1番に帰り、リードオフマンの倉持が打席へ。

 

打撃成績は、ココ最近あまり良くない。

恐らくここは、バントだろうな。

 

倉持の後からは、白州と小湊、そして御幸とその後はチャンスに強い打者が続く。

チャンスを広げて繋ぐのが、理想だろう。

 

 

 

倉持は初球のストレートをバント。

三塁線に転がる絶妙なバントで、ランナーは二塁と三塁へ。

 

 

しかし、ここで投手がファンブル。

倉持の脚の速さに焦ったか、処理を誤ってしまった。

 

隙を見せたが最後、倉持は一気に一塁を駆け抜ける。

ギリギリの勝負で、倉持の足が勝った。

 

 

 

バントでの内野安打。

これで、ランナーは満塁。

 

 

一発出れば、逆転。

ここからはチャンスに強いバッターが続く。

 

 

(さあ、大一番。決めろよ、キャプテン。)

 

 

バッターボックスには、元仕事人。

今は、チームを束ねる長。

 

必ず、返してくれるはず。

 

 

 

 

どうにかして逆転したい。

単打だとしても、その後には小湊御幸と続くため、まだまだチャンスはある。

 

バッテリーとキャプテンの真剣勝負。

勝敗が決したのは、その初球であった。

 

 

 

 

少し浮ついたストレート。

これを力まずに反応し、センター前へ。

 

お手本のようなセンター返しで、外野まで打球を運んだ。

 

 

三塁ランナーの東条はホームへ。

少し前に出ていた外野手の前に落ちるセンター前ヒットで、チャンスの状況を維持したまま繋いでみせた。

 

 

 

未だ満塁のチャンス。

 

ここから俺たち青道高校はクリーンナップへ。

チャンスに強い、というかそもそも率が高い小湊が打席へ。

 

木製バットのしなやかさを活かした柔らかいバッティングで確実にミートする技術は、この青道の中でも現状トップだろう。

 

 

この小湊がさらにタイムリーヒットで追加点。

これでランナー2人還り、なおもランナー一、三塁のチャンス。

 

 

 

同点までこぎつけたこの場面。

ここで打席に立つのは。

 

 

(やっぱり、お前なんだよな。)

 

 

4番、キャッチャー、御幸一也。

この青道高校で最もパンチ力がありある程度の率もある。

 

尚且つ、チャンスにつよい。

特に、ビハインド時や勝負所では異常なほどの集中力を誇り、チャンスの強さが際立つ。

 

 

この大会でも既にホームランを放っており、絶好調。

 

 

ここで、決めろ。

それができなきゃ、4番とは言えんだろう

 

 

「絶対打てよ。4番のお前が決めちまえ。」

 

すれ違いざま、声をかける。

すると彼も、ニヤリと笑って答えた。

 

 

「プレッシャーかけんな、馬鹿。」

 

「その方が燃えるくせに。」

 

「るせ。」

 

 

目が、物語っている。

このチャンス、かなり集中力が高まっている。

 

 

左バッターボックスに入る御幸。

 

投手の集中力は、既に切れかかってる。

一年生がゆえ、だな。

 

まだ我慢強さは、足りていない。

 

 

投げ込まれた初球の真っ直ぐは高めに抜け、1ボール。

 

 

「決めろ、一也。」

 

 

俺がそう呟いた、2球目。

 

外角少し高くなったチェンジアップ。

これを思い切り引っ張り、叩いた。

 

 

 

強い打球はライト後方。

長打警戒していた守備の頭をこえて、フェンスに直撃。

 

逆転となる2点タイムリーヒットを放ち、3−5。

 

 

勝負を決める長打を放ったのは、やはりこの男であった。

 

この回で一挙5点。

逆転に成功した青道高校は、次の回から継投に入る。

 

 

 

7回は東条がしっかりと無失点。

残りの2回を川上がしっかりと抑え、試合は終わった。

 

 

3−5。

降谷は初回から乱調だったものの、2回以降からはしっかり立て直して何とか投げ切った。

 

打線はまあ、あれだな。

起爆剤があればという感じだな。

 

もう少しなんとかしなきゃいけないよな。

俺も含めてだけど。

 

 

あまりいいとは言えない内容であったが、まあ後の祭りだ。

とにかく本戦には進んだ。

 

 

ここからはそう簡単にはいかないだろうが、やるしかない。

 

 

 

 







大野くんが入ってことにより、チーム自体はかなりの上方修正が掛かっています。
そのため相手にもかなりバフをかけているので、何とかバランスをとっていきたいと思います。



なんというか、インフレが…。
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