燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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今回は短めです。


エピソード80

 

 

 

やあ、大野夏輝だよ。

次の試合、二回戦目に向けて、練習後の食堂で試合ビデオを見ているよ。

 

 

二回戦目の対戦相手は、東東京地区の帝東高校。

現在の東京地区でもトップクラスの守備力を誇る強豪校だ。

 

 

内外野はもちろん堅牢。

球際の強さ、守備範囲ともに高校生のチームとは思えないほど精度が高い。

 

 

何より、バッテリー。

 

一年生エース、左の技巧派サイドスローの向井。

扇の要でもあり打線の中心でもある正捕手で四番、乾。

 

この二人のコンビメーションで、数多の打線を沈黙させてきた。

 

 

 

向井は、最速こそ余り速くないものの、抜群のコントロールと投球術で試合を掌握するタイプ。

 

 

コントロールで言えば多分、俺よりもいい。

なぜなら彼が操作できるのは、平面上のストライクゾーンだけではないからだ。

 

 

 

ストライクゾーンというのは、3次元である。

正面から見れば、横幅はホームベースと同サイズであり、高さは打者の片上部とズボン上部の間から膝下までが、一応の定義である。

 

しかしそのストライクゾーンには、奥行がある…らしい。

 

面は上で書いてあるような長方形である、五角柱のような形でストライクゾーンは存在している。

 

が、普通の人間ならば平面的にしか見ることができないから、それを実感することは中々ない。

 

 

「狙って投げてるよな、今の低めも。」

 

「あぁ。ゾーンから外れるスクリューは見極めマジでキツそうだな。」

 

 

平面上ではボールでも、立体の途中でストライクゾーンを通過して見逃し三振を奪ったり。

その逆を使って、ボール球を振らせたりなど。

 

 

しかも厄介なのは、キャッチャーもそれを理解していること。

 

且つ、それを最大限生かすことができる捕球の上手さを誇っているからこそ、この向井の投球は成立する。

 

 

一也のように柔らかいキャッチングというよりは、ピタリとミットを止めるキャッチング。

 

向井のコントロールを完璧に信頼してるからこそ、審判に「ここだ」というのをよりアピールしている。

 

 

本当に、嫌な組み合わせである。

組むべくして組まれたというか、そんな感じの運命を感じるようなバッテリーだ。

 

 

夏の甲子園でこそ、大会優勝校の巨摩大藤巻には投手戦の末に敗れた。

 

しかし、今世代でもトップクラスの完成度を誇るバッテリーだろう。

 

 

 

 

「ストレートは終盤にもしっかり制球できてるな。」

 

「けどスクリューは高めに浮いたりもありそうだ。球数をある程度投げさせれば、失投も必ず来ると思う。」

 

近くで見ていた白州とそんな事を話ていると、前で画面を操作していた渡辺…通称ナベが頷いた。

 

「大野が言った通り、球数を投げさせられた試合では例外なく終盤で少し球が浮いてる。特にスクリューとかスライダーに関しては真ん中付近に抜けることもあるので、ここは確実に仕留めたいですね。」

 

 

スタミナは結構あるイメージだけど、まあ終盤になると流石に球は浮くか。

浮いた変化球を狙って、少ないチャンスを活かしていく。

 

 

「低めの厳しいコースを早打ちしても、相手をリズムに乗せるだけだ。しっかり球数を投げさせ、球が浮いてきた終盤に確実に点を取る。我慢が必要な試合になるが、好投手を相手にする以上は、仕方ないことだ。」

 

 

当然だな。

成孔学園との試合みたいに序盤に点を取れたら楽だろうが、中々そうもいかないだろう。

 

特に向井のように安定感のある投手が相手になる以上、相手の失投とかミスを狙う必要があるからな。

 

 

「粘り強く、我慢強く。負けた悔しさ、それにここまでの厳しい練習を乗り越えてきたお前たちなら、できるはずだ。」

 

 

そう言って監督は、こちらの表情を確認するように、見回す。

頷き、言葉を続けた。

 

 

「全員で勝つぞ。」

 

 

去年のような、核弾頭の4番はいない。

爆発するほど打線も、力は無い。

 

エースは不在、投手を担っているのは殆どがまだムラの多い1年生。

 

 

勝つには、全員の力が必要だ。

だからこそ、監督はこの言葉をいつも口にしていた。

 

 

「明日の先発だが…」

 

 

帝東は強い。

一筋縄では行かないどころか、勝てるかどうかすらも怪しい。

 

全員で、勝つ。

それが、今大会俺たち青道高校のテーマだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合当日。

 

天気は、正に曇天。

というより、寧ろ雨模様。

 

霧雨で尚且つ、時間によって強さがマチマチである。

 

 

投手は神経使うな、こりゃ。

向井もそうだが、特にうちの先発の子なんかは。

 

 

「今日は冷え込むぞ。身体もそうだが、肩は特に冷えないように気つけな。」

 

「わかってますよ、なっさん!!」

 

 

左肩を回しながら、笑う沢村。

 

今日の試合を勝ったとして、次の対戦相手は恐らく稲実。

試合間隔も短くなっていくと、それだけ降谷の負担も大きくなっていく。

 

 

その為、監督はこの試合。

思い切って、先発に沢村を指名したのだ。

 

 

 

相手先発の向井も、技巧派サウスポー。

奇しくも、1年生サウスポー同士の投げ合いとなる。

 

 

スターティングメンバーは、先日の試合と同じ。

レフトに降谷が入り、俺がセンターに入る。

 

先攻めは、相手の帝東高校から。

 

 

注目の立ち上がり。

沢村、大一番の先発はどう転がるか。

 

「ガンガン打たせていくんで、バックの皆さん、宜しくお願いします!!」

 

 

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