燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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エピソード81

 

 

 

1回の表。

帝東高校の攻撃。

 

テンポよく打者2人を抑えた沢村に対して、迎えるバッターは3番。

 

インコースのフォーシーム2球共にファールで追い込み、3球目。

 

最後も同じようなボール。

少し詰まった打球は高々と上がり、浅いセンターフライとなる。

 

 

「っしゃあ!センター!」

 

「はいよ。」

 

 

沢村栄純、注目の立ち上がりは三者凡退。

持ち前の強気な投球で、テンポよく初回の攻撃を終えた。

 

「おーしおしおし!おーしおしおし!」

 

「はえーよ。」

 

「回を無事に終えましたんで!」

 

「毎回やる気か!」

 

俺と金丸のツッコミによる、テンポの良い会話。

その後倉持からも鋭い蹴りが飛んできたのは、言うまでもない。

 

しかし冗談はさて置き。

 

主砲、4番の乾に回す前にリズム良く押さえ込んだ。

まずは立ち上がりは完璧かな。

 

 

「今ので丁度いいテンポだからな。これ以上投げ急いでも慌てるだけだから、このペースで行くぞ。」

 

女房訳である一也がそう言うと、沢村もまた応えるように大きな声で返事をする。

 

 

「コースは悪くない。球もキレてるし、丁寧に投げれば何とかなるぞ。」

 

「そうですね。あとはアウトコースに甘く入らないように。乾は外のボールも飛ばすパワーがあるからな。」

 

 

落合コーチと俺も一言ずつ。

 

「温存して抑え切れる相手じゃないからな。後ろにはノリも東条も、それに降谷だっている。スタミナ気にせずガンガン攻めてけよ。」

 

沢村も、頷く。

 

元々この沢村もエースを目標にしている為、完投への拘りは非常に強い。

その為にスタミナをつけているのだから。

 

 

しかし、全員で勝つ。

みんなでそれを掲げているからこそ、沢村も全力で瞬間を闘う。

 

 

 

1回の裏、青道高校の攻撃。

先頭打者の倉持が、右の打席へ。

 

「低めのスクリュー、引っ掛けんなよ。」

 

「わーってる。」

 

左打者にとって、サイドスローの向井のような角度のついたボールは非常に見えにくい。

 

だから右で打てるのならば、基本は右で打った方がいい。

 

 

さて、そんな倉持だが。

4球目のスライダーを見逃し三振で切り落とされる。

 

 

 

スライダーのキレも良さそうだったし、気をつけなきゃな。

 

「っし、どうするかね。」

 

左対左。

基本的には、打者が不利のこの場面。

 

尚且つ、向井はサイドスロー。

更に角度がつくから、より打ちにくいだろうな。

 

 

セットポジション。

横から投げられたストレートは、少しシュートしながら外低め一杯に決まった。

 

 

(うお、見えにく。)

 

 

角度がついてるせいか、やはり視野外から投げられてる感覚。

 

背中からボールが出てきているように見えるとはよく言うが、本当にそう見える。

 

 

しかも、コースがいいんだわ。

対角線上で少しシュートしたからこそ、ギリギリに決まった。

 

2球目、先程より少し甘いコース。

しかしこれを見逃すと、ボールは途中で逃げるように変化し、ボールゾーンへと外れていった。

 

(スライダー、これもやっぱキレもいいな。)

 

サイドスローの横変化は独特だ。

 

オーバースローやスリークォーターのスライダーは基本、縦か斜め下。

しかしサイドスローは横滑りするように変化する。

 

だから左打者からすると、他の投手よりもキレがよく感じる。

 

 

今のも正直、打ちにいってたら空振りしていたと思う。

我慢した俺、グッジョブ。

 

しかし、3球目のインローのストレートで追い込まれる。

 

 

4球目のスライダーは何とかバットに当てたものの、最後は低めのスクリューを引っ掛けてセカンドゴロとなる。

 

 

 

この落ちるボール。

ゾーンからボールゾーンに沈むこのスクリューを見極めなければ、打てない。

 

「やっぱり低めはどうもキツイな。高めに的を絞って、あとはお前のバットコントロールに任せる。」

 

打席に向かう小湊にすれ違いざま、そう言う。

この試合の鍵になる1人なだけに、彼が塁に出られるかどうかで試合も動いてくるはずだ。

 

 

 

しかしこの小湊もヒットを生むことはできず、5球目の外低めのスクリューにバットが出てしまい、ファーストゴロとなる。

 

 

やられたな。

テンポ、打たせ方、共にバッテリーのペースで運ばれたな。

 

守備も堅いから不安もないし。

こりゃ確かに、甲子園出れるわ。

 

 

初回の攻撃は両者無得点。

互いの先発左腕が躍動し、このあとの投手戦を予感させるような立ち上がりとなった。

 

 

 

 

2回の表。

この回は4番キャッチャーの乾から。

 

甲子園でも本塁打を放っている強打者であり、打てる捕手として来年のドラフトでも密かに噂されている選手の一人だ。

 

 

この乾に対して、沢村。

初球は外角低めの真っ直ぐでカウントを取る。

 

続く2球目、インコース低めのストレート。

126km/hのこのボールに乾も合わせるも、少し詰まりファール。

 

 

テンポが良い、球持ちが良い。

打者が気持ちを整える前にポンポン投げるから、中々タイミングも取りにくい。

 

 

3球目も外角低めの直球。

これもファールにされるも、バッテリー有利のカウントに違いない。

 

 

 

最後はインコース。

ストライクゾーンからボールゾーンに逃げる高速チェンジアップでショートゴロ。

 

沢村のウイニングボールで、4番の乾を完璧に押さえ込んだ。

 

 

続く5番、6番もテンポよく打ち取り、3アウト。

持ち前の強気な投球で、この回も三者凡退で終えた。

 

 

 

対する向井も、4番の御幸にヒットを打たれたものの、その後はピシャリと抑えて3アウト。

 

2回、3回とお互いに得点が動かずに進んでいく。

 

 

 

 

そして、4回。

ポツリポツリと、淡い雨が少し肌に当たった。

 

 

 

 

 

 

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