燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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ダイヤのA、完結おめでとうございます。
このような素晴らしい作品と巡り会うことができ、とても楽しませて頂きました。

16年間、お疲れ様でした。
そして、ありがとうございました。





エピソード82

 

 

 

 

 

「降ってきたな。」

 

「あぁ。」

 

守備位置であるセンターに向かいながら、隣で守る白州にそう言う。

 

 

4回の表。

ポツリポツリと降り出した雨。

 

沢村は変わらずマウンドに上がるが、少しばかり不安はある。

 

 

降谷のようにガンガンストレート、強いボールで押していく選手であれば、ある程度制球が効かなくてもなんとかなる事が多い。

 

 

しかし沢村のボールは、そこまで速くない。

むしろ高校生の中では中の下、くらいである。

 

甘く入れば長打を喰らうし、球質も俺同様、軽い。

 

 

彼の持ち味は強気なインコース攻めと、それと相対するアウトロー低めに投げ込む技術。

 

キレのあるストレートと動くボールを、両サイドを広く使って制球するのが、沢村の攻め方。

 

 

雨で制球が効かなくなってくると、甘く入って痛打されやすい。

 

それに、グラウンドコンディションが悪くなっての守備のミスも懸念されると、リズムにも乗りにくい。

 

沢村にとっては、雨は結構痛手かもしれない。

 

 

 

ここまで出したランナーは、2人。

ヒットとフォアボールで出塁こそ許したものの、その後は後続を絶っている。

 

良いリズムできているだけに、痛いな。

ここからリズムが崩れると、流れも持っていかれ兼ねない。

 

 

さあ、打者は3番から。

この回はクリーンナップから始まる。

 

前の打席では、完璧に抑えた。

乾の前にランナーを出したくないというのもあるから、ギアを上げていくはずだ。

 

 

俺の予想は当たり、一也と沢村もここは意識して攻めていく。

まずはアウトコースのストレート。

 

少し高めだったものの、合わせきれずにファール。

 

 

2球目は、外に逃げる高速チェンジアップ。

外角からボールゾーンに逃げるこのボールを捉えられるも、サードライナー。

 

少し強い当たりだったが、ここは金丸が反応。

しっかりと、強い打球を掴み取った。

 

 

 

形はどうあれ、まずは1アウト。

ランナーがいない状況で、乾と勝負できるのは大きい。

 

まだ雨の影響は少ないのか、抜けるところまでは行ってない。

できればこの回までテンポよく抑えたいが…

 

 

 

肩に当たる水滴が、大きい。

少し雨が強くなって来た気がするな。

 

打席には、4番の乾。

1打席目はこの乾も、しっかりと抑えることができた。

 

 

しかし、2巡目。

対応され始めるこの打席で、どう対処できるか。

 

 

 

初球、先程とは打って変わってインコースのストレート。

内角高めのボールを見逃すも、少し外れて1ボール。

 

際どかったが、少しインコースに寄りすぎたか。

 

 

2球目、同じくインコースのストレート。

これも見逃され、1ボール1ストライクとカウントが並ぶ。

 

 

 

できれば次のボールを入れて追い込みたいが、迂闊に入れてしまえば持っていかれる。

 

難しいラインだな。

沢村、それにボールの状態が中々に、読めない。

 

 

3球目、外要求の一也のミットに反して、内のボールゾーンへ。

少し乾も仰け反るも、これは外れてボール。

 

 

ボール先行、2ボール1ストライク。

しかし打者が打者なだけに、中々ストライクを取りに行くのも難しい。

 

厳しく、結果的に四球でも…という感じか。

 

 

 

いや、一也と沢村なら勝負だろうな。

少なくとも、俺と一也の時は確実に勝負しにいく。

 

(エースを狙うんだろ。ここで勝負しなきゃ、スタートラインにすら立てねーからな。)

 

 

4球目。

インコース、ボールゾーンのストレート。

 

少し外れているが、強引に引っ張る乾。

しかしこれはゾノの横を抜けていき、ファール。

 

 

 

5球目、再びインコース要求。

今度は先程よりも大袈裟に外れ、ボール。

 

 

3ボール2ストライク、フルカウント。

青と黄、2色のランプが全て灯る。

 

 

 

内に、2球続けた。

否、寧ろ抜け球も合わせれば、この打席はインコースのみの攻め。

 

勝負球は、アウトコース。

できれば、外角の低め。

 

 

しかし乾も捕手ならば、そこを狙いに来る。

乾ほどの好打者なら、内角攻め後の外角にも対応できるからだ。

 

 

この2巡目が終われば、恐らく継投に入る。

となれば今更、4番に対して出し惜しみする必要はない。

 

ここまで使った事の無かった攻め方で、決める。

 

 

 

一也がサインを出し、沢村がそれを見て頷く。

 

ワインドアップからプレートと並行になるように身体を傾け、足を高々と上げる。

並外れた身体の柔らかさと体幹の強さから織り出される、豪快なフォーム。

 

そこから右手に嵌められたグローブで壁を作るように、前に突き出す。

身体の開きを抑えて、全身の捻転と溜めを生かすために。

 

 

 

一也が構えているコースは、アウトコース低め。

 

コースはある程度アバウトでいい。

流石の乾でも、初見のボールは捉えられまい。

 

 

スライダー方向に強くかけられた回転。

打者の手元で、利き腕と反対側に高速変化するカットボール。

 

左打者の乾にとっては、外に逃げていくように変化する。

 

 

 

コースは、一也が構えたコースよりも少し内。

とはいえ、低めに決まるナイスボール。

 

初見でこのボールは、捉えられない。

 

 

 

 

そう思った刹那。

乾のバットから、快音が響いた。

 

 

僅かに芯は外している。

しかし、乾はこの変化に対応した。

 

強引に振り抜いた打球は左中間。

レフトを守る降谷と俺の間に打球が上がる。

 

しかし、打球が落ちてこない。

おいおい、まさかだろ。

 

 

「ちょ、マジかよ。」

 

 

鋭い当たりは左中間フェンスに直撃。

あわやスタンドインという当たりだったが数cm足りず、ツーベースヒットとなった。

 

 

すげえな。

少し甘いとはいえ、沢村も悪いコースではなかった。

 

しかも初見のカットボールをあそこまで運ぶなんて。

 

どんなパワーだよ、おい。

敵ながら天晴れだ、本当に恐ろしい。

 

 

 

 

それと同時に。

 

あの打者と、対戦したい。

 

技術も、頭も、力も。

どれも高い水準を誇るあの打者に。

 

 

あのスラッガーを、捩じ伏せたい。

 

 

 

(今はそんなこと言っていられる立場じゃない。)

 

だけど。

次は、必ず。

 

 

 

 

 

息を吐き、俺は声を出した。

 

「1アウトな沢村ー!コースは悪くなかったから、引き摺るんじゃねーぞー!」

 

今の俺は、投げられないエース。

投手のリーダーとしての、立場。

 

今は自分ではなく、チームの為に。

 

 

声を出せ。

周りに目を配れ。

 

投げられないなら、他で貢献するしかない。

 

 

「次も5番、攻めてけよ沢村!」

 

「わかっておりますなっさん!ガンガン打たせていきますんで、他の方もどうかお力添えを!!」

 

これを皮切りに、ナインたちの声もさらに大きくなる。

 

 

 

 

この後沢村は5番をファーストゴロ。

ランナーを三塁に進めたものの、最後の6番に対してもストレートを詰まらせてセンターフライで、この回も無失点に抑えて見せた。

 

 

高々上がった白球を掴み取り、アウトコール。

 

3つ目のアウトを取り、ベンチに戻る時。

 

 

すれ違いざま、乾と視線が重なった。

 

 

 

 

 







沢村強いな。
そして乾も上方バフかかってます。


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