前回投稿時間間違えましたわ。
鵜久森との試合が始まって、少し時間が経った頃。
初回の守りについている俺たちナインを待ち受けていたのは、降谷の大乱調であった。
先頭の近藤にフォアボールで出塁を許すと、大西にヒットを打たれた。
丸山を何とかライトフライに抑えたものの、迎えたバッターは4番の梅宮。
ピンチで迎えたくないバッターNO.1。
このチームで一番打たれてはいけない打者。
結果は、真ん中高めを思い切り引っ張られて3ランホームラン。
スコアボードに刻み込まれた「3」という数字を見て、俺は溜め息をついた。
「どーすんのよ、これ。」
「俺に言われてもな。」
俺が零すように呟くと、横にいた白州も顔を背けた。
これだよなぁ、降谷の難しい所は。
絶好調の時は、相手は全く手が付けられないほどに打者を圧倒する。
しかし絶不調の時は、こちらからは全く手が付けられないほどに乱れて自滅する。
捕手の手でもどうにも出来ないから、直しようがない。
この後何とか後続を断ち、3失点に抑える。
幸いなことにフォークはある程度落ちてるから、それで何とか三振が取れていた。
「成宮もストレート勝負でやられてたし、梅宮にはそういう能力でもあんの?」
「んな訳あるか。」
御幸からツッコミを受け、それを流す。
まあ、取られてしまったものは仕方ない。
俺たちが点を取り返してやれば、負けることはないからな。
ということで、裏の俺たちの攻撃。
先頭打者は、初のリードオフマン起用の小湊。
「やることはいつもと変わらない。初球から狙っていけ。」
監督がそう言うと、小湊も頷く。
右手で木製のバットを握り締めながら、打席へと向かっていった。
倉持が足で掻き回すリードオフマンだとすれば、小湊に期待するのはヒットによる出塁。
出塁率の高いミート力を生かして、ランナーを置いたケースを増やすことが目的だ。
何より、ランナーが出れば初回から4番に回せる。
先発からしたら、嫌だと思う。
相手は、コントロールのいい投手。
尚且つ、強気に攻めることができるメンタルもある。
(甘いコースは来ない。だから、思い切っていけ。)
そう思いながらネクストで待っていると、その初球。
木製バット特有の小気味良い音が、鳴り響いた。
強い打球は、センター前へ。
初球の甘いボールを、完璧に弾き返した。
「いらない心配だったか。」
そもそも、気負うようなタマじゃないか。
普段はおとなしいが、打席にはいると本当にボールのことしか見てないからな。
塁上、赤面しながら右手を突き上げる小湊。
それを見て、なんとなくホッとする。
いつも通りだね、なんか安心した。
さて、じゃあ俺の打席だな。
できればランナーを進める、か。
元々バントは得意じゃないし、方法としてはヒットで繋ぐのが俺の役目なんだ。
コントロールが良くて、ストレートとカーブが持ち球。
縦のスライダーは、とりあえず無視だな。
集中、ストレートに狙いを澄まして。
カーブは粘って、弾き返す。
初球、低めのストレートが高めに外れているものの、手が出てしまいファール。
焦りすぎたか。
珍しく、がっつきすぎた。
2球目、カーブ。
かなり、遅い。
上手く合わせたものの、これが一塁線切れてファール。
うーん、これは打っても長打になりにくそう。
やっぱりストレートを弾き返すのが1番かな。
難しいことは考えるな。
シンプルに、来た球に反応する。
集中、集中。
来た球は、速球。
外のボールに対して俺は、思い切り弾き返した。
あまり強くない当たりだが、これがサード後方に落ちてヒットとなる。
(コース、良くなかったな。)
やっぱり、昨日からの連投が影響している。
そんなことを考えながら、俺は一塁上でレガースを外した。
「ナイスバッチ。いい流し打ち。」
「サンキュ。詰まっただけだよ。」
ランナーコーチの木嶋と軽く話して、外したレガースを手渡した。
さあ、立ち上がりの不安定なこの状態で、できるだけ多く得点を取りたい。
ここから先は。
打撃のプロが、並ぶのだ。
この後白州がフォアボールで出塁すると、満塁のチャンスで4番の御幸。
ランナーが貯まれば貯まるほど、得点圏に進むほど打力が上がる不思議なバッター。
つまり今の御幸は、最強だ。
カウント3−1。
ストライクゾーン内で変化した早い変化球を、御幸は弾き返した。
打球はライト後方。
強い打球はライトとセンターの横を抜けていき、一塁ランナーの小湊と二塁ランナーの俺がホームに帰る。
4番の御幸の2点タイムリーツーベースで、得点差を一点まで詰めた。
なおもチャンスの場面で、打席には昨日逆転のタイムリーを放ったゾノ。
この男もインコースのボール球をうまく捌き、これもまた長打となる。
またもランナーが2人帰り、逆転に成功。
この後金丸のタイムリーを含む打者一巡の攻撃で、初回からいきなり6得点と大躍進。
降谷もなんとか立て直し、2回以降失点を許さずに抑えていく。
得点圏に何度もランナーを置いたものの、決定打を許さない。
しかし、反対に。
初回から6失点を喫した梅宮もまた、これ以上の得点を許さない。
普通の投手なら崩れてもおかしくないのだが、ここまで立ち直るとは。
少し、異常な気もするくらいだ。
激動の初回以降は、静かな展開が続く3回戦目。
3−6で迎えた5回の表。
試合が、動き始める。