燃え上がれ青炎!   作:聖戦士レフ

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遅くなりました。
これから少しバタつくので、頻度落ちるかもです。




エピソード97

 

 

 

 

 

 

大きなグラウンドに、ポツリと十数名。

緑色のジャージを身に纏った俺たち青道高校野球部は、珍しくボールを蹴っていた。

 

 

「ヘイ!パス!」

 

走る倉持に、ゾノが的確にパスを出す。

その瞬間に倉持にマークが集中する。

 

 

倉持なら躱せる。

そう確信した俺は、幼なじみであり相棒でもある男にアイコンタクトを送った。

 

交差する俺と御幸の視線。

 

(いくぞ、一也。)

 

(任せろ。俺がマークを集めっから、お前が決めろ。)

 

互いに頷き、意思疎通を済ませる。

そして、御幸が倉持に声をあげた。

 

「ヘイ、倉持!」

 

「決めろや御幸!」

 

そうして出されるパス。

これを御幸が受け取って、シュートと見せかけて俺にパス。

 

 

の、流れを想定した俺。

 

 

地面を這う白黒のボール。

御幸はそれを受け止めようと足を上げ。

 

見事に、すり抜けた。

 

 

そしてその刹那、横並びでパスを待っていた俺もトラップを見事にスカる。

 

正に阿吽、俺と御幸はやらかす所まで一緒である。

 

 

結局フォローに入っていた白州が無難にシュートを決め、ゴールネットを揺らした。

流石、仕事人である。

 

 

「先輩たちがグレちまったぁぁぁ!」

 

唐突に飛ばされる、野次。

校舎上階から放たれたやけに通るその聞きなれた声の主を、俺はよく知っていた。

 

 

沢村である。

 

「うるせーぞ。」

 

「んでもって、なっさんも御幸先輩も下手すぎる!」

 

「「うるせーよ!」」

 

重なる、俺と御幸の声。

これぞまさしく、阿吽である。

 

 

 

 

まあなんで俺たちがサッカーをやっているかと言うと。

他の2年生たちは、修学旅行に行っているからだ。

 

高校の3大行事とも名高い一つ、この修学旅行。

無論、俺たちは大会と重なるため完全に不参加である。

 

 

別に構わない。

確かに修学旅行も行きたかったけど、今は何より野球だ。

 

大会で優勝したい。

そして、監督と最後まで野球がしたい。

 

今は、それだけだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、学校の授業も程々に。

俺たちは、いつもと変わらず練習を始めた。

 

 

今日は2年生が修学旅行の影響か、授業が早く終わった。

 

だからこそ、練習も長く取れる。

準決勝前にこうして長い時間が取れるというのは、かなりプラスだ。

 

 

 

今日もまた、天気がいい。

本当に、野球日和のいい日だ。

 

そんなことを思いながらアップをしていると、いつもよりも早く監督がグラウンドへとやってきた。

 

 

「紅白戦を行う。準決勝前に行える最後の実践形式だから、チーム全体で共通の課題を持つように。それと、しっかり個人でも課題を持って取り組むこと、以上だ。」

 

 

 

なるほど、紅白戦か。

ここ最近やっていなかったし、準決勝と決勝は連日で行う。

 

チーム分け自体は、今のスターティングメンバーとベンチ入りメンバー。

そしてBチームの方には監督が、Aチームの方には落合コーチが入るみたいだ。

 

 

「俺からは特に何も言わねーからな。お前達で話し合って、考えてやれ。そんで、勝て。大会中にベンチメンバーに負けるようじゃ、話にならねーからな。」

 

 

厳しいが、その通りだな。

ここで苦戦しているようじゃ、まず市大三校には勝てない。

 

しっかり勝ち切って、尚且ついい内容で。

 

 

今大会の課題は、得点力。

 

初回に得点を奪えても、中盤から終盤にかけて追加点が奪えなかったり、相手に反撃のチャンスを与えてしまって接戦になってしまったり。

とまあ、なかなか完璧な流れで進むことができていない。

 

まずは、初回にしっかり先制点を奪うこと。

相手投手に圧をかけて、試合の展開を楽にする。

 

そして、中盤での追加点。

相手に攻められている意識を植え付け、流れを渡さない。

 

 

あとは、連打。

得点を奪った後も簡単に終わるのではなく、食らいつく。

 

相手の心を折る攻めを。

そして、最後までこちらのペースで進めることを。

 

 

 

これが、今回俺たちの共通課題。

となると、俺がやるべきことはチャンスメイク。

 

連打のために、何より流れを止めないことが大事。

だからランナーを返すというよりは、チャンスを維持してクリーンナップに回すこと。

 

 

ということで、今日はいつもと同じような打順。

 

1番 遊 倉持

2番 中 大野

3番 二 小湊

4番 捕 御幸

5番 一 前園

6番 右 白州

7番 三 金丸

8番 左 麻生

9番 投 降谷

 

王谷戦で復活した倉持がリードオフマンに復帰。

その後ろは、いつもと同じように並んでいる。

 

先発は降谷で、後ろで投げる予定なのはノリ。

 

 

今の、ベストメンバーだ。

 

 

 

相手の先発は、沢村。

向こうもセンターに東条もいるため、試合途中で交代してだろうな。

 

 

 

先攻は、Bチームから。

という訳で、Aチームの先発である降谷がマウンドへ。

 

それに合わせて、Bチーム先頭打者の木島が打席に入った。

 

 

この木島は、とにかくいやらしいバッティングをする。

アベレージヒッタータイプで、とにかく粘る。

 

追い込まれてからはカット、カウントが悪くなって甘く入った所を狙うか、球数を投げさせてフォアボールを誘う。

 

3年生の亮さんに近い打撃。

 

そもそもこの木島は、亮さんをかなり意識している。

と言うよりも、崇拝に近いかもしれない。

 

 

この木島に、降谷はどう対処するか。

 

まずはストレート。

速いボールが真ん中に行くも、木島は見逃してストライク。

 

続く2球目も、外の高めに決まりストライク。

 

 

御幸も、木島なら追い込まれるまで手を出さないと分かっていたのだろう。

だからこそ、強気にどんどんストライクに構える。

 

 

しかしまあ、面倒なのはここから。

ここから如何に球数を投げずに抑えられるか。

 

 

一年生の時は、粘られてフォアボールが本当に多かった。

そうでなくても、中々球数を投げさせられる。

 

 

 

思い切りいけ、降谷。

攻めろ、一也。

 

2人が選んだボールは、高めのストレートであった。

 

 

最後は152キロの直球。

最後の一球にマックスのギアを入れて、いきなり三球三振で幕を開けた。

 

(これなら今日は、心配いらないかな。)

 

 

立ち上がりは、完璧。

いつも立ち上がりが悪い…所謂スロースターターというべきか。

 

今日は、いい。

 

この後関をセカンドゴロ、三番の日笠はレフトフライと、テンポ良く三者凡退に仕留めてみせた。

 

 

マウンドから戻る、バッテリー2人。

降谷の表情を見る限り、自分でも状態がいいと感じているのだろう。

 

ベンチで防具を外す御幸に、俺は近づいた。

 

 

「状態、いいみたいだな。」

 

「まあな、できれば試合にピークを持って行きたかったけど、こればっかりは降谷の特性だからな。」

 

絶好調があれば、絶不調もある。

その幅が、異常なほど大きい。

 

 

しかし、せっかくの紅白戦の場。

できることなら、試したいことはあるはずだ。

 

「カーブは使うのか?」

 

「そりゃあな。実戦で試せるうちに、使わねーと。」

 

丹波さんから教わった、降谷のカーブ。

というよりは、丹波さんと降谷の感覚と、落合コーチの知識を擦り合わせたカーブ。

 

練習でもだいぶ投げるようになり、だいぶ制球できるようになってきた。

 

 

握りとしては、ナックルカーブから少し変更。

人差し指を完全に離して、中指と親指でのみ支えるような握る。

 

降谷のオーバースローと相まって、高いところから縦に落ちるカーブが結構相性がいい。

 

 

「これを、どの場面で投げられるか。」

 

「フォークほど使えなくていい。追い込んでからというよりは、カウント稼ぎで使えることが理想、だな。」

 

 

まずは、試合で問題なく投げることができる。

そして、ランナーを背負っている場面でも投げることができれば良い。

 

コントロールに関しては、ストライクからボールに落ちる球なんて欲は言わない。

真ん中から低めに落ちれば、OK。

 

 

追い込んでから、三振を狙ってフォーク。

ストレートの目眩しというか、カウント球としてカーブ。

 

役割分担というか、そんな感じ。

 

 

 

 

 

さあ、降谷の話もそうだが。

今日の課題は、攻撃だもんな。

 

 

「じゃ、いくぞ倉持。」

 

 

ここ最近は不調だったこの男。

やはり彼が一番にいる方が、しっくりくる。

 

この間の試合では、猛打賞。

打撃は復調の傾向にある。

 

「繋ぐ準備しとけよ、大野!」

 

「おう、出ろよ倉持。」

 

 

青道のリードオフマンが、蘇る。

 

 

 

 

 

 

 

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