「もう今年も終わるのかぁ・・・」
12月31日。フラワーお手製のおそばをすすっていると、わたしはふと、そんなことを思う。
「?・・・どうしたんですかいきなり。」
「いや~、今年の有馬記念も終わったし、商店街では年末年始の休業スケジュールが張ってあるし、駅前の大きなクリスマスツリーも撤去されてたしで、なんかね・・・」
「あ~・・・昨日駅に行ったときにはもう撤去されてましたもんね、あれ。」
クリスマス気分が抜けるころには、駅前のツリーがあったはずの場所は、ただの広い空間となっていた。・・・ちょっとばかし寂しい。
「ま、今年もフラワーと一緒に、無事に一年を終えられそうでなによりだね~。」
「いろいろありましたもんね~。・・・特に、今年は・・・」
フラワーはわたしの言葉にそう返すと、なにかを思い出すかのように視線を宙に泳がせる。
前まで住んでいたマンションの一室から、北海道に引っ越したのは今年の6月くらいだ。結構奮発して一軒家を買った。・・・ローン返せっかなぁ・・・。頑張ろ。
「・・・年賀状、来るかなぁ・・・」
「タキオンさんとかからは来そうですよね~。」
きっと来るだろう。やつのことだ、結構型破りなタイプの年賀状に違いない。・・・怪しげな薬品もセットかもしれない。
「・・・今年は0時まで起きてます?」
「さぁ・・・どうだろ。起きてる気でいるけど、途中で寝落ちしちゃうかもなぁ・・・」
そんな会話をしながらおそばをすする。・・・いつの間にか、どちらも器は空になっていた。
「・・・ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした~。」
食器に手を合わせてそう述べる。フラワーが食器を台所に持っていったので、わたしも後を追った。
「・・・あっ」
窓の外に白い何かがちらついたような気がしたので、食器を洗っていた手を一度止め、窓の外を見る。
「雪だ・・・。」
ここ北海道で雪自体はそこまで珍しいものじゃないが、大晦日の夜に雪が降っているという感覚が、なんだか新鮮な気がする。
「・・・そういえば、北海道って豪雪地帯なんでしたっけ・・・すっかり忘れてましたけど」
「えぇっ・・・じゃぁこれからもっと寒くなるのか・・・。
・・・よし、後でこたつに籠ろ・・・。」
「寝落ちする気満々じゃないですか」
口ではそう反論しつつも、きっとフラワーも数十分後くらいにはこたつに入ってるだろう。
真冬のこたつの誘惑の前には、きっとどちらも長く持たないだろう。きっと誘惑に負ける。
・・・恐ろしいな、こたつ。寝正月量産機みたいなもんなんじゃなかろうか、あれは。
調理器具と食器をすべて洗い終え、戸棚にしまい込む。・・・昔お揃いで買ったマグカップが目に入った。なんだかもったいなくって、買ってから一回も使ったことがない。食器棚の右側最前列は、そいつらの定位置みたいなものだ。
「・・・スカイさん?こたつ、いかないんですか?」
あれだけさんざんこたつの話をしつつ、食器棚を見つめて動かないわたしを不思議に思ったのか、フラワーがそう声をかけてくる。
「え?・・・あっ、あぁ・・・すぐ行くよ。」
―――このマグカップたちと同じように、わたしも、フラワーも、・・・やがてはまわりから忘れ去られてしまうのだろうか。
「・・・ま、まわりのみんなから忘れ去られてとしても、・・・フラワーの記憶の中に根強く残ってるんだったら、わたしは満足かなぁ・・・」
ふとそんなことをつぶやくと、わたしはフラワーの待っているであろうこたつへと向かう。
・・・きっと彼女は寝落ちしているだろう。起こしてあげようか。・・・いや、無防備な寝顔を堪能するのもいいかもしれない。
「・・・起こさなかったら、明日の朝怒られっかなぁ・・・」