『あんたがな!!あんたが全て悪いんだよォッ!!』
『何を言っとる!!・・・お前に何が分かる!!』
『ふじゃけるな!!モアイ!!とにかく俺の邪魔だてはさせない!!
俺の邪魔をするならかタイプロポッポでろ!!』
(・・・『俺の邪魔をするなら』か・・・)
何を言ってるのかよくわからない台詞が流れるドラマを適当に流し見つつ、私・・・ナリタブライアンはふと、そんな台詞に想いを馳せる。
タイプロポッポがなんなのかはよくわからないが、その言葉がなぜか脳裏に焼き付いた。
・・・現役時代の私は、そんな感じだったのだろうか。自分の邪魔をするやつは、誰であろうと容赦しない。ただひたすらに自分の道を行く、ゴーイングマイウェイの極み。・・・まぁそこまでは到達してないと思うけどな。
もしそれが真実なら、引退してからの私はかなり丸くなっただろう。精神的な面で。
昔のような鋭さは完全に鳴りを潜めている。・・・おそらくその大きな原因は・・・
「あっブライアンさ~ん!!えっへへ、来ちゃった~!!」
インターホンを押すとか言う概念を知らないのか、合鍵を使用して唐突にマヤノトップガンが部屋へやってくる。
・・・私は本来、騒がしいものが苦手なはずなのだ。ほぼ2日に1回のペースで私の部屋に来ては陽気に騒ぎ立てるマヤノの事を、私は何回かうざったく感じた。
だがそんな感情も、マヤノと目が合って微笑まれただけで、頭の中からすーっと消えてしまう。・・・いったいなんなんだ、これは。
・・・一瞬誰かに相談しようかとも思ったが、シンボリルドルフはこの手の相談に関しては全くと言っていいほど役に立たないだろうし、エアグルーヴに相談するのはなんだか癪だ。
フジキセキは揶揄うだろう。残っているのはアマさんくらいだが、なんだか彼女に相談するのは乗り気じゃなかった。・・・自分で考えるしかないか。
「・・・あれ?ブライアンさん元気ないね?・・・だいじょうぶ?体調悪いの?」
「いや別に・・・そういう訳じゃない。・・・考え事だ。」
「考え事?・・・あっ、マヤでよかったら相談に乗るよ?」
「・・・お前に話すのは、なんだか嫌だ。」
「えぇッ!?なんで!!
・・・あっ、もしかしてブライアンさん、まだマヤのこと子供扱いしてる・・・?」
彼女のそんな質問を聞き流してなかったことにしつつ、ドラマをつけっぱなしにしていたテレビの電源を落とそうと、机の上に放置してあったリモコンをひったくる。
『本当に裏切ったんですか!!』
(――――っ!?)
テレビからそんな音声が流れ、私はあやうくリモコンを落としそうになる。・・・ドラマの主人公が発言した台詞だった。字幕にそうしっかりと表示されている。
慌ててドラマを十数秒前まで巻き戻す。・・・俳優さんの滑舌が悪いのかドラマの撮影現場での録音環境が悪いのかは謎だが、その言葉は他の台詞たちと同様、字幕なしでは何を言ってるのかよくわからなかったが、その分、主人公の心情・・・魂の叫びとか言ったほうがいいかもしれない・・・が、ひしひしと伝わって来る。
「・・・なぁマヤノ。マヤノは・・・私を裏切ったりは、しないよな・・・?」
「・・・え?」
マヤノからしてみれば、私が唐突に変なことを言い出したように見えるだろう。いや、事実そうだ。変なことを言い出している。
・・・だが、私は不安になってしまったのだ。・・・マヤノが私から離れて行ってしまうのではないかと。
(・・・って、私のキャラでもないのに・・・)
だが、彼女の隣にいると、どこか心が安らぐのもまた事実なのだ。・・・もし、マヤノが私の家に来なくなったら。私の隣からいなくなったら。・・・そんな生活は、もうなにも想像ができない。
「・・・あっ!!もしかしてブライアンさん、あのドラマの台詞に影響されたの~?
ブライアンさんも案外可愛いとこあるじゃ~ん!!」
「・・・まぁな。」
少なからず影響は受けてこそいるが、もっともマヤノが思っているであろう『中二病的な』影響ではない。
・・・というか、今の私に最も影響を与えているのは、間違いなくマヤノだろう。・・・性格から鋭さが消えたのも、よく笑顔を見せるようになったのも、間違いなく彼女のせいだ。
―――さっきの言葉の真意は、今はまだ言わなくてもいいだろう。