クリスマス・イヴまで時がさかのぼれるなら、まず真っ先に過去の私に言いたいことがある。・・・あんまりケーキばかり食べてるんじゃない、と。
お察しの通り、事の発端はクリスマス・イヴだった。あの日は学園を卒業してからはじめてのクリスマスだったし、なにか特別なことをしたいよね、とライスと話していた。
結果的にふたりで手作りのケーキを作ってそれをふたりで食べるという、見るひとによっては子供っぽいかもしれない結論で落ち着いた。砂糖の量を間違えたかと思わんばかりに甘かったが、まぁいいだろう。
そして時は少し進んでお正月。私が喪中だったため、今年はおせちを食べなかった。浮いた分の予算をどうしようかとライスと考えていた時に、結論として落ち着いたのはケーキだった。・・・そう、またしてもケーキである。
今回は手作りではなくてデパートの地下(デパ地下と略せるらしい)で買ったものだったが、やっぱり甘ったるかった。ケーキってそんなものなのだろうか。ホイップクリームのあの甘さは、なぜか食べた後に強烈な眠気となって襲ってくる。・・・あれは本当に謎だ。
まぁそんな感じで、年末年始は割とケーキを食べることが多かった。そして現役を引退していたため特に運動することもなく、ずっと家に引きこも・・・家でライスと過ごしていた。
まぁその産物が・・・これだ。
「・・・・・・・!!」
体重計に表示された数値に、私は一瞬固まる。嘘だどんどこどーん。
「・・・え?」
これはプロフィール欄での体重に関する記述を、『増減なし』から『微増(食べ過ぎ)』に変更しなければならないかもしれない。引退してるけど。
「・・・・・・・え?」
「・・・・・・。」
翌朝。いつものごとく、ライスがイチゴジャム(お気に入りらしい)を塗ったトーストに、はむっとかぶりつく。
・・・おかしい。このひとと私は毎日同じものを食べて、同じように過ごしているはず。なのに彼女には体重が増加したような様子はまったく見られない。・・・なぜだ。
(・・・いや、ただ着痩せしているだけかもしれませんし・・・)
まぁとにかく、確かめるに越したことは無いだろう。私は食べかけだったトーストをお皿の上に戻すと、食卓から少し離れたところにライスを誘導する。
「・・・・?」
そんな私の様子をおかしいと思ったのか、頭にはてなマークを浮かべた状態で彼女はとことことこちらにやってくる。
私は彼女の瞳をじっと見つめて・・・一気に抱き寄せる。
「ふぁっ・・・ブルボンさん!?」
・・・細い。引き締まっている。・・・そしてあったかい。
「・・・・?」
なにかを勘づいたのか、ライスが私の腰のほうに手を回してくる。
「・・・・・・。
・・・ブルボンさん、もしかして太った?」
「―――――っ!?
そっ・・・そんなことはありま・・・あります、はい・・・。」
「・・・う~ん・・・」
ライスはそうとだけ返すと、私の胸に顔をうずめて何かを考え始める。
「・・・まぁ見た目はあまり変わってないし、ちょっと食事に注意したほうがいいかも。もとはと言えばライスが原因だし・・・」
「そっ・・・そんなことありません!!」
即答。なんでも自分のせいだと考えてネガティブになってしまうのは、彼女の悪い癖だ。
「・・・はっ!!そうだ思いつきました!!
今日の夜は、ライスをおかずにライスを食べます!!」
「どゆこと!?」
ナイスネイチャさんの謎めいたギャグセンスがうつったのかと言わんばかりの言葉に、私は一瞬苦笑するのだった。