目暮警部から開放され、灰原から協力を取り付けることのできた俺は先を歩く灰原の後を追っていた。
前を歩く灰原は戸惑い無く歩いているけれど俺はその足がどこへと向かっているのかは分からない。
俺はなにも分からずただゆれる灰原の白衣の尻尾を目で追いかけている。
「なぁ、今どこへ向かおうとしているんだ?」
おっと、俺の声が届いたのだろうか。灰原は立ち止まって振り返ってくれた。
灰原は第一印象が集中すると他に目が行かなくなる。という物だっただけに以外だった。
「知らない? こういうとき先ずは現場からっていう定石があるのよ」灰原は俺の顔をみてクスリと笑いながら言った。
知るわけが無い。俺はそういう考えることは苦手だし。そういった推理小説どころか小説さえ読んだことが無い。
「あら、それは大変残念ね。良いわよ小説は。どこかの誰かさんみたいに熱中してくれなくても良いけどね。」灰原は俺の問いに応えると、前に向き直り歩き始める。
俺はそれの横へ並ぶために少し歩幅を広げた。
「意外としゃべるんだな」
「あら、私がずっと黙ったままの人形かと思った?」顔だけを俺の方へと向ける。
失礼かもしれないが、その顔立ちと周りの評判もあいまって思っていた。
灰原は俺の態度を見て失礼ね。と、言うと前を向いてしまった。
俺は何もしゃべっていなかったのだが……。顔にでも言葉が出ていたのだろうか。
「貴方、さっき思いっきり表情に出てたわよ。私だから良いけど、他の子にやったら失礼だから気をつけなさい」
「あぁ、すまないな。いや、悪い意味じゃないんだ。お前は綺麗な髪をしてるし、白衣も着ているだろう?だからそれがあいまって人形に見えるっておもったんだ。決して悪い意味ではない。」
必死な俺の弁明にも彼女は「そっ」と言っただけで大して相手にはしてくれなかった。
俺はなんとなく空を見上げてみると、そこには何の変哲も無い青空が広く広がっているだけだった。
まったく、こんなに人が不幸な目にあっているのに何でお前はそんなにからっとしてるんだよ。
「そんなに空を見詰めても天気なんてかわりゃしないわよ」
「おや、また顔に出てたか」
俺に悟られ属性でもついたのだろうか。
「えぇ、貴方意外と分かりやすいのね」驚いたように言う彼女。
「ほっとけ」
俺はなんとなく恥ずかしくてそっぽを向いた。
しかし、どうやら話している間に現場へとついたようだ。
「そんなことはいいわ。さて、現場検証を始めましょ?」
灰原に言われて目の前を見る。
先ほどと今とでは見える景色が全然違っていた。
先ほど、あれだけいた野次馬はどこかに消えていて、代わりにそこらへんになにやら調査をしている警官が多数いた。
そして、中心部らへんには第一発見者と野次馬の中から飛び出していった女。そしてそれに付き添うようにしている男が一人。それと事情を聞いている警官が一人。
男は学校の制服を着ていて髪の毛は薄い茶色。みるからにどうやら飛び出していった女の彼女かなにかのようだ。
「あそこらへんが重要参考人かしらね。少し近付いてみましょうか」灰原はそういって俺の横から飛び出して行った。
「ちょっと待ってくれよ」俺の言葉は聞き入れられず灰原はドンドン進んでいった。
「ちょっといいかしら?」
灰原が近付いていき尋ねたのは、その男女ではなく警官だった。
「何かな?」警官は灰原のことを関係の無い一般人か先ほどの野次馬の一員だと思っているのか反応が少し冷たい。
周りにいた男女は当然のごとく俺がいることに気がつき冷たい視線を送ってくる。ここに警官がいなかったら襲い掛かってきていただろう。
「いいのかしら? そんな態度で、私と目暮警部。警察の重鎮。結構顔見知り多いのだけれど……」灰原はしれっととんでも無い事をのたまった。
どうやったら、警察の重鎮達と大学生という身分で知り合いになることができるのだろうか。
「そ、そうでしたか。それは失礼しました! どうぞ、何でも聞いてください!!」
うろたえる警官。そんなで良いのだろうか。さっきの目暮警部でも思ったことだけど。
「ちょっと!!」
警官と話していると俺に話しかけてくる人がいた。
見ると、第一発見者、野次馬の中から一人飛び出していった少女、先ほど現れた男がいた。
殺人犯と疑われている俺がのこのこここまできておとなしく俺を見逃してくれるはずも無かった。
「何でしょうか?」
「私、貴方が殺した一郎の友達なんだけれど……。何かいう事はあるかしら? 殺人犯?」その少女は憎しみを表情とセリフに乗せて言った。
「ちょっと待ってくれ、俺は殺人犯なんかじゃない」
「まだ言うの!?」俺が弁解しようとすると第一発見者が口を挟んできた。「私、見たのよ! 大きな音がしてそっちを見たら人が倒れてて上を向いたら貴方がいたんだから!!」
駄目だ。一方通行すぎて会話にならないぞ。
俺はSOSの視線を灰原に送ってみたが、灰原は警官と話していて俺の視線には気付いていない。
「何でよ、何で一郎を殺したの?」
すがるように聞かれても殺していないのだから理由なんて物も無い。
「何かしゃべりなさいよ!!」少女は掴みかかってくる。
「ちょ……ちょっと」
「貴女、落ち着きなさい」
灰原は警官との話が終わったのか、俺と少女の間に入ってきた。表情を見ると非常にめんどくさそうだ。
「貴女なんなのよ!?」
少女は、掴みかかっていた手を離して灰原のことを睨みつける。
「私は、ここの生徒よ」
「その関係ない生徒が何の用? 私はそこの犯人に用があるの」
「そういうのは早計すぎるんじゃないの? 彼が犯人っていう証拠でもあるのならべつだけど」灰原は目を瞑り手を横に広げて首を振りながら言う。
「そんなもの 第一発見者の彼女が彼が落ちてきた場所の上にいたって言ってるじゃない!!」
灰原がそう言うと少女は灰原に掴みかかっていこうとした。
「ちょちょちょ、ちょっと落ち着いて下さいねぇ」
その時ちょうど近くにいた警官の一人が割って入り少女を諌める。
もうちょっと早く割って入って欲しいものだった。
勿論その警官以外にも警官はいた。しかし事なかれ主義によって無視していたのだった。
俺と灰原は警官がその少女を取り押さえてくれていたお蔭でその場を離れる事が出来た。
現場から少し離れ、人目につきにくいところにあったベンチに灰原は腰を下ろした。
俺はそのベンチのそばにたち灰原を見下ろした。
灰原は少し疲れたのか気だるそうにしていて足をだら~んと伸ばしきっていた。
「何か分かったのか?」俺は先ほどの現場を思い出しながら聞く。
灰原はこちらを向くと疲れたときにするような笑みを浮かべた。
「えぇ、大分分かった事があるわ。先ず……」灰原はそう言って説明を始めた。
俺がその説明を聞いて分かった事は五つ。
被害者は転落死であるという死因。これは現場を見て明らかである。
死後はそんなにたっていないということ、勿論その瞬間を見た訳では無いが俺は死んだであろうだいたいの時間を知っている。
所持品は携帯のみ。それは初耳であったが、学校に持ってくるものとしてはその他は教室においてあると考えて良いだろう。
そしてどうやら第一発見者である彼女の名前は黒田 ひかり(くろだ ひかり)というらしい。
「これから、どうするんだ?」
説明を終えた灰原に尋ねる。
「そうねぇ、とりあえずもう少ししたら、第一発見者にその時の話でも聞きに行くとするわ」
「そうか……。」
前の話とは全然違う文章作法?
家にある推理系小説は西尾さんの戯言シリーズのみ(推理というには微妙かも)
戯言を読みながら書いてみました。
前回よりは読めると思います。