名探偵の手記   作:ヨコミチ

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学園事件③

 

 

 俺達二人は、野次馬達の興味が現場から失せるまでその場で一時避難する事となった。

 俺が、その時に関係者も消えてしまうのではないかという点を指摘すると、灰原は鼻で笑い「関係者を警察が帰す訳ないでしょ」という言葉で返された。ちくしょう。

 現場へとたどりつき、辺りを探したが、関係者として呼ばれていた人を見つけることが出来なかった。

「おかしいわねぇ」俺の隣にいる灰原が首をかしげながら言う。

 俺自身もおかしいと思った。先ほどは関係者を帰してしまうと懸念したのだが、よくよく考えてみるとそんなはずは無い。

 ? 灰原が俺を横目で睨んでいた。

「何よ? 私が間違ってたって言いたいわけ?」

「いや、俺もおかしいな。と思っていたんだ。」

「それならいいけど」そう言って灰原は視線を前へと戻した。「でも、警察がこんなに簡単に関係者を帰すはずがないと思うのだけれど……」

「聞いてみるか?」

「そうね。適当に……」

 灰原は、地面を這うようにして証拠を探している鑑識の人と思われる人物に近付いていく。俺も灰原についていく。

 鑑識の人に話しかけるために、灰原は中腰になったわけなのだが、ここからの眺めが非常に良い。

「すいません……。」灰原が鑑識の人に話しかけたようだが、俺はこの絶景を眺めていてそれどころではなかった。

 しばらく、その絶景を眺めていると話しを聞き終えたのか灰原は腰を伸ばし、振り返る。その視線には呆れが混じっていた。

「ちょっと? かなり不快な視線を浴びてたのだけれど……」

「い、いやいやいやいや。何もないよ。別にここからの眺めが絶景だなぁとか思ってないし……」

 言ってしまってから後悔してしまう事ってこの世の中には結構あると思うんだ。

 俺は灰原に視線を合わせることが出来なかった。その間かなり睨まれていたと思うが、諦めたのか。

「はぁ、まったく暢気なものねぇ」そういってまた、別の所へと歩いていく。

 俺はそれをしばらく見送って少し距離を置いてから灰原を追いかけた。

「で、どうだったって? 警察の人は」灰原の横に並び話しかける。

「えぇ、どうやら学校から出ない事を条件に自由に行動をする事を許したらしいわ。ゆるいわねぇ」灰原は先ほどのことは気にしていないようだった。

「いやいや、ゆるいって、コレで逃げちゃったらどうするんだ?」

 いや、ホントに。

 俺がそう言うと灰原は少し考えて「貴方が犯人ってことになっちゃうんじゃない?」そう言った。

 それを聞いて溜息がでた。先ほどまでのような落ち込み方はもうしない。

「あら? もうちょっと取り乱すかと思ったけど……」灰原はこちらを向いて面白そうに聞いた。

「もう慣れたさ。それに、お前が解決してくれそうだしな。そんなに心配してない」

 灰原は俺の言葉を噛み締めるようにふーんと。吟味していた。「私、こういう探偵役ってむいてないんだけどね」

「そうなのか? 科学者が主人公の推理小説って結構あるだろ?」その答えは以外だった。

「えぇ、私が小さい頃も結構な回数で事件に巻き込まれていたのだけど、その時解決してたのはメガネをかけた違う子だったもの」

「おいおい、小さい頃って何時の話だよ?」

 小学生だけど。と、灰原は言う。それを聞いて俺は鼻で笑ってしまった。

「はっ、小学生じゃ事件を解決するなんてできねぇよ」

 それを聞いた灰原も同じように笑った「そうね。普通そうよね。冗談よ。」

「だろう?」しかし、俺はその微笑に哀愁を何故か見た。

 

 俺達二人は、関係者を探しながら大学内を回っていった。

 現場からはじまり、中庭、校門、北校舎、南校舎と探し回っていく。しかし、そのどこにも関係者の姿を見つけることは出来なかった。

「いないわねぇ」

 俺達は南校舎三階の廊下で立ち止まり思案する。

 外は太陽が西へと沈みこみ今いる廊下が鮮やかなオレンジ色で彩られていた。

「すれちがっちゃったんじゃねぇか?」

 そう、その可能性が一番高かった。

 それを聞いた灰原は深く溜息をついた。その表情には疲労感が垣間見えた。

「はぁ、それが一番可能性が高そうね。疲れてきちゃったし、帰ろうかしら」

「おいおい、ちょっと待ってくれよ。さすがにそれは困るぜ。俺が、」

 その言葉に、先ほど微塵も動揺しなかった俺は動揺してしまった。

「貴方だけが困るなら別にどうでもいいわよ。私には関係ないし。」

「おい、それじゃ、俺はお前のお願いを聞いてやることは出来ないぞ」

 それを言うと灰原は更に疲れが増したようだった。おや、地雷を踏んでしまったか?

「それならそれで、別に良いわ。お金を積めば戻ってこれるでしょうし、まぁ、確かに散財になってしまうけど、これからの面倒を考えるとそれもあり……「待て!」

「何よ?」セリフをさえぎった俺を灰原は睨むようにしてみる。おいおい、そんなに疲れているのか? それでいいのか若者。まだ、俺らは20に行ってないんだぞ。

「よし、さらに条件をつけようじゃないか。お前があらかじめ頼もうとしていたお願いに加え、牛丼屋で牛丼をおごってやろう!!」

 ……。反応が無い。これも失敗したのだろうか。

 見ると、灰原は口をポカーンと明けていた。よだれが垂れるぞ。

「はぁ、今度もっといいディナーをおごりなさいよね」

 そう言って、灰原が歩き出そうとする。と一人分の人影が目の前の女子トイレから出てきた。その人影はこちらをなんとなく振り向く。

「あっ、貴方犯人!?」第一発見者である黒田ひかりがそこにいた。

 そんな所にいたのか……。

 

 

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