「貴女が、第一発見者で良いのかしら?」
灰原は突然出てきた。その女に驚くことなく普通に対応している。
話しかけられた女……黒田ひかりはこちらへと近付いてきた。意味も無く身構えてしまった。
「あはは、何してるんですか?」こちらを見て笑っている黒田。この野郎、お前のお蔭で俺がどんだけ大変な目にあったと思ってるんだ。
「こっちはな、お前のお蔭で大変な目にあったんだ。俺が犯人などふざけた事を抜かしやがって……」
「まぁ、落ち着きなさい。ところで貴女が第一発見者でいいのよね?」
灰原は隣から俺と黒田の間に割り込むように身体を挟んできた。
「まぁ、そーですけどー。貴女はだれですか?」黒田は灰原の問いにダル気に応えた。
「私は灰原哀っていうわ。よろしく」
「その灰原さんが何のようですかー? こういう事件に関する事ってー守秘義務とかがあるんじゃないですかー?」
ギャルな見た目ではあるが意外と常識をわきまえているようだ。
そこらへんザルであった警官たちとはわけが違ったわけなのだが、それでいいのだろうか。
「そこらへんは大丈夫よ。ちゃんと警察に許可はとってあるから……」
あの警部の独断だけどな。
「へぇ、誰のですか?」
「目暮警部よ、貴女に質問していたんじゃない? 太っている人よ」
それを聞いた光は納得していないようであったが「あぁ、あの……、まぁ、いいか」と言って黙った。こちらが話しだすのを待っているのだろう。
それを見た灰原は俺の隣に戻るとにやりと笑った。
「では、了解ということでいいかしら」
黒田は頷く。
「立ち話もなんだし適当な教室ですわりながらしましょうか」
そう言うと、灰原は動いた。その後を俺と黒田が着いて歩く。
個人的には、俺のいた教室でやりたいが、先ほど見てきた限りではそれは無理そうだった。現場捜査のために警察が入り浸っていたのだ。
灰原はしばらく歩き、鍵のついていない教室を見つけた。
「では、ここで話を聞きましょうか」そう言って灰原は教室に入った。俺と黒田も同じく入る。
その教室は普段使われていない教室で、何か必要なときにしか開けられない教室の一つであった。
この学校も老朽化が進んでいるために、鍵がかかりにくくなっているため、つけていないところがあるようだった。
ここの学校に入学してからしばらく経っているために気にはならないが本来それは駄目な事だろう。
教室に入ると灰原は、机の上に上げられていた椅子を一つ降ろした。それに習い俺も一つ降ろし、少し手で払ってから着席した。
椅子は灰原の隣に置いた。椅子の配置は灰原を直角の部分として三角形の形である。
「じゃ、先ず貴女が発見したときの状況を教えてもらえるかしら」
「えーっと、先ずー。あの時わたしはー、授業がダルくてサボってたんだけどー。暇だからー。学校の周りを散歩してたわけなんだよね。
で、あの現場? の部分を歩いていたらいきなりー、男の悲鳴とー大きな音が聞えたからー。何だー? と思って見にいったわけ。
そしたらー、男の人が血が流れてて倒れてるジャン? 近寄って、気になって上を見てみたら。なんと、そこの男がいたわけ」
黒田は話している最中、落ち着かないのか足を何度か組みなおしたり、髪の毛をいじっていた。
となりの灰原は話しを聞きもらさまいと、その鋭い視線が更に鋭さを増していた。
「成る程ね。つまり、貴女は落ちてくる瞬間。そのシーンが起こってから上を見上げるまで数秒のラグがあったということね」
灰原が言うと、黒田は少し考えるそぶりを見せる。
「まぁ、そうね。私だって死体を見るなんて初めてだったから脳が停止しちゃってたけどー。上を向くのにそんなに時間がかかっては無かったわ」
「でも、ラグが合った事は事実でしょう?」
「そうね……」
「それなのに。上にいた俺を犯人だと思ったのか!!」
「だってしょうがないでしょう!? 私だってあの時、気が動転してたし人が落ちてきて、上をみて、人が見下ろしてれば犯人なんじゃないの!?」
「ふざけるな!!」
俺が怒鳴ると、同調して黒田も同じく口調が激しくなっていく。
「うるさいわよ。誰にだって勘違いはあるんだから、喚かないでみっともない」
またしても灰原が、俺を諌める。
「だけど! 俺はコイツのせいで犯人扱いされて……。気分も最悪で、お前がいなかったらって思うと……」
「……。悪かったわね」と、黒田。
「いや、今更謝られてもしょうがないし……」
「そうよ。貴方も私がこの事件を解決してあげるんだから、そんなに卑屈にならなくても大丈夫よ」
俺はその言葉を聞いて、少しだけ最悪な気分が和らいだ気がした。
そう言って灰原は教室から出て行った。俺もそれについていかないといけないのだが、まだ心が消沈していてその場に座っていたかった。
肩にポンと、手が置かれる。
見ると、黒田ひかりだった。当然か、ここにはその三人しかいなかったのだから。
「どうしたんだ?」
「いや、何か悪いって思ってさ。あの、その、ジュースでもおごってあげようか?」
あ、いいんですか?