屋上
屋上、ここへと来たのはいつぶりだろうか。ここの学園の生徒は基本的に、屋上に来る傾向ではないので、俺の記憶でも屋上に来たことは数回しかない。
灰原はと、ふと見ると長野が落ちたと思われる場所へと移動していた。俺だけ、扉の前にいるのは変なので俺もすこし小走りでついていく。
屋上の淵に行くと、灰原は何も語らずにそのまま下を覗いた。つられて俺も下を覗く。
その殺人?現場には幾人かの警察官が残っていた。おや、あの黄土色のコートを着たのは目暮警部か。
「しっかし、屋上まで来たものの何もないな」俺は辺りを見渡しいながら言った。何か証拠らしきものがあれば、長野がここにいたという証明になるのに。
「そうね、人間バカじゃないわ。人を一人殺して、気が動転していたとしても、保身のためにその場にあった証拠となりそうなものは全て持ち去ってしまうでしょうしね」
「それもそうか」
確かに、俺が犯人であったのなら証拠となりそうな物は持ち去るかどこかに捨ててしまうだろう。
「おっと、あぶね」手すりに寄りかかろうとしたらその手すりは老朽化が進んでいるのか脆かった。危うく俺もあの殺人現場に飛び込んでしまう所だった。
「気をつけなさい。殺人現場に飛び降り自殺なんて、良い趣味だとは思えないわ。面白いけど」
「それは、俺も思った……」慌てながら灰原を見るとジト目でこちらを見ていた。呆れられただろうか。このような美人に呆れられるとショックだ。このような表情もそれはそれで……。
そう言って俺は手をポケットへと突っ込んだ。屋上は校舎の一番上なだけあってそこそこ風があり寒いのだ。
すると、くしゃりと先ほど拾った紙に手が触れた。……?屋上?
ちょっと待て、そういえば『貴方にお伝えしたいことがあります。4コマ目の前の休み時間。屋上まで来てください』こんな感じの内容のメモだったはずだ。
4コマ目の休み時間?屋上?長野の死亡推定時刻が3時21分。こんな偶然ってあるのだろうか。
何か関係がある気がする。しかし、コレをどう結びつければいいのか分からない。
考えろ、考えろ。何か、何かあるはずなんだ。
「どうしたの?」
考え事をしていると、唐突に灰原に声をかけられた。見ると、先ほどとは違い不思議そうにこちらを見ていた。
くそぅ。声をかけられなければ、何かつかめたはずなのに……。
俺はその悔しさを胸に灰原を睨んだ。
「何なの? その目は、人が心配してあげてるのに」
そういえば、灰原は頭が良いのだった。灰原の顔を見ていたら唐突に思い出した。
何も、俺が考える必要は無い。なぜなら俺の目の前に、学園随一の天才がいるのだから。
そう思うと先ほどまで必死に考えをめぐらせていた自分が馬鹿に見えた。
「いやな、そういえばさっき自動販売機のところでこんなものを拾ったんだ」そう言って取り出したのは先ほどのラブレターのような紙である。「これが何か、事件に関係していると思うのだが……」
俺はその紙を手渡した。灰原はその紙を受取ってみると少し驚いたようなそぶりを見せ、ニヤリと笑った。
「よくやったわ。これで貴方の無罪は立証できるはずよ」
俺はその言葉を受け今日初めて安心する事が出来た。
事件現場
事件現場、そこには灰原そして目暮警部の働きかけで事件に関わった人物が集められた。
すなわち、俺、黒田、永井、伊藤の4人である。
「それで灰原君。どういうことか説明してもらえるかね」目暮警部は灰原を見ながら言った。
「えぇ、今回集ってもらったのは。そうね、言うならば真犯人をあぶりだすためかしら」
灰原がそう言うと、辺りがざわめいた。
「ちょ、ちょっと何言ってんの? あたし、落ちてきたときには下にいたんだから。あたしには無理よ」と、黒田。
「分かってるわ。そこらへん説明するから黙ってなさい」
間髪いれずに、そういわれた黒田は押し黙ってしまった。
「まず、今回の殺人事件。犯行現場は、波村くんがいた階ではないわ。本当の犯行現場はその一つ上、屋上よ」
俺は、目の前で流暢に喋っている灰原を見てすげぇなと思った。俺なら、このような場面ではどもってしまうことだろう。
「私達で屋上を見に行ったけど、ちょうどこの真上にある手すりは老朽化が進み脆くなっていたわ。後ろからドン!と押されたらひとたまりも無いでしょうね
そして、コレが最大の証拠」
そうして、灰原がハンカチで取り出したものは例のラブレター。
「あっ」それを見て誰かが反応した。
俺は、その声を発した人物を見た。
伊藤美咲。永井大輔の彼氏である。
周りを見ると全員の視線が伊藤美咲に集中していた。
伊藤は目に見えて動揺していく
「な、なんで? そ、それ、あたしが永井君に告白しようとしたときに使った手紙……。なんで、こんな所にあるの?」
伊藤は目を見開き膝から崩れ落ちていく、そして視線は永井へと向けられた。
俺も永井を見た。すると永井はうつむいて拳を握りプルプルと震えていた。
永井は顔をガバっとあげる。
「その紙は俺が昨日なんとなく、自販のところに捨てたんだわ! 残念だったなぁ。波村! それで俺を犯人にしたてあげようとしたんだろうけど……」
「いえ、これは確実に今日使われたものだわ」灰原は、永井の言ったセリフを区切る。「なぜなら、昨日あそこの自販機のゴミ箱の回収業者が来ているからよ。あなた、毎週ここに来ているのにそんな事も分からないの?」
そう言われた永井は、苦しげな顔をした。
「だ、だが、俺がそれを使って長野の野郎を呼び出したという証拠には……」
「そんなもの簡単に出来るわよ。」灰原は笑みを浮かべている。「この紙から長野くんの指紋がでれば良いんでしょう?」
それを言われた永井はハッとした表情をした。今度は何も言い返せないようだった。
永井は俯くと、ぼそぼそとしゃべりだした。
「そうだ、俺がやったんだ。俺があいつを殺したんだ」
「どうして!? どうして長野君をころしたの!?」と、伊藤
「うるせぇ! 元はと言えば、お前のせいだろうが!! 最近、あいつはお前と妙に仲がよかった。俺がお前を帰ろうと誘っても断られ、ふてくされながら街を歩いていたら、お前は長野と二人で笑いながらあるいてやがった!! それで俺は!!」
その時、パチン!!と良い音がした。伊藤が永井を叩いたのだった。
「馬鹿!! それは、貴方がそろそろ誕生日だからって、長野君にどんなプレゼントがいいか相談していたのよ!!」
それを聞いた永井は、ハッと息を飲み、自分の体を抱いた。
「ウソだ、ウソだウソだウソだ!!」
「本当なのよぅ!」伊藤は泣いていた。永井も泣いていた。
「うぅ、ならなんで一言言ってくれなかったんだ。お、俺は、か、勘違いして、こ、この手で長野を………ぎゃは、ぎゃはははははははははははは!!」
伊藤は壊れたように泣きながら笑い出した永井を抱きしめた。
「ごめん、ごめん、ごめんなさい。ごめんなさい。」
その後、永井は目暮警部に手錠をかけられ署へと連行されていった、
俺は、その様子を離れたところで見ていると灰原が近付いてきた。
「よかったわね」
「ん?」何がだろう。
「逮捕されずにすんで」灰原は微笑んでいた。
「俺、さっきみていて思うったんだ。これでよかったのかって」
俺のなかの何かがこみ上げる。灰原から見たらきっと俺は泣きそうな顔をしているのだろう。恥ずかしい。
灰原を見ていたら灰原が近付いてきた。
「ち、ちょっ」
そのまま灰原は俺の頭を抱えるようにして抱きかかえた。
「人間、どんな事があったとしても人の命だけは奪ってはいけない。もし奪ってしまったとしたら何らかの罰を受けなければいけない。それでも奪ってしまった命の重さに足りえない。
今回はこれでよかったのよ。どんな形であれ永井君は罰をうける。罪には罰を。それがこの世の異なりなのだから……」
了
推理小説なんて初めて書きました。
事件を考えたり、時間列を考えたり、トリックを考えたりと大変でした。
読む分には推理小説好きなんですけどね。