ニセコイらしくないですが、もうこんな
暗い話は出てないと思います。…………多分。
「貴様の父親、神崎蒼は…………私達の仲間を殺したんだ!」
……親父が殺したのが……鶫の……仲間?
「嘘…………だろ」
「嘘な訳あるか!殺された仲間は私がクロード様に引き取ってもらってから私の事をずっとみて来てくれた。私は本当にあの人が兄のように思えた。…………だが、ある日、あの人は殺された」
銃を突きつけて涙をボロボロと流しながらも俺に訴えてくる。
「お前の父親を私は本当に憎んだ。殺してやろうかとも思った。だが、神崎蒼はすでに檻の中だった。復讐は出来ないと思った。そして、しばらく時が経ち、昨日の夜クロード様に言われた。神崎蒼に息子がいると」
「………………」
「神崎蒼には復讐は出来ない。だから、私はお前を制裁をして奴に私と同じ苦しみを与えてやろうと思った。大切なものがやられるのはどれほど辛いということをな!!………だから、私は今、お前をここで…」
「…………一つだけ言わせてくれ。悪いが、俺を殺したとしても親父は悲しまない」
「何?」
鶫の体がピクッと動くのを感じた。どうやら、少し動揺したようだ。
「親父はもう釈放されて今は違うとこで暮らしている。そして、俺は中2の頃に親父に会いに行ったことがあるんだ。友達に色々言われた事もあってな。その時、あいつは俺になんて言ったと思う?」
「そ、そんなの私にわかるわけがないだろ」
俺はその時の言葉を鮮明に覚えてるよ。
「『てめぇのようなクソみたいな息子が来る必要なんてねぇよ。さっさと帰ってミルクでもちびちび飲んでな』だぜ」
「つっ!!」
鶫が銃を下ろした。それをみた俺は鶫をどかして立ち上がった。
「わかったか?親父にとって、俺は何でもないんだよ。てか、どうでもいいとか思われてんだろうな。だから、俺を殺したとしても無駄だ。じゃあな」
そう言って俺はこの場が立ち去ろうとした。すると……
「クロ君!!」
いかにも全力ダッシュでここまで来てくれたと思えるほど息を切らした宮本が立っていた。
「宮本か………」
「大丈夫なの!3階から飛び降りてプールに落ちたって聞いたけど……」
そうか。俺を心配してここまで来てくれたのか。それも、1番最初に。
「あぁ、体は何ともない」
「体は?他に何処か痛めたりしたの?」
「…………悪い、今日は早退するって先生に言っといてくれ。今日はもう疲れた」
「えっ?ちょ、クロ君!」
「鶫を風邪ひかないようにどうにかしといてやってくれ」
それだけ言って俺は走って教室まで向かい、鞄を持って家に帰った。
「あら、おかえりクロちゃん。今日は早いのね」
家に帰るとばあちゃんが俺を出迎えてくれた。
「うん。今日は先生達が用事があったみたいで全員早く終わったんだ」
「そうなの?じゃあ、何か食べる?お菓子とかあるわよ」
「いや、いいよ。部屋で休んでくる。今日はちょっと疲れたから」
俺は階段を上がり自分の部屋に入った。部屋に入って服を着替えようとしたが、それもどうでもよくなり、靴下だけ脱ぐと、俺はベットにもたれかかった。
「ったく、冗談きついぜ。いきなりあんな話を聞かされるなんて………またクラスで噂されるだろうな。でも、今はそんな事どうでもいいか。今日は本当に疲れた……」
「あれ…………ここは?」
「あら、クロ君。やっと起きたのね」
気がつくと俺は横になっていて俺の上には宮本がいた。
「宮本………なんで俺の部屋に?」
「クロ君が心配になって、私も早退して来た。小咲にも協力してもらって。で、家に入ったらクロ君のおばあちゃんに『クロ君の様子がおかしいから見てもらえる?』って頼まれたから、部屋に入った」
「成る程な。事情はわかったよ」
「後、小咲も早退したわよ。一度家に帰ってお見舞いの品でも持って来たから来るっていってたわ」
この2人って本当にいい奴だよな。……それにしても、この妙に柔らかいのは何だ?おれ、寝るとき枕とかしてたっけ?…………枕?
「………宮本、お前俺になにしてるんだ?」
「何って、膝枕だけど」
「当たり前に答えてるんじゃねえよ!なんでこんなことしてるんだ!」
「だって、部屋に入ったらクロ君が死体のような感じで座って寝てたから。しかも、濡れた服から着替えてないし。とりあえず、このままじゃ風邪引きそうだったから掛け布団かけて、枕はみつからなかったから、私が代わりに」
そうだったのか。でも、俺って寝るとき枕使わないんだよな。
「それは悪かったな。重たかっただろ?」
「重たくないって言ったら嘘になるけど、クロ君のためだと思ったらそんなにだったわよ」
「そ、そうか………何か照れるな」
俺は起き上がって、宮本の隣に座った。
「で、鶫さんと何があったの?あの時のクロ君は怖い顔してたわよ」
「………………」
「あ、ごめん。おもいださせちゃったかしら?無理に話さなくてもいいわよ」
「いや、いい。話すよ。実は俺の親父の話なんだけど…………」
そう言うと、宮本の顔は一気に暗くなった。だが、それに構わず俺は話を続ける。
「親父が殺したのが、鶫をよくしたってくれた人なんだってよ」
「えっ?」
「驚いたよ。そして、何より悲しかった。これから同じクラスで顔を合わせるのにそいつとは絶対仲良くなれないと思うと涙が出そうになった。ったく、どっちがクソ野郎なんだよ、あの親父は」
「……………」
「まぁ、仕方ねえよな。親父の事件以来、普通の生活を出来ないって事くらいわかってた。むしろ、宮本達と一緒にいれるのが不思議がぐらいなんだよ」
「クロ君………」
「心配すんな。俺はもう大丈『ちょっと怒っていいかしら?』うぇ」
大丈夫と言おうとしたのに宮本に両頬を摘ままれたせいで変な風になってしまった。
「私と小咲が一緒にいるのが不思議?何バカな事言ってるのよ。その変なこというのはこの口か!」
「いふぁいいふぁいいふぁい!なにすんらよ!」
両頬を思いっきり引っ張られてるため、言葉が変になる。
「うるさい!このまま話聞きなさい」
「ふぁ、ふぁい」
「私と小咲はあなたの事が本当にいい人だと思ってるから一緒にいるの。親がどうとかそんなの関係ないわ!!大体、私達からしたらクロ君を責める奴の方がどうかしてると思うわよ!」
「…………みやほぉと?」
宮本は摘まんでいた手を離して、俯いた。
「……それに言ったでしょ。『周りの事なんか気にしなくてもいい。そんなに不安なら私があなたの友達になって、あなたのそばにいてあげるわよ』って。私はここまでクロ君が大事だと思ったのに、クロ君は私が一緒にいる事が不思議だと思ってたの!!」
「いや、そんな事は…………」
「じゃあさっきのは何なのよ!!私の気持ちはそんなに甘くないの!言い直してくれないと本気で怒るわよ!」
………そうか。親父がどうとか、他のみんながどうとか気にしなくていいのか。俺にはこんなに大切に思ってくれる友達がいるんだから。
「悪い、宮本。俺間違ってたわ。宮本が一緒にいるのが不思議じゃなくて、宮本が一緒にいてくれるのが当たり前だと思わねえといけないんだな。ホントごめん!」
「本当よ。私がっかりしたわよ。クロ君にそんな風に見られてたと思うと」
「いや、本当にごめん!もう二度とこんな事言わないから!」
「………わかればいいのよ」(今思い返したら、私、友達になんて恥ずかしい事いってるんだろ………)
「どうかしたのか?」
「べ、別に。何でもないわよ」
「でも、お前顔赤いぞ」
「赤くない!!大丈夫だから、ほっといて!………って、クロ君こそ顔赤いけど大丈夫?」
「ん?宮本に頬引っ張られたからだろ。何の問題もねぇよ」
「……そ、そうだったわね」
思い返して罪悪感を覚えたのかどうかわからないけど、宮本はまた俯いた。
「はぁ、言うだけ言ったらスッキリしたよ。悩みも言いたいことを言ったしな。ありがとな」
「どういたしまして。……にしても、小咲は何してるのかしら」
………………そういえば、学校早退したのキョーコ先生に何も言ってないけど大丈夫かな。不安だよ。
「こんにちは〜。クロ君、来たよ」
「おー、小野寺。お前もありがとな。俺のためにわざわざ」
しばらくすると、手にビニール袋を持って私服姿の小野寺が部屋に入って来た。
「ううん、別にいいよ。それに落ち込んでたクロ君を元気づける方が私にとったら大事はことだし」
「ね、だから言ったでしょ。小咲も私と同じなの」
宮本の言った通りだな。この2人には本当に迷惑かけた気がする。これからはこんな事ないようにしねぇとな。
「あぁ、そうだな。悪かった、小野寺」
「えっ?何で謝ったの?というか、クロ君元気になった?」
「おぅ!おかげさまでな」
「よかった〜。あ、家からお菓子持って来たんだけど食べる?」
ビニール袋から和菓子やらその他色々でてくる。
「お、いいね。お茶持って来るからちょっと待っててくれ」
そう言って俺は部屋を出た。そして、ドアを閉めてドア越しに言った。
「宮本……本当にありがとよ。…………好きだよ」
今はまだこの気持ちが伝わらなくてもいい。もう少し大人になってから伝えるよ。
クロの気持ちはいつ伝わるんでしょうね。
感想と訂正があればお待ちしております。