俺の凡高での日常   作:ブリザード

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第13話 罠だったオンセン

「楽ー、風呂に行こうぜ」

 

「おぅ、少し待ってくれ。何か俺フロントから電話で呼ばれてよ」

 

「わかった。じゃあ、ここで待っとくよ」

 

楽はフロントの方へ小走りで向かった。でも、楽に電話って何だろうな。そんなに急ぎで言うことって……まさか、楽の親父に何か!!

 

「クロー、今戻った。悪いなまたせちまって」

 

「いや、いいけど……お前親父に何かあったのか?」

 

「は?」

 

「もしそうなら急いで帰って親父の様子を見にいってやれよ!じゃないと親父さんが……」

 

「いや、さっきからなにいってんだ?フロントに行ったけど誰からも電話かかってなかったんだよ」

 

「…………つまり、ただのいたずらか?」

 

「まぁ、多分そうだろうな」

 

何だよ、てっきり親父さんが病気になったのかと思ったぜ。

 

「じゃあ、いいや。さっさと風呂に行って女子風呂でも覗こうぜ」

 

「…………1人でやれよ」

 

俺と楽は男と書いてあるのれんの方に入った。これが罠だと言うことに気がつかずに…………

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、いい湯だな。なぁ、楽」

 

「そうだな………こんな時に小野寺と一緒にいた…………!!?」

 

「あぁ、俺もこんな時に宮本がいたらどんなに幸せ『しっ!!静かにしろ!』なんだよ?」

 

楽が俺の口を無理矢理防いで入口の方を指差す。すると…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわー、凄い!!いい景色だね」

 

身体にバスタオルを巻いた桐崎さんや小野寺や宮本がいた。

 

「「な、な、何故だー!!!」」

 

それほど、大きくない声で俺たちは叫んだ。

 

「おい、どういうことだよ、何で桐崎さん達が!」

 

「知るかよ、大体俺たちは男子ののれんの方に………………あいつか!」

 

「あいつって誰だよ!とにかく、女子が全然いないうちにここから逃げ出さないと…………」

 

俺達は周りを見渡す。すると、温泉に入ってきたある人物と目があってしまった……

 

「クロ……君?」

 

…………はい、詰んだー。俺の学園生活おわったよ。…………いや、諦めるな!宮本なら俺を助けてくれるはずだ!

 

「先生を呼んでくるわ」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

 

「いやよ。変態、すけべ、ゲス男」

 

「そこまで言うのかよ!」

 

いや、今はそんな場合じゃない。

 

「聞いてくれ宮本。事情は後ですべて全部話すし、お前の言うことを何でも聞く。だから、今俺を逃がすのを手伝ってくれ!」

 

「…………何でも?」

 

「あぁ、何でもだ!!だから、頼む!この通りだ!」

 

「…………わかったわ。とりあえず私の後ろに隠れて。あと、私の裸を見たことは一生許さないわよ。てか、私だけじゃなく小咲まで見てるはずよね。もう絶対許さないわ」

 

「すまん、恩に着る」

 

今は許されなくてもいい。これは俺達が悪いんだから……

 

宮本の後ろに隠れてもう一度周りを見渡す。やばい、女子達が増えてきた。てか、タオルくらい巻いてくれよ。

 

「……ゲス男、何か逃げる方法はみつかった?」

 

「いやダメだ。全然見つからないって、ゲス男はひでえよ!」

 

てか、楽はどうなったんだ!?いや、今はあいつに構ってる暇はない。普通に出ることが無理なら、水中はどうだ?

 

俺は潜って辺りを見渡す。…………やべ、女子の足とかがめっちゃ見える。…………ん?あんなところに穴が……まさかあそこに行けば男子の方に繋がってるかも……

 

「ぷはっ。宮本、なんとかなるかもしれねぇ。そのために俺を隠しながら移動することって出来ないか?」

 

「…………出来ないことはないわ」

 

「じゃあ、頼む」

 

俺は宮本の動き合わせて穴の方へ向かう。

 

「ねぇ、宮本さん。私ずっと聞きたいことがあったんだけどね」

 

クラスの女子の一人が近づいて来て宮本に言う。

 

「神崎君と宮本さんって付き合ってるの?」

 

「えっ!?」

 

宮本が驚いて動きを止めた。

 

「私ずっと思ってたの。宮本さんと神崎君の関係はただの友達同士の部活仲間には見えないなぁって」

 

「あ、それは私も思ってた」

 

「あたしもあたしも」

 

やばい、どんどん宮本の方に女子が寄ってくる。このままじゃ………

 

「私とクロ君はただの部活仲間で私の親友。それ以上でもそれ以下でもないわ」

 

親友…………嬉しいな。

 

「えぇ、つまんない」

 

「面白い話を期待するなら私より小咲の方がいいと思うわよ。ねぇ、小咲」

 

「ふぇ!?そんなのいきなり降らないでよ」

 

「で、どうなの、小野寺さん?」

 

宮本の方に寄っていた女子達は標的を変えて小野寺にロックオンした。

 

「ほら、今のうちに」

 

「あ、あぁ、サンキューな!」

 

俺は無事に男子の方へと通じる穴に入って男子の温泉の方へ向かった。

 

 

 

 

 

 

「ぶはっ!!」

 

「うぉ、クロ!?一体どっから出て来てんだよ!」

 

「いや、ちょっと潜りたかった気分なんだ」

 

ふー、何とか助かった。後でちゃんとお礼言わないとな。

 

「ぶはっ!」

 

「うぉ!!今度は楽かよ!」

 

おぉ、楽もなんとか無事だったか。

 

「…………とりあえず、どういくことか説明してもらうぞ。お前なんか知ってるだろ」

 

「…………わかった。お前には全部話すよ。こっち来てくれ。これあんまり話さない方がいいんだよ」

 

身体や頭を洗いながら楽の話をすべて聞いた。楽と桐崎さんの家の関係。楽と桐崎さんは付き合ってなくて嘘の恋人同士をしてること。それを疑ってるクロードって奴が楽を目の敵にしていて、今日のこれもクロードのせいだと言うこと。なんのために鶫がこっちに来たのかと言うこともすべて。

 

「なるほどな。よーく、わかった。だが、一つ。何で集に話して俺に話してくれなかった?」

 

「いや、集は余計なこといいそうだから最初に説明しとかないとめんどくさくなると思ったからだよ」

 

つまり、俺はなにも言わないから説明しなかった、と。

 

「…………はぁ、まあいいけどよ。この後さ、宮本に今日の事を話さないといけないんだ。すべて、話していいか?」

 

「宮本に!?…………やめて欲しいんだけど」

 

「おまえのせいでこうなったんだぞ!俺にも話す権利はあるはずだ!」

 

「むぅ………わかった!ただし、宮本だけだからな!」

 

「あぁ、サンキュー」

 

俺達は温泉から上がって部屋でゆっくりしていた。

 

「クロ君、ちょっと来て」

 

宮本が温泉から戻って来ると同時に俺を呼び出した。やばいよ、怖いよ宮本さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

外に出て俺は宮本に楽に教えてもらったことすべてを話した。その間宮本はずっと腕を組んで俺の話をきいている。

 

「って事だ。本当にすまん!俺だってこんなことするつもりなんかまったくなかったんだ!」

 

「そんなことわかってるわよ。てか、もしわざとだったら蹴り飛ばしてるわよ」

 

「はい、すいません」

 

「…………まぁ、今の話を聞く限りクロ君があまり悪くない事は認める。けど、私や小咲の裸を見たのは確かなんだから責任とってもらうわよ」

 

「あぁ、わかってる」

 

「じゃあ何でも言うこと聞くって言ったの聞いてもらうわよ」

 

うっ、一体どんなお願いをされるのだろう…………何か怖くて仕方ない。

 

「じゃあ、まず一つ。私の事を名前で呼んでくれない?」

 

「……えっ、そんな事でいいのか?もっと怖いお願いをされるのかと」

 

「私を何だと思ってるのよ。何か2年間一緒にいるのに私は名前で呼んでるのに、クロ君は呼んでくれないのは何か嫌なの」

 

いや、名前で呼んでくれって頼んだのは俺なんだけどな。

 

「はい、じゃあ早速呼んで頂戴」

 

「わかったよ」

 

………………

 

なんか2人きりだし、めっちゃ緊張する。

 

「どうしたの?」

 

「いやなんでもない。じゃあ言うぞ」

 

「えぇ」

 

「…………る……り」

 

「何でそんなギクシャクしてるのよ。はい、もう一回!」

 

くそー、なんで名前を呼ぶのがこんなに緊張するんだよ。

 

「…………るり」

 

「はい、合格。とりあえず今日はこれでいいわ」

 

「えっ、今日はってまだあるのかよ!」

 

「えぇ、だって回数何回とか言ってないもの」

 

そんなのいったら俺が生きてる限りずっとじゃねえのか?

 

「まぁ、いいよ。今日はありがとな」

 

「えぇ、じゃあおやすみ」

 

るりは俺に手を振って先に部屋に行こうとする。

 

「あ、そうだ。るり」

 

「ん?」

 

仕返しになるような気がするけど俺は満面の笑みで言った。

 

「…………やっぱり、るりはメガネ外したら可愛いな」

 

「つっ!!」

 

「じゃあな、おやすみ」

 

そう言って俺は部屋に戻った。

 

 




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