俺の凡高での日常   作:ブリザード

4 / 45
少し遅くなってすいません。
自分的に1週間に1、2回投稿できたらいいなと
思っています。


第3話 10年前のヤクソク

楽がペンダントをなくしてからもう1週間が立った。だが、未だにペンダントは見つからず、それでも、俺と小野寺は何処かにある事を信じて楽を手伝い続けた。

 

「もーーーーー!!やってられない!なんで、1週間探して見つからないのよ!」

 

桐崎さんが溜まったものを全て吐き出すようにいきなり叫んだ。

 

「そんな事言われたって知るかよ」

 

「そうそう。そんなこと叫んでるならペンダント探すべきだよ、桐崎さん」

 

「なんなのあんた達!よくこんな地味な作業続けられるわね!」

 

俺達に指を指しつけて怒る。

 

「桐崎さん。人を指で指しちゃダメって親に言われなかったのか?」

 

「あんた何か腹立つわね!」

 

「この前クラスの子に言われたのよ。『放課後、毎日一条君と一緒にいるけど、2人ってもしかして付き合ってるの?』って」

 

「なっ!………」

 

楽が桐崎さんの言葉に呆気を取られてる。そりゃそうか、探し物を探してるだけでそう言われてるんだから。

 

「楽、大丈夫だぜ。俺も今日、クラスの奴に言われたんだ。『クロって最近、小野寺と一緒にいるけど、お前らって付き合ってるのか?るりちゃんに続き、小野寺まで………』って言って妬まれたから大丈夫だ」

 

「なんの励ましだよ、それ!!てか、それ言ったの集だろ!」

 

集、本名は舞子集といって、俺の友達。楽とは幼稚園からの付き合いでかなり仲がいい。ちなみに宮本、小野寺、楽、集が俺の友達。カメラで色々撮っていて、クラスのみんなに写真を売っている。宮本や小野寺の写真があれば、俺も時々世話になっている。

 

「別に俺は小野寺とお前のペンダントを探してるだけなのにな。なぁ、小野寺?」

 

「えっ!?」

 

小野寺が顔を真っ赤にしてこっちに振り向く。あいつ、俺と付き合ってるとか言われたのを気にしてるのか?

 

「う、うんそうだよ」

 

「笑えるよな!はははっ!」

 

「何が笑えるのよ!!」

 

桐崎さんが俺の襟首を掴んでぶんぶん振ってくる。

 

「ほら、仲良く楽しく話しながらでも探そうぜ」

 

「何が仲良く楽しくよ!冗談じゃないわ!探し物をしてるのは私の親切心でやってあげてるっていうのに!」

 

「はぁ?お前のせいだろうが!いきなり膝蹴りしてきやがって!」

 

「あんたがちゃんと持ってないから悪いんでしょ!!」

 

あ、やばい。これ絶対喧嘩になる。止めないと。

 

「おい、お前ら。そろそろ……」

 

「大体、もう1週間も見つからないのよ!諦めなさいよ!もう誰かが何かと間違えて捨てちゃったのかもしれないじゃない!」

 

「そんなのわかんねえだろ!!」

 

2人が声が荒れてきた。もうこれじゃ俺が止めることは不可能だろ。

 

「それにあれは俺にとって………」

 

「何よ!男の癖にペンダント一つなくしたくらいでピーピーと」

 

「何?」

 

「どーせ、昔好きだった子に貰った物とかなんでしょ?あーやだやだ。昔の事ズルズル引きずって、女々しすぎるわ。その相手だって、あんたにそんなもんあげた事なんて忘れるに決まってんのに、ホントにダサいわ!!『そこまでだ』!?」

 

「お前な。確かに1週間探し続けて見つからないから腹が立つのはわかるけど、それはないだろ。楽にとっては大事な物なんだぞ」

 

「あんたは何も思わないの!?」

 

「楽が信じてるならそれでいいじゃねえか。俺達がどうこう言う必要なんて全くねえ。大体、お前だって嫌だろ。ずっと大事にしている物がバカにされたりとかしたら」

 

「………私はそんな物持ってないからわかんないわ」

 

「はぁ………とにかく、今日はこれでおしまいだ。楽も小野寺も帰ろうぜ」

 

そう言った途端に雨がポツポツと降り始めてきて、雷が鳴った。流石にこんな中で探すのは危ないな。

 

「……私はもう探すのはやめるから」

 

それだけ言うと桐崎さんは俺達と反対の方向へ歩いていった。

 

「ほら、楽。いくぞ」

 

「あぁ………悪いな」

 

楽もそれだけ言うと、トボトボと歩いていく。

 

「一条君!」

 

「小野寺、今は楽をそっとしといてやれ。あいつもあんだけ言われたらさすがに堪えるだろ。俺達もこのままじゃ風邪引いちまうしな」

 

俺は小野寺の腕をとってとりあえず教室に向かった。

 

 

 

 

教室に戻ると、教室の隅の椅子に座って本を読んでいる人がいた。

 

「はい」

 

本を読んでいた宮本が俺達にタオルを渡してくれる。

 

「サンキュー。ほら、小野寺も」

 

「うん、ありがとう」

 

俺達は雨で冷えた体を拭く。

 

「で、2人揃ってびしょびしょで帰って来るなんて、あなた達は外で何をしてたの?……クロ君が小咲に手を出したとか?」

 

「いやいや!何もしてねえから!」

 

「うん!本当に何もなかったからね!」

 

「………まぁ、いいわ」

 

机に向きなおるとまた本を読み出した。本当に本好きだよな。

 

「てか、何で宮本はタオルを二つも持ってたんだ?」

 

「今日は天気予報が雨っていってたから。行き用と帰り用に一応タオルを持ってきといたのよ」

 

「ふーん。まぁ、何にせよ助かったよ。ありがとな」

 

「べ、別にいいわよ。そんなの」

 

俺がにっこり笑ってお礼を言うと宮本は少し顔を赤くする。……可愛いな。

 

(どうしてこの2人って付き合ってないんだろ……)

 

「小野寺、どうかしたのか?」

 

「へっ?……ううん、なんでもない」

 

今、小野寺の様子がおかしかったのは気のせいか?

 

「さてと、今日は帰るか」

 

雨も少しマシになったのでカバンの中に教材や弁当を入れて宮本達と外に出る。

 

「うーん。まだ雨降ってるな」

 

「クロ君、傘は?」

 

「ないよ。しゃあねえ。濡れて帰るとするか」

 

頭の上にカバンを置いて学校から出ようとする。

 

「あんた、それじゃ私がタオルを貸した意味がないじゃない」

 

「あ……確かに」

 

宮本にそう言われてすぐに立ち止まる。

 

「私の傘に入ってもいいわよ」

 

「えっ!?………いいのか?」

 

「別にいいわよ。ほら」

 

そう言って傘を差し出してくれるので俺は傘を受け取り、相合傘をして校門を出た。

 

(本当に付き合ってない理由が私にはわからないよ……)

 

少し顔を赤くした小野寺は俺達の後ろを付いてきていた。

 

 

 

「………まだ見つからないのか?」

 

「ん?あぁ、クロか」

 

次の日は雨が上がって部活にも行けたが、休むことにして楽の探し物を手伝うことにした。俺が楽に話しかけると、俺に気づいてこっちを向く。

 

「うん。まだ、見つかんねぇよ」

 

「俺も手伝うよ」

 

「助かる。ありがとう」

 

そう返事をすると、楽はすぐに足下を探したので、俺もしゃがんでペンダントを探す。

 

それから、30分くらい探したがペンダントを見つからなかった。額に浮かぶ汗を拭いながら楽の顔を見ると、凄く悲しそうな顔をしていた。楽も本当は何処かにいってしまったのかと思っているのかもしれない。

 

「一条君!…クロ君も……」

 

楽と俺を呼ぶ声に顔を上げると、息を切らした小野寺が膝に手をついてこっちを見ている。おそらく、急いで来たんだろう。息を整えて楽に言った。

 

「桐崎さんが来て欲しいって」

 

「桐崎が?」

 

「あんなこと言ったのに、何の用だろうな?」

 

小野寺の案内の下、桐崎さんに指定された場所に向かった。

 

桐崎さんが指定した場所に来て見ると桐崎さんはそこにはいなかった。

 

「あいつ、呼び出しといてどういうことだ?」

 

楽がはぁ、と溜息をつきながら下を向く。すると、遠くの方から何やら人影が見えた。しかも、何か野球のピッチャーみたいに振りかぶっている………こっちに。

 

「楽!よけろ!」

 

「へっ?」

 

言うのが遅かったせいか、遠くにいる人影は思いっきり何かを投げた。投げられた物が楽の顔面に直撃する。楽……ご愁傷様だ。

 

「大丈夫か、楽?」

 

「あぁ、少し痛えけど問題ねえ」

 

あんなスピードで顔に直撃したのに無傷だと!?どんだけこいつ丈夫なんだよ。………そういえば、桐崎さんに膝蹴り食らった時も鼻血出してるだけで済んでたよな。 やっぱ、常人じゃねえな。てか、投げられたのって……

 

「ペンダントじゃん」

 

「あぁ、確かにこれだ。でも、なんであいつが……」

 

「私も昨日はクロ君と一緒に帰ったから。多分だけどあの後、探してくれてたんじゃないかな?」

 

「俺もそう思う。まぁ、よかったじゃねえか、ペンダント見つかったんだからよ。これで、あいつと仲直りしたらいいじゃねえか」

 

 楽は信じられないと思っているのか、凄く驚いている。あんなに喧嘩して、罵ったのに見つけてくれたのがまだ信じられないのだろう。

 

「2人もありがとな。ペンダント探すの手伝ってくれて」

 

「気にすんな。その代わりに桐崎さんに言われたことは気にするんじゃないぞ」

 

「………でも、あいつが言っていることももっともなんだよ……」

 

楽があからさまにしょんぼりする。その時、小野寺が口を開いて言った。

 

「ねぇ、一条君、誰かと約束したんでしょ?もし、その人が一条君と同じように約束を覚えてたら……きっとその人が絶対に悲しむよ。例え、それが十年前の子供の約束だとしても……その人にとっては大切かもしれないよ」

 

顔を少し赤らめながらも楽を説得するように言う小野寺。本当にいいやつだな、小野寺って。俺こいつと友達に慣れて本当によかったと思ってる。いつか、この言葉を小野寺に言いたいな。

 

「ありがとな、小野寺、クロ。少し元気出て来たわ」

 

「それは良かったよ。………なぁ、楽。今度の日曜日、俺と小野寺と宮本で映画館行くんだけど、お前もどうだ?小野寺がきっと喜ぶしな」

 

「クロ君!!?」

 

「うーん、悪い。気持ちは嬉しいけどその日は少しゆっくりしたいんだ」

 

(くっそー、本当は行きてえのに……)

 

とか思ってんだろうな。

 

「わかった。じゃあ、また明日な」

 

「あぁ、じゃあな小野寺、クロ!」

 

楽は俺達と反対の方向に歩いていった。

 

「…………残念だったな、小野寺」

 

「からかわないでよ!」

 

俺をポカポカと殴って来る小野寺を宥めながら、教室に戻った。

 

 




感想や訂正があればお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。