というわけで今回はちょっと早いクリスマスイヴの話です。
ではどうぞ〜。
今日はクリスマスイブ。この日は朝から晩までとこの家庭でもお店でも大忙しだろう。ケーキを用意することに必死になるところもあれば、女の子に、または男の子に告白する子だって現れるかもしれない。もちろん俺にも忙しい事はある。今日は夜にクラスのみんなでクリスマスパーティだ。だけど、俺にはその事より大事な事がある。今日12月24日。クリスマスイブ。そして……
るりの誕生日だ。
「あら、クロ。今日は夜にクラスの子とパーティするって言ってたけど、家を出るのはずいぶん早いのね?」
「あ、母さん。うん、ちょっとね」
朝。目を覚ました後すぐ出かける準備をして家を出ようとする俺を母さんは呼び止めた。
「…………るりちゃんとデート?」
「ぶふぅ!」
「あら、図星だったみたいね。クロったらわかりやすい」
「母さんが直球すぎるんだよ!!」
ごめんね、と謝りながらも笑っている母さん。くそ、俺の事からかってきてる。
「まぁ、彼女だしクリスマスだからそういうことしたいのはわかるけど…………一線だけはこえちゃダメよ」
「母さん!!」
「じゃあね。今日は私も父さんたちと久しぶりに外食するから。ゆっくりしていきなさいな」
ダメだ。朝からこんなに突っ込んでたらテンション持たない。落ち着け。いつものようにフリスクを食べて。
「………よし!行くか」
俺は呼吸を整えてから、待ち合わせ場所である公園に向かった。
「着いた………10時半か。11時待ち合わせだし少し早かったかもな」
「そんな事ないわよ」
「うおっ!!」
後ろからいきなり声が聞こえ振り向くとそこにはるりが。背が小さいから見えな
い。
「何か考えなかったかしら?例えば背が小さいとか?」
「滅相もございません。ですので、アイアンクローはやめてください」
「……ならいいけど」
「ふぅ。怖かった。にしても……」
るりの今の姿を見ると、秋に文化祭してそれが終わった後に遊んだ時とは真逆の格好をしている。あの時はワンピースに麦わらぼうしだったのに、今はニット帽にマフラー、手袋ときた。まぁ確かに今日は寒いからな。
「……何まじまじと私の事見てるの?警察呼んで欲しいの?」
「違うわ!!文化祭終わった時とは真逆の格好だな、って思ってただけだよ!」
「……今日はメガネしてるわよ?」
「いや、そこは突っ込まなくていいだろ。というか何時くらいから待ってたんだよ?」
「さっき来たところ。けど、この公園を歩いている人がカップルばかりでなんというか一人は恥ずかしかったわ」
そう言われ周りを見渡してみる。確かに手をつないでたり、腕を組んだりしている男女ばかりだ。
「まぁ、それはいいだろ。俺たちもそういう事なんだしさ」
「それもそうね。で、今日はどこに連れてってくれるの?」
「んー、予定はちゃんと考えてきてないんだよな。でも、18時にあっち集合だから。買い物にでも行こうぜ」
「わかった」
返事をして、何故か両手にはめた手袋を外し出するり。
「なんで外してんの?」
「クロ君が手袋してないからじゃない。平等じゃないとかわいそうでしょ?」
「いや別にいいよ。コートのポケットに手突っ込んでたらいいだけだし。俺としてはるりの手が冷える方が嫌な事だしな」
「…………だったら………ない」
「ん?今なんて…………って、あぁ。そういう事ね」
「な、なによ?」
「いや、相変わらず素直じゃないな、って思ってさ」
ポケットに入れていた手を片方出して、その手でるりの手を握る。
「こうしたかったんだろ?」
「……………」
顔を赤くして無言で俯いている。これは図星という事だろう。相変わらずうちの彼女は可愛いな。他のカップルに向かってドヤ顔してやりたい。
「さて。るりの可愛い一面をたっぷり見れたところで買い物に行きますか」
「………やっぱり、手離してもいい?」
「すいません、まじ調子に乗りました」
「ならいいわ。さっ、行きましょ?」
結局主導権を握るのは俺ではなくるりだという事なんだな。
電車やら徒歩やらでやってきたデパート。デパート内は暖房が効いていたのと、人口密度が高いので暑かったから、るりはニット帽とマフラーを取っていた。
「で、どこからまわる?」
「とりあえずクリスマスパーティでするプレゼント交換のプレゼントを買いたいな。るりはもう買ってるのか?」
「えぇ。ちょっと面白いぬいぐるみを」
……こいつまた小咲の時みたいに変なプレゼント買ったんじゃないんだろうな?
「まぁそのプレゼントが小咲の方にまわるのを俺は祈っとくよ。そっちの方がおもろいし」
「あら、クロ君もなかなかゲスい男なのね」
「うるせえ。でもるりはぬいぐるみか……俺はどうしようかな」
「ぶらぶらしながら考えたらいいんじゃない?」
「いいのか?俺に付き合わされる事になるんだぞ?」
「別にいいわよ。私も少し見て回りたい事があるから」
見て回りたい事?なんか用事でもあるのかなぁ?るりの両親へプレゼントとか?
「にしてももうクリスマスって思うと早いよな。去年は俺とるりと小咲の3人でパーティだったっていうのに、今年はクラス全員でだからな。高校と中学は違うって事だよな」
「そうね。あれはあれで楽しかったから良かったし、今年もしたかったけれどクラスのやつに誘われたら仕方ないわよね」
「だよな〜。なら、明日とかどうだ?なんなら風ちゃんと春ちゃんも誘ってさ。楽しそうだと思わねえか?」
「いいわね。小咲がオッケーくれたらしてもいいと思うわよ」
「よしきた。パーティの時に誘ってみるか」
デパート内をウロウロしながら話を続けていく。
「にしても見つからないな、プレゼント」
「クロ君が深く考えすぎなんじゃないの?自分がもらったら嬉しいものとかでいいと思うのだけれど」
「それでるりはぬいぐるみか?」
「えぇ。もらって嬉しいものだもの」
そのぬいぐるみは本当にただのぬいぐるみなんだろうな?なんも仕掛けはないんだろうな?
「うーん……あ、これとかいいんじゃないかしら?」
そう言ってるりがさしたのは時計。それも人気のキャラクターの壁紙がついてる時計だ。
「おぉ、確かに。これなら男子や女子がもらっても嬉しいし、みんなが愛用してくれそうだもんな。流石はるりだ」
そう言って俺はるりの頭を撫でる。髪さらさらで気持ちいいな」
「……子ども扱いしないでちょうだい」
「とか言いつつ、嫌そうにはしてないみたいだけど?」
「そんな事ないわ。それよりお腹すいた。どこかに食べに行きましょ」
るりは俺の撫でていた手をパッと払う。てかもう14時だったのか。
「ん?もうそんな時間か。歩き回ってたから気づかなかった。何食べたい?」
「なんでも?クロ君の好きなものでいいわよ」
「じゃあハンバーガーとかでいいか?夜はどうせ豪華なものが出てくるだろうし」
「いいわよ。私いつものやつ頼む事にするし」
いつもやつとは。るりがファストフード店に来たらいつも頼むもの。ハンバーガーのハンバーグ8枚載せとか、ポテトのサイズとかがえげつないセット。普通の人は頼まない。
「…………なんであんなの食えるんだろ?お前人間じゃないだろ?」
「失礼ね。私はれっきとした人間よ」
「わかってるよ。ただ、その食った食べ物をもう少し身体にまわすことができたらな?こんなに背も胸もちっちゃくならなかっただろうに………はっ、しまった!つい本音が」
やばい。るりに殺される……
「クロ君………」
「るり………」
「覚悟はいい?」
やばい。俺死んだかも。
「…………いやー、少し待ってもらえると」
「……なら、私がいつも頼むやつ。あれをクロ君も食べたら許してあげる」
「はぁ!?ちょっと待て。あれの量どれだけすげぇと思ってんだ!お前ならともかく俺が食えるわけ『返事は?』イエス、マム!!」
「ならよし」
……俺、夜のパーティーで生きてられるかな?
あの後、ハンバーガーのとんでもない量をなんとか食いきった俺は、今度はるりが買いたいものがあるというので、それに付き合って、買い物を終えるとちょうどいい時間になったので、パーティー会場の方へと向かっている。
「なぁ、何買ったんだよ?」
「なんでもいいでしょ?もう直ぐ分かることだし」
言ってる意味がよくわからない。
「まぁいいや。何時に小咲と待ち合わせだっけ?」
「17時よ。今から行けば全然間に合う。むしろ時間が少し余るくらいじゃない?」
「そっか。じゃあ変なタイミングだけど………はい、これ」
俺は鞄の中からラッピングされた箱をとりだしてるりに渡す。
「なにこれ?」
「いや、なにって。今日お前の誕生日じゃん。自分の誕生日忘れてたのか?」
「………そういえばそうだった」
「しっかりしろよな。でも、まぁ……誕生日おめでとうだ、るり」
「……ありがと。中身開けてもいい?」
「構わねえぞ。大したものは買ってないけど」
ラッピングされたリボンと包装を綺麗に取ってるりは箱の中を開けた。
「これ………ペンダント?」
「あぁ。小咲と選びにあった時に、るりなら絶対似合うだろうなって思って買ったんだ。嫌だったか?」
「……今の私としては、小咲と買い物に行った話を私は聞いてなかったのだけれど?プレゼントの事は伏せておくにしろ買い物に行くって一言言ってくれても良かったんじゃない?」
「うっ………それは」
るりはギロッと俺のことを睨んでくる。やばい。その事を考えてはなかった。
「はぁ……………クスッ」
「るり?」
「なんでもない。ありがと。すごく嬉しいわ。黙ってた事は怒ってるわけじゃないから気にしなくていいわ」
「ならよかった。喜んでもらえてなによりだ」
「えぇ。だから、そのお礼も兼ねてっていうのも何か変だけれど……」
るりは一度ペンダントを鞄の中にしまい、今度はるりが鞄の中から俺にラッピングされた箱を渡してくる。あれ、これって………
「1日早いけど、メリークリスマス、クロ君。私からのクリスマスプレゼントよ」
「……もしかして、さっき買ったのってこれなのか?」
「そうよ。クロ君にはいつもお世話になってるし、この機会に何かプレゼントしようと思って。あ、中身開けてもいいわよ」
まさか、サプライズをサプライズで返されると思ってなかった俺は数秒ポカンとしてしまうが、すぐに正気になり、プレゼントの中を開ける。
「…………マフラー?」
「そう。クロ君今日ずっと寒そうにしてたから。そのうち風邪ひきそうで心配だったしね」
るりは本当に俺の事をよく見ていてくれてる。外歩いてるときはるりがいてくれてるとはいえ寒くて、何度くしゃみしたかわからない。
「そっか………ありがとな。じゃあ、早速使わせてもらうよ」
「あ、ちょっと待って」
マフラーをつけようとした俺を止め、るりは俺の目の前に立つ。
「マフラー貸して」
「ん?ほい」
もらったマフラーをるりに一度渡す。するとるりは背伸びをして俺の首にマフラーを巻いてくれた。
「どう?あったかい?」
「…………あぁ。今寒いのが一気に吹っ飛んだよ。ありがとう、るり」
「当然ね。私の買ったマフラーなんだから」
「あはは………そうだ。俺もつけてやるよ、ペンダント」
「そう?ならお願いする」
そう言ってペンダントと渡してるりは後ろを向く。るりの髪の毛にかからないように気をつけてペンダントを首につける。
「………どう?似合うかしら?」
「……コートのせいでよくわからない」
「なっ……」
「でもきっと似合ってるよ。るり風に言うなら、俺が選んだペンダントなんだから」
「なら問題ないわね。ありがとクロ君。ペンダント大切にする」
「あぁ。こちらこそありがと。俺もマフラー大切にするよ」
お礼を言い合って、どちらからでもなく笑いあう。
「よし、じゃあ行くか。俺の今日の目標は終わったし」
「なに言ってるの?今からパーティよ。小咲に私のプレゼントまわすんだから」
「そういえばそうだった。じゃあ俺はそれを全力で応援だ」
「えぇ、頼むわよクロ君」
「任せろ」
これで本当にるりのプレゼント小咲に当たったら俺たちの運は神がかってるな、と思いつつ俺たちは小咲が待ってる公園へ向かった。
そのあとのパーティで楽が桐崎さんを連れて高級ホテルのスイートルームへ向かったのはまた別の話。
ブリザード大満足です。
イチャイチャかけて大満足です。
なんか時系列グチャグチャですけど気になさらないでくださいね。
感想と訂正があればお待ちしております