風雷のヒーローアカデミア   作:笛とホラ吹き

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第一種目:障害物競走

 走者の行く手を阻む最初の関門、一般入試でも使われた大量の仮想敵が、波となって襲いかかる『ロボ・インフェルノ』。真っ先にそこまで辿り着いた飯田が、敵ロボットの最初のターゲットとなるのは必然であった。

 

「ターゲット、コロス!」

「ハカイスル!」

「貴様らのやり口は知っている!それに、俺はあの頃よりも成長しているぞ!」

 

『おーっとぉ!先頭を駆けるA組、飯田天哉!敵ロボット妨害をものともせず駆け抜けていくぜぇ!』

『速度に振り回されない身のこなし……この二週間でずいぶんと鍛えたみたいだな」

 

 避ける。避ける。ロボットから放たれる熱線や重厚なボディによる叩きつけを、持ち前の機動力を駆使して回避する。驚くべきはそうして細かく動いている間も、ほとんどスピードが落ちていないというところであった。

 

「アスレチックで培った加速維持と悪路走行!あの数をものともしていない!」

「ま、あれくらいはできるよね」

 

 少し遅れて、風華と緑谷がロボ・インフェルノゾーンに突入する。飯田を妨害するのを諦めて襲いかかるロボットの大群を相手に、個性によって強化された身体能力で対抗する。

 

「吹っ飛べ……『吹き荒ぶ風(チープストーム)』」

「瞬間解放、12%……!折れてくれるな『デトロイトスマッシュ』!!」

 

『A組、鳴神風華が風で敵ロボットを吹っ飛ばす!それに続いて緑谷出久だ!パンチの一発でロボットが粉々!こいつぁ凄まじいパワーだぜぇ!』

『緑谷はこれまで、自滅覚悟でしか個性を使うことができなかった。準備期間でしっかりと制御してきたみたいだな』

『サラッと言ったな!そりゃあ大した進歩だ!』

 

「緑谷、骨折克服かよ!」

「凄い、ぴょんぴょん跳ねとる!」

「俺の猿真似の動きじゃねえか!」

 

 A組はそれぞれがそれぞれのやり方で、ロボ・インフェルノを抜けていく。入試の時は『避けるべき邪魔者』であったが、『倒すべき障害物』としてみれば鈍臭い鉄の塊でしかない。

 B組をはじめ、他のクラスの走者の動きも悪くはない。だが、A組は立ち止まる時間が短い。

 

「避けちまえばただのデカブツよ!」

「這い上がれ黒影!」

 

 上の世界を肌で感じた者。

 

「浮かせてしまえば……邪魔にならない!」

「中身がイカレれば動けないっしょ!」

 

 恐怖を植え付けられた者。

 

「ほっ……ああたぁ!」

「どうせなら、もっとすげぇモン用意してほしかったんだがな。クソ親父が見てるんだからよ」

 

 対処し、凌いだ者。

 

『各々が経験を糧とし、迷いを打ち消している』

『はーっ!経験の差コエー!』

 

 次々と敵ロボットの波を抜けていくA組に、会場の歓声がどんどん熱気を帯びていく。多くの応援を受けて、負けじと他の走者も走りにいっそう気合が入ってきた。

 

「あそこ!凍らせられて道になってる!」

「よっしゃそこ通れ!」

「やめとけ、不安定な態勢で凍らせたから……」

「ぎゃああぁぁぁっ!?」

「倒れるぞ」

 

『轟、攻略と妨害を一度に!こいつぁシヴィー!』

 

「誰か潰されたぞ!?」

「死人とか洒落にもならねえぞ!?」

 

 敵ロボットを凍らせて拘束し、その足下をくぐっていく轟に追従するように進む走者達。轟はもちろん、そんな便乗にも対策を講じていた。ワザと足を上げるなど態勢が不安定になったところで凍らせ、時間差で倒れるようにしていたのだ。

 避け切れなかった者がいたようで、その瞬間を見てしまった普通科の生徒は狼狽し足を止めてしまっていた。

 

「轟のやつ無茶しやがって!『硬化』できる俺じゃなかったら間違いなく死んでたぞ!」

「やることが派手だぜA組……!俺の硬度がなければ死んでたぞ!」

「個性ダダ被りかよ!」

 

『おーっとA組切島、B組鉄哲!潰されながらもしっかり復帰!しぶとい奴らだぜ!』

 

「ホント、いい『個性』だと思いますよ!ですが!この体育祭で一番になるのは僕ですから!」

「んなぁ危ねえっ!?何だ今の、ドラゴンか!?」

「おい立甲!巻き込まれるところだったぞ!?」

「それは申し訳ありません!お先に失礼します!」

 

『今度は何だぁ!?B組の立甲葵だ!変身してるぜ何者だコイツ!?』

『個性『蒼龍』か。良いパワーだな』

 

 倒れたロボットをほじくって、何とか脱出を果たした個性ダダ被りの2人。全身を鉄の穴から解放したところで、それを蹴り砕く蒼い残像を見た。

 

 全身に纏う蒼き鎧は、無数の鱗が重なって堅牢なる甲殻を成したもの。150cm程度しかなかった身長は、大きく膨張して2mを優に超えた。腰の辺りからは百足のそれを思わせるような三組の尻尾が生え、それらに上から覆い被さるように蒼炎の如き体毛がゆらめいていた。

 顔も爬虫類のそれよりも、遥かに雄々しさと生命力に満ち満ちたものとなっている。まさしくそれは御伽噺の存在。幻想の頂点に立つ者、『蒼龍』の姿であった。

 

 立甲葵、個性『蒼龍』。轟の妨害に綺麗に引っかかって出遅れた分を、すぐに取り戻せるだけの力が彼女には有った。

 

「ふうちゃんはもう第二関門の所まで行ってしまいましたか!それでこそ僕のライバルですね!」

「何か悪寒が……」

「き、気のせいだと思うよ!?」

 

『トップ陣は早くも第二関門へ到達したぜ!第一関門は悠々突破されちまったがこっちはどうだ!?落ちたら奈落へ真っ逆さま!それが嫌なら這いずり回れ!天地を分ける一本橋!『ザ・フォール』!!』

 

 未だ先頭を走る飯田の前に、新たな障害が。底の見えない深い崖を繋ぐ細いロープを使って、対岸へと渡る『ザ・フォール』。細く不安定な足場に一瞬たじろぐも、飯田はすぐに気を取り直して進んだ。

 

「大袈裟な名前だが、所詮は綱渡り!兄さんも見ているであろうこの場で、この程度の障害に止められるようなカッコ悪い姿は見せられん!」

 

『カッコ悪ィィー!』

 

「高速よちよち綱渡り……!」

「もう少し名前何とかならなかったの?」

 

 飯田の兄、「ターボヒーロー」インゲニウム。憧れの存在に格好悪い姿を見せたくないという彼の想いが、小刻みにエンジンを起動しながらロープを伝い走るというとてもじゃないが格好悪い姿を生み出したのだった。

 実況のプレゼント・マイクが、後ろでその姿を見ていた緑谷が、それぞれ感想を述べる。

 

 そんなこんな言いながら、続いて風華と緑谷が第二関門に到達。風華に関しては崖など飛行することで対処できる。しかし緑谷に関しては、5%フルカウルの出力では、素直に綱渡りをしなければ対応できないだろうと察してしまっていた。

 

「こればかりは個性の相性の差だね。わたしは先に行ってるよ」

「もちろん!すぐに追い抜いてみせるよ!」

 

 空気の流れを操って自身を浮かせ、ザ・フォールを難なく突破してみせた風華。それに続くように緑谷も走る。一切スピードを落とすことなく走り続けて、崖の際スレスレのところで大きく跳躍した。

 ジャンプするその瞬間にのみ、脚部を強化する個性の出力を怪我しないギリギリ(12%)まで上昇させる。それまで立っていた足場を踏み砕きながらの連続ジャンプで、緑谷は崖を丸々スルーした風華に追いついてみせたのだった。

 

「瞬間解放……12%!!」

「……流石出久だ。やるね」

 

『鳴神に続いて緑谷が飛んだ!何だよチクショーせっかくの崖が意味ねーじゃねぇか!!』

『片や空気を支配して空を飛び、片や強力な身体強化で縦横無尽に跳ね回る。あいつらの個性なら、この程度の崖じゃあ障害にもならないな』

 

 緑谷はこのまま12%を継続し、出力の差でこれまで互角だった風華を追い抜いていく。みるみる内に小さくなっていく緑谷の背中を見て、風華は感心するように小さく笑った。

 

 そして、足を止める。

 

 更に続いてやってきた轟が、氷結でロープの太さを補強することで楽々突破。次に爆破を続けてペースを上げてきた爆豪が、空中を飛んで崖をスルーして突破。他はまだ、もうすぐ第二関門に差し掛かるといったところ。上位者が誰になるかはこの5人の中で決まるだろうと、観客席ではそういった予想が立てられていた。

 

「これが最終関門か!一見、ただの直線のようだが何があるというのだ!?」

 

『先頭の飯田が早くも最終関門に到達だ!コイツは一面の地雷原『怒りのアフガン』!!飛べる奴対策に対空砲も用意してあるぜ!ちなみに威力は大したことないから安心しろ!』

『地雷の位置は、よく見れば分かる。目と足を酷使してしっかり探せ』

 

 遠隔操作されたのか、デモンストレーションとばかりに埋められた地雷の一つが爆発する。大した威力ではないとはどういうことかと言わざるを得ない規模の爆発が、飯田の前で生じた。

 

「何というエンターテイメント……!」

「追いついた!足が止まってるよ飯田君!」

「緑谷君!?もうここまで追いついてきたのか!」

 

 地雷を見極めて慎重に渡る飯田に、遂に緑谷が追いついた。飯田の動きを見極めて、ある程度地雷の位置を把握した上で彼を追い抜いていく。

 

 ここで初めて、先頭が入れ替わった。

 

「勝つのは俺だっ……!」

「てめェら、俺の前を走ってんじゃねえ!」

「一着、獲らせていただきます!」

 

『おーっとぉ!ここで足を止めた鳴神に変わって3人が最終関門へとやってきた!熾烈な一位争いは更に混沌を極めていくぜぇ!』

『氷結、飛行、跳躍……三者三様に地雷原を無視する手段がある。先頭を行く2人よりも有利だな』

 

 轟は地雷原を氷で覆い、爆豪は対空砲の標的にならない範囲での飛行。遅れて追いついた葵は思いっきりジャンプして地雷原を跳び越える。既に3/4は踏破していた2人に、瞬く間に追いついた。

 

「行かせは……しない!」

「一位となるのは俺だ!」

 

「……よし、いこうか。『雷上動』」

 

 緑谷と飯田も負けじと跳ぶ。地雷原を越えて5人が着地したその瞬間に、翠緑の電閃が閃いた。

 

「なっ……!?」

「あれは鳴神のっ……!?」

「雷上動……距離的に長過ぎて使えないって言ってたのに!」

 

『これは予想外の結末!足を止めて上位争いを脱落したはずの鳴神が、目にも止まらぬ早業で一気にゴール!!障害物競走一着は、A組に閃く雷神!鳴神風華だ!!』

『足を止めたのは、高速移動に集中するためだったということだな』

 

「走り続ければ、当然距離は短くなる……いつかは使えるようになるよね」

「はぁっ……!やられた!」

「俺の個性で遅れをとるとは……!何たる不覚!」

 

 争う5人を出し抜いて、一着でゴールしたのは風華だった。もともと距離が長過ぎて、準備に時間をかけ過ぎるため使えなかった『雷上動』を、ある程度走って距離が縮まったので使ったのだ。光の速さの前には、どれだけ速くても流石に届かない。

 

 二着は飯田天哉。三着は緑谷出久。少し遅れて四着が轟焦凍、爆豪勝己、立甲葵の同着であった。

 

「いやぁ、やられちゃいましたね!」

「四着か……クソ」

「またっ……また、デクに……!」

 

 悔しがる四着の3人。それを押しのけるようにして後続が次々とゴールを通過していく。やがて最下位が決まり、障害物競走は終わりを迎えた。

 

「それじゃあ結果をご覧なさい!」

 

 1.鳴神風華

 2.飯田天哉

 3.緑谷出久

 4.轟焦凍

 4.爆豪勝己

 4.立甲葵

 7.塩崎茨

 8.常闇踏陰

 9.瀬呂範太

 10.泡瀬洋雪

 11.鉄哲徹鐵

 12.切島鋭児郎

 13.尾白猿夫

 14.蛙吹梅雨

 15.障子目蔵

 16.砂籐力道

 17.麗日お茶子

 18.八百万百

 19.芦戸三奈

 20.口田甲司

 21.耳郎響香

 22.回原旋

 23.円場硬成

 24.上鳴電気

 25.骨抜柔造

 26.拳藤一佳

 27.宍戸獣郎太

 28.凡戸固次郎

 29.小大唯

 30.心操人使

 31.黒色支配

 32.取蔭切奈

 33.庄田二連撃

 34.小森希乃子

 35.鎌切尖

 36.物間寧人

 37.角取ポニー

 38.吹出漫我

 39.葉隠透

 40.発目明

 41.峰田実

 42.青山優雅

 

「以上、42人が予選通過よ!」

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