風雷のヒーローアカデミア   作:笛とホラ吹き

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第二種目:騎馬戦(1)

「さて!予選通過者の42名も決まったところで、今度は第二種目の発表よ!早速〜これ!」

「騎馬戦……!」

 

 モニターに表示される第二種目。そこには大きくギラギラと光るフォントで書かれた『騎馬戦』の文字が映っていた。

 

 ルールは簡単。今から15分間のインターバルが取られるので、その間に2〜4名から成るチームを作る。個性の使用は自由だが、悪質な騎馬崩し目的での使用は禁止。普通の騎馬戦と違い、騎馬が崩れても失格にはならない。では、どう戦うのか。

 15分間の制限時間の間に騎手が付けているハチマキを奪い合い、終了時に合計ポイントの多い上位4チームを除いて全てが失格となるのだ。

 すなわち、次に進めるのは最大16人となる。

 

 ハチマキに書かれるポイントは、チームメンバーの持つそれぞれのポイントの合計。42位から5ポイントずつ、個人の持ちポイントが増えていく仕組みとなっている。

 

「もちろん、単にポイントが上がっていくだけじゃ面白くない!ということで一位の鳴神さん!あなたの持ちポイントは……とても奮発して10000000ポイントよ!!」

「……へ?」

 

 まさかの八桁。状況の理解を拒むように間抜けな呟きが漏れ、それに呼応してこの場にいた全員が風華の方を向いた。

 

「雄英にいる以上何度も聞かされるよ!上へ向かう者には更なる受難を『更に向こうへ(PLUS ULTRA)』!」

「ふぅん……面白いじゃん」

「それじゃあルールは理解できた!?今から15分はチーム決めタイムよ!交渉しなさい!」

 

 

 〜

 

 

「この体育祭ってさ、社会の縮図だよな」

「そうだな。ヒーロー社会の縮図だ」

 

 雄英体育祭は、生徒達にヒーローとしての気構えを云々というよりも社会に出てからの生存競争をシミュレートしている。

 ヒーローの飽和するこの社会、一人前のヒーローとして生活もしっかりとしてくためには時に、他人を蹴落としてでも活躍を示さなければならない時がある。第一種目の障害物競走はそういった、ヒーローの生臭さを示していた。

 

「あれ心苦しいですよね」

「貴様、心にもないことを……!」

 

 その一方で、商売敵と言えど協力していかなければならないという時も往々にしてある。今から始まる騎馬戦のように。

 他人の個性を把握し、人間的な相性も考慮し、持ちつ持たれつ。自分の勝利がそのまま、仲間にした者の勝利にもなる。

 

「プロが当たり前にやってることを、子どもの内から当たり前のように学んでいるんですね」

「大変ですねぇ……」

 

 サイドキックとの連携や、他のヒーロー事務所との合同個性訓練。それを衆人環視の中で行う。

 プロならば当たり前のようにこなせていなければならないさまざまな生きる術を、子どもの内から学んでいる。雄英の子は大変だな、と今を生きるプロヒーローは溢すのだった。

 

 

 〜

 

 

 誰とチームを組むか。それが問題だ。

 風華の持つ10000000ポイントは、ずっと持ち続けているよりも終盤で奪ってからキープする方がよほど効率的である。今から積極的に彼女と組もうとする者は、流石にいなかった。

 

「ふうちゃん!僕と組みましょう!僕の個性ならば鎧袖一触ですよ!」

「……考えさせて」

 

 アホを一人除いては。

 

 葵と組むのが嫌な訳ではない。むしろ実力的にはとてもありがたい話である。しかしそれでも、風華は葵と組むことを躊躇っていた。

 5歳で個性研究所に入所してから、葵とは10年以上の付き合いがある。だからこそ知っている。この間抜けはごく自然に大きなポカをやらかすということを。

 

 龍化中にくしゃみをして、その弾みで伸びた尻尾が実験室のガラスを突き破り、たまたま近くにいた研究員に怪我をさせた。

 

 父親のために料理をすると言って、キッチンで大爆発を引き起こし、隣室の風華の部屋を跡形もなく吹き飛ばした。

 

 実技入試で、0ポイントから受験生を助けた自分に酔っている間に踏み潰され、戦闘不能になって試験に落ちた。

 

 その後すぐに編入試験を受けて、合格したもののその喜びに舞い上がって車道に跳び出した挙句、トレーラーに撥ねられ昨日まで入院していた。

 

 これら全部、ワザとではないのだから恐ろしい。正直、他のライバルと組ませて共倒れしてもらった方がありがたいと思っていた。まぁ、今日が雄英初日の葵に、風華以外で気安く話せる相手なんてそういないだろうが。

 

「……ま、いいか。わたしと組もう」

「ありがとうございます!皆さん初対面ですから、お話しし辛くて大変だったんですよ!」

「他に、組むべき人は……」

「無視しないでください!」

 

 騒ぐ葵を雑に制して、風華はあと2人の組むべき人材を探す。視野が広かったり、対応力の高い者が望ましい。次々とチームが決まっていく中、まだフリーな者の中から条件に合う者を選び、風華は話しかけた。

 

「猿夫、踏陰。わたし達と組まないか?」

「鳴神。それに、後ろのは……」

「立甲葵です!よろしくお願いします!」

「どうして俺らを?」

 

 風華は語る。数少ない候補の中から2人を選んだ理由を。

 まずは尾白。彼の個性『尻尾』はそれ単体でも高い馬力を誇る上、第五の手足として自在に振るうことができる。それに、彼は武術を嗜んでおり身体の動かし方や警戒心には定評がある。USJ襲撃の時もほぼ一人で敵を凌いだくらいだ。

 そして常闇。彼の個性『黒影』は自分の意思を持った影を動かすことができるというもの。彼を引き入れることができたなら、そのチームは実質一人分の得をすることになる。騎馬の警戒網をきめ細かくするためにも欲しい人材であった。

 

「俺は別に構わないっていうか、むしろ誘ってくれてありがたいと思ってるんだけど」

「俺は……悪いが、お前達とは組めない」

「……理由を聞いてもいい?」

「実は、俺は他のチームにも誘われている。奇しくも俺を誘った理由は同じであったが……それならば俺は、より高い壁に挑戦したい」

 

 常闇が顔を向ける先には緑谷と麗日、それにサポート科の女子生徒がいた。どうやら彼はあのチームに入るつもりらしい。フラれたようなので、風華は大人しく引き下がった。

 

「分かった。本番では容赦はしないよ」

「望むところ」

「……行っちゃった。あと一人、どうするんだ?」

「フリーの子、連れてきましたよ!徹鐵君、空いてるなら組んでもいいそうです!」

「おい、まだ何も言ってねえぞ!」

「君は、B組の……」

 

 フラれたなら仕方ない。考えてきたプランからは修正が必要になるが、新しい人材を探そう。そう思ってフリーの生徒はどれくらいいるのかと見回そうとしたところで、葵が鉄哲を連れてきた。どうやら無理矢理連れてきたらしい。

 

「こっちの作戦、聞く?その場合、君がわたし達のチームに入ることは前提になるけど」

「……一応聞いておくぜ。そういやアンタ、俺がA組に行った時いなかったよな。B組の鉄哲徹鐵だ、よろしく」

「A組に来てたの?」

「鳴神さんが休んでた時にね」

 

 ふぅんとだけ言って、風華は解説を始める。方針は基本的に防衛と逃走。最も大きなポイントを最初から持っている以上、他のチームのポイントを取りにいく意味はあまりない。それ故、絶対に10000000は死守する必要がある。

 要となるのは、風華の空気掌握による空気バリアと葵の龍化による尻尾を使った防御。尾白のも含めて四つの尻尾という射程の長い武器で、迫り来る敵を打ち払い続けるのだ。

 鉄哲はこの場合騎手となる。個性『スティール』の硬度を活かして、相手の搦手を払い除けポイントを死守する役割だ。

 

「空気を掌握したら、酸素を奪って窒息させることもできるんだけど。それはみんなの騎馬が崩れちゃうから今回はやらない。わたし以外全員倒れちゃうからね。後は、巻き添えにしちゃうかもしれないから電気も使い辛いかな」

「崩し目的と見做されかねないもんね」

「……まぁでも、ただ逃げ回るだけじゃお客さんはつまらないだろうから。最初にこんなことをしようと思ってるんだ」

 

 ひそひそと、他のチームには聞かれないように大事な作戦を伝える。確かに、ただ10000000ポイントを抱えて逃げるよりもこっちの方が面白いとみんな賛成した。鉄哲ももう、立派なこのチームの一員である。

 

「……!」

「なんだ……?」

「あァ……?」

 

 この時、嫌な予感を察知したのが3人程いた。

 

 

 〜

 

 

「さぁ15分が経ったわ!みんなしっかりとチームは組めたかしら!?それじゃあ始めるわよ!」

「よっし!それじゃあ頼むぜ立甲、鳴神、尾白!」

「もちろんです!」

「勝とう」

「みんなで頑張ろうね」

 

 チーム鳴神

 鳴神風華 10000000ポイント

 尾白猿夫      150ポイント

 立甲葵       195ポイント

 鉄哲徹鐵      160ポイント(騎手)

 合計   10000505ポイント

 

 チーム緑谷

 緑谷出久      200ポイント(騎手)

 麗日お茶子     130ポイント

 常闇踏陰      175ポイント

 発目明        15ポイント

 合計        515ポイント

 

 チーム轟

 轟焦凍       195ポイント(騎手)

 飯田天哉      205ポイント

 八百万百      125ポイント

 上鳴電気       95ポイント

 合計        620ポイント

 

 チーム爆豪

 爆豪勝己      195ポイント(騎手)

 切島鋭児郎     155ポイント

 芦戸三奈      120ポイント

 瀬呂範太      170ポイント

 合計        640ポイント

 

 チーム塩崎

 塩崎茨       180ポイント(騎手)

 回原旋       105ポイント

 泡瀬洋雪      165ポイント

 骨抜柔造       90ポイント

 合計        540ポイント

 

 チーム蛙吹

 蛙吹梅雨      145ポイント

 障子目蔵      140ポイント

 峰田実        10ポイント(騎手)

 合計        295ポイント

 

 チーム砂籐

 砂籐力道      135ポイント

 葉隠透        20ポイント(騎手)

 耳郎響香      110ポイント

 口田甲司      115ポイント

 合計        380ポイント

 

 チーム円場

 円場硬成      100ポイント

 物間寧人       35ポイント(騎手)

 宍戸獣郎太      80ポイント

 小大唯        70ポイント

 合計        285ポイント

 

 チーム拳藤

 拳藤一佳       85ポイント(騎手)

 角取ポニー      30ポイント

 凡戸固次郎      75ポイント

 吹出漫我       25ポイント

 合計        215ポイント

 

 チーム心操

 心操人使       65ポイント(騎手)

 青山優雅        5ポイント

 庄田二連撃      50ポイント

 合計        120ポイント

 

 チーム黒色

 黒色支配       60ポイント

 小森希乃子      45ポイント

 取蔭切奈       55ポイント

 鎌切尖        50ポイント(騎手)

 合計        205ポイント

 

 運命の15分が、始まる。




ポイントの計算合ってますかね?
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