風雷のヒーローアカデミア   作:笛とホラ吹き

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合格発表

 実技試験の終了から一週間。時が経つのは早いもので、あっという間に合格発表の日がやってきていた。

 

「お姉ちゃん、いい?スイッチ入れるよ?」

「ええ、お願い」

 

 朝早くから届いた宅配便を受け取り、その中身が合格発表の通知であることを知った風華は、すぐに雷羽を呼んだ。前々から頼まれていたとおり、一緒に結果を見ることにしたのだ。

 段ボールを塞ぐテープを剥がし、中の物を取り出す。段ボールの中には、小型のプロジェクターのような物が入っていた。プロジェクターにスイッチがあるのを見つけた雷羽が、風華にスイッチを入れていいかと聞く。当然そうしなければ結果が分からないのだから、風華は二つ返事で了承した。

 

『私が投影された!!』

「わぁ……!オールマイト!本物だ!」

「オールマイト?どうして……」

 

 まさかの人物の登場に、雷羽が驚きと喜びの入り混じった声を上げる。

 プロジェクターによって映し出されたのは、日本が誇る平和の象徴オールマイトであった。どうしてオールマイトが、雄英から送られてきた映像に映っているのか。疑問に思う風華であったが、その疑問は意外と早く解決された。

 

『ハハハ、鳴神少女。君が今、何を思っているのか私にはよーく分かるよ。どうして雄英から送られてきたこの映像に私が映っているのか、だろ?それは来年度から、私が雄英に教師として赴任することが決まったからさ!』

「オールマイトが……!?本当に!?」

「凄い!オールマイトに教えてもらえるの!?」

 

 風華の疑問に答えたオールマイトの言葉、それを聞いた二人が驚きの声を上げる。平和の象徴が教鞭を取ることも、その授業を自分が受けられるかもしれないということも。そんなことを聞いて、風華が興奮しないわけがなかったのだ。

 

『おっと、そろそろ本題に入るべきか。鳴神少女の試験結果を発表するぞ!まずは筆記試験だが……おめでとう!全科目で素晴らしい成績だったぞ!詳細な点数は言えないけどな!』

「まずは一つだね!」

「うん……」

 

 筆記試験は、風華は結構自信があった。自己最点の結果も全科目9割を超えていたし、大丈夫だったということが改めて確認できただけ。問題は実技試験の方である。

 

『ま、ここまでできてるなら、筆記は大して心配してなかったかな!?お待ちかね、実技試験の結果を発表するぞ!知っての通り、実技試験は仮想敵となるロボット軍団を倒すことでそれに応じたポイントが手に入るわけだが!実はこの試験には、隠された第二のポイントが存在していたのさ!』

「へー、そうなんだ!お姉ちゃん知ってた?」

「一応、アタリは付けてたけど……」

 

 風華は固唾を飲んで、オールマイトが次の言葉を紡ぐのを待つ。合格か、不合格か。第二ポイントの内容が自分の想像していた通りであったなら、きっと合格できているはず。小さくない不安に、嫌な汗が滲んでくるのが分かった。

 

『ロボットを倒して手に入る「敵ポイント」に続く第二のポイントとは……そう!救助活動をすることによって手に入る「救助ポイント」さ!この二つを合わせて鳴神少女が手に入れた総ポイントは77!敵ポイント24、救助ポイント53!』

「……!」

『おめでとう!総合同率一位、文句なしの合格だ!ちなみに、こちらが総合トップ10の一覧となっているよ!』

「お姉ちゃん!合格!合格だって!凄い!」

「ええ……やった……!」

 

 雷羽が喜びのあまり風華に飛びついていく。自分のことのように喜ぶ妹を頭を撫でて宥め、自分でもこの喜びを噛み締める。嬉し涙が流れていきそうなのを、グッと堪えた。

 一覧を見ると、最上段に確かに自分の名前があるのが見えた。本当に雄英に受かったのだという実感が湧いてくる。

 

『……え、もう時間!?ゴメン、もうちょっとだけ喋らせて!まだ最後の激励やってないから!』

「段取り悪いね」

「そうだね」

『えー、オホン。では気を取り直して……と。合格おめでとう、鳴神少女。10年前に出会った少女が今、ヒーローとなるためのスタート地点に立つ瞬間に私は立ち会っている。なんだか、感慨深いものがあると思わないかい?』

「……!わたしのこと、覚えて……!?」

 

 合格発表が始まってから、何度目かの驚き。オールマイトが、日本の最高のヒーローが、10年も前に一度会ったことがあるだけの自分のことを覚えていてくれた。それが、たまらなく嬉しかった。

 

『私が教師となった年に、君が雄英に入学する。きっとこれも、何かの縁があったのだろうな!4月、高校生となった君に会うのを楽しみにしているぞ!さらばだ!』

「……終わっちゃったね」

「……そうだね」

 

 投影が終了したプロジェクターは、雷羽に適当な場所にしまってもらい、風華は玄関の写真を手に取った。10年前に撮られた、オールマイトと自分の2ショット。

 昔を懐かしむように写真を優しく撫でる。不思議と写真の中のオールマイトも祝福してくれている、そんな気がした。

 

「おじさん達が、合格のお祝いしてくれるってさ!お姉ちゃん、わたしのお家行こ!」

「……そうだね。行こうか」

 

 本当なら、この後は必要な書類を用意しなければならないのだが。

 ……今は合格のお祝いを優先、と。風華は面倒な作業から目を逸らし、叔父夫婦の家へ向かう準備を始めたのだった。

 

 

 〜

 

 

「まさか、敵ポイントだけで一位とはな!」

「そして、救助ポイントだけで八位」

「内容だけ見れば、どちかに偏りすぎているということで時折いるものだけれど。どちらかのポイントしか取ってないというのは珍しいね」

 

 時は少し遡り、雄英講師陣。纏められた実技試験の結果を元に、今年の合格者を決める話し合いをしていた。

 真っ先に話題に上がったのは、総合同率一位の爆豪勝己と、総合八位の緑谷出久。片方は『爆破』という強力な個性と豊富なスタミナで多くのロボットを薙ぎ倒し、片方は凄まじい超パワーで強大な0ポイントを粉砕してみせた。講師陣の注目が集まるのも当然と言える。

 

「そして、そんな爆豪勝己に並ぶ同率一位……鳴神風華。緑谷出久に次いで高い救助ポイントを稼いでいるな」

「途中で明らかに気付いていましたからね。少しアピールが過剰な面もありましたが、それでも人助けを行なっていたのは事実ですから」

「緑谷少年は、彼女に助けられていなければ危なかったな。しかし、まさか彼女が雄英に来ることになるとは……」

「オールマイト、ずっと気にしてましたよね。知り合いなんですか?」

 

 話し合いが進む中で、風華の話題が出てくる。彼女の名に対して反応を示したオールマイトに、教師の一人が質問をした。それに対して「まぁ、昔ちょっとね」とだけオールマイトは返した。

 多くの死者と行方不明者を出した君沢の悲劇を、より幼い妹を抱えて生き抜いた風華のことを、オールマイトはよく覚えていた。あの時自分が助けた少女が、ヒーローを目指して教師となった自分の下へとやってくる。なんだか感慨深いものがあるなぁとオールマイトは思っていた。

 

「触れただけでロボットを機能停止させ、風による拘束や瓦礫を除去して逃げ道の確保。怪我人の応急処置も、そこそこ手間取ってこそいたがしっかりとできていた。これから先学んでいけば、きっと彼女はいいヒーローになれますよ」

「その通り!金の卵にはしっかりと孵化して、羽ばたいてもらわなければならないのさ!」

 

 校長、根津の一言が風華への講評を締め括る。

 まだまだ会議は終わらない。講師の注目は、次の生徒へと移っていった。

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