風雷のヒーローアカデミア   作:笛とホラ吹き

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期末テスト:その1

 勉強して、トレーニングして……およそ一週間という短い準備期間を終えて、遂に期末テスト当日がやってきた。

 先にあった筆記試験は、八百万による集中講座の力もあってほぼ全員が無事に終えられた。ここからは最大の鬼門……演習試験が始まる。

 

「それじゃ、これから演習試験を始めていくぞ」

 

 校門前にコスチュームを着て集まったA組。勢揃いした一年生担当の先生達を前に、これから明かされる演習試験の内容を心して聞く。もっとも、情報を事前に聞いているからか何処か余裕が見て取れるのだが。

 

「えー。みんな分かっているとは思うが、演習試験にも当然赤点はある。林間合宿に行きたかったらみっともねえヘマはするなよ」

「何か、先生多くないですか……?」

 

 先生の人数を数えていた耳郎は、その多さに当然の疑問を抱く。相澤は直接その疑問に応えることはせず、次の話を始めた。

 

「諸君らなら、事前に情報を仕入れて演習何をするかは知っていると思うが……」

「入試の時みてえなロボ無双だろ!」

「花火ー!カレー!」

「残念!諸事情あって、今年からは試験の内容に変更が入ったのさ!」

「校長先生!」

 

 上鳴が勝ち誇るように言い、芦戸がこれなら受かったも同然と林間合宿での楽しみを挙げていく。筆記試験を乗り越えたからか、それとも演習試験が思っていたよりも簡単そうな内容だと知ったからか。2人の気の緩みは最高潮に達していた。

 しかし、そんな甘い話なぞ有るわけがない。相澤の首に巻かれた捕縛布からニュッと出てきた根津校長が、その緩みをバシッと切り捨てた。そのままの体勢で固まる2人。風華が試しに上鳴に触れてみると、まるで鋼にでも触れたかのようにガチガチに固まってしまっていた。

 

「内容の変更……ですか?」

「そう。試験内容については、職員会議でずっと話し合いをしていたのだけどね……」

 

 

 〜

 

 

 試験の少し前

 

「敵活性化のおそれ……か」

「もちろん、それを未然に防ぐことができたら最善ですが。学校としては万全を期したい」

「これからの社会、今まで以上に敵犯罪が活性化すると考えると……やはり、ロボット相手の訓練は実践的ではない」

 

 例年ロボットを使っていた理由は、『試験という場でヒーローの卵に他人に危害を加えさせるのか』というクレームを回避するための方便として使うためである。相澤曰く「言いたいだけなんだから無視すればいい非合理的な話」だが、そうもいかないのが辛いところであった。

 しかし、今ならば情勢を方便とすることでより実践的な内容で訓練や試験を行うことができる。

 

 敵の被害の増えてきている現状、これからのヒーローにはより高度な戦闘力が必要とされてくるであろう。

 

 ならば、学校側は対人戦闘、活動を見据えたより実践的な教えを重視していかなくてはならない。ロボットに頼らねばならない時期は、とうに過ぎていっているのだ。

 

「やはり、試験内容は変更するべきなのさ」

 

 

 〜

 

 

「……と、いう訳で!君達にはこれから、二人一組でここにいる教師1人と戦闘を行ってもらう!」

「へぇ……先生方と」

 

 ペアとなる生徒同士と、戦う教師の組み合わせは既に決まっている。戦闘時の行動や性格の傾向、それぞれの親密度、成績や個性の相性など、諸々の要素を踏まえて教師陣による独断で決定された。

 

「まずは轟と八百万がチーム……相手は俺だ」

「……」

「私と……轟さん……?」

 

「そして」

「緑谷少年と爆豪少年のチーム!君たちの相手をするのは……私だ!」

「オールマイト!?まさか、あなたと……!?」

「へっ……上等じゃねえか!」

「全力で……勝ちにこいよ、お2人さん!」

 

 こうして、組み合わせと対戦相手が続々と発表されていき。10組20人と、10人の対戦相手となる教師が発表された。A組の人数は21人。それは即ち、誰かがまだ余っているということで……

 

「あの……わたしはいったい誰とペアを?」

「おっと!そういえば鳴神少女はまだペアとなる者がこの場にいないのだったな!もう少し待っていてくれたまえよ!ちなみに、君が戦う相手は緑谷少年達と同じく私だ!」

「わたしも、オールマイトと……!」

「すいません!B組の方に出てて遅くなりました!」

 

 タッ、タッ、とアクロバティックな足取りでやって来たのは、B組の生徒であるはずの葵だった。颯爽と集まる皆の前に降り立ち、無駄に格好つけながら立ち上がる。そんな彼女を、風華は呆れた目で見ていた。

 

「ふうちゃん!今回のテストは僕とあなたでチームだそうですよ!一緒に頑張りましょうね!」

「そうだね……相手はオールマイトだ。気を引き締めていこう」

 

「対戦相手が被っている鳴神・立甲チームは緑谷・爆豪チームの試験が終わってから始める。それ以外の10組は、各々のステージまで移動してから一斉にスタートだ」

「試験の概要については、それぞれの対戦相手となる教師から説明されるのさ!移動は学内バスで行うからすぐに移動するのさ!」

 

 組み合わせは以下の通りである。

 

 

 根津VS芦戸・上鳴

 

 

 13号VS青山・麗日

 

 

 プレゼント・マイクVS口田・耳郎

 

 

 エクトプラズムVS蛙吹・常闇

 

 

 ミッドナイトVS瀬呂・峰田

 

 

 スナイプVS葉隠・障子

 

 

 セメントスVS砂籐・切島

 

 

 パワーローダーVS飯田・尾白

 

 

 イレイザーヘッドVS轟・八百万

 

 

 オールマイトVS緑谷・爆豪&鳴神・立甲

 

 

「さあ4人とも!移動するからバス乗りな!」

 

 

 〜

 

 

 車内にて。

 

「……しりとりとか、する?」

「……」

 

 静まり返る車内で、オールマイトは気不味さを感じながら職員会議のことを思い出していた。試験内容が対人さんに決まってから、ではどのような組み合わせで試験を行うのかという話し合いの時だ。

 

『まず、轟と八百万ですが……実力的には一通り申し分ないですが、全体的に力押しで小細工の扱い方に疎い傾向があります。八百万は万能な対応力がありますが、咄嗟の対応や応用力に欠ける……2人ともその強みをほとんど個性に依存しているため、俺が相手をします。個性を消して、近接戦闘で弱みを突きます』

『意義なし!』

『そして、芦戸・上鳴。良くも悪くも単純な性格で考えるより先に身体が動くことが多いです。校長の頭脳でその弱点を抉り出していただきたい』

『オッケーなのさ!』

 

 相澤が選んだ組み合わせと対戦相手が続々と発表されていき、それに異議が唱えられることもなく順調に進んでいく。担任として生徒の性格や行動をよく見ている相澤の観察眼に、オールマイトは尊敬の念すら抱いた。

 

『緑谷と爆豪ですが……この2人は能力や成績ではなく、仲の悪さを考慮して組みました。体育祭で大喧嘩して以降、ある程度はマシになったみたいですけど油断はできません。緑谷のことがお気に入りなんでしょう?相手は頼みましたよオールマイト』

『ああ!任せてくれたまえよ!』

『そして、鳴神とB組の立甲のペアですが……この2人は育った環境のおかげか、実力についてはなかなかのものです。しかし鳴神は赫災領域(レッドゾーン)の暴走の危険を孕んでおり、立甲も油断や不注意で自ら不利を作り出してしまう弱点があります。この2人の相手もオールマイトにお願いします。現No.1の力を思い知らせてやってください』

『連戦か……活動時間保つかな……?というかほんとよく見てるね君……尊敬するよ』

『どうも』

 

 ヒーローとしては後輩だが、教師としては自分の大先輩。相澤の鮮やかな手腕を見て、オールマイトは感動に打ち震えていた。

 

「着いたぞ!ここが我々の戦うステージだ!」

「市街地……ですか」

「ここって、入試の時の……?」

 

 バスから降りて見えた景色は、数多のビルが群立する街並み。緑谷と風華はこの景色を覚えていた。入試の時に、自分達に割り当てられた会場がここだったからだ。

 

「あの!そういえば戦いって……オールマイトを倒すとかそんな感じになるんですか……?そんなのどう足掻いても無理だと思うんですけど……?」

「消極的なせっかちさんめ!そういうところを今から説明するから、ちゃんと聞いておけよ!」

 

「制限時間は30分!君達の勝利条件は『捕縛用ハンドカフスを教師に掛ける』若しくは『どちらか1人がステージから脱出する』の二つ!」

「戦闘訓練と似てるんだな!」

「逃げてもいいんですか!?」

「その通り!」

 

「何しろ、戦闘訓練とは訳が違うからな!お前らの相手はチョー絶格上!」

「格……上……?イメージないんスけど……」

「ダミッ!ヘイガールウォッチャウユアマウスハァン!?」

 

「今回は、極めて実戦に近い状況での試験。僕らを敵そのものだと考えてください」

 

「会敵したと仮定し、そこで戦い勝てるならそれで良し。だが……」

 

「彼我の実力差が大き過ぎる場合、逃げて応援を呼んだ方が賢明だ。轟……お前らならよく分かってるはずだがな」

「?」

「……!」

 

「即ち、この試験は……」

 

「逃げて勝つか……戦って勝つか……!」

「そう!君達の判断が試されるぞ!でも……こんなルール逃げの一択じゃね!?って思うよね」

「そうですね。個性の強さ出力はともかく、経験や使い方などには大きな差があります」

「という訳で作られました!超圧縮錘!」

 

 サポート科によって作成されたハンデ用アイテム『超圧縮錘』。教師陣それぞれの体重の半分の重量を誇るこの錘をつけることで、動きを制限して戦闘を視野に入れさせるためのアイテムである。オールマイト曰く「あっ、思ったより重……」らしい。

 ちなみにデザインはコンペで発目明が出した物が採用されている。体育祭でお世話になった緑谷と騙されていいように使われた飯田は、揃って微妙な表情を浮かべた。

 

「戦闘を視野に入れさせるためか。ナメてんな」

「ハハハ!どうかな!?さあまずは緑谷少年と爆豪少年からだ!私は中で準備を済ませてくるから、今の内に作戦でも練っておくんだな!鳴神少女と立甲少女は、バスの中ででも待機しておいてくれ!車内のモニターからなら、2人の戦いの様子を見学することができるぞ!」

「分かりました」

「それじゃあお2人とも、ご武運を祈ります!」

 

 

 

 

「さて……今日は激務になりそうだねえ」

 

 各会場からアクセスし易い立地に、出張看護所を建てたリカバリーガール。これから始まる激戦とそれに伴う自身の激務を予感し、静かに一息吐いてからお茶を一啜りした。これからは始まりと終わりの合図や合格者が出た時のアナウンスもしなければならない。喉をしっかりと潤してから、業務に臨むのだった。

 

 

 

 

「我々はステージの中央からスタートか」

「逃走を成功させるなら、指定されたゲートを通らなきゃいけないんだったわね。となると、先生はゲート付近で待ち伏せかしら」

 

「腕が鳴るぜ!」

「ぜーったい林間合宿行くんだい!」

 

「やってやるぜえ、見てろよミッドナイトォ!」

「うるせえ」

 

「逃げるか、戦うか……間違えはしないぞ」

「……張り切ってるな、飯田」

 

「……大丈夫。ウチはやれる……!」

「僕のキラメキで華麗に合格さ☆」

 

「漢を見せるぞ!」

「パワーでゴリ押す!」

 

「八百万、話し合った通り頼むぞ」

「えぇ……」

 

「マイク相手なら、そんな心配ないと思うけど」

「……!」

 

「職場体験でパワーアップした私を見せるよ!」

「……せめて、コスチュームは着けてくれ」

 

「かっちゃん。今だけは……いがみ合いはナシだ」

「……ああ。分かってらァ!」

 

『全員所定の位置に着いたね!?それじゃあ雄英高校1年の期末試験を始めるよ!レディ……ゴー!』

 

「始まったね」

「全員……合格できるといいですね」

 

 一学期を締め括る大事な場。これまで過ごしてきた数ヶ月の集大成を見せるべく、クラス全員が一斉に動き始めた。

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