風雷のヒーローアカデミア   作:笛とホラ吹き

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何もしないままというのも少し寂しいので、番外編です。時系列は職場体験に行く前くらい。緑谷はここでエアフォースのヒントを得ることになりました。


1章:番外編
鳴神風華の必殺技紹介


「ぷっはああァ……!疲れた!」

「お疲れさま。フルカウルも様になってきたね」

 

 肺に溜まった空気を一息で吐き出し、緑谷は研究室の白い床に背中を押し着ける。まさしく疲労困憊といった彼に風華がスポーツドリンクを渡すと、緑谷は待ってましたとばかりにそれを飲み干す。空になったコップを置いて小さく息を吐くと、それまで様子を見ていた風華は小さく微笑んだ。

 風華の笑顔を見て、笑われるのが恥ずかしくなった緑谷は身体を起こして姿勢を整える。差し出されたスポーツドリンクのおかわりを受け取ると、それも一口で飲み干してやる。死人が生き返ったかのようにリラックスした表情をする緑谷を見て、風華はまた面白いものを見たように笑うのだった。

 

「凄い飲みっぷり。相当疲れてたんだね」

「あはは……お恥ずかしい。確かに、9%を維持し続けたまま動くのは疲れるよ。ちょっと制御が乱れただけでも痛みが出るし、インパクトの瞬間だけは更に引き上げなきゃいけないからね」

「考えることが多いと大変だよね。その分慣れたらいろんなことができるようになるから、それはそれで楽しいんだけど」

「まだまだ精進しないとだね……」

 

 慣れてくる、そう言う風華の言葉を聞いた緑谷はふと考えた。風華の個性はとても強力で、尚且つ多彩な使い方がある。それらは彼女が研究所に入るようになってから培われたものだと分かるが、実際それはどのようなものがあるのだろうと。

 

「鳴神さんはいろいろ必殺技があるけどさ、具体的にどんな技なのかってのは知らないんだよね。雷上動とか吹き荒ぶ大風(バンパーストーム)とかは見たことあるけど……他にもいろいろ技があるなら見てみたいな」

「ふふ……気になるかい?じゃあ訓練の休憩がてら見せてあげるよ。訓練の成果を単純に自慢する機会なんてそうないからね、いくらでも見てってくれて構わないよ」

 

 自分の必殺技が見たい、そう緑谷に請われた風華は快くその申し出を受け入れた。不用意に技を出して緑谷を巻き込まないように距離を空け、一つ目の技の用意を始めていく。

 

「まずはコレ……吹き荒ぶ風(チープストーム)だね。空気を集め押し固めて放つ空気砲ってヤツだ。吹き荒ぶ大風(バンパーストーム)と違って威力はショボいけど、そんなに多くの空気を集めなくていい分速射性に優れる。連射もできるし破壊範囲が狭いのもいいところだね」

「鳴神さんがよく使ってる技だね!やってることがシンプルで分かりやすいし、その上強力!確か入試の時も……その技で救けてくれたんだったね」

 

 まずは、最も多く使う機会のある吹き荒ぶ風(チープストーム)及びその強化版の吹き荒ぶ大風(バンパーストーム)。緑谷が訓練に使っていたサンドバッグの余りに向けて集めた風を放ち、それらを穿ち抜いていく。自己再生能力を持ったサンドバッグは穿たれた孔を修復しようと白い液体を傷口から滴らせるが、そんな努力も虚しく台風の如き暴威によって粉微塵にされた。

 操った空気を一点に小さく纏め、そのまま任意の方向に向けて射出する。個性研究所での訓練の中で最初に身に付けた技であった。

 

 何かを『操る』個性を持つ者にとって、対象を集めたり撃ち放ったりするのはほとんど基本事項のようなもの。この技が最も早く身に付いたのも、そういった理由からだったりする。

 

「ただ空気砲として撃ち出すだけが、この技の持ち味じゃないよ。入試の時や体育祭でやってみせたように、集めた空気を分散させることで範囲を広げたり地面に撃って強い気流を作ることもできる。落下してくる人や物を、怪我させたり壊したりせずに安全に降ろすことができるんだよ」

「一つの技にもいろいろ選択肢があるんだよね!僕も100%ならスマッシュを地面に向けて撃てば同じようなことができるかな……いや、そうしたって僕ではできたとしても浮かせられるだけで腕が壊れてしまうからそのまま落下してくる人や物を支えに行くことができないな継続して空気の流れを操り続けることができる鳴神さんならではの方法だし僕が同じようなシチュエーションで救助活動に当たるとしたら普通にフルカウルを使って落下してくる人や物にそのまま跳びついてキャッチしに行った方が確実だし非効率だけど空中にいる間にスマッシュをで更に推進力を稼いで滞空時間を減らすなどして次に行くまでのラグを少しでも軽減することができれば同じようなことはできなくとも救助は行え」

「はい、ストップ。そろそろ次の技を見せるよ」

「あッ……ごめんね、自分の世界入ってた!」

 

 風華の技を見せてもらった緑谷は、自分にも同じようなことはできないかと考えている内に自分の世界に入り込んでしまう。ブツブツと壊れたラジオのように息継ぎもせず言葉を繰り返していたが、顔が酸欠で青くなってきているのを見た風華によって強制終了させられた。

 深呼吸して息を整えたのを見届けると、風華は再び緑谷から距離を取って次の技を準備する。全身に翠緑のスパークが迸り、眩く閃いてはバチリと音を鳴らした。纒雷、身体に電気を流すことで身体機能を刺激し、活性化させる技である。

 

「今度は纒雷か!僕がフルカウルを編み出す時に、ヒントとして使ってくれてたヤツだね!」

「そうだね。フルカウルとの違いは自爆する心配がないことと、一応出力の上限は存在しないってところかな」

「あー……うまく言えないけど、フルカウルが肉体の強度自体はそう変わらないのに対して、纒雷はそこも含めて強化してるからって感じ?」

「フルカウルだと、身体の外側は硬くなってるみたいだけどね。けど概ね合ってると思うよ。そしてこの状態での攻撃は……」

 

 纒雷とフルカウルの違いは、身体強化の方向性だけである。電気の刺激によって肉体そのものを強化する纒雷と、内側から溢れてくる超パワーを放出する形で強化するフルカウル。似たような技の微妙な違いについて言及した風華は、立甲に追加してもらったサンドバッグを強化された足で蹴り上げた。人形の首がもげて空中に吹き飛んでいく。

 

「衝翠『大雷』……纒雷状態での体術のことをそう呼んでるけど、基本的には蹴り技だね」

「僕がスマッシュって呼んでるのと同じだね」

「出久のは、その前にいろいろと名前が付いてるけどね。アメリカの州の名前だっけ?」

「そうだよ、オールマイトの真似だけど……」

 

 風華の体術は全て衝翠『大雷』の名だが、緑谷の体術はデトロイトスマッシュやデラウェアスマッシュをはじめ多くの名が付いている。オールマイトのフォロワーな緑谷らしいと、風華はそのネーミングに感心していた。

 何せ自分も、妹や葵から『ダサい』『丸パクリは良くない』『似合わない』『やめて』とダメ出しされていなければ、同じようなネーミングにしていたであろうから。オールマイトのフォロワーなのは、風華も同じなのである。

 

「と、話はそこそこに……次に見せるのはコレがいいかな。もう何度か見せてるけどね」

「雷上動……瞬間移動だね!ワープとかテレポートみたいな類の個性とはまた違った、圧倒的スピードの移動法!まさに電気の力を活かしてるって感じでカッコいいよね!」

 

 風華が次に見せたのは雷上動。空中にに電気のラインを引いたら、その上に乗るようにして光の速さで移動する高速移動技である。ラインを引く時間は距離が長ければ長い程かかってしまうが、その移動速度は光の速さと同じ。手間に見合わぬ利便性を持つ風華のお気に入り技であった。

 この技を編み出したのは中学生の時。葵と喧嘩になって赫災領域(レッドゾーン)を暴走させてしまった時、無意識の内に使っていたのである。暴走が収まってから聞いた話と残っていた感覚を元に、普段の状態でも使えるように訓練して習得したのだ。『自分自身が雷になったように』というコツを身に付けるまでは、安定して使うにはとても苦労していた。初めての技である吹き荒ぶ大風に並んで、風華にとっては思い入れのある技である。

 

「後は……電熱で対象を発火させる燎翠『火雷』に音の振動で内側を攻撃する響翠『鳴雷』。使うには得物が必要になるけど、その分射程や破壊力が向上する号翠『裂雷』とかがあるね」

「ど、どれも危険そうな技だね……」

「その通りだよ。裂雷はわたしのブレードを雄英に預けてあるから見せてあげられないけど、火雷と鳴雷に関してはこの通り」

「うわっ……!サンドバッグが一瞬でおいたわしいことになっちゃってる……コレは、人に向けるのは危険すぎて無理だね!」

 

 鳴雷を食らったサンドバッグは、中身をグズグズにされて少し押しただけで崩れていく。火雷は発火に必要な膨大な電力でもって、サンドバッグを火にかけるまでもなく焼き尽くした。

 およそヒーローが使うべきではない技の火力に、緑谷は若干顔を引き攣らせる。個性をいい感じに使っているとだいたい誉めちぎれる緑谷でも、流石にフォローし切れなかったらしい。

 

「取り敢えず……今のわたしが見せられる『技』はこのくらいかな。ちゃんと制御できるなら見せたいものがあったんだけどね」

赫災領域(レッドゾーン)……」

「少しは参考になったなら嬉しいな。わたしの技が出久のものになった時、どんな風に変わっていくのかを楽しみにしてるよ」

「うん!鳴神さん、今日はいろいろと必殺技を見せてくれて本当にありがとう!必ずや職場体験ではこの経験を活かしてみせるよ!」

 

 本当ならば、風華は自身のとっておきとも呼べる技を見せようと思っていたのだが。自分でも制御し切れない技を使って、緑谷にいらぬ怪我をさせてはいけないと諦めていた。

 緑谷の方も、風華が見せるのを諦めていた技がどんなものであったのかを察してその名を呟く。見れないのは残念だが、暴走の巻き添えを食らうよりはマシだと判断し、諦めることにした。

 

「と……今日はもう上がった方がいいね。帰りが遅くなったら親御さん心配するでしょ」

「そうだね。今日はもう帰ってゆっくり休むことにするよ。鳴神さん、今日もいろいろありがとう」

「立甲のおじさんに言ってやりなよ。わざわざ出久のために待機してくれてたんだからね」

「うん、着替えたらお礼に行くよ!」

 

 

 〜

 

 

「立甲さん、鳴神さん。今日も研究所を貸してくれてありがとうございました!おかげ様で新しい技の構想も得られましたし、職場体験に向けていい訓練になりました!」

「はは、これからも遠慮しないでどんどん利用しに来なさい。個性に悩む者に対して、個性と向き合う場を提供するのも研究所の役割だからね。飯田君にもよろしく言っておいてくれよ」

「職場体験まではもう少しあるからね。わたしの必殺技も、詳しく見たいなら何度でも見せるよ」

「ありがとう!鳴神さんの技……吹き荒ぶ風(チープストーム)が僕の考えた新しい技のヒントになったんだ。明日はまた吹き荒ぶ風(チープストーム)のコツとか教えてほしいな!それじゃあ僕は帰るけど……今日も本当にありがとうございました!」

 

 ぶんぶんと赤べこのように頭を下げると、緑谷は風華の視界から消え去るまでお礼を言いながら帰っていった。ドップラー効果で段々と変調していくお礼の言葉が何だか可笑しくて、風華は腹を抱えて笑うのを必死に堪えるのだった。

 

「ふふふ……出久は締まらないね」

「笑い過ぎ。ほら、中に戻るよ」




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