「オールマイトの授業はどんな感じでしたか!?インタビューに答えてください!」
「……」
「お願い!一言、いや二言だけでもいいからさ……って危ない!」
群がるマスコミを無視して、風華は雄英の門をくぐる。尚もしつこく食い下がろうとした記者は、セキュリティシステム『雄英バリア』に阻まれてすごすごと帰っていった。「お高く止まりやがって」とか、「報道の自由を侵害している」とか捨て台詞が聞こえてくるも、それらも全て無視である。
「おはよう。みんな、何か疲れてるね」
「あ、風華ちゃん……おはよ。マスコミがめちゃくちゃしつこくてさ……振り切るのが大変だったよ」
「やっぱオールマイトの話題性だよな」
正門で脱いだレインコートをロッカーにしまい、席に着く。先に来ていた飯田や緑谷、麗日達と雑談をしている間に空いていた席はどんどん埋まっていき、HRが始まる頃には全員が登校してきた。チャイムが鳴ると同時に相澤が入ってきて、それまで駄弁っていた生徒達が一斉に黙るのはもうA組のお約束である。
「爆豪、お前には能力があるんだから、二度と馬鹿みたいな真似はするな。ムキになって当たり散らして、負けたら今度は無気力になって……ヒーローがそんな調子ではいられねえぞ」
「……分かってる」
「そして緑谷はまた腕ぶっ壊して一件落着か。個性の制御はいつまでも「できません」のままじゃ済まされねえ……制御さえできればやれることは多くなるんだ、焦れよ」
「……!はっ、はい!」
昨日の戦闘訓練の結果のまとめを見たという相澤から、爆豪と緑谷が叱責を受ける。どちらも自覚はしっかりとしているようで、不貞腐れたりすることもなく相澤の言葉を受け止めていた。
「さて、それじゃあHRの間にお前達には学級委員長を決めてもらう」
「学校ぽいやつキタ!」
「俺やりたい!」
「わたしも!」
「ボクこそが相応しい」
叱責を終え、続く言葉は学級委員長を選抜せよとのこと。みんなこぞって立候補し、自分をアピールしている。そんな中で、一人飯田が「静粛にしたまえ!」とみんなを黙らせた。
「学級委員長とは多を牽引する大事な仕事……周囲からの信頼あってこそ務まるもの!ここは公平に投票で決めるべき!」
「思いっきりそびえ立ってんじゃねーか!何でやりたいのに発案した!」
「まだ知り合って日も浅いのに、信頼もクソも無いと思うわ飯田ちゃん」
「だからこそだ!」
「決まれば何でもいいと思うよ」
投票で決めるべき。そう言う飯田の手が立候補するためにそびえ立っているのを見れば、ツッコミは殺到する。立候補していなかった風華の決まれば何でもいいという言葉で、結局飯田の投票案は採用された。
「僕に……4票も……!?」
「何でデクに……!クソがぁ!」
「委員長緑谷、副委員長八百万か。これで決まったな」
投票の結果、最多の4票を獲得した緑谷が委員長ということになり、次点の八百万が副委員長になった。ちなみに、やりたがっていた飯田は0票。他の誰かに入れたようだ。
「天哉……何であんなにやりたがってたのに他人に票入れたんだ……?」
〜
「今日は一人か……」
授業が終わって昼休み。普段は麗日などが一緒になって風華と昼休みを過ごしてくれているが、彼女が今日は学食に行ったので風華一人で昼休みを過ごすことになる。朝夕の食事ならいつも一人なので大して何も感じないのだが、昼は友人達と食べることが当たり前になっていたので、なんだか寂しいものがあった。
……そういえば、まだ名前を聞いてないのが何人かいるね。ちゃんと聞いておきたいけど、聞く機会あるかな……
弁当箱をつつきながら、クラスメイトのことについて考える。このクラスの風華を除いた20人とはもう一週間近い交流があるが、まだその中でも話したことや名乗ったことがない相手もいる。そう言う相手とも早く交流を持ちたいものだと風華は思っていた。
今のところ、風華がクラスメイトに抱いている印象はこんな感じである。
出席番号1 青山優雅
個性『ネビルレーザー』
いきなり話しかけてきては返事をする前に会話を打ち切って何も話さなくなるなど、掴みどころがなくてコミュニケーションを取り辛い相手。
出席番号2 芦戸三奈
個性『酸』
ピンク色の肌が特徴の快活な女子。コミュニケーション能力に優れ人とすぐ仲良くなれる、所謂『陽の者』である。
出席番号3 蛙吹梅雨
個性『蛙』
落ち着いた雰囲気だが、芦戸同様コミュニケーションが取りやすい。『梅雨ちゃん』とあだ名で呼ばれるのが好きらしい。
出席番号4 飯田天哉
個性『エンジン』
とても真面目なメガネ。いちいち動きがカクカクしていて、見ているだけでも結構面白い。空回りしがちだが、良い奴。
出席番号5 麗日お茶子
個性『無重力』
名前の通りとてもうららかな子。ところどころで辛辣な面や毒気のある面があるが、基本的に優しくて親しみやすい。
出席番号6 尾白猿夫
個性『尻尾』
尻尾がついている……それだけであまり特徴というものがない。それは欠点ではないので、強く生きてほしいと思う。
出席番号7 上鳴電気
個性『帯電』
自分と似たような個性に同じ金髪と、何かと親近感の湧く相手。自分にはできない速攻の放電を羨ましいと思っている。
出席番号8 切島鋭児郎
個性『硬化』
立ち上がった赤髪が目立つ熱血君。初日から臆さず話しかけに来てくれたのがとてもありがたい。
出席番号9 口田甲司
個性『生き物ボイス』
無口な見た目に威圧感のある異形系。手話でなら会話ができるが、面倒なのでお喋りがしたい。
出席番号10 砂藤力道
個性『シュガードープ』
ゴツくて強そうな見た目とお菓子作りが得意というギャップが強い。お礼に自分も作ってきたら、また食べられるだろうか。
出席番号11 障子目蔵
個性『複製腕』
礼儀正しくて落ち着いていて、良い意味で高校生とは思えない。複製された口と声が違っているのが面白い。
出席番号12 耳郎響香
個性『イヤホンジャック』
ロックバンドなどが好きだという。自分とはあまり趣味は合わないかもしれないが、好きなことを語る姿はかわいい。
出席番号13 瀬呂範太
個性『テープ』
一言で的確にツッコミを入れてくる。高周波ブレードを怖がっていたので、訓練で当たることがあれば積極的に使おうと思っている。
出席番号14 常闇踏陰
個性『黒影』
中二病的な物言いが目立つ。自分もそういうのをカッコいいと思うので、彼は自分の同類なのかもしれない。
出席番号15 轟焦凍
個性『半冷半燃』
No.2ヒーロー『エンデヴァー』の息子なのだという。ライバル視されているのか、見つめてくる視線がむず痒い。
出席番号16……は自分なので省略。
出席番号17 葉隠透
個性『透明化』
快活で人懐っこい少女。電磁波で輪郭だけは分かるが、きっと美少女なのだろう。コスチュームで裸になるのはどうかと思う。
出席番号18 爆豪勝己
個性『爆破』
素行不良の塊。流石に法に触れるようなものではないが、ヒーローとしてその態度はいかがなものかと思う。
出席番号19 緑谷出久
個性『超パワー?』
自傷を躊躇うことなく人助けに向かえる精神性は尊敬できる。だけど、もう少し自分を可愛がってもいいと思う。
出席番号20 峰田実
個性『もぎもぎ』
性欲の化身。一緒に戦ってみて力もちゃんとあることが分かったし、欲望を乗り越えてヒーローになってほしい。
出席番号21 八百万百
個性『創造』
言動の節々からお嬢様な育ちが滲み出ているのが分かる。あと、きっとこの子は天然だ。
あまり周りと絡もうとしない轟やコミュニケーションに難のある青山、絡もうとしても無視するか吠えるだけで会話にならない爆豪、純粋にあまり話題がない尾白など、まだまだ交流の不十分な生徒はたくさんいる。どうにかして、みんなと交流を深められないものかと風華は考えていた。
これからみんな、3年間雄英で学んで"本物の"ヒーローとしての一歩を踏み出す。きっと、風華が思うようなヒーローに彼らなら成ることができるであろう。そんなヒーローの卵達とは、今のうちに仲良くしておきたいと風華は思っているのだ。
「……ん?警報?」
「ヤベーな!鳴神、早く避難しようぜ!」
思案を巡らせていると、『セキリュティ3が突破されました!生徒の皆さんはすぐに屋外へと避難してください!』とけたたましく警報が流れる。校舎内に何者かが侵入してきたという合図に、教室に残っていたみんながざわめき出し、避難を試みようとする。
「ん……?あれ、朝のマスコミじゃない?」
「マジじゃん!敵じゃなくてよかった……」
「これなら心配する必要はないですわね」
風華も廊下に出ていき、窓の外から見えた光景をみんなに伝える。相澤とプレゼント・マイクに群がるマスコミを見て、みんなは敵の襲撃ということがなくて安心した、とホッと息を吐きながら教室へと戻っていった。
「……でも、どうやって入ってきたんだ?」
風華のその呟きを拾った者はいなかった。マスコミの大群が入り込む先……今後の不穏を映し出すように、雄英バリアーが見るも無惨に崩れ落ちてしまっていた。
B組に一人追加するか、未だに決めかねる。