『まあ、こんなところだろうな』
「後は実戦でってわけね…」
進化聖剣・片翼を見ながら、エミリアが呟いた。
ベリタスは日本刀を鞘に納めるとゆっくりと浮上した。
『オルバたちが居る場所に戻るぞ』
「空飛んでたら見つかると思うわよ?」
『そん時は全部斬るから大丈夫だ』
そう言ったベリタスの赤い一つ目がゆらりと揺れる。
それを見たエミリアは呆れたように溜息をついた。
「あなたと神無さんって…根本的なところで似てるのね」
『……………………………まあな』
しばらく黙っていたベリタスは、何やら意味ありげに返事をした。
「何者だ貴様!?」
上空に浮かぶ討也に、大勢の悪魔たちが向かっていった。
が、その気配が強すぎるためか、誰も一定の範囲から近づこうとはしない。危険な気配を討也が纏っているのは、誰の眼から見ても明らかだった。
人間の姿をしている討也からそんな気配が発されていることも、悪魔たちが警戒した原因である。
そんな悪魔たちの顔を面白くもなさそうに眺めていた討也は、とりあえずこの中にアルシエルが居ないことを確認すると、悪魔たちに話しかけた。
「アルシエルって奴のところに案内してもらえないかなぁ?」
楽しげな笑みを浮かべる。
「ふざけるな!何故貴様をアルシエル様のもとに連れて行かねばならない!?」
「ああ、嫌なら別にかまわないよ?」
「?」
討也の言葉に、悪魔たちは首をかしげた。
と、次の瞬間討也の姿が掻き消え、悪魔たちは慌てて周りを見回す。
直後、轟音が自分たちの足元、つまり街の方から聞こえてきた。不思議に思い上空から下を見てみてみると、数匹の悪魔が人間の住居の屋根にめり込んでいた。
さらに、いつの間にか元の場所に戻った討也が、楽しげに笑いながら言う。
「アルシエル君が出てきてくれるまで、手当たり次第にお前ら潰してくだけだからさ」
「くッ!?……相手はたかが一人だ!数で圧倒しろ!」
リーダーなのか、一人の悪魔が言うと、一斉に周りの悪魔たちも討也に向け各自攻撃を始めた。
「全く……………良い暇つぶしになるねぇ……くははははははッ!」
討也もまた、空中を蹴り、圧倒的な数の差の悪魔に、たった一人で立ち向かう。
その顔には、余裕の笑みが浮かべられていた。
「それで?どういう事だこれは?」
その声には、静かながらも、明らかな怒気が含まれていた。
たった一人の襲撃者の進行を誰も止める事が出来なかったどころか、挙句の果てに案内までしてくるのだから当然である。
「その………我らで対処しようとしたのですが……ほとんどの者が撃破され……」
「……………」
ほとんどの者が撃破された?たった一人相手にか?
そう思い、彼は目の前の襲撃者を観察する。相手もこちらを楽しげに観察しているようだった。
黒いコートを着た黒い髪の少年、眼にはゆらりと危険な攻撃色がともっている。
不思議な雰囲気を纏ってはいるが、その外見からはとても悪魔を一人で相手にするような力はうかがえない。
「お前がアルシエル君?」
楽しげに目の前の少年が問いかけてくる。
「いかにも、私は悪魔大元帥の一人、アルシエルである」
「へぇ………ずいぶん知ってる姿と違ったが……成程」
楽しげに浮かべられたその笑みを見たとき、アルシエルは、得体のしれない恐怖をその少年から感じ取った。
「………貴方のお名前を教えていただけますか?」
思わず敬語で尋ねる。
「俺は神無討也、ただの化け物さ」