神無討也が現れた。アドナメレクが打倒された。
この二つの知らせがほぼ同時に届いたからこそ、魔王は神無討也がアドナメレクと戦ったわけではないのではないかと思い始めた。
もっともこの中央大陸から西大陸に行くと言って出て行ったきり僅か数週間。それが今度は東大陸に居るというのだから、もしかしたら大陸間を移動するのに討也はさしたる時間を必要としないかもしれない。
ルシフェルは間違いなく討也と何かあったと考えていいだろう。討也が西大陸に行くと出て行ってから、僅か数日後にルシフェルが撃破されたとの報告である。間違いなく討也が関わっている。
ではアドナメレクはどうなのだろうか?討也が魔王城を出てどれくらいで西大陸にたどり着いたのかは魔王には分からない。もしかしたら僅か数時間で着いたのかもしれないし、あの理論の通用しない化け物なら数分でたどり着いた可能性すらある。
まあ実際討也は、数十秒で着いていたのだが。
今回、前回ルシフェルが撃破された時と違うのは、アドナメレクを撃破したのが複数の人間であったということである。この中に討也が居ないとは言えない。だが討也がこの複数の中に居なかった場合どうだろう?果たして誰がアドナメレクを倒したのだろうか?そもそもアドナメレクを倒せるような人間が本当に居るのだろうか…?
そもそも、そんな人間がいるというなら何故今になって動き出したのだろうか?最近になって特に変わったことが有ったようには…………。
そこまで考えた魔王は、ハッと目を見開いた。
居る。
名前も姿も分からないが、プロフィール上、アドナメレクやルシフェルを倒してしまえそうな人物がいる。それが出来てもおかしくないと魔王に思わせる人物がいる。たった一人だけ。
神無討也の……相棒。
その可能性は非常に高い。最近の変化であるという条件にも一致する。おそらくその相棒も討也が自分の城に現れたのと同じタイミングでこの世界に現れたのだろう。
魔王は部下を呼ぶとすぐに確認をさせることにした。
一つは誰がアドナメレクを倒したか調べろと言う事。これは分からない可能性が高い。
もう一つ。それは、アルシエルのところに来たのは、討也一人なのだろうかと言うことである。
「ただいま~」
『ただいまじゃ無ぇだろ?なァ?』
エミリア達がアドナメレクを討伐してしばらくしてから、討也は勇者一行に合流していた。
「そうですよ~!どこ行ってたんですか~!?」
「え?行くときアルシエルのとこ行くって言ったよね?」
怒ったような態度のエメラダに、キョトンと首をかしげる討也。
「本当に行ってたのかよ。この数日で……」
呆然とアルバートは呟く。船だったら数日ではたどり着かないだろう。その距離を神無討也と言う化け物は往復してきたのだから本当に規格外どころの話ではない。
「あ、これお土産ね」
そう言いながら討也は手に持っていた袋を差し出す。
「ああ…どうも……ってところでアルシエルとは会えたんですか!?」
袋を受け取ったエミリアは中身を見るよりも前に質問をした。もしかしたら自分たちが考えたように討也がアルシエルを倒したりしているのでは?という期待を抱いたのだが………。
「うん会えたよ。魔王と同じくらい弄りがいのある奴だったよ」
そう言って楽しげな笑みを浮かべる。
その笑顔を見て、勇者一行は期待が外れたことを理解したのだった。
『なんでアイスクリーム!?』
討也がお土産として買ってきたのは普通のアイスだった。
ただし溶けている。
「いやあ溶けちゃったねえ」
悪びれもせずに楽しげな笑顔のまま討也が言う。
「結局~お土産はなしってことですかあ~?」
エメラダが残念そうに溜息をついた。
「まあ、こうすればいいだろ」
討也は時間を制するスキル「タイム・オブ・ゼロ」を使って袋の中身だけの時間を巻き戻した。
このスキルはロード・トゥ・ドラゴンの世界のスキルの一つである。
「「「「戻った!?」」」」
4人が驚いた声を上げるが、特にベリタスは驚いた様子などない。
改めて、勇者一行は討也がどれほど自分たちとかけ離れた次元に居るのか知るのだった。
『ねえ?食べ物とか俺に対する嫌がらせ?お前俺が物を食べれないって知ってったよね?』
「もちろん」