3.はたらく魔王さま!の世界に転生   作:錯也

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討也、戦いを眺める

 

 ベリタスが日本刀を抜くと同時に、エミリアも聖剣を握り直し魔王へと突撃した。オルバがそのサポートに回る。エメラダとアルバートはアルシエルの相手をするようだ。

 そしてただ一人、討也はその場でふわりと浮かぶと、空中で胡坐をかいてその様子を眺めることにした。

「まあ、一度戦ったことはあるしね……俺が参戦するのは大人げない」

 原作では勇者側が優勢らしいしね、と付け加える。

 今までさんざん大人げない自分勝手な行動をとっておきながら今更である。

 

 突撃してきたエミリアと、それを迎え撃とうとした魔王の間に衝撃波が放たれた。

「「!?」」

 それが飛んできた方向を二人が見ると、無造作に日本刀を振り下ろしたベリタスがちょうど魔王との距離を詰めるところだった。

 衝撃波が出るほどの速度で日本刀を振ったこともそうだが、何より接近してくる速度もエミリアの比ではなかった。軽く音速を超えている。魔王も討也に鍛えられて辛うじてその動きに反応できたが、別に魔王は接近戦を鍛えたわけではない。接近と同時に振られた斬撃をギリギリで後ろに躱したが、その衝撃で放たれた衝撃はまともに浴びた。

 もっともその程度で倒れるほどではない。何より、魔王は討也によって肉体的な耐久力や強度を重点に強化されているのだから。

 今の一瞬に近いやり取りで、ベリタスにもそれが理解できた。

『成程、討也が自分にだってかすり傷を与えられるって言ったのはそういう事か…』

 つまりスピードは完全に自分の方が上だと。

 それを理解したベリタスの一つ目の光が楽しげに揺れた。

 

 スピードの方は完全に相手の方が上だ。

 ベリタスの攻撃をギリギリで避けた魔王はそう分析していた。

 なら強度は?

 相手は刀で攻撃してくる。そして先ほどのように衝撃波が出るほどの速度で振っても壊れる様子はない。その強度は確かに高いのだろう。

 では自分と比べてどうだ?

 残念ながらそれを実際に斬られて試してみる気には魔王はなれなかった。

 だが、直接相手に全力の攻撃を叩き込めば撃破できる可能性はあるのだ。

 魔王も、勝機を見つけためかその瞳には闘気が満ちていた。

 

 そんな様子を眺めながら。

「エミリアちゃん完全に空気じゃん(笑)」

 討也は一人楽しげな笑みを浮かべ自分の手の中にある羽ペンを弄んでいた。

 確か天使が世界を渡るときに使うものだったか。

 討也は原作を知らないのでこれがどれほどの物か分からないが、ベリタスは結構驚いていたことを思い出した。

 まあ、これを使うのは後のお楽しみだ。

「さーて、もうしばらくは傍観者をしておきますか……」

 そう言いながら、討也の目は空気と化したエミリアとオルバに向けられた。

 

 エミリアとオルバは何もしていないわけではなかった。

 何もできなかっただけである。

 まずベリタスの動きが目で追えるか追えないかのギリギリだった。魔王も先ほどからギリギリで躱し、衝撃波は防いでいた。とはいえ戦いは決して一方的ではない。ベリタスの攻撃攻撃のわずかな時間の合間に魔王も攻撃を行っている。当たれば一発で勝負が決するかもしれない一撃で。

 要するに戦いの状況としてはベリタスは細やかなダメージを与え続け、魔王は一撃必殺を狙っているのだ。だが、これにエミリアたちが入っていくのは無理がある。フル装備の兵士が撃ち合っているところに生身で突っ込んでいくくらい無理がある。

 まず魔王の攻撃は当たれば確実に自分たちでは防ぎきれない。避けることができないほどではないが避け続ける自信は無い。対するベリタスの斬撃や衝撃波もかすれば十分致命傷だろう。ベリタスは味方なのでエミリア達に攻撃をすることは無いが、確実に足を引っ張ることになる。

 だからこそエミリアとオルバは介入するタイミングを覗いつつもいつまでたっても突入できず眺める結果となっていた。

 

「先にアルシエル君倒しに行けばいいのに」

 誰にも聞こえぬ声で、チートが楽しげにつぶやいた。

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