「到着っと………うわあ、なんだここ?」
視界が開けた瞬間、そこは大きな部屋だった。
こんな光景は、今まで数回しか見たことがない。7000年位、涼宮ハルヒのエンドレスエイトのループを入れたらもっと多くの時間を過ごしている討也にも、あまり縁のない場所。
おそらくどこかの城の中だろうか。
「それにしても暗い気がするなぁ……」
まあ、いいや。と、討也は自分の特典の確認を始める。
まず第一の特典「亜高速で行動する事が出来る身体能力、その速度に耐えうる身体強度、そしてその速度についていける動体視力と反射神経」である。
これは、討也の身体がそもそも神様製であることからほとんど意味を持たないが、おそらく動体視力とかはこの特典の効果で上がっているのだろう。
二つ目の特典は「自分や物体の影から、どんな性質をも持つ事が出来るダークマターを作り出し、そして性質や形状を自在に操作できる能力」である。
どうやら、今までは光の当たらない闇からも作れたのだが、この能力を使う際には自分で光源を作るか影ができるような場所でしか使えなくなってしまっているようだ。
もっとも、それ以外には変更点は無いのでこれでも十分チートである。討也にとっては、光を作り出すことなど簡単なのだ。
そして、三番目の特典は「転生先のすべての力を使うことができる能力」、討也はまだここが「はたらく魔王様!」の世界だと気付いていないが、この特典は、聖法気、魔力、セフィラのパワーなどを自在に使うことができるようになる特典だ。
「うーん。三番目の特典はこの世界がどこの世界なのか知るヒントになりそうだけどさっぱり分からんね」
そう言いながら、討也は右手を上げると。
「ホーリー・ストック」
光を結集させるスキルを用いて辺りを照らした。
「ロードラのスキルは使用可能っと」
このスキルは、ロードラの世界のアクティブスキルである。一番最初の世界に行ったとき、討也は「ロードラの世界のすべての技術を習得する才能」という特典をアドレナクにもらっていた。涼宮ハルヒの憂鬱の世界に転生した時、その特典は回収されたが、回収されたのはあくまで習得する才能。覚えた技術は失われず残っているのである。
ある意味ではこのスキルが討也が持つ力の中で一番強いかもしれない。
「さて、上の方になんか強い気配放ってんのがいるみたいだし……ちょっと行ってみますかね」
それにしてもベリタスはどうしたんだろう?と、討也はあたりを見回した。それから、気になってダークマターの中にしまってある異空間倉庫の中身を調べる。
「あれ?ベリタスの器が消えてる」
ベリタスというのは、討也の相棒であり、魂だけの存在である。魂だけの存在なので、当然体を持っていない。そのため物に触ったりもできない。つまり戦闘では役立たず。そこで、討也がロードラの世界にいるときに作ったのがベリタス専用の身体、「器」。それが今消えているという事は、ベリタスはこの世界の別の場所に送られたのだろうか?
「ま、別にいいや、あいつならこっちの居場所くらい俺の気配でも探って探知できるだろ」
そう思った討也は、とりあえず自分の気配を表に向けて放っておくことにした。この気配は、ロードラの世界では「王威」と呼ばれていたもので、ロードラの世界から帰ってきたとき、やはりこれもアドレナクに回収されている。が、討也は7000年近くもの時間を生きてきた「化け物」。涼宮ハルヒの憂鬱の世界では「人外」ロードラの世界では「神殺」と呼ばれた討也には、王威がなくとも圧倒的な気配を放つことができるのだ。というよりそれができるように涼宮ハルヒのエンドレス・エイトの間に修行したのである。
そして、ベリタスは圧倒的な索敵能力を持っている。ロードラの世界ではそれこそ別の大陸で起きた神と使徒の戦いの気配を察知したほど。
というわけで、討也はベリタスの心配はせず、この城らしき場所の強力な気配を放つ者がいる場所へ、魔力を使って瞬時に移動した。
「どうやってここに入ってきた?」
到着したのは、どうやら城の最上階らしいところだった。
そこには、椅子にゆったりと腰かけた、強力な気配を放つ者。魔王がいた。
「うん?まあ、入ってきたていうか………説明すんのメンドイ。ごめん」
「………成程、これほどの魔力満ちたここで平気でいる……ただの人間じゃあないな」
そう言いながら、魔王は椅子から立ち上がる。どういう手を使ったかは知らないが、ここに人間が踏み込んできたのは初めての事だった。だからこそ、魔王は討也に少し興味を持ったのである。
対する討也は。
魔王よりも別の事に興味を持っていた。討也が感じ取った強力な気配とは魔王の事ではない。今はまだ生まれていない、アラス・ラムス。つまりセフィラの欠片の力を感じ取っていたのである。
「よくぞここまで来たな人間よ、俺は魔王サタン。このエンテ・イスラを支配する者だ」
「………えんていすら?」
もしかしてこの世界の名前だろうか?と討也は考え、そしてすぐに思い出した。
「ああ、はたらく魔王さま!の世界かここは、いやぁ………………………あっさり分かっちゃったな。つまんねぇ。うぜぇ……………………つまらなくしてくれたサタン君にはとりあえず一発俺に強制的に殴られる権利をあげようか。くはははッ!」
「なんかすごい理不尽な怒りを向けられている気がするが……殴るだと?面白い、やってみるがいい!」
そう言った魔王の手に、魔力を凝縮した魔力弾が生まれた。
「できるものならな!」
魔力弾を討也に放つ。今はまだ魔王も知らないが、その魔力弾は、勇者エミリアとて直撃すればただでは済まないほどの威力を持っている。
「ほいよ」
だが、討也はそれを素手で叩き返した。
「!?」
さらに、討也は魔王と同じように魔力弾を作り投げる。
サタンは、思わずそれを躱した。
躱さなければただでは済まない、そんな気がしたのである。それほどの魔力。確実に自分以上のものである
そして、サタンは気づいた。
「お前………人間じゃないな?」
人間が魔力を扱うはずはない。何よりそんな膨大な魔力を持つことは絶対にありえない。
「くははははははははははッ!少しは楽しめそうじゃねえか?魔王サタンとやら!特別に………俺を楽しませれば殺さないでやるよ!」
楽しげに笑いながら楽しげに言い、討也は、床を蹴って、素手で、魔王にドラゴンを一撃で沈める拳を叩きつけた。