「芦屋~帰ったぞ~」
「あ、お帰りなさい魔王様」
魔王……真奥貞夫は、芦屋のいつも通りの声が聞こえたことに安心しつつ、その視線を部屋へと向けた。
ウィラ・ローザに帰宅する中、真奥はいつもと違う気配、それも魔力を放出する者の気配を察知していた。真奥に察知できて、芦屋に出来なかった理由としては、真奥はいくらかでも魔力を温存していたからに他ならない。
確実に何かがあったのは確かなのだろうが、その魔力が一定に保たれた落ち着いた状態であることから、とりあえず様子を見ようと判断しいつも通りに真奥は帰宅したのだ。魔力を持っていると言うことは悪魔だろうし、うまくすれば味方かもしれないのだから。
だが、真奥が視線を向けた先には思い浮かべもしなかった人物が楽しげな笑みを浮かべこちらを見返していた。
「し…師匠!?」
真奥貞夫が、魔王サタンが例え本来の力を出せたとしても到底及ばない例外、神無討也がそこにいた。
「やあやあ、久しぶりだねサタン君」
「師匠…………………………」
「なんだい?」
「…………俺たちをエンテ・イスラに今すぐ戻す事って出来たりします?」
「うん出来るよ?」
「!?…お願いです俺たちを…!」
「やだ断る」
「「やだ!?」」
プライドは抜きとばかりに、土下座をしていた真奥は討也のあまりの言いぐさに思わず絶句し、討也が持ってきた食材で料理をしていた芦屋も唖然として振り返った。
要は、討也に自分たちをエンテ・イスラに返してほしいとお願いしようとしていたのだ。そもそも魔王たちをこの世界に放り出したのだって討也なのだ。
「お願いだから最後まで言わせてください」
「ちょっと無理かも」
「なんでだよ!?」
「ちょっと最近耳が遠くてさぁ…」
「それ絶対嘘ですよね?」
「くははッ…まあ嘘だけどね?」
「なんなんだよ!?」
あまりの人外の自由さに真奥は頭を抱えた。
「というか、俺たちをここに放り出したの師匠じゃあないですか!」
「あーそれね……問題無いんじゃない?」
「いったい何を見て問題ないと…」
「俺が居なくても君たちはこの世界に来ることになってたらしいし?」
「「?」」
討也の発言に、芦屋と真奥は思わず顔を見合わせた。
「そういえば、師匠って結局何者なんですか?」
悪魔でもない、当然真奥の知る天使のような存在でもない。そもそも真奥をも超える魔力を持つ天使とか謎すぎる。
そして、いくら姿形が人間とはいえ間違っても人間であるはずはない。
「…人間だよぉ??」
「「それは無い」」
討也の人間宣言を二人はノータイムで否定した。そんなこと言われてもなあ、と討也は困った表情を浮かべる。確かに、神だって倒せる力を持っている。魔王を一蹴出来る力を持っている。人外と言ってしまっていい能力を持ってはいるが、結局、討也自身としては自分では人間のつもりなのだ。転生者で、既に一度死んでいる(神様のぽかミスで殺されてる)身ではあるけどそこは変わらない。もし人間じゃなくて何者なのかと聞かれれば、きっと「わからない」かもしくは「神無討也」が答えになるのだろう。
「じゃあわかりました、師匠。これだけは教えてくれ」
なんともいえない表情で悩み出すという珍しい討也を見たためか、真奥はもう討也が何者でもいいやと諦め別の質問をした。
「師匠の目的は何だ?俺たちの……………味方なのか?それとも敵なのか?」
その真奥の質問に、討也はそれなら簡単だとばかりに楽しげな笑みを浮かべる。
『楽しくおかしく面白く、自由に自在に自堕落に、世界を眺めて、事象に関わり、物語に加わる事』それが俺の目的さ、と。
それは実に人間らしく身勝手で、人外らしくはた迷惑な目的だった。