悪魔を狩る異形の噂は、すぐにエミリア・ユスティーナの耳にも届いていた。
それが敵なのか味方なのかはエミリアには分からない。エミリアだけでなく、彼女の仲間である3人にも判断がつかなかった。
その姿を見たという人々は、それが人間ではなかったと告げる。
人々と言う通り、実際にその異形の姿を見た者は一人ではないのだ。主にその姿を見たのは前線で悪魔と戦う教会軍の騎士などである。
中にはまるで神の様だと言ったものさえいた。
そして、その日もエミリアたちは西大陸で悪魔大元帥ルシフェルが指揮する悪魔軍と戦っていた。
その戦場に、突如としてその異形は現れた。
悪魔軍と戦っていた者の中には、既にその姿を見たことが有るものもいた。
噂には聞いていたものの、それを初めて目の当たりにしたエミリアやオルバは驚愕した。
その異形は、翼も、聖法気を使っている様子もなしに空中に静止していた。色は白と灰色。右手には片刃の剣。左手には赤い何か。拳銃という概念がないこのエンテ・イスラでは左手のパーツが射撃用の武器だと思うものは誰もいない。
異形は品定めをするようにこちらを見下ろしていた。直後、ゆらりと動き出した異形は、まるで空中を蹴り飛ばすような動作の直後は既に地面すれすれに降り立ち、たちまち悪魔の心臓部めがけて手にした片刃の剣を突き立てた。
見たことが無い生き物が、この世界では悪魔と呼ばれていることをベリタスはしばらくしてから知った。
今ベリタスがいる戦場には、幾つもの悪魔と、幾人もの人間。人間と似た一つの気配。が、一つだけ異なるその気配は、あまりにも人間が密集しすぎてどこにいるか判別がつかなかった。
まあ、それは別にいい。どうしても気になるなら、後で確認すればいい。
それよりも今は「魂」の回収を優先しておくべきだろう。
というよりも、この世界に来てからそろそろ一週間がたつ。討也はいまだに一か所から動いていない、が、気配が変動したりしているので間違いなくそこで面白いものを見つけたのだろう。だとしたら少し自分も気になる。
『そろそろ合流するかなあ……』
そんなことを言いながら、ベリタスは空中を蹴って、その勢いで一気に上空から降下すると、刀を悪魔に突き刺した。
だが、ベリタスは悪魔を倒すのが目的ではない。その「魂」を奪うことが目的なのである。
そこで使えるのが、魂を奪い取るスキル、「ソウル・ハント」
本来ならば、これはロードラの世界の一部の者や、ロードラの世界のほとんどのスキルを使える討也にしか使うことはできない。が、ベリタスの身体である「器」は討也が一番目の特典のダークマターで作り出したものである。故に、ベリタスの器を構成する物質の性質は思いのままに操れる。それこそ本当は存在しない物質だって作り出せる。そして、ついでに言うと一つの物質に付与することができる性質は一種類では無い。
いくつか存在する性質の一つが、傷をつけた相手の魂を奪い取る性質である。ただし、これは刀限定。まあ、ベリタスにとっては自分が手にした武器である刀も、自分の身体の一部という事である。
ベリタスの持つ刀に斬りつけられた悪魔が、その魂を奪いとられ、糸の切れた人形のように大地に倒れた。
そろそろ、魂の回収は終わりにしても良いかもしれない。というか単純な作業に飽きてきた。
ベリタスは、この一群を全滅させたらさっさと討也と合流しようと決める。
僅か数分後、悪魔の軍団をあっさりと全滅させ、その場を立ち去ろうとしていたベリタスに、呼び止める声が掛かる。
その声の主が、人間とは少し違う気配を持つ者だと気付いたベリタスは、面白そうだと、その呼びかけに振り向いた。