「うおらあぁッ!」
魔王が、魔王城の壁に拳を叩きつける。それだけで、魔王城の壁があっさりと吹き飛んだ。
そのことに、魔王自身が驚いた。ただ殴るだけでこの頑丈に作った魔王城の城壁が吹き飛ぶとは……。もっとも、ヒビを入れられるくらいから、ここに至るまでに、5日もかかったのだが。
ちなみにその手ほどきをしたのが討也である。討也は、魔王に魔力で自分身体を強化してみてはどうだと提案した。結果としてこれは成功。しかしながら、これでは魔力無しだと全力が出せない。
というわけで、ひたすら魔王の身体強度を強化したのである。
方法しては討也の手加減した攻撃をひたすら受け続けるというもの。どれだけ傷ついても、傷を治癒するスキル「セイント・ヒール」があるので一瞬で回復できる。
というわけで、魔王は討也によって強化されていた。
「すごい!本当にできたぞ!」
討也がやって見せたのは、魔力の強化もなしに城壁を素手で殴り叩き壊すというものだ。
魔王は、最初それをあっさりやって見せた討也に驚愕したが、自分も出来たとあって悪魔の王らしくない、無邪気な表情で喜んでいた。
そして、ふと考える。これだけの力があれば魔力で強化すれば更なる力が出せる。
それならば……討也だって倒せるのではないか?と。
「よし、師匠!この前の戦いの続きをしよう!」
と、討也の方を見ながら凶悪な笑みを浮かべる。今ならこの化け物にも勝てるかもしれない!
「……うーん。そうだな。まあその方が面白そうだな。くははははははははッ!!さて……一撃位は入れて見せろよ?」
そう言って楽しげに笑う討也を見た瞬間。先ほどまでの魔王の自信はどこへやら。
「(あ、これ死んだわ)」
ゆらりとこちらに一歩近づいた討也を見て、魔王は、勝てない、無理。と思ったのだった。
数秒後、悪魔の王の情けない悲鳴が城内に響き渡った。
一方の西大陸。
エミリアたちは、西の悪魔大元帥、ルシフェルを討伐する算段を立てていた。ルシフェルの討伐をしようと言い出したのは、オルバだったが、それはやはり、メンバーにベリタスが加わったのが大きい。確実にベリタスはエミリアよりは強い。当然である。ベリタスの戦い方は、自分の身体が、最高クラスの強度を持っていることを生かした、討也をまねた戦い方である。劣化版討也と言っていい。もっともベースにしているのがチートだけあって、劣化とはいえとんでもない強さである。
そんなとんでもない強さを持ったベリタスでも、どうしようもないことが有った。
それがルシフェルが取っている人質である。
その、人質を失わず。かつルシフェルを打ち破る方法を考えているところである。
『まあ、討也がいたら一瞬で解決すんだがなぁ』
と、ベリタスは呟く。かといって居ない者は仕方がない。
が、ベリタスのそんなつぶやき声を聞き流さなかったのがエミリアたちだ。
「え?どうして?」
「なんか秘策でもあるんですか!?」
エミリアとエメラダが食いつく。
ベリタスは大したこともないというように。
『事前に技をかけておくことで、死んだときに生き返る。「リザレクション」ってスキルを使えるんだよ』
「な!?死人を生き返らせる!?」
聖法気を使える者ですら、死んだ人間まで生き返らすことはできない。故にオルバは驚いた。
そして、同時にエミリアたち全員が、この場に討也という人物がいたらと考える。
が、やはりベリタス同様居ない者は仕方がないという結論に至った。
『(それ以外にも、ダメージを無効にし反射するなんてスキルもあるけど、俺には使えないしな……)』
考え続けてもなかなかいい方法は思い浮かばず。結果として出た答えは、ベリタスが人質の救出を、エミリアたちがルシフェルの討伐を同時に速攻で行うというものだった。
成功確率は決して低くはない。もっとも現実的で、小細工なしの確実な方法である。今上がる方法としてはこれがベストだろう。
が、だからこそ、ベリタスはその成功確立を上げるために、少し保険をかけておくことにした。