敵の拠点へ侵入したのは、ベリタス一人だった。
探すまでもなく、気配で人質がどこに捉えられているか分かる。
まっすぐに、ベリタスはその場所へと向かった。もっとも方法はかなり雑である。
左手に固定装備された射撃用の兵装で、建物の壁に次々と穴をあけ、直進で人質が集められている場所へと迫る。拠点に侵入してから僅か3分にも満たない時間で、ベリタスは人質を回収する。
人質は一人では無く数人いたが、全員を拠点の外に移動させ、その場から拠点を離れるべく移動を開始した。やはり拠点から悪魔たちが追跡してきたが、ベリタスの敵ではなかった。
一方、エミリアたち四人は、ベリタスが人質の回収を知らせると同時に、拠点に侵入し、拠点にいた悪魔を倒しルシフェル本人を探した。
ルシフェルを発見し戦闘を始めたが、ルシフェルは拠点の外に脱出、拠点付近にある湖に戦場は移った。
「天光駿靴!」
エミリアが、空中を飛ぶルシフェルに、自身も跳び上がり手にした「進化聖剣・片翼」で切りかかる。が、飛行能力は完全にルシフェルの方が上だった。跳び上がり、聖剣を振り下ろした時には、ルシフェルはもうそこには居ない。
距離を取ったルシフェルが、上空から魔力弾を放つ。エミリアは、それを聖剣で防ぐのに手いっぱいで、なかなか攻撃に移れない。
しかも攻撃しても当たらないのである。
それは3人の仲間も同じ。三人も聖法気で飛ぶことは可能である。が、それではエミリアやルシフェルにはとても追いつかない。
空中に行っても、魔力弾の的になるだけである。
仕方なしに、地上から援護するも、エミリアとルシフェルが戦っているのは湖の上であり、当然湖の上に立つ事が出来ない3人には、援護手段も限られる。
明らかに劣勢。
ベリタスが、ここに駆けつければ、すぐにでもなんとかなりそうだが、ベリタスは人質を護送中。
ここに来れるのはおそらくかなり先になる。それまで持ちこたえるか、もしくは自分たちで打開策を見出すしかない。
少しずつ時間がたつにつれて、焦りが募るエミリアたちは、不意に、とてつもない「力」が接近してくるのを感じた。
「およ?」
窓の外を眺めていた討也が、不意に不思議そうな顔をした。
「どうかしたんですか?師匠」
不思議に思った魔王は尋ねる。不思議に思ったのは無理もない。不思議そうな顔をした討也は、すぐに新しいおもちゃをもらった子供のような笑みを浮かべたからだ。
というかもはや魔王が討也を呼ぶときの名前は「師匠」で定着している。
「うん?いや、相棒がさっきから俺の事呼んでるんだよねぇ」
一週間以上も何もしてこなかったのに……何かあったのだろうか?と討也は考える。
まあ、どちらにせよベリタスが自分の事を呼んでいるのは確かである。先ほどから自分の索敵範囲を広げて、わざと自分の居場所を知らせてきている。
「相棒……?」
魔王は、討也に相棒がいたこと自体初耳だった。
「ああ、この世界に来た時にあいつとは別の場所に着いたんだけど……」
「異世界から来んですか?それって…あれ?…一番最初に師匠と会ったとき…」
「ああ、まさにお前と会う直前にこの世界に到着したんだよ」
「そうゆうことか……」
魔王は、異世界と聞いても別に驚きはしない。魔王にとってはエンテ・イスラだって異世界みたいなものである。
「さて、呼ばれてるんだったら行ってやらないとな。それじゃあ、世話になったな。まあ、また会うことが有ったらよろしく」
「!こちらこそ、師匠のおかげでさらに強くなる事が出来ましたし…またいつでも気が向いたら来てください」
討也にボコされてから、魔王は討也に敬語を使っていた。というか、討也の年齢が7000歳を超えているのを知ったからだろうか。
「おう」
短く返事をした討也は、楽しげな笑みを浮かべながら窓から飛び出す。
そして空中を蹴り西大陸へと向かった。
「成程……西大陸ってことは……勇者でも見つけたのかな?」
それは確かに面白い。と思いながら、討也は海面を蹴り、わずか数十秒で西大陸に降り立った。