松永沙耶は神である   作:スナックザップ

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確かにそこにあった幸福

魔王は勇者を見るなり怯えて玉座の後ろに隠れてしまいました。

 

 

 

魔王は言いました。食べ物ならいっぱいあげるから殺さないで、と

 

 

 

勇者はびっくりしました。

 

 

 

魔王は勇者をお城の中庭に連れて行きました。

 

 

 

 

そこにはたくさんの苗が植えられていました。もう食べられる野菜もあります。

 

 

 

 

私が生きているだけでみんなが不幸になる。

 

 

 

 

でも、死のうと思っても、怖くて死ねなくて。

 

 

 

 

だから、せめてみんながお腹が減らないように畑を作ってみようって思ったの。

 

 

 

 

 

でも、私は魔王だから食べることも眠ることもないの。

 

 

 

 

 

 

せっかく育ててもみんながおいしいって言ってくれるかどうかも分からないの。

 

 

 

 

 

 

「だったら、一緒にやろう」

 

 

 

 

 

それから、勇者は魔王と一緒に畑を耕して、野菜を育てます。

 

 

 

 

魔王はとても嬉しそうでした。

 

 

 

 

 

それもそのはず、魔王は誰かと楽しく畑仕事なんてしたことがなかったのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

頑張った甲斐があってとうとう、たくさんの野菜や果物ができました。

 

 

 

 

 

勇者も魔王も大喜びです。思わず手を取り合って踊ってしまいます。

 

 

 

 

 

そして、勇者はみんなにも食べてもらおうと提案します。

 

 

 

 

 

魔王はもっと大喜びです。そうすれば、きっと誰も困らなくていいね、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして、137億年の月日が流れた…」

「沙耶、トワイライトしてないで、ちゃんと持って」

「うたのん、沙耶ちゃん、お、重いよー。はやくしてー」

 

今の私は勇者白鳥歌野と巫女藤森水都の小間使い。

 

松永沙耶は小間使いである…なんて予定はない!

 

過去に戻る。その超常の奇跡をフル活用して、私はバーテックスが歴史上に姿を見せた2015年7月30日を繰り返した。

 

初めの何回かは7月30日を起点に数日ずつ過去に戻りながら、天の神が姿が見せる時期を探り、バーテックスを逆に襲撃してみた。

けれど、どの日付で攻撃してみても結果は思う通りにはならなかった。

 

7月30日ちょうどでないと、天の神は姿を見せない。

その瞬間だけはバーテックスをこちらに送り込むためなのか高天原を捕捉しやすい。

他の時期だと世界の壁を突破しても高天原の位置がつかめないことがあった。

 

宇宙規模の災害となった今の私にとって、初期バーテックスは敵じゃないけど、攻め込んでいる間に世界のほうが全滅してしまうこともあった。

 

酷いときには、天の神を攻撃すると、何故かバーテックスが強化されてより強い個体が顕れた。

これは大きな誤算だった。

 

ある日突然襲来したバーテックスは数日で世界の主要都市に致命的な打撃を与えている。

 

そんな中で効果的な対策も、組織的な反抗もほとんどできないことが多かった。

逆に不思議なのは日本政府…いや、大社の準備が良すぎる点だ。

政府に掛け合っていたのか、住民の避難や政府機構の移動が他の国に比べてスムーズ過ぎる。

まるでバーテックスの襲来時期を知っていたかのように。

 

私が高天原に攻め込む方にも問題はいくつかあった。

まず、高天原自体がもう一つの宇宙と言えるほど広大な空間で、仮にたどり着けても天の神をすぐに発見できない。

 

それに休みなく攻撃されると、攻めるのも探すのも時間がかかりすぎる。

 

それとは別に、バーテックスの襲来以外にも、いくつか見過ごせないこともあった。

それが元で迷ったり、ためらったりして、バーテックスとの戦いが始まったときに、

実際の歴史よりも不利な条件になってしまったこともあった。

 

そんなことは分かっていたけど、せっかく過去に戻れたのならできるだけ良い方向に持っていきたい。

 

(友奈のことを忘れたわけじゃないけど、目の前の人たちも助けたい。

悲しい運命なんて終わらせて見せる。時間さえ超えた私なら)

 

それにしても肥料ってなんでこんなに重いのかな?

実際の歴史だと歌野と水都だけで、こんな重いもの運んでいたんだろうか?

 

「そろそろ、エントランスだからスロウ、スロウで進むわよ」

 

歌野の声に合わせて、少しスピードを落としながら、倉庫の入口をくぐる。

肥料を運んできたのは片づけるためだ。放っておくと日差しや動物でダメになってしまう。

 

何とか肥料を運び終えると歌野が倉庫に鍵をかける。

 

「二人ともベリーサンクス。でも、沙耶も肥料の大量生産はリトルシンキングが必要ね」

「う、わ、分かった」

「あと、あんまりたくさんロボットがお仕事してるのもちょっと…農家の人とか怖がって、余計に畑に出たくないって言ってるし」

「ぐ、まさか歌野だけでなく、水都にまで突っ込みを受けるなんて、でも確かにちょっと考えるよ」

 

今回、私は方針を変えて、各地上の拠点の地力を底上げするように動いている。

 

素粒子変換の副産物として、私は他の素粒子と同じように非局所性の存在になっている。

つまり、ここにもいるけど、あそこにもいることができる。

その気になれば全宇宙に私を存在させながら、意識を共有することだってできる。

 

最大でどのくらいの"私"が同時に動けるのか分からないけど、次の回があれば全宇宙に"私"を配備して、

 

―たぶん素粒子の場の数だけ用意できる―

 

バーテックス以上の数をそろえてみるつもりだ。

 

戦いは数だよ。

 

だったんだけど…

 

「そうね。みんな、ロボットが自分たちの畑で農作業していたらネガティブなサプライズね」

 

気力を失くした諏訪の人たちの代りに食料やインフラを支えるため、農作業や林業に対応できるロボットを大量に落としたんだけど、諏訪の人たちは空から降ってきたロボットを怖がって、余計に外に出てこなくなってしまった。

 

歌野の説得と、ロボットたちが諏訪のインフラを整備し続けてくれたおかげで、最近は少しずつ畑に来てくれる人も出てきたけど、実際の歴史よりも諏訪の人たちは元気がない。

 

私は何とかその失敗を埋め合わせようと、根本的な解決策を準備している。

今夜にもそれをお披露目できるはずだ。

 

おかげで今日はテンションはうなぎ上りで、気分は特上を注文した時みたいな状態だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「頂きます」」」

 

子供たち食事を配り終わると手を合わせて、歌野達が声を上げている。

けど、私は食事を横目にノートにいろいろ書き込んでいる。

時間の量子であるクローノンの使い方について考えをまとめるためだ。

 

(計算自体はあっている。だから次にやり直すことがあったら、今度は時間そのものを停止させながら、"私"を全宇宙で発生させてから、同時攻撃して…)

 

 

「ちょっと、リッスン? 沙耶」

 

歌野が私のノート取り上げる。

 

「え? なに、なんでノート取り上げるの?」

「なんで? じゃないわ。ほら、コールドしちゃう」

 

ああ、そういうこと。

 

あきらめて大根が入ったお味噌汁を一口飲んでみる。

自分たちで作ったものだからなのか、現代で食べていた時よりおいしく感じる。

 

「ちょっと、沙耶、頂きます。アゲイン」

 

「あー、沙耶が頂きますって言わなかったー」

「いわなかったー」

 

子供たちは何故か私を呼び捨てにする。

 

「あはは、沙耶ちゃんも、子供たちがマネするからちゃんと挨拶してね」

 

水都にまで言われては仕方ない。

 

「ひあい、ふぁい。いたらふます」

「もう、何をライティングしているか知らないけど、挨拶くらいはきちんとしなさい」

 

むう、何故か歌野は私には厳しい。これが水都なら、もう、みーちゃんてば、とか小芝居が始まるだろうに。

 

「でも、確かにそうだよ。何かうたのんの負担を減らそうと考えてくれてるんだろうけど、そんな無理ばかりしちゃダメだよ。これからも私たちの日常は長いんだから」

 

水都がやんわりと窘める。

 

(日常なんて悠長なことを言ってられないんだよ。歴史通りなら諏訪は…この子たちも、歌野や水都だって…)

 

挨拶なんて、あとでいくらでもできる。

うたのんの畑の手伝いはみんなが生きていくために必要だから仕方ないけど、諏訪が全滅することは…未来から来た私しか知らない。

 

きっと繰り返す私はこの思い出も無かったことにするんだと思う。

それでも今のこの人たちを助けたい。本当に自己満足でしかなくても。

 

理性だけで考えるなら7月30日に実行した高天原への逆侵攻が失敗した時点で、もう一度始まりまで戻るべきなんだと思う。

 

でも、うまく言えないけど、未来は作れるんだっていう希望みたいなものを残したい。

例え私の記憶の中だけのことだとしても。

 

結局、私は食事も適当に考えをまとめることに没頭する。

疲れが溜まってきたら、一度適当な粒子になって肉体ごと疲労も消せばいい。

高天原に突撃して、不眠不休で1年くらい暴れまわったことだってある。

 

それでも天の神は地球を攻撃することをあきらめなかった。

何が天の神をそこまで駆り立てるのか分からないけど、あの執念はまともじゃない。

 

(そもそも、天の神の目的が不明過ぎる。なんで神様ってこんなにコミュ症ばっかなの?)

 

短時間なら時間も止められるけど、時間停止中に物を動かした場合、そこは完全な真空になる。

そして、動かした先の空気とかをどけないととんでもないことになってしまう。

 

試しに一度だけ時間停止したまま、動物を担いで四国まで運んでみたけど、空気と融合して破裂してしまった。

 

もう少し素粒子の操作に慣れてくればできるかもしれないけど、そんな悠長な時間はない。

今回をスルーして次回に備えることも考えたけど、移動手段を用意できたんだから、

今はそっちでやりたい。

 

それに、1週間くらい前の戦闘では歌野も大きな怪我をしていた。

時間停止と素粒子操作に慣れるまでの時間はないと思う。

幸い複雑な分子構成を修正するのは初めてだったけど、足りない薬を作るくらいはできた。

 

(でも、もう、そんなに時間は残ってない。過去の例から考えて私が暴れまくっても、1年しか諏訪の滅亡は引き延ばせない。そして死んでしまったら肉体を再生してもダメだった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「というわけで、歌野と水都に聞いてほしいの。諏訪から四国までの脱出計画について」

「四国までエスケープ? すごい距離があるんじゃないの?」

「そんな…大体、諏訪のみんなを連れて行くなら、1日や2日じゃすまないよ? …まさか!」

 

二人が疑問に思うのも無理はない。

 

「水都は何か気づいたみたいだけど、その心配はたぶんないよ。全員連れていく。今度は誰一人取りこぼさない」

 

歌野達に口にすることで、自分に言い聞かせる。

ここで諏訪の人を助けられても、きっと私はそれを無かったことにするだろう。

だからって見捨てない。

 

困っている人、苦しんでいる人、そして、死んじゃう人。

友奈だったら後先考えずに助けるはず。成功するか失敗するかも考えないだろう。

 

(だったら、私だってあきらめない。絶対に)

 

「それで、どうやって諏訪のみんなを四国へ? イージーじゃないと思うけど?」

「歌野が言う通り、諏訪から四国まで直線距離でも約500kmの道のりを、みんな連れていくのはすごく危険だよ。だから、今の道が使えないなら新しく作れば良いんだよ」

「ええっと、つまり道があるってこと?」

 

今日の水都は冴えている。

 

もしかしすると、水都も神託で何か諏訪の将来について受信していたのかもしれない。

 

「結論より証拠。一度外に出てくれるかな? そこでお披露目するよ」

 

本当は全員を素粒子変換すれば光速移動もできるけど、どんな影響があるか分からない。

私は平気だから大丈夫だと思いたいけど。

そして、いつかはバーテックスを抑えながら、高天原に逆侵攻をしないとこの戦いは終わらない。

どこかで諏訪の人達を安全な場所まで連れていく必要はある。

 

夜闇が去り外が真昼のように明るくなる。

どうやら時間通りに銀河系の中心からワープできたみたいだ。

 

 

「ワッツ? 何これ? バーテックスの次はエイリアンのインベード?」

「これって? UFO?」

 

諏訪の上空に時間の壁を裂いて姿を見せる光。

私が作り出したのは何度も失敗しながら、130億年以上の時間をかけて用意した天割く方舟。

 

「ようこそ、私が対バーテックスのために作り上げた船。ナノマシン嚮導船グレイグーへ」

 

私も最初に失敗した段階で一人で戦いきるのは難しいと思っていた。

 

じゃあ勇者達を連れて高天原に行けばよいか?

答えは否定だ。そんなことをするとバーテックスは人類をみんな食べてしまう。

私一人では世界の人々を守れなかったように。

 

「え? これって沙耶ちゃんが作ったの? でもいつの間に?」

「よくぞ聞いてくれました。と言いたいところだけど、それを説明するのはちょっと時間がかかるから後でね」

「それで、これにみんなでライドして四国までゴーイングするってこと?」

 

まあ、普通はそう考えるよね。でも…

 

「ふふふ。私はもっとスケールが大きいんだよ。これの全長は1000km。四国まで届く。もちろん中は床エレベータがあるから移動も楽々。あ、食べ物とかあるから手ぶらでOK」

「ええーと…」

 

さすがの歌野と水都も引いている。

と思ったら、突然頭を抑えてうずくまる。

 

「みーちゃん?」

「水都?」

「大丈夫、うたのん、急いで。バーテックスが来る。それも今までと違う大きな力も感じる」

 

なるほど、前回と同じく移動手段を探知して襲ってきたってわけね。

前回は普通のバスとかを大量に作ったら途中で日輪持ちに襲われて、私以外全滅してしまった。

だけど今度は違う。グレイグーはただの大きいだけの移動装置じゃない。

 

「それじゃ、始めましょう。ナノマシン散布。1番から120番まで相転移砲発射。続けて8秒毎に120番から2300番まで48分間斉射」

 

空に虚空が広がる。100を超える相転移砲から放たれた歪みはバーテックスを消し去っていく。

いろいろ試した結果として、バーテックスを物理的に倒す方法は無かった。

 

ブラックホールや相転移砲は普通の物理法則を超えている。

本当は倒せていないのかもしれないけど、どこかに消し去るくらいはできる。

 

どうせ空の上は敵しかいない。だったら遠慮なく相転移砲も数をそろえればバーテックスを抑えられる。

ただ、ブラックホールは以前に地球ごと壊しそうになったので、普段は使えない。

 

けど相転移砲ならある程度範囲を制御できる。

 

「さあ、今のうちにみんなをグレイグーに乗せて! 3時間ほどで四国まで着くから」

 

と、声をかけたものの歌野の姿は見えなかった。

 

「水都? 歌野は?」

「とりあえず、皆を呼んでくるって。それで、どうやってあそこまで皆を運ぶの?」

 

伊達に1年間共に諏訪にいたわけじゃないか。

だったら、こっちも急いで運送の準備を進めないと。

グレイグーの再生能力と相転移砲ならしばらくは保つだろうけど、バーテックスが無限に増えると考えた場合は、何があるか分からない。

 

 

「分かった。そろそろ…来た」

 

グレイグー型恒星間航行船はその巨体だけに地上に下りられない。

だから、軌道上から地上まで届く大型のトラクタービームの発射機構を各パーツごとに持っている。

 

「この光、木の葉とかが吸い込まれてるの?」

「そうそう、トラクタービームって言ってね。簡単に言うとUFOとかで牛を吸い込んでたりするあれと同じものだよ。」

「UFOって実在したんだ…」

 

なんか、水都がずれたところに感心している気がするけど、まあ、何も言わずにこんなの出したらびっくりするか。

 

「見ててね。よっと」

 

トラクタービームの範囲に入ると、そのまま私は浮いていく。

けど、途中で範囲の外に出ると地上まで落ちてきた。

 

「…っ、着地…成功。でも、足しびれるねこれは」

「だ、大丈夫? でも、これでみんなを一人ずつあんなに上まで連れていくのは無理なんじゃないの?」

 

そう、水都のいう通り、諏訪の人たちを引き上げることはできない。

グレイグーは上空100kmの軌道上にある。

 

みんなを引き上げようと思ったら、何往復もしなくちゃならないし、短くても1往復2時間程度はかかる。それ以上の速度は人間の体への負担が心配になる。

 

「だから、引き上げるのは人じゃなくてここ…いや、空気も一緒に動かすからここらへん?」

 

そういいながら私は下を指さした後、手を広げて丸く動かす。

 

それが合図だったように小さな揺れが起こる。

 

「ワッツ? みんなをコールしたのに、今度は地震?」

 

町の人たちを連れて戻ってきてくれた歌野はすでに勇者服に変わっていた。

 

「地震じゃないよ移動しているの。諏訪ごとね」

 

一人ずつ引き上げるのが不可能なら、諏訪ごとグレイグーに収納して移動すればいい。

 

それが、歌野たち諏訪の人たちみんなを助けるための私の結論。

 

諏訪の御神木を中心とした半径約50km。

諏訪湖の南北地域を含む諏訪全体をトラクタービームと空気と大地もろともに移動させる。

空気や重力も一緒に動かすから、衝撃波や加速度の影響もほとんどないまま、3時間ほどでグレイグーのある上空100kmに移動しながら、並行して四国まで500kmの道のりを4時間をかけて移動する。

諏訪の人たちの負担も無く、寝て覚めたら1日足らずで四国まで到着する計画だ。

 

 

「う、浮いているのか?」

「一体何が?」

「お母さん…」

「大丈夫、大丈夫よ。歌野ちゃんもいるから」

 

おや? 諏訪の人たちの様子が…

 

何となく不安…というかバーテックスが攻めてきた時と同じような?

 

おかしい? これでみんな助かるのになんで怖がっているの?

 

「あ…説明するの忘れてた」

 

まずい。もしかするとバーテックスの攻撃と勘違いしているのかも。

 

「えっと、み、みんな…」

「みんな、落ち着いて。これは敵の攻撃じゃない。これから私たちは仲間と合流するの。これはそのための一歩になる。だから怖がらずにまっすぐに見て。自分たちの目で」

 

歌野の声は私よりも小さいくらいだったのに、少しずつ波が広がるように人の心に届いていく。

ただ、諏訪全体が空に浮いて移動までしているという自体は、ちゃんと理解はできていないと思う。

 

「さ、ここからはちゃんと説明。それから始める前に相談してよね」

「ありがとう。歌野、水都。それから勝手に始めちゃってごめん」

 

私の知っていることは誰とも共有できない。

歌野が言う通り、今はみんなが四国についてきてくれるようにしないと。

 

「まずは、謝らせてください。勝手に諏訪を動かしてしまって。そして、これからどうしたいのか、聞いてください」

 

ようやく、ようやく動き始める。

ちらりと視界に二重映しで浮かぶグレイグーとバーテックスの戦況を見る。

物理的な攻撃が一切通用しないバーテックスだけど、ビッグバン直後の状態にまで宇宙を引き戻す相転移砲は、宇宙のあり方そのものを破壊していく。

バーテックスではなくバーテックスが存在している時間と場所を破壊する。

それこそが物理的にバーテックスを打ち負かす手段だと考えた。

 

少なくとも、黄泉平坂の戦いでブラックホールや相転移のような特異点を作り出せば、バーテックスにも通じることは分かった。

たぶん、既存の法則から離れたのに、また法則が変えられたことで、うまく物理的な現象を無視できなかったんじゃないだろうか?

考えてみれば、車や壁を壊していたんだから、物理的な全く干渉がないわけじゃないんだろう。

 

とは言っても、グレイグーも一方的に攻撃されているから、諏訪のみんなを四国に送り届けた後は自爆でもさせて廃棄するしかないだろう。

どうせ同じ型の船はいくらでもあるんだし。

 

どんな存在も永遠に戦い続けることはできない。私以外は。

だから、いずれ高天原に侵攻する方法も考えないといけない。

 

でも、今は歌野と水都を助けることができた。

それだけでも十分だ。さあ、行こう。これからすべては始まるんだ。

 

 

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