松永沙耶は神である   作:スナックザップ

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とりあえずこの話で、始めに思いついたところまではほぼ書けました。



松永沙耶は神である

コーヒーから立ち上る湯気が室内に広がっては消えていく。

 

電子となってあっちこっちのコンピュータから手に入れた情報とナノマシンで採集した試料が映るディスプレイをにらみつける。

 

「やっぱり、普通に友奈が映ってる。いったい、何なのこれ」

 

いくらデータを見直しても、新しい情報を追加しても、物理的には友奈はそこにいる。

 

(やっぱり、おかしいのは私の方か。でも、どういう現象なんだろう? 見えているはずのものが認識できないって…)

 

今の私は素粒子レベルで宇宙のすべてに広がりをもつ非局所的な遍在者。

過去現在未来のすべて、森羅万象に常に接続している。

ううん、そのものと言ってもいい。

 

それなのに一番見たいものが見えないなんて、滑稽すぎる。

 

まったく論理的でも物理的でもないけど、私が世界の歴史を書き換えたせいなんじゃないかとさえ思えてくる。

 

(やっぱりそういうことなの? でも、それじゃこの世界は友奈にとって…)

 

前から考えていたことがある。

 

結城友奈とは何者か?

 

過去と未来を行き来し、何度も時を繰り返した今の私になら理解できる。

初代勇者の一人と言われる高嶋友奈。

その高い勇者としての適性を再現し、四国防衛のために供えられた勇者であるべき存在。

 

つまり、はじまりの勇者の一人である高嶋友奈が勇者とならなければ…

 

「友奈という存在はその一部が欠落する。人類が滅んだから友奈が必要?」

 

最悪の可能性。それは友奈がいるためには…

 

「世界の…人類が滅ぶ?」

 

ここまで友奈の因子が強いものだとは思わなかった。

これでは呪い…いや托卵じゃないのかと思ってしまう。

世界を救うためと言い、実際はその誕生と共に勇者として戦う運命を背負わせるなんて。

 

とにかく、初代勇者である高嶋友奈の因子が原因かまでは断言できないけど、確認するしかない。

ただ、そのためには…

 

「誰かが天の神の代わりに人類を滅ぼさないと」

 

ううん、違う誰かなんていない。天の神を二度と現れないようにした以上は、私がやるしかない。

 

やるしかない、はずなのに…

 

「できるの? 本当に?」

 

能力の問題じゃない。何も難しくない。歴史通りにバーテックスを作ればいい。

でも、人間である私が人類を滅ぼす。

誰のためにもならないし、誰の役にも立たないし、誰も望まない。

 

ただ私が望むために世界を滅ぼす。

 

それは本当に最期の方法。

きっとここが私が友奈がいる日常を生きていけるか、戻れない一線になる。

 

もちろん、ここを超えれば共に生きる未来はない。

 

そんなことは誰が赦しても私が赦さない。

 

西暦の勇者についても、歌野以外のことは知らないけど、歌野は上手くやっていたほうだと思う。

だけど、私がいただけで、諏訪はあんなにめちゃくちゃになってしまった。

 

今度はあの時とさえ比べ物にならない。

自分の意志で世界を滅ぼす。

 

「それでも、私は諦めない」

 

だから、バーテックスが現れなかった世界の西暦2306年の上に、原初にいた神様を倒した時と同じように、神世紀287年を上書きする。

 

後は天の神を滅ぼしてしまえばいい。

 

天沼矛もあるし、時間停止しながら高天原に昇ってサクッと天沼矛をフルパワーで撃てばいいし、1回でダメなら時間をプランク単位でずらしながら、何本でも撃ち続ければいい。

 

時間も場所も私自身すら複製できる今の私なら、できないことなんてない。

 

 

――ただ、友奈に会うことを除けば――

 

 

すべてが終わったら、私が過去に遡って知った記憶。手に入れた力。身に着けた知識。

そのすべてを破棄して、もう一度だけ友奈に会いたい。

 

(もう、天の神もバーテックスもいなくなれば、別に今の記憶がなくなっても良いんだから)

 

天の神がいなくなって、炎の世界がなくなれば、素粒子変換も時間移動もいらない。

 

永遠に等しい時間使い続けた能力だから、

あるのがあたり前だと思っていたけど、もともと普通の人間には必要ない。

 

あとは私と友奈の誕生日になる西暦2306年3月21日に帰れば良い。

 

歌野と水都のことはなんか適当に出会いのきっかけでも取り持てば、西暦2010年代の日本ならそうそうおかしなことは起きないと思う。

 

他には今回と同じように2306年までは世界に大きな混乱が起こらないように調節しないと、

2015年時点ですら人間社会はだいぶ揺らいでいたし、そのあたりもちょっとは手を入れたほうが良いだろう。

 

子供の私が余計なことをするとややこしくなりそうだけど、2015年以降も気分が悪くなるようなことが何度も繰り返されている。

確か大きな枠で見ても、大赦の嘘が本当になったようなウイルス疾患が流行ったはずだし、その混乱で戦争が起こったこともあった。

 

でも、人間はそのたびに立ち上がって、少しずつだけど全体としては世界は良くなっていっていたと思う。

 

もちろん、後退してしまうこともあったけど、四国しか残っていない世界よりは全然良い。

 

だから、お願い。

 

もし、まだ私が人だと言うなら、ひとめ友奈に会わせてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在の時刻は西暦2317年7月30日。私と友奈が小学校を卒業する年だ。

そして、友奈が転校した私を訪ねて高知の山中まで来てくれた日でもある。

友奈達が勇者になる前で私が友奈に会えた最後の日。

 

これが終われば私は神様の代りじゃなく、ただの一人の女の子に戻る。

 

 

この日までの記憶も間違いなく、私は数か月前まで毎日のように友奈と遊んでいた。

 

ちゃんと、友奈は友奈だった。

 

これでもう何も恐れることは無い。私の願いも叶った。

バーテックスがいないことも確認したから、今日が終わるころにグレイグーも

ディスアセンブラで自壊を始める。

 

歌野と水都を出会わせるのは、少しおせっかいを焼いたけど、

やっぱり二人とも仲良くなってくれた。

 

そう言えば高嶋友奈ってどんな人なんだろう?

結局今日まで確認してなかったから、最後まで貌も知らないままだ。

けど、まあ、いっか。どうせ神様のかわりなんてしなくて良いんだし、もう関係ないよね。

 

大丈夫。記憶も記録も間違いなく一致している。

 

縁側で切ったスイカを並べながら、友奈を待つ。

ホントは私から会いに行くことも考えたけど、できるだけあの時と同じにしたかった。

そうでないと、また、友奈が見えなくなってしまう気がして怖かった。

 

でも、それも、もう大丈夫。

つい数か月前まで、私は毎日友奈と一緒に遊んでいた。

 

友奈のお父さんに聞いたことがないような武術を教わり、

友奈の誕生日には友奈のお母さんといっしょにケーキを焼き、

毎日学校に通い、他の友達と勉強し、

時には二人そろって遅刻しそうになったり、

 

だから、間違いない。

 

私は友奈を認識できたし、友奈も私のことを認識している。

目の前には友奈が書いた手紙だってある。

今時紙の手紙とあの時は思ったけど、これのおかげで友奈がちゃんと私を見てくれるって、信じられる。

今となっては私の証そのもの。

 

「おーい、沙耶~」

 

だから、ほら、ちゃんと友奈が来てくれた。

もうすぐ着くと電話をくれた時は、驚いたけど、やっぱり友奈だとも思えた。

 

陽炎が立ち上り、夏の日差しが輝きながら、その道を照らす。

もう、その姿は見えているけど、眩しすぎて細かいところがぼんやりする。

 

それなのに…

 

 

ああ、真実が現実よりも優しければ、どんなに良かっただろう。

 

 

 

現実は間違いなく友奈がいるのに、私の心は正反対に沈みこんだままだ。

 

そう、詳細は見えなくてももう分かっている。今度もダメだった。

どんなに揺れる赤い髪が同じでも、

どれほどその笑顔があの日と寸分たがわず同じでも、

どれだけ待ち望んでいた声でも…

 

ゆっくりと手をふるその姿は友奈には見えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間、パチンとスイッチが切り替わるような音がする。

 

ここは私の部屋の中だから周りを見渡してももちろん誰もいない。

ボクはその姿を見たその瞬間、もう一度過去まで時間を引き戻した。

 

どうして、こうなってしまうんだろう?

ああ、誰か教えてください。神樹様…

 

 

 

ううん…違うよね。これは言い訳だ。分かっている。

バーテックス襲来を起こさないと、友奈は友奈として存在しない。

友奈因子がなくなっちゃうんだ。

 

 

やっぱり、私が結城友奈として認識しているのは、あくまで友奈因子を受け継いだ友奈だったんだ。

神世紀に生まれた友奈と呼ばれた少女をすべて確認したから理解できる。

 

300年だ。

 

そのほんのわずかな時間。

どれもが友奈が生まれてくるために、かけがえのないものだったんだ。

 

 

確かに時間を切り取って、その瞬間に世界を始めることはできる。

まるで時間樹の挿し木のように、昨日まで江戸時代だった日本を、明日には西暦4000年のシリウス星系に地続きにすることだってできる。

 

普通は何も影響はでない。というより物理的には何も問題は起きない。

物理的に見れば対称性が保たれていれば、時間も空間も置換可能な可逆なパラメータに過ぎない。

 

問題が起きているのは心とか意識とか、あるいは魂とかの方だ。

 

人の心は時間を不可逆のものとして認識している。

 

だから、時間の流れを途中で切りとって、宇宙の始まりに持って来ても、積み重なった歴史、引き継がれてきた想い。受け継がれた魂は存在しなくなる。

 

 

そして、バーテックス襲来が発生しない世界では、友奈は私が知らない姿になるんだろう。

 

「ああ、本当にもう私は友奈と違ってしまうんだ」

 

厳密には違うとわかっていてもそう言ってしまう。

どれだけ、物理的にも性格的にも完全な友奈がいたとしても、それは違うんだ。神様の視点から見れば同じでも違うんだよ。

 

神様の視点から見れば差異はなく、人間の視点から見れば違いが際立つ。

 

あれはまだ未確定な友奈の状態を人間に見える形で映しているだけに過ぎない。

ホントは最初から分かっていたことだ。

 

私が諦めて友奈因子を必要としない世界の友奈を認めれば、それで良いのかもしれない。

 

けれど、それはもう友奈じゃない。

これは理性や言葉の意味じゃない。それはただ友奈として反応するだけの別の人だ。

 

だとしても、私は決めなくちゃいけない。

すべてを満たす方法はもうない。

 

私が神様側に成り代われば、私は友奈を認識できない。

私が人間側に戻れば、友奈は最後の戦いで意識を失う。

 

 

友奈が生まれてくるために世界を滅ぼすか、友奈と二度と会えなくなるか。

正しくても間違っていても、きちんと自分で決めて、そして進むために。

 

私の心はすぐに世界を滅ぼせと囁く。

私の友奈との思い出は、たとえ二度と会えなくなっても世界を残せと言う。

 

間違いなく友奈ならそうするだろう。だからこの物語はこれで終わりなんだ。

 

私が歩く道はもう決まっている。

 

どれだけ力を得ても、どんな経験を積み重ねても、たとえ世界を支配できても、そうとしかなれない。

 

「だって、私は初めからそういうものなんだから」

 

つぶやく声は少しコーヒーの香りがした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーコロジーの外に出てみようと思う。今日でこの世界は見納めになる。

 

アーコロジー…完全環境都市。

 

外界の汚染された大気と海洋から隔離され、天候にも左右されない人工の楽園。

普通の人なら市の許可とか、防護服の準備とかでそんなに気軽に外と出入りはできない。

 

人ならば、だ。

 

私はもう人じゃない。だから、光になればアーコロジーの特殊ガラスをすり抜けて、

こっそり外に出る。

 

アーコロジー計画自体は割と古い。

21世紀にはプロトタイプがアメリカのアーコサンティに存在していたらしい。

 

もっとも、今のアーコロジーは当時と違って、巨大建造物の中に都市が入っている。

マンションの親玉の中に、商店街をビルのテナントのように入れているみたいな感じ。

 

アーコロジー以外にもいろいろな都市計画がある。

できるだけ人の住める土地を限定することで、それ以外の土地の自然を回復させ、地球としての持続可能性を探るため、2100年代から様々なケースが作られては消えている。

 

将来的に発生するギガフロート海洋都市計画や、宇宙空間での居住についても、これが元になる。何度も歴史を繰り返して確認したから今回も同じだろう。

 

でも、その前に一つの問題を超えられない歴史もある。

 

ぶっちゃけ、お金がある人はアーコロジーの空調と水道が完備された快適な都市に住めるけど、お金がない人はそんなところの賃料や土地の購入はできなかった。

 

それでも、あらゆる環境に耐えるように設計されたアーコロジーは、皮肉にも環境の激変による人口減少により、辛うじて続けることができていた。

 

(でも、これって冷静に考えると、完全に人類の斜陽。黄昏時代だよね)

 

落ちる夕日に自分たちを重ねながらそんなことを考える。

 

西暦2319年、バーテックスがいなくても人類は少しずつ終わりへと進み始めていた。

いや、あらゆる生命は始まったときから終わりつつあるもの。

 

なんてことを思っているけど、結局はこの世界を無かったことにする言い訳だ。

 

それでも、バーテックスがいなければ、とにかくすぐにはどうこうならない。

100年か1000年か、それくらい先のことだ。

問題を解決して、海洋や宇宙に住めるようになる場合もたくさんあった。

 

(どんな終わりを選ぶかは自分たちで決められる。それが生命の特権だ。でも、私はそれを破壊しようとしている)

 

 

神様のいない世界にしておいて今更だけど、私個人が世界を良い方向に持っていける

自信は全くない。

 

どこまで行けても、私は中学生でただの子供でしかない。

良かれと思って余計なことをした結果、世界が混乱したりしたら目も当てられない。

 

でも、ここで見聞きした技術は次の世界でも役に立てられる。

問題はそれを実現する立場まで持っていく方法だけど、いきなりナノマシンを暴走させていろいろやっても、混乱しか巻き起こさなかった。

というか、一度それで大変なことになった。

 

誰か優秀な政治家さんとか、稀代の革命家とか、時代を進展させる科学者とか知らないかな。

 

まあ、そんな都合の良いものはいないし、何だったら自分がそうしろって話なんだろうけど、私は問題解決はできても、未来を創ることはできない気がする。

私ができるのは今ある何かを破壊することが前提だし。

 

例えば、グレイグーに使ったナノテクノロジーや量子重力の理論を使うとしても、どう使えばいいか私には分からない。

 

なにより、世界をどうするかは人間が考えることであって、人じゃなくなった私が手を出す領分じゃない気がする。

 

誰かに使ってもらうとしても、肝心の友奈と接触できないんじゃ何もできない。

友奈以外の友達も何人か思い浮かべてみるけど、みんな中学生だ。

実際のところ友奈が一番適しているように思う。

 

少なくとも物心つく前に量子状態の私を観測したのは友奈だ。

 

ハイハイ友奈が興味本位でベッドの下から私を引っ張り出してこなければ、私はそのまま何も感じないまま終わっていたんじゃないかな。

 

(そう考えると、私は友奈を友達だと思っているけど、本当のところは友達というより…やめよう。こんな事いくら考えても答えなんてないんだから)

 

あの時、私が初めて素粒子に変換されたのは、致命的なまでの確率の結果。

宇宙の寿命を三倍しても起こらないはずの確率が起こした偶然だ。

 

けど、たまたま同じ日に生まれた友奈が私の隣にいた。

 

そして、消えていく私を認識し、そこにあるものとして確定している。

 

普通の人間なら素粒子になって消えていく人間を見ることは叶わない。

けれど、友奈は神樹様によって生まれた特別な存在だ。

 

ヒト(モノ)としての私が消えていても、人間(たましい)をそこに見つけて。

 

 

そうして、私は人間として観測された。

 

過去に戻った際に、友奈に観測されていない場合も確認したけど、その場合、やっぱり私は行方不明のまま消えている。

 

実際の歴史と違って、両親はそのあとに生まれた弟を過保護なくらいかわいがっていたけど、今回はどうなるだろう? まあ、それも誤差に過ぎないか。

 

ちょっと、思考がずれた。

 

今は過去より未来のことだ。

いや、過去に戻るつもりなんだから、過去には違いないけど。

 

「ああ、もうややこしいな。よし、始めるよ」

 

一度頬叩いて立ち上がる。

 

戻るのは西暦2015年。

 

ゴールは私が生まれて2日後に行方不明になって、7時間後に友奈に観測されるまで。

そこまでの歴史を固定できれば成功だ。

 

私はやっぱり友奈に会いたい。

 

 

だから――

 

「私は西暦の人類70億人を捨てる。そのために私は…」

 

広がる荒野。汚れ切った空気。でも、人類は生きている。

 

それでも、私はそれを捨てる。私の望みのそのために。

 

10回くらい失敗した。

 

喉が引きつって声が出なくなった。

途中で泣きそうになった。

言葉がうまく出てこなかった。

威厳が足りずおかしな人になった。

バーテックスを出しすぎて、誰も残らなかった。

 

そして、そのすべてが私になる。

 

宇宙のすべての電子に接続し、この瞬間だけの叫びを込める。

この世界と、人としての私に向けて。

 

「礼賛せよ、喝采せよ、そして歓喜せよ。我はこの世界を創りし者。この世界は我のもの」

 

違う。こんなの嘘っぱちだ。この世界は本当は誰のものでもない。

 

けれど、私はこうやって進み続けてきたんだ。

 

そして、やっぱり、私は友奈にひとめ会いたい。

 

 

「我こそは汝らが祈ったもの、願ったもの、見上げるもの。 恵みを降らせ、光を降らせ、命を降らせ続けたもの」

 

 

だから、友奈が生まれてくる未来を作り出すために…

 

すべての時間の量子・クローノンをたたき起こし、インフラトンに情報を乗せて送り出す。

 

私が…

 

「我は天の神。我の望みをかなえられなかった汝ら、我の与えたものを使いつくした汝ら、そして、我の領域に届いたと嘯く汝ら、人類を粛清する」

 

天の神…人類を粛清し世界を滅ぼす者。

 

私がその天の神と成る。

 

目の前に広がるのは2015年7月30日の地球。

 

無数のバーテックスをあらゆる時間からコピーし地球へ降臨させる。

 

 

かつて、原初にあった泥さえすべて飲み干し、光さえその意思諸共消し去り、いずれ自分が見たであろう景色を出現させる。

 

時間もなく、居場所もなく、知る人もいない。

 

神を滅ぼした者が次の神となる。ある意味必然の理。

 

 

 

バーテックス達が人を食らう。

私の意思に従って、すべては300年後に友奈が生まれてくる世界を用意するために。

 

バーテックス達がいろんなものを壊す。

私の意思に従って、すべては300年後に友奈が生まれてくる時代を創るために。

 

バーテックス達がたくさんの地獄を生み出す。

私の意思に従って、友奈に会えないという私の理不尽な八つ当たりを広げるために。

 

 

 

 

なんだか、目がぼやける。焦点がずれたみたいだ。

まるで自分の意識が広がって薄くなっているみたい。

少し眠たい時に似ている。

 

まあ、いっか、寝ちゃおう。300年は待ちだし。

あとはバーテックスが人類を殺しすぎない程度に、逐次投入するようにして放っておけばいいか。

 

何だか考え方もおかしい。いや、もともと私はこんなんだったっけ。

 

ああ、もう、ホントに眠いや。あと、あとは何をしなくちゃいけないんだっけ?

 

でもあと一つこの世界でやる事が残っている。歌野と水都だ。

 

目が覚めたら、畑の手伝いをするって言ったんだっけ。

 

それが終わったら眠ろう。すべてが終わって一度だけ友奈会えたら、西郷さんを紹介してもらわないと、ちゃんと仲良くできるだろうか?

 

「だから、バーテックス。私が認め、私が許し、私が欲する。人類を粛清せよ」

 

 

そうして、私はとうとう天の神となった。

 

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