真っ白な朝日が真っ白なカーテンを揺らし、真っ白なシーツを照らす。
いつもと同じ気持ちの良い朝の陽ざし。
今朝の献立は何にしよう。
確か鮭と小松菜がたくさんあったから、鮭は焼いて小松菜はおひたしかな。あとは少し甘めの卵焼き。
でも、わたし、そんなに和食派だったかな?
そう思いながら、目を明けようとするけど、目を閉じていても眩しい光に戸惑ってしまう。
わたし、起きる時間を間違えた?
そう言えば、誰かに呼ばれている気がする。
「起きろッ、須美!」
「起きてッ、わっしー!」
そう、こんな…"知らない子"の叫び!?
目を開いて"初めて"見たものは、
まるで"巨木のようなサジタリウスの矢"が眼前に迫る瞬間だった。
――目が覚めると、そこは戦場だった――
慌ててわたしは身を起こす。けれど、ものすごい勢いで迫る巨大な何かを避けることは間に合わない。
間に合わないから…わたしは自分の中から取り出した。
「ぐううぅぅ…」
―ルゥオオオオオオオン―
自分の口から出たものとは思えないような
叫び声とともにわたしは自分の心臓を引き抜いた。
これでもう大丈夫。”まだ生まれてすらいないわたしは死ぬことなんてない”。
目の前が真っ赤に染まる。
私の手の中の心臓はそれ自体が別の生き物のように蠢く。
それは、ずっと私の中に眠っていたもの。
それは、空の下に引きずりだされて、すべてのつながりが絶たれてもなお、それは動いている。
それは、今も形を変えて、わたしだけの…わたしのためのモノが生まれる。
そうして生まれたそれは一振りの剣だった。赤く、紅く、朱く。
血の滴る命の色にも、きらめく炎のようにも、そして沈む夕日のようにも見える。
波打つ刀身。
はじめはフランベルジェと呼ばれる剣に似ていたそれは形を変え続ける。
「だああああああ」
脈打ち血を流し続けるそれは自らが流した血を集め、天を突くような大きさでわたしの叫びに応えるように正面から巨木を断ち切る。
低血圧のわたしにしては気合の入った声が出た。
「わっしー、大丈夫! 立てる? ああ、こんなに血が、どうしよう? ミノさん」
「落ち着け園子、アタシらが慌てちゃ何にもならない。須美、返事できるか須美?」
そう言いながら、さっき声をかけてくれた2人がやってくる。
なんだか心配をかけてしまった。
一人はわたしと同じくらいの長さの髪に、紫を基調とした変わった服を着ている。ただ、わたしの髪は"赤い"けど、この子は"金髪"だ。
赤いと言えばもう一人、こっちは人懐こくて、それでいて目を引く、自分の体より大きい斧を2つも持っている。
けど…
「ええっと、ここは…なんで樹海? それに貴方達は誰…何ですか?」
見渡す限りの非現実的な空間。カラフルな巨木のようなものが絡まり合いながら、完全に大地を覆いつくしている。
まるでシュールレアリスムの絵画みたいだ。
そして、この光景をわたしは知っている。
「は? 何言ってんだよ須美」
「そうだよ。ねぇ、どうしちゃったの? わっしー」
わっしー…? 須美? 誰のことだろう?
わたしは…? そう、確かわたしは…そう、確かアイツに刺されて…。でも、なんで刺されてすぐに樹海にいるんだろう?
でも、バーテックスのことは覚えている。なんでわたしがバーテックスに攻撃されているのか分からないけど。
襲ってくるなら倒すしかない。どうせ、こいつらにホントの意味での死はないんだから。
「ごめんなさい。あとで説明するから。それよりサジタリウスの矢はキャンサーが反射してくるから、一度避けても油断しないで。あと、スコーピオンの毒は耐性を渡すよ。これがあれば2、3回くらいは平気だから。サジタリウスの相手はわたしがする」
「え? わっしー。どうしちゃったの?」
「おい、須美、須美ー!」
早口で言いたいことだけ言うと、わたしは二人の声を無視して、周囲の場に接続して一時的に格子振動のエネルギーを集める。
ナノマシンほどではないけど、3人分の物理的損傷は後でなんとかできるはず。手術とかは必要になるけど。
まっすぐにサジタリウスに向かう。
途中にキャンサーとスコーピオンがいるけど、そこは上手くすり抜ける。
大丈夫、こいつらは何度も新技の実験台になってもらってるから、どうすれば良いのか分かってる。
スコーピオンは尾の質量が大きいから威力も速度も高いけど、同時に連続で攻撃はできない。
その長大な尾もしなりが効いていなければ最大の威力はでない。だから、わたしは自分からスコーピオンの毒針に刺されに行く。
「痛ッ! でも、これで…わたしは"もう刺さらない"、"毒で倒れない"。」
何故、バーテックスが指揮官であるわたしを攻撃するのか分からないけど、
わたしが神様から与えられた能力を問題なく使えれば、バーテックスを恐れる必要はない。
「お前たちは…誰を攻撃…してるんだぁああ」
そのまま蠍の尾を掴み、キャンサーに投げつける。
あの二人がどこまで戦えるのか分からないけど、これなら少しはやれるはず。
その間に私は飛び道具を抑える。
けれど、連続して撃たれるサジタリウスの矢の前に、わたしは足を撃たれ、大地に縫い付けられる。
「しまった。足止め」
おまけに失血で意識を保つのがかなり辛くなってきた。あともう少しなのに……。
こんな訳も分からないまま倒れるわけにはいかないのに。
「わっしー、ひとりじゃダメだよー」
「須美、少し我慢してくれよ。すぐに動けるようになるからな」
間断なく降り注ぐサジタリウスの矢を、金髪の子が出した傘のようなもので受け止める。
その間に、もう一人は斧をおいてサジタリウスの矢を引き抜こうとする。
「!? いけない。一か所に固まったら、まだ"殴打"を受けて…」
風が頬を撫でる。それは世界を廻る爽やかな風じゃなくて、巨大な尾がわたし達を跳ね飛ばそうと、周りの風を押しのけて生まれた不快なものだ。
いち早く気が付いた髪の長い子が防ごうとするけど、彼女の傘はサジタリウスの矢を防いでいるから動けない。
斧を持っていた力持ちの子も気が付いているけど退くつもりがないみたいだ。
考えてみれば、先にサジタリウスの矢を少しでも受けておけばよかった。
そうすれば、わたしがあの二人の盾になって、時間をかけて倒すことができたのに。
目が覚めて突然矢が飛んできたから、慌てて防いじゃったけど、もっとうまく立ち回れたかもしれない。
そうすれば、私と髪の長い子はこんな風に空中遊泳なんてする必要は無かっただろう。
(ダメ、血が足りない。意識が…)
そう言えばなんでこんなに血が足りないんだろう?
心臓を引き抜くわたしは血が足りなくならないように、生命も魂も遠隔に分けているはずなのに。
もともと攻撃方法が多彩なスコーピオンやヴァルゴは、わたしにとって相性が悪かったけど、こんなことになるなんて。
大体なんでアイツらがわたしを攻撃してきたのかも分からない。
(せめて、スコーピオンかサジタリウスは倒さないと、1人じゃ無理)
ここから狙えそうなのは…サジタリウスの方か。神格はわたしの方が上のはず。
だから……
「オン・バーバ・シューニャ・ウン・バザラ・ウン・パッタ。ノウマク・サマンダ・ボダナン・マハーシャーラ・ソワカ」
わたしの手に引っ付いていた剣が今度は蒼い血を流す。
良かった。ちゃんと励起状態にはなれる。
そのまま、わたしはサジタリウスを瞬きしないように見つめながら、その光景を横薙ぎにする。
血の反転。人ではない証。場所は同じでも可能性だけが違う世界。
だからこそ、どこにでも届く。
「"わたしはそこにあなたをみない"。"わたしは百を殺してこそ、千を生かす"」
サジタリウスの御霊の位置が2つにずれる。
良かった。いつかどこかのだれかがサジタリウスを倒すことがあるんだ。
安心したのがいけなかった。
(あ、まず。これブラックアウトと同じ奴だ)
何とか体勢を変えないと、いや、それより落っこちてるんだから。
「須美、園子ー」
誰かの声が聞こえる。でも誰かは分からない。
暗くなった視界に見えたのは血ではなく炎の深紅だった。
けれど、そこまで、わたしの脳はそれ以上待ってはくれなかった。
「起きて、ねぇ、起きてわっしー。お願いだから…」
そのっちの声がする。
でも、おかしい。私は起きるのは早い……
違う!! 今はバーテックスと戦っていて、それから突然現れたバーテックスに、私は矢で撃たれたんだ。
「そのっち!」
視界が戻ると正面にいるそのっちを抱きしめる。よかった。無事だったんだ。
「よかった~。わっしーまで目が覚めなかったら…私、もう…」
けど、そのっちの様子はおかしい。完全に喜び切れない感じだ。
「そうよ、銀。銀はどこ?」
「わ、わかんない。私も目が覚めたばかりで、気が付いたら、ミノさんはいないし。わっしーはわっしーじゃないって言うし…もう、もう!」
何だか私が気を失っている間に大変なことになっていたみたいだ。
「ごめんなさい。そのっち。私はもう大丈夫だから、ね。ほら」
普段のそのっちとは全然違う様子に戸惑いながら、とにかくそのっちを落ち着かせる。
「そうだ、ミノさんのところに急がないと。わっしー、大変なの。ミノさんが一人で戦ってるんだよ」
「何ですって…そんな、3体相手に1人なんて」
「え? 1体はわっしーが倒したんだよ。スババーンって胸から赤い剣を取り出して」
赤い剣?
私の武器は弓なのに。でも、今はそれよりも銀を助けないと。
「でも、1人で2体も相手にするのは大変なはず、急ぎましょう。」
「うん、わっしーも元に戻ったし、後はミノさんと合流してバーテックスを倒すだけだよね」
二人で頷き合うと私はそのっちに手を差し出して、引き上げるように持ち上げた。
「銀、返事をしてー」
「ミノさーん、どこにいるのー」
二人で声を掛け合いながら、名前を呼び続ける。
お願い、銀。返事をして。
「あ、わっしー、あれ」
そのっちが指さす方角。
乾いて固まった血の跡がずっと先まで続いている。
まさか、これは銀の…
急がないと、二人でもう一度頷き合うと、痛む体を抑えながら歩いていく。
心は急くのに体はいうことを聞いてはくれない。
まるで鉛を引きずっているようにすべての動作が緩慢になってしまう。
時間の経過がもどかしい。もっと早く進んで、私達を進ませて。
10分くらい、いえ、1分かもしれない。もしかしたら、もっと短いかもしれない。
とにかく、樹海の中にうっすらと影が立っていた。
よかった。銀はちゃんと立ってる。敵の姿は…見えない。
そのっちと顔を見合わせ、力をふり絞って駆け寄っていく。
どこにこれだけの力が残っていたのか不思議なくらいだけど、とにかく今なら間に合う。
「銀…ああ、ほん…と…うに…?」
「ミノさーん、よかっ…あ…」
けれど、私達は気が付いてしまう。
駆け寄る速度は少なくなり、歩幅は小さくなる。その現実から遠ざかるように。
それでも、私達はどんなに遅くなっても、彼女のところへたどり着く。
そう、確かに銀は立っている。今も動き出しそうなくらい。
顔を上げて、空を見上げて、今もそこから来る者たちを見逃すまいとするかのように。
ああ、でも、銀、もういいの。もういいのよ。
優しい貴方。今も私達を守ろうとしてくれる強い子。
けれど、貴方はもう…
誰かの涙の音がする。そのっちかもしれないし私かもしれない。
けれど、それはどちらでも良いし、どちらにも違いはない。
2つの気持ちは混ざりあい、1つの命のよう。
ただ、私達の涙の音だけが樹海の終わりまで続く。
そう、思っていた。
不意にぐらりと眩暈に似た感覚が私の体を包む。
(いけない。こんなところで…え?)
気が付くと、樹海は消え見たこともない場所に立っている。
目で見えるのはどこまでも続くような草原で模られた地平線。
耳に届くのは不思議な鐘の音。
若草の匂いも風に運ばれてくる。
(ここは…そんなことより銀、銀を探さないと)
「銀…ええっと、確か斧を持っていた子かな?」
「誰? あ、あなたは一体」
いつからそこにいたのか、目の前には一人の女の子が立っている。
見た感じは私と同じくらいの年齢だ。そのっちと同じくらいの長い銀朱の髪が外套のように広がっている。
額にはあまり見たことがない石が鎖のようなもので止められている。
「わたしは十華、先に言っておくと本当の名前は分からないから偽名だよ。本当の名前じゃないってことなら貴方と同じだよ。鷲尾須美さん」
ドキリ、と胸を打つ。
「どうして、それを?」
このことは秘密ではないけど、大赦関係者以外には公にされていることでもない。
「知っている理由は簡単。わたしが神様から教えてもらったからだよ」
「神樹様から? でも何故?」
私の情報をこの子に教えることにどんな意味が?
「わたしは代理人ってとこかな? とにかくお使いだと思ってくれればいい。それで貴女にお願いがあるの」
一体どういうことだろう?
「神樹様のお使いであれば、もちろん伺います。でも、ここは? それに何故大赦からではなく何故直接?」
「その前に気になっているだろうことを先に説明すると、三ノ輪銀はまだ辛うじて息がある。けど、そんなに長くは持たない。だから一時的に貴女だけを別の時間軸に移動させている。樹海の中の樹海みたいな感じだ。だから、ひとまず銀さんのことは安心してくれていいよ」
「そう、なんですね。よかった…」
思わずその場にしゃがみこんでしまいそうになる。けれど、あわてて気を引き締める。
まだ、この子の言っていることが本当か分からない。
それに、今までの話だとわたしに何かをさせたいみたいだ。
「で、話を戻すね。もし、わたしのお願いを聞いてもらえるなら、わたしの寿命の半分を瀕死の重傷である銀さんに分けてあげる。どうかな?」
どこか不安げにこちらを窺うようにこちらを見ている。
「あ…」
そうか、神樹様の使いって、そういうことなんだ。
「ここまでは問題ないかな?」
「ええ、とにかく銀を助けてくれるんですね。だったら早く」
「ストップ、ストップ。さっきも言ったけど時間はあるから、その前にわたしのお願いも聞いてからにしてくれない」
「そんなの聞くまでもありません。銀を助けてくれるなら是あるのみです」
詰め寄る私に仰け反る彼女。数秒前の邂逅の時とは真逆のような構図だ。
でも、また3人でいられるのなら、どんな無理でも何とかしないと。
「近い、近い、ふう、まったく聞いていた以上に骨が折れるなあ」
「ご、ごめんなさい。つい…」
「まあ、良いよ。とにかく銀さんを助けるのは良いんだけど、3つお願いがあるの」
なんだろう? そのっちがいないのに私にだけ話す理由があるんだろうか?
「1つは銀さんが助かってもしばらくそのことを秘密にしてほしい。」
私の答えに何を感じたのか、安心した様子で矢継ぎ早に話し始める。
「2つ目は、ここで会話したことは記憶に残らない」
2つ指折りながらそう続ける。
「3つ目はある時が来たら1度だけわたしの行動を黙ってみていてほしい。だいたい5分間くらい。具体的に何をするかっていうとある人と話がしたい。攻撃したりとかはしないから」
どの条件もあまりにも奇妙だ。まず…
「最初の2つですけど、どうして秘密にする必要があるんですか?」
「誰に知られると良くないのですか? 銀のことを隠しておきたい人なんて…」
何だか、煮え切らない話ばかりだ。
怪しいけど、確かに銀はかなりの重傷だった。
「まあ、助けるだけなら良いんだけど、銀さんが生きていると勇者システムのアップデートが行われないから、死んだように見せかける必要があるんだよ」
なるほど、今回の戦闘の結果を受けて、勇者の力の改良行われるかが変わってしまうということなのね。
「それは…でも、それなら今回の戦いでも大変だったんですし、きちんと説明すれば大赦も対策を考えてくれるのではないのですか」
けれど、私の言葉を聞いても彼女は微妙な表情だった。
「それは…。アップデートで確かに強くなるけど、代償として身体機能が失われるから」
「な!? そんな、それじゃまるで…」
「まあ、酷い話だけど、このままだと貴女達は必ず負ける。次の敵…レオはかつてどの勇者も倒したことがない。今までのバーテックスとは比べ物にならない強敵だから」
「誰も倒したことがない敵…」
そんな敵が…でも、そのために私達は…
「大丈夫、希望はある。時間はかかるけどそれは間違いない。じゃないと、わたしはここにいない」
「あなたは一体…どうしてそんなことを言い切れるんですか?」
おかしな話だ。今の言い方だとまるで未来を知っているみたいだ。
「神樹は貴女達を助けたい。だから、ちゃんと貴女達が訴えれば、ちゃんと答えてくれるよ」
何だか頼りない言い方だ。でも、神樹様と直接話すことはできないから仕方ないのかもしれない。
「それでは最後のお願いは何のために?」
「それはわたしがちゃんと死んで、生まれてくるためだよ」
「一体、どういう意味ですか」
いろいろなことを考えていたけど、これは意外な答えだった。
もしかすると幽霊なのだろうか?
「あー、うん。ちょっと端折りすぎたね。わたしには肉体がないから人間か人形にとり憑かないと動けないんだよ。だから、わたしは自分の体を柵瀬資しているんだけど、大赦はそれを許さないかもしれない。そんな時風邪ひいたとか言い訳して、出撃を待ってもらえないかなって」
体がない? その割には気楽な感じだ。
「わたしもなんでこうなってるのかは分からない。たださっきは貴女にとり憑いてたから、まあ、話だけでも通しておこうと思ってね」
「はあ…え、私にとり憑いていたんですか?」
思わず、自分の体と彼女を交互に見てしまう。
何だろう。すごく、言葉にしづらいけど…
「あ、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけだから、悪いこととかしてないから。いつもみたいな生体パーツだと思っていたから、ちょっと無理はした…かも? あの、本当にごめんなさい」
とりあえず、体の調子におかしなところはないと思うけど、戦闘で怪我をしているから細かなところは分からない。
「その話は、あとでじっくりと聞かせてもらいます。それで…その、銀のこと」
「とにかく銀さんが生きていることは絶対に秘密。でないとパワーアップできなくてレオに負けてしまうかもしれない」
まっすぐに目の前の子を見つめる。改めてみても不思議な感じだ。
額の飾り以外は変わった様子はない。格好も普通の洋装みたいだし、特別なものを持っている様子はない。「
でも、その眼差しは真剣で視線で切断されてしまいそうな錯覚を感じる。
それにこの視線どこかで…
とにかくここまで真剣にお願いされては無下にはできない。
「分かったわ、とにかく銀を助けて。貴女のことはもう少し聞かせて」
「ほ、良かった。…ここも何度か失敗してたから、ようやく抜け出せるよ」
「何か言いましたか?」
「ああ、何でもない。ちょっと安心しただけ、あ、やばもう時間切れだ」
「え? 説明とかは?」
「ああ、ゴメン、時間ないや。何となくわかるようにしておくから、後はよろしく~」
「ちょっと、待ってください。いきなり、そんな一方的に…」
始まったときと同じように私の視界が揺れる。
これで本当に良かったんだろうか? やっぱり怪しすぎる。
けど、私が何かをしたり、何かをお願いすることは無かった。本当にただ話したかっただけみたいな不思議な時間。
でも、銀の出血は酷かったし、あのままでは危険だったのも確かだ。
せめて、そのっちに相談できていれば…
そう考えてみるものの、私の意識はそれ以上この世界を見続けることはできなかった。
完全に意識が途絶える直前に、私は地上に降る巨大な3つの星を見た気がした。
しばらく神世紀の話が続きます。