松永沙耶は神である   作:スナックザップ

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地上代行者 ~agent~

爆発の光が収まると、3人とも満開の形態に変化していた。

 

(やっぱり満開無しでは難しいか…。でも、まだだよ。3回くらいなら、わたしだけでも散華は何とかできる)

 

「ひえー、ビックリした。初めて使ったけど上手くいって良かった」

「それが、ミノさんの満開なんだ。私やわっしーと比べて、ガッシリした感じかな?」

「そうね。でも、満開しなくてもさっきの爆発で周りのバーテックスもみんないなくなったみたい」

 

鷲尾さんの言う通り、あたりのバーテックスは爆発に巻き込まれていなくなっている。

今のうちに新しい電磁バリアを展開しなおしておこう。

 

「とりあえず、3人とも無事…とは言えないね。満開も使っちゃってるし。ごめん、読み間違えた。まさかレオのエネルギーをいきなり全部使ってくるとは思わなかったよ」

 

3人の近くにわたしも一度降り立つ。

 

「ああ、まあ、しょうがないさ。まさか自爆攻撃なんてな。でも、須美の言う通りレーダーにも何も…あ?」

 

銀さんがそう答えながら移動してくるけど、途中で首をかしげている。

 

「うーん、何か映ってる? 結構近くみたいだけど…」

 

園子さんが不思議そうにしている。

 

「ちょっとまってね。アクティブレーダー照射」

 

350度全周囲に向けて、レーダー波を広げてみる。

 

「人間…まさか」

 

まさか、そんなことって…

 

「人が紛れ込んでるのか? こんな火の中じゃ大変だ。すぐに行ってみよう」

「あ、待ちなさい銀」

「わっしーも、おいてかないでー」

「違う、3人とも待って。行かないで!」

 

そう言いながら、強引に3人を引き留める。

 

「わわわ、どうしたの急に?」

 

一番近くにいた園子さんが振り返りながら聞いてくる。

 

「まずいかも。強敵が来てる。2人…」

 

私の言葉が続けられない。七の首がすべて切り落とされて、呼吸が止まる。

ダメ、すぐに再生。いえ、離れないと。

 

「十華? うわあああ」

「銀、何? きゃあああ」

 

続けて、銀さんが展開していた要塞の足が切り落とされ、宙に浮いていた鷲尾さんが叩き落される。

 

(ダメ、みんなを逃がさないと、なんでアイツが出てくる?)

 

「え? みんな、ねぇ、わっしー、ミノさん?」

 

無事なのはわたしの首の影になって攻撃されなかった園子さんだけ。

 

「…っ!」

 

急に園子さんが真上に全力で飛び立つ。

 

「……」

 

目標を捉えそこなったおかげなのか、園子さんが浮いていたところに一瞬だけ影が見える。

間違いない。アイツだ。

 

だったらここで止めないと。

 

全力で電磁バリアをアイツの周りに張り巡らせる。

さらにタウラス・ベルを照射して三半規管への衝撃も与えておく。

 

 

「はっ、はっ、はっ、捕まえた。なんでお前がこんなところにいる。アル」

「…別に」

 

相変わらず何考えてるか分からない。死んだ魚のように焦点が定まらない瞳。血の気がなく青紫に近い唇。

 

でも、神様が四国以外の人類を滅ぼした時に特別にその魂を回収した人間。

プラチナブロンドとブラッドアイを持つ女の子。

かつてあった欧州の青い血受け継ぐだろう最後の一人。

 

そして、300年に渡りわたしと共に神様に生かされ続けた3人のなかでも最も神様の寵愛を受けたもの。

 

 

アルフレッド・アーネスト・アルバート。

 

 

本人は師の名前だと言っていたし、どう聞いても男性名だけど、その名にふさわしい威厳と戦闘センスを持つ戦う人。

 

でも、わたしに槍を刺して天から墜落させた時に、決して動けないよう同じ槍で縫い付けたはずだったのに、どうして?

 

「もしかして、今がその時だって言うの? 既に、結城友奈は勇者である、と?」

「…違う。これは私の意思」

「ふぅん、今日はよく喋るじゃない。それに自分の意思で動けたなんてね」

「…別に」

 

会話しながら、少しずつ電磁障壁を狭めていく。

コイツが持っている力はジェミニ、レオ、カプリコーン、サジタリウス。

物理的な破壊力と速度はすごいけど、ジェミニが混ざっている都合で防御能力は少し低めに設定されている。

何とかこのまま抑え込めれば良いんだけど、そううまくはいかないでしょうね。

 

「いてて、そいつがアタシ達を攻撃していたのか?」

「全然、気が付かなかったわ」

 

満開こそ解除されたものの銀さんも鷲尾さんも無事だったみたいだ。

 

「わっしー、ミノさん。良かった~。いきなり落っこちてビックリしたよ~」

 

それにしても、園子さんはよく見えない一撃を避けられたなー。

 

「3人とも無事でよかったよ」

「それで、十華は知っているのか? アイツのことを」

 

当然の質問。銀さんに返す言葉は1つしかない。

 

「あれは、わたしと同じ神様の、いいえ、天の神様の使い。本当は天の神様と一緒に降臨するはずだったんだけど…」

 

3人の視線がアルを見つめている。

 

「とこでさ、天の神、って結局何なんだ?」

 

銀さんの一言で全員がひっくり返った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天の神、と言えば菅原道真公のことかしら?」

「あー、人の名前なのか? で、その菅原さんがなんでアタシ達を攻撃してくるんだ」

「いや、あの子の名前は菅原さんじゃないよ。アルフレッド・アーネスト・アルバート。本名じゃないと思うけど、間違いなく欧州の出身」

 

もしかして、大赦ってバーテックスが何なのか説明していないんだろうか?

確かに外の世界は機密にするかもしれないけど、よりによって天の神のことも秘密だったなんて。

 

「わー、海外の人。あれっ? ということは四国以外にも生きている人がいるの?」

「まさか、英米の…」

 

園子さんの表情がこんな時なのに、パッと輝く。

反対に鷲尾さんの表情が曇っているのが気になるけど、今はそっちは置いておこう。触ると危険な香りがする。

 

とにかく、みんなが驚くのも当然で、全滅したと思っていた世界が残っている可能性なのだから。

だから、この後は言い出しにくい気持ちになってしまう。

 

「ううん、少し違う。天の神とわたしが呼んでいる存在は神樹様じゃない。わたしやアルを過去の世界から呼び戻して、自分の手伝いをさせてようとしていたの」

 

報酬については…いっか、わたしはいらなくなったし。

 

「けど、どうして、その天の神が私達を?」

「鷲尾さんの疑問の答えはわたしも分からない。ただ天の神は人類を粛清しようとしているの。わたしはそれに反発して、自分を復活させた天の神から離れてここに来たってこと」

 

わたしの知っているのはここまでで、何があったのか神様は教えてくれなかったけど、人類すべてを対象にした粛清なんて、やり過ぎに決まってる。

確かに良い思い出なんてないけど、だからって、そんな取り返しのつかないことはしなくても良い。

 

「じゃあ、あそこにいる英米人も…」

「うん、わたしと同じで天の神が自分の下僕として復活させた一人。でも、まだ天の神の力を完全に受け止め切れていないはずなのに。どうして?」

 

わたし達は、生い立ちのこともあってすぐに神様の力を受け入れられたけど、アルだけは神様という存在を理解できていなかった。

だから、バーテックスの力を継承するのもあと1、2年かかるはずだけど、もしかして、未完成のままでてきたの?

 

「…何?」

 

わたし達の視線に反応しているけど、相変わらず表情に乏しい。

 

「ええっと、アルさん? 知ってて天の神に協力するのか? それってどんなことか分かってるのか? みんな死んじゃうんだぞ。アンタの家族も友達も」

 

そうだけど、違うんだよ。銀さん。

コイツはわたし達とは時代が違いすぎる。

 

「…そう、それが何」

 

これだ。わたしも同じようなことを聞いたことがある。

けど、コイツは自分の剣の師匠さえ容赦なく斬っている。

本当の意味で自分が生きることだけに生きているようなヤツだ。

 

いや、それも違うかもしれない。

 

本当は生きているのかさえ、分かっていないような生気のない平坦な声だ。

 

「それがって、それで良いのかよ?」

 

良いはずがない。だけど、いつも反応は薄い。そして、いつもこう返ってくるだけ。

 

「別に…」

 

結局、何考えてるか分からない。

 

わたし達の質問がそれだけだと思ったのか。電磁障壁を切り付けている。

 

「うっ、ちょっとまずいかも。3人ともお願い。とにかくなんでもいいから攻撃してアイツを無力化してもらえないかな?」

「それは、でも、相手は人間なのでは?」

 

返事をしたのは鷲尾さんだけだったけど、他の2人も同じ気持ちだったみたいで、少し困った様子だ。

だけど、議論している時間はない。

レオの力を持っているから強いとは思っていたけど、このままだと格子を壊してまた暴れ回る。

 

「お願い。アイツもわたしと同じで天の神に無理に蘇らされて、今度は人間を滅ぼす手伝いをさせられる。バーテックスと同じなの。アイツもわたしも死んだりしないから」

 

3人がそれぞれ百面相のように表情を変え続けている。ここにきていろんなことを知ってしまったから、整理ができていないんだと思う。

 

それでも、散華のことだけは知らせずに乗り切りたい。

今、知ってしまえば例え勇者でも、いいえ、勇者だからことそ許せないかもしれない。

 

「…終わったら、全部教えてね?」

 

園子さんがちらりとこちらを見透かすように、ジッと見ている。。

 

「もちろん、まだまだいっぱい話したいことがあるから」

 

園子さんから微妙に視線をずらして、3人に対して言うようにする。

 

散華のことを話せていない。今はまだ昔話にできていない。

 

(例え、それが神様の優しさだとしても、このままで良いわけないない。だから今は…え?)

 

乾いた音と煙と一緒に、何かが壊れる音が流れる。

 

「ぐ、痛」

 

これは、電磁障壁が壊れた反動?

 

「大丈夫か? 十華?」

 

近くにいた銀さんがわたしの首の近くに寄ってくる。

満開しているとはいえ、平気なのかな?

わたしの牙1本が銀さんよりも大きいくらいなのに。

 

「何とか、でもアイツがアルが電磁障壁を破ったみたい。また捉えないと、一度放たれたらアイツは光になって襲ってくる」

「光って、どうなるんだ?」

「うーん、とりあえず見えた時には攻撃されちゃうんじゃないかな?」

「そうね、何か対策を考えないと、っ!」

 

喋っている間に鷲尾さんが斬りつけられたみたいだけど、今度は構えていたせいか何とか躱せたみたいだ。

光変換による宇宙最速のスピードも欠点が無いわけじゃない。

最速になるために目標までの距離を最適解で走るから、目標がずれるとやり直しになる。

ようは常に気まぐれに動き回っていれば、意外と当たらない。

 

 

「あの子、わっしーを狙ってる?」

 

確かにさっきも鷲尾さんから狙っていた気がする。

そうか、やっぱりまだ完璧じゃないんだ。

 

「3人ともよく聞いて、きっとアイツは近寄らないと攻撃できない。アイツの力の一つが獅子座なんだけど、さっきレオは爆発したところだから、力が戻ってないのかも」

 

それでも、光になって襲ってくるアイツを止めることは難しい。

わたしの電磁障壁で捕まえても今度はこっちも攻撃できなくなるし、さっきみたいに力押しで壊される場合もある。

 

さっきの園子さんのように反射的な動作なら先読みもされにくいから、まだ避けられる可能性もあるけど、やろうと思ってできる動きでもない。

 

「光? 人間なのに? それに素粒子になっちゃったら・・・」

 

その園子さんが不思議そうにしている。

 

あれ? わたし何か間違っていたかな?

確か神様はそう説明してくれていたけど。

 

「間違ってはいないと思うけど、うん、ちょっと分からないかな」

 

分からないってどういうことだろう?

 

近くの銀さんにアイコンタクトしてみるけど、アタシに振るなと返された。

 

「その疑問は間違っていない。素粒子変換を行った場合、多様な情報を維持することは困難。だから私や天の神は維持できる情報量を単一になる」

 

ギョッと振り返ると、アルは光とならずに佇み続けている。

 

「ああ、そうなんだ。貴方達は1人じゃないんだね。だから、光になれるんだ」

 

園子さんは何が気になるんだろう?

 

「園子さん、素粒子変換の秘密が分かったの?」

 

素粒子変換のもたらす力。光の速度とブラックホールさえ蒸発させてしまう高密度エネルギーさえ解き明かせるなら、もしかしたら、神様に対抗できるかもしれない。

 

「ダメだよ」

 

けれど、すぐに園子さんは否定する。

 

「どうしてだ? 何があるんだ?」

「落ち着いて、そのっち。あの敵を止める方法がわかったの?」

「それでもダメ。絶対に。きっと何も残らない」

 

ここまで激しく否定するなんて、いったいどんな秘密があるって言うの?

 

「そう、なら、貴方達のおとぎ話はこれでおしまい」

「しまった」

 

そして、世界が光となってわたしを破壊する。

 

元始の光は悪しき獣を浄化し、化石となってわたしから剥がれ落ちていった。

 

 

 

 

 

 

 

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