「結局、貴方は因縁からは逃れられないのね。園子さん」
「逃れるんじゃないよ。私がやろうって決めたんだよ」
「そんなことをしても、誰のためにも、何のためにもならない。ただ、人間は縋って、押し付けて、下を向いていくだけ。それでは神婚と何が違うの? 結局、神が勇者に置き換わっただけで人は何も変わらないよ」
「変えていけるよ。私だって、ミノさんやわっしーと一緒に戦って、勇者部の皆に会ってからだって変わったよ。それにね。私だって大赦だけじゃなく、中学生も高校生もその先だって続いていけるんだよ。」
「そうじゃない。それじゃあ、神様が統治するのと変わらない。そんなものじゃ人には託せない。それしかないというなら、いっそそんな世界など滅んでしまったほうが良い!」
「その生き方は変えられないんだね。でもね、1つだけ覚えておいて、勇者も人なんだよ?」
こんなはずじゃなかった。やっぱり人には託せない。
人は相反するもの。人は矛盾するもの。人はすぐに心折れるもの。
園子さんが大赦のトップに立つことは勇者であったからこそ起こったことだ。それでは歌野の二の舞。
歌野は1人で逃げなかった、そして、結局私がこの手で滅ぼしたのだから。
今は
それには確かに天に神を一時的とはいえこの世界から退去させるに十分な奇跡。
でも、ボクにはまだボク個人の力がある。
粒子変換能力だって使える。ナノマシンの作り方だって覚えてる。
神の力を受けた勇者は、神とともにヒトに戻るべきだ。
例えそれで世界がどのようになろうとも。
それが諏訪を滅ぼした時に決めたことだ。
(何やってるんだ、ボクは。せっかく友奈は助かったんだから、もう良いじゃないか。世界のことなんか目を瞑って、耳をふさいで、知らないふりをしていれば良い。園子さんが勝手にやってることじゃないか)
それでも、ボクはせっせと機械を組む。
大赦に変わる象徴。
それは、巨大なものが良い。
それは、誰もが安心できるような奇麗なものが良い。
それは、きっと輝くものが良い。
グレイグーは東郷さんにあげちゃったけど、また別の何を作ることはできる。
だから、それまでは…
園子さん向けのプレゼントは取っておこう。
かつての戦いで三ノ輪銀が自分の腕と共に落としたもの。
武器としての斧ではなく、ただ木を切り整える道具として。
「それまではおやすみなさい。何年かかるか分からないけど、お墓に入れるような真似にはさせない」
記録でしか知らない三ノ輪銀。その残したものを還して、
まだ終われない。こんな結末なんて絶対に認めない。
もし、この世界を最初に作った神様がいたなら、きっと私にこの力が託された意味はそこにある。
鞄一つを持って、私はもう一度この町を出る。
最後まで園子さんは残るつもりみたいだけど、そんなことはさせない。絶対に。
だって、それは友奈が夢見て、ボクが叶えたかった世界じゃない。
それでは、ボクが神様を止める理由にはなり得ない。
「だらか、もう一度だ。もう一度300年繰り返して見せる」
誰もいない、いつでもない、どこでもない、ただ私だけが満ちた世界でどこまでも声だけが響き続けていた。