松永沙耶は神である   作:スナックザップ

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再び幸せが訪れる

暗闇の中、瞬間移動と空間転移を組み合わせて音も無く動く。

 

いろいろ試したけど、たぶんこの2つは別種の力だ。

少なくとも私は明確に分けて考えている。

 

私自身が別の場所に移動するほうが瞬間移動で、目の前に障害があると上手くいかない。

たぶんだけど、すごい力で素早く動いているんだと思う。

 

自分だけでなく、遠くに物を飛ばしたり、取り寄せたりする方が空間転移。

例えば壁の向こう側にある物を取り寄せたり、私自身が壁抜けしたりできる。

 

空間上の場所を入れ替えているだけなので、誰かが取り寄せたい物を動かしていると空振りに終わる。

もし、少しだけ場所がズレていたりすると、取り寄せたいものは切断され、泣き別れになった形でお届けされる。

 

実際あの後確認すると、私が取り寄せた三輪車は車輪の下半分だけが元の場所に取り残されて、切断されていた。

 

だから、私は逃げ回っている。

この力があれば、きっとどんなピンチでも切り抜けられるはず。

 

「結城ちゃあぁぁーん。」

「ひっ、ま、茉莉さん!」

 

まるで地の底から響くような声とともに、冷たい左手が肩に乗っかる。

 

おかしい。空間転移で100mは稼いだと思ったのに、先回りされている。

 

「い、イヤだ。私は戻りたくない。」

「ダメ。絶対に行かせない。」

 

そんな押し問答をしながら、半ば引きずられるように私は部屋に戻されてしまった。

 

「今日のノルマはあと少しだから頑張って。目標は70点だよ。再試験で夏休み失くしたくないでしょ。」

 

季節は夏。

 

私の不思議な髪と同じ青空の下。

 

夏休み前のテストの時期だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何とかノルマ終わった……。」

 

そのままフロアリングの床に倒れこむように横になる。

冷たくて気持ちいい。

 

仮設住宅は暑いんだよね。

 

エアコンも付いてなかったのを、私が廃品を共食い整備で作り出したものだから、本当に暑いときしか使えないし。

 

これも千景様を助けた時と同じモノの構造解析の産物。

 

「ダメだよ。そんなところで転がって。ルリちゃん達が来てたらまた真似するんだから。」

 

テーブルの上のグラスに雫が流れる。

 

起き上がって、中の麦茶を一気飲みする。

 

「ぷふー、この一杯のために……。」

「それもダメ。本当にみんなが真似するんだから。」

「茉莉さん、何だかお母さんみたい。」

「そんなに大きな子供を持った覚えはありません。」

 

千景様が助かったことを確認して、こっそり帰ってきてから、茉莉さんの心配性のレベルが上がった気がする。

その後の千景様の動静は静養中とのみ発表されている。

 

あそこであったことは非現実的すぎて、誰にも話せていない。

 

自分自身でどう考えていいのか分からないというのもあるけど、茉莉さんも最近出版社の人から内諾を貰えそうだし、大切な時期に余計に心配をかける必要はない。

 

(でも、もし、本当にバーテックスを天に還すことができるなら、私って実はすごい? えへへ……。)

 

直接バーテックスは倒せなくても、今回みたいに勇者様達の手助けになるかもしれない。

 

問題はなんでバーテックスが私の言うことを聞くのかってことだけ。

 

「え、どうしたの、急に笑い出したりして……。」

 

いけない、いけない。

 

茉莉さんが不審者を見る疑わしい目つきになってる。

 

最近の私の行動が、ルリちゃん達近所のお子様の教育に良くないって、怒られること多いから引き締めないと。

 

ルリちゃん達2、3人を腕にぶら下げてメリーゴーランドごっことか、ブランコを使ったエビぞり大回転分身パンチとかは、ルリちゃん達には受けたんだけど、茉莉さんがキレて封印された。

 

茉莉さんはキレるとめちゃくちゃ怖い。

 

……私も回転速度時速20kmオーバーはやり過ぎだったかもしれない。

 

 

「茉莉おねーちゃん、こんにちは。結城ちゃんいるー?」

 

噂をすれば影が差す。

ルリちゃんが訪ねてきた。

 

「はーい。すぐに行くよ。ほら、結城ちゃんもちゃんとして。」

「了解、あ、私が開けてくるよ。よっと。」

 

背中を丸めて腕を折りたたむと、勢いをつけてばね仕掛けびっくり人形のように、腕の力で跳び起きる。

 

「もう、家の中で暴れちゃダメだよ。」

 

茉莉さんのお叱りから逃げるように、玄関に向かう。

 

「いらっしゃい。ルリちゃん。あれ?」

「こんにちはー。あっついー。」

 

そう言いながら、ルリちゃんが部屋に駆け込んで行く。

 

でも、私はその後を追えない。

 

来客はルリちゃんだけじゃなかったのだ。

 

「こんにちは、結城さん。」

「亜紗さん、ルリちゃんと一緒だったんですね。どうぞ。」

「うん、お邪魔するよ。」

 

柚木亜紗さんは、茉莉さんのクラスメートで友達だ。

 

170cmオーバーの高身長からの視線と、今はなくなった宝塚で出てきそうな雰囲気の少女。

さらに、英語が超得意でめっちゃカッコいい系だったりする。

私の洋楽漁りの先生だ。

 

茉莉さんと違って、ボクっ娘ではないところが普段からカッコいいが身についているんだろう。

 

だから、この人の彼氏になると、……………(釣り合わなくて)苦労した。

 

まただ。なんか全然知らない記憶が流れ込んでくるときがある。

 

千景様の怪我を直したころから、大赦の人に記憶の治してもらっている時と同じように、変なことを感じたり思い出したりする。

 

「大丈夫? 結城さん。」

「えっと、はい、外の暑さでボーっとしちゃいました。どうぞ中へ。」

 

先に中でルリちゃんがグラスの麦茶飲んで一言。

 

「ぶはー、このいっぱいのためにいきているー。」

 

イントネーションがおかしいのは、私の真似をしているだけで意味が解ってないからだろう。

後で、お母さんの前でしないようようにお願いしておかないと。

 

「もう、ルリちゃん、結城ちゃんのそのオジサンっぽい真似はダメだよ。いらっしゃい、亜紗さん。」

「ありがとう。」

 

茉莉さんがグラスを亜紗さんに手渡す。

入れ替わりにルリちゃん用のグラスがテーブルに戻る。

 

「はーい。あのね、お母さんが結城ちゃんにまた修理お願いって。今度はお風呂の操作…なんとか?」

「うん、この後お家に一緒に行こっか。茉莉さんも一緒に来ます?」

 

出かけるなら、外暑いし私ももう1杯飲もうっと。

 

そのまま茉莉さんピッチャーを貰って、自分のグラスに注ぐ。

 

「ボクは亜紗さんに勉強を見てもらうつもりだから、今日は止めておくよ。ルリちゃん、ごめんね。お母さんにもよろしく。」

「うん、分かったよ、おねーちゃん。じゃあ、結城ちゃん、行こう。」

「はいはい、それじゃ、茉莉さん、亜紗さん、行ってきます。」

 

ルリちゃんが、麦茶を飲み終えたタイミングで私達2人は外に出る。

 

やっぱり、今日もかなり強い日差しだ。

 

夏は嫌いじゃないけど、お昼のこの暑さは元気が良すぎると夜にバテてしまう。

 

ゆらゆらとアスファルトの風景が幻のように揺らめいて見える。

 

「ルリちゃんは暑いのに偉いよね。お母さんに頼まれたことできて。この後も遅いんだよね?」

「うん、お母さんはお仕事だから、夏休みは私がちゃんとお留守番してないとね。」

 

ルリちゃんのお父さんとおばあさんは四国への避難民の中に見つけられなかった。

バーテックス襲来から4年の月日が流れ、裁判所の失踪宣言からも年月が立っていることから、ルリちゃんのご両親のようにお互いの状況が分からない家族には簡易な手続きで身元確認が進んでいる。

 

みんな、少しずつバーテックスによって変えられた世界を生き始めている。

 

そして、落ち着いて物事を考えられるようになると、次に考えるのは失ったものの回復だ。

 

「大赦は我々に隠し事をしている。神樹様の恵みを独占し、我々への供給を制限している。」

「本当はバーテックスはすでに去っているはずだ。我々を元の場所に戻せ。」

 

そう、子供たちが遊ぶ公園や地域の行政センターの前で掲げられるプラカードの数。

この4年間勇者以外にバーテックスを直に見た人間が減ったことにより、人々は恐怖よりも怒りや不満を見せ始めている。

 

その矛先は自分たちが済んでいる場所を取り戻せない大社と、勇者たちにも向けられてしまう。

バーテックスなんて訳の分からない化け物より、その化け物を倒せる力があっても言葉が通じて、見た目が同じ種族なら、理解できるからこそ感情もぶつけられてしまう。

 

いっぱい集まっていた人の中から外れて、前からやってきたのは、ルリちゃんと同じく避難民の女の子。

 

「あ、ルリさん。」

「十華ちゃん、遊びに来てくれたの?」

 

ただし、年齢はここに来た時のルリちゃんと同じ5才くらい。

くらいというのは当時の彼女は奇跡的に川から流れついただけで、私と同じように本当はどこの誰かもわからなかったからだ。

 

辛うじて子供服にあった十華という名前だけが私との違い。

 

ただ、4年前の2015年だと彼女は1、2才だったから、覚えてなくても不思議はない。

 

「十華、どうしてあそこに?」

「えっと、おじさんとおばさんがわたしも聞きなさいって。」

 

私が言うのも何だけど、こんな子供に社会への不満を植え付けてどうするつもりだ。

 

「それで、そのおじさんとおばさんは?」

「結城ちゃん、あそこ。」

 

ルリちゃんが指さす方を見ると、見覚えのある夫婦が盛んに叫んでいる。

 

初めて会ったときは自分たちも避難民なのに、流れてきていたのを見つけたというだけで十華のことを面倒見てくれた優しい人だと思った。

 

けど、今見えてるおじさん達は顔を真っ赤にして大社や勇者を責め立てて、あの頃の面影はない。

 

(いつもはニコニコして子供でもバカにしない良い人なんだけど。)

 

「どうしようっか。結城ちゃん。」

「急ぎでないなら終わるまで待った方が良いんだろうけど、この暑い日に子供だけって言うのは……。」

「えっと、わたしなら大丈夫だよ。」

 

十華はそう言うけれど、さすがにこのまま放ってはおけない。

熱中症だって怖い。

 

「2人ともここで待ってて。」

 

それだけを言い残すと、私は群衆の中に飛び込む。

 

「すみません。ちょっと通してください。ごめんなさい。」

 

私も亜紗さんみたいにおっきくないから、3歩進んで2歩流されるみたいな感じで、なんとか十華のおじさんとおばさんのところまでだどりつく。

トントンと軽く肩を叩くと2人はすぐに気づいてくれて、いつもの表情に戻った。

 

「あら、結城ちゃん、どうしたのかしら。」

「おや、十華も見当たらないぞ。」

 

2人はすぐに十華が近くにいないことに気づいた。

 

「なんか、人の波に流されちゃったみたいなんです。こっちにいますから。」

「あら、結城ちゃんが様子を見てくれていたのね。」

 

慌てて2人が私の後について群衆の中から抜け出す。

 

「十華。」

「おじさん、おばさん。」

「もう、ダメじゃない。勝手にいなくなって。」

「結城ちゃん、ルリちゃん、ありがとうね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手を振る十華達に見送られると、少し遅れたけどルリちゃんのお家でお風呂の配線を見る。

 

(うーん、とりあえずこれで直ったと思うけど、電気回路系の基盤がだいぶ古くなってる。)

 

私や茉莉さんが使わせてもらっている仮設住宅よりマシとは言え、やっぱりルリちゃん達も避難民だから、住宅事情はあまり良くないみたいだ。

 

避難民対策の住居は急ピッチで建設が進んでいるけど、廃村の古民家や廃業したデパートとかをそのまま使ったものが多くて、もともと居住用になってない。

中には悪い人もいて、書類上は改築済みとなっていても、嘘の書類を用意したりしてごまかしたりして事故が起きたりもしている。

 

ルリちゃん達が最初に借りたお家とかもそうだった。

 

(私にかかれば構造解析ですぐに分かるからあっさりお縄になったけどね。)

 

本当にひどいと、近所の建物を持ち主の不在の間に、自分の物だって嘘をついて勝手に売っちゃう人もいる。

 

やっぱりこの建物も築年数20年なんて嘘だと思う。

これ以上の修理は部品が必要になる。

パーツショップかジャンク品でも探してみようかな。

 

ただ、私達の仮設住宅の取り壊しも近いって言ってたし、この建物もそろそろ検査でひっかかりそうだな。

あんまり本格的な修理はしなくても良いかもしれない。

 

「ルリちゃーん、終わったよー。」

 

パタパタと軽い足音がしてルリちゃんがやってくる。

 

「これでお湯もちゃんと出る?」

「出る出る。ほら。」

 

軽く蛇口を捻ってお湯を出してみる。

 

「わー、ありがと。お母さんは未だ帰ってこないんだけど、晩御飯だけでも食べていく?」

「ううーん。私だけ御馳走になるのも茉莉さんに悪いし、今日は帰るよ。」

「そっか、残念。それじゃまたみんなで来た時に食べて。上手になったってお母さんにもほめられたんだよ。」

「それは楽しみ。それじゃ、何かあったらすぐに呼んでね。2時間以内に地球の裏側からだって駆けつけちゃうよ。」

 

軽口で挨拶して、ルリちゃんと別れる。

 

長い長い夏の日差しがようやく落ちようとしている。

 

ルリちゃんのお誘いを断ったのは茉莉さんのことだけじゃない。

 

この後、誰にも内緒で調べたいことがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――郡千景は一般人を傷つけたから処分されたんだ――

 

――そもそも、本当に勇者なんて必要か? バーテックスだってとっくにいなくなってるんじゃないのか――

 

「ダメか、やっぱり千景様の消息がネットの噂程度しかない。」

 

スマホ片手に調べもの。

 

でも、ネットにも欲しい情報があるとは限らない。

というより、どこにどんな情報があって、どうすれば手に入るかなんて分かれば苦労なしだろう。

 

それこそ、最初から全部知っていなければ、そんなことはできない。

 

ひとまず電車で、あの日、戦闘が終わった後に木の根っこだらけの不思議な世界から、現実世界に戻ってきた場所に着く。

 

このあたりにあれば良いんだけど……あった。

角度的にもあのカメラなら写ってそう。

 

最近の公園とかが避難民対策で監視カメラつけてところが多いから、もしかしてと思ってはいたけど、ちょっと複雑な気分。

 

まずはカメラを全て覆うようにアップで近づいて、酔っぱらいのフリをしながら、私お手特製の超音波や熱源の薄型シールを貼り付ける。

 

「うぃーーー、元気があればああ、何でもできる。元気ですかぁーー。」

 

古い映像資料でこれが一番酔っ払いのイメージに近かった。

 

後は適当に離れて、リュックサックから取り出した送受信機と信号用ブースターをスマホに取り付ける。

最期に耳栓とスマホの追加バッテリを準備して……。

 

「超音波データ窃取装置万銅鑼業羅(マンドラゴラ)君1号機。ポチっとな。」

 

幻覚剤を音楽にしならがら、黒板に爪を立てて演奏するようなヒステリックな音が10秒ほど続く。

 

監視カメラ網にマルウェアの作成成功っと、どんなセキュリティも超音波と映像データ経由で発生するメモリ上のバグまでは想定していないだろう。

というか、ソフトウェア的なマルウェアじゃなくて、ハードウェア的なマルウェアだからね。

 

送受信機やブースターをしまうと、今度はノートPCを取り出して、拾った信号を視覚データに再変換する。

 

いる。

 

専用の救急車みたいなので千景様を運んでる。

 

次の地点のカメラの情報に切り替える。

運ばれたのは発表通り大社直轄の病院。

 

このまま255倍速で3日ほど飛ばしながら見て行く。

千景様が入院していたのは2日ほどで済んだみたいだ。

 

次々にあの後の千景様の行動を街中の監視カメラで追っていく。

 

高速道路、公園、コンビニ、交番、駐車場。

 

つなぎ合わせれば、千景様の家が分かるはず。

あとはここ1月ほどの間でどう過ごしていたのか確認するのは簡単だ。

 

「ここが、千景様の家か。丸亀市内だったんだ。」

 

公式の発表されていたのは高知の方だったと思うけど、一時期噂になっていた一般人を攻撃してしまった事件と関係あるんだろうか?

 

そこから、1ヵ月間の録画を確認していく。

 

千景様はあんまり外に出てない。

最初の1週間くらいは外出されていたけど、後半の20日ほどはずっと家にいたみたいだ。

それにだんだんと顔色が悪くなっているみたい。

 

やっぱり怪我が直りきっていないのかな。

 

そう考えれば、大社が千景様を勇者のお役目から解いたのも納得はできるけど……。

 

(どうしてお医者さんも来ないんだろう?9

 

千景様が病院に出かけた様子もない。

あと時々出てくるこの人はお父さんだと思うけど、こっちも全然働いている様子がないし。

 

何だか胸がザワザワする。

鼓動ににたベルのような音が響いている。

 

音源は私のスマホだ。

 

慌ててノートパソコンをシャットダウンすると電話に出る。

 

「結城ちゃん、どこにいるの?」

 

茉莉さんだ。

 

「あ、っと、ごめんなさい。寄り道してました。もうすぐ帰るからちょっと待ってて。」

「あ、ちょっと、ゆう……。」

 

今日はここまでかな。

 

もう少し情報を集めてから千景様を尋ねてみよう。

 

一方的に切ってしまったけど、空間転移ですぐに戻れば嘘にはならないはず。

 

そのまま、監視カメラに張り付けたセンサーとかを回収して、パッと自分たちの部屋の前にすっ飛んで行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「突然ですが茉莉さん。夏休みのご予定は?」

「本当に突然だね。なんで?」

「いいから、いいから、友達と旅行に出かけるーとか、ネズミ運営テーマパークに行くとか、キャンプ女子に目覚めたとか、遠くまでお出かけしたりしないかな、と。」

 

晩御飯を先に食べ終わった私が茉莉さんに確認する。

 

早飯も芸の内。常在戦場。巧遅は拙速に如かず。

基本的に私の方が早く食べ終わるから、普段は待つけど、何事も早く済ませたほうが良い。

烏の行水はさすがにダメだけど。

 

 

もし、茉莉さんが亜紗さんとかとお出かけするなら、その間に千景様の様子を確認したい。

茉莉さんが勇者のお友達とかいればそっち経由でも良いけど、さすがに偶然が過ぎるでしょ。

 

千景様の家は丸亀市内に移っているから日帰りなら外出先をごまかせなくもない。

でも、できれば2、3日くらいは見張っておきたい。

 

いくら治療中でも外との接触がほとんどないのが健全だとは思えない。

 

(大社はどうして千景様の様子を確認しないんだろう? 今は戦えないとしても、先頭に立ってバーテックスを倒してきた功労者なのに。)

 

「うーん、お出かけは考えてないかな。次の絵本を正式に出してもらえることになったから、制作にとりかかりたいんだ。どこか行きたいところがあるの?」

「えーっと、行きたいところと言うか、何と申しますか……。」

 

困った。

 

今の茉莉さんだと2、3日フラッと出かけますって言っても、簡単に許可してくれない気がする。

 

ピンポーンと都合よく玄関からの呼び出し音。

 

「私が出るよー。はーい、どちらさまー?」

 

渡りに船。

 

ごまかすように鍵穴から除いて見ると十華だ。

 

「あの、遅くにごめんなさい。」

「十華? どうしたの?」

 

確かに今は夜の8時くらいだから、十華くらいの子供が外で遊ぶ時間じゃない。

 

「茉莉さん。」

「いいよ、上がってもらって。」

 

チェーンを外して、十華を案内する。

 

「で、どうしたの? 十華ちゃん?」

 

茉莉さんがお客様用カップにグレープジュースをいれて差し出す。

なんでか十華はこれが大好きなのだ。

 

それなのに、ジュースに目もくれず十華は一息に喋りだす。

 

「あの……。わたし、おじさんたちの他に話せる大人の人がいなくて、ルリさんのお母さんにも相談しようかなと思ったんですけど、ルリさん達もまだ辛そうなのに、私だけ良くないかなって。」

 

話が見えないけど、おじさんとおばさんはあまり話を聞いてくれなかったんだろうか?

 

「落ち着いて、十華ちゃん。大丈夫、ゆっくりでいいから。最初からね。」

「え、あ、はい、ごめんなさい。」

 

その後も話が飛び飛びで茉莉さんが質問しながら、十華は話し始めた。

 

十華の身元が判明した。

 

 

 

 

 

彼女の本当の名前は、郡十華。

 

郡千景様の父親違いの妹だった。

 

そして、お姉さんと同じく彼女にも勇者としての適性があった。

 

 

 




監視カメラのハッキングネタでいいの無いかなーっと思案中。
やっぱりちょっと調べただけだと、マルウェア系と電磁波系が多いですね。

作中はウイルスを送るのではなく、動作をリアルタイムで真似る感じで考えてみました。
人間の情報処理速度やタイピング速度じゃ無理な気もしますが、そこは2次創作なので。

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